有価証券報告書-第14期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)
(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当事業年度におけるわが国の経済は、企業収益や雇用情勢に改善傾向が見られ、緩やかな回復基調が続いております。一方で、米国の新政権による政策動向、地政学的リスクの高まり等不安定な海外情勢の影響が懸念され、日本経済は先行き不透明な状況で推移しました。
当社のソーシャル・ウェブメディア事業が属するインターネット関連市場を取り巻く環境につきましては、スマートフォンやタブレット端末の普及に伴い、インターネット利用人口の拡大が続いております。これに伴い、インターネットを利用した企業の情報収集ニーズが活発化しており、当社サービスに対する需要は高まっております。
また、当社のビジネス・ウェブアプリケーション事業が属するクラウド市場を取り巻く環境につきましては、企業が進める働き方改革や、オムニチャネル等のデジタル変革に伴うIT投資によって、引き続き、当社サービスに対する需要は高まっております。
このような環境の中、当社の業績につきましては、ソーシャル・ウェブメディア事業では、当期に事業を譲り受けた採用成果報酬サービス「キャリコネ転職」の体制構築が想定より遅延したことによる収益化の遅れ、「TimeTicket(タイムチケット)」のユーザー数増加のため広告宣伝費を投資したことにより、セグメント損失を計上しております。ビジネス・ウェブアプリケーション事業では、IoT(注1)に係る新規取引先からの引き合いもあり前事業年度比で売上高及びセグメント利益が増加しております。
(注1)IoTとは、Internet of Thingsの略称。全ての「モノ」がインターネットを介して繋がり、モノ同士が人の操作・入力を介さず自律的に最適な制御が行われることを意味する。
a.財政状態
当事業年度末の資産の合計は、前事業年度末に比べ270,609千円減少し、752,378千円となりました。
当事業年度末の資産の負債の合計は、前事業年度末に比べ24,978千円増加し、482,527千円となりました。
当事業年度末の資産の純資産の合計は、前事業年度末に比べ295,587千円減少し、269,850千円となりました。
b.経営成績
当事業年度の経営成績は、売上高1,251,507千円(前期比22.4%増)、営業損失は145,246千円、経常損失153,353千円、当期純損失は299,342千円となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
ソーシャル・ウェブメディア事業の売上高は509,686千円(前期比5.7%増)、セグメント損失は110,320千円となりました。
ビジネス・ウェブアプリケーション事業の売上高は741,821千円(前期比37.5%増)、セグメント利益は128,799千円となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ204,443千円減少し、当事業年度末には426,429千円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、108,444千円の減少となりました。これは、主に税引前当期純損失299,849千円、売上債権の増加26,809千円、たな卸資産の増加20,950千円、投資有価証券の評価損25,325千円、関係会社株式の評価損50,869千円、減損損失の計上70,355千円、仕入債務の増加31,800千円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、32,465千円の減少となりました。これは、主に長期貸付金の貸付による支出11,500千円、無形固定資産の取得による支出10,000千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、56,111千円の減少となりました。これは、長期借入金の返済による支出60,012千円、株式の発行による収入2,285千円、新株予約権の発行による収入1,960千円によるものであります。
生産、受注及び販売の実績
(1)生産実績及び受注実績
ソーシャル・ウェブメディア事業は、生産活動及び受注活動を行っておりませんので、該当事項はありません。
ビジネス・ウェブアプリケーション事業は期中の受注高と販売実績とがほぼ対応するため、生産実績及び受注状況の記載を省略しております。
(2)販売実績
当事業年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 当事業年度 (自 平成29年4月1日 至 平成30年3月31日) | |
金額(千円) | 前年同期比(%) | |
ソーシャル・ウェブメディア事業 | 509,686 | 105.7 |
ビジネス・ウェブアプリケーション事業 | 741,821 | 137.5 |
合計 | 1,251,507 | 122.4 |
(注)1.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 | 前事業年度 (自 平成28年4月1日 至 平成29年3月31日) | 当事業年度 (自 平成29年4月1日 至 平成30年3月31日) | ||
金額(千円) | 割合(%) | 金額(千円) | 割合(%) | |
エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社 | 177,026 | 17.3 | 214,135 | 17.0 |
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択、適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りとは異なる場合があります。
②当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
1)財政状態
(資産合計)
当事業年度末の資産の合計は、前事業年度末に比べ270,609千円減少し、752,378千円となりました。これは主に、現金及び預金の減少204,443千円、関係会社株式の減少47,869千円、無形固定資産の減少35,596千円、有形固定資産の減少30,603千円、投資有価証券の減少25,325千円、売掛金の増加26,809千円、仕掛品の増加20,950千円、前払費用の増加13,322千円によるものであります。
負債の合計は、前事業年度末に比べ24,978千円増加し、482,527千円となりました。これは主に、買掛金の増加31,800千円、未払費用の増加29,259千円、預り金の増加13,045千円、長期借入金の減少60,012千円、賞与引当金の減少8,867千円によるものであります。
純資産の合計は、前事業年度末に比べ295,587千円減少し、269,850千円となりました。これは当期純損失の計上に伴う利益剰余金の減少299,342千円、新株予約権の増加1,815千円によるものであります。
2)経営成績
(売上高)
売上高は、ビジネス・ウェブアプリケーション事業での、当社が開発するクラウド型業務用ソフトウェア及び導入支援サービスへの需要が拡大しており売上高1,251,507千円(前年同期比22.4%増)となりました。
(売上原価、販売費及び一般管理費)
売上原価は、ビジネス・ウェブアプリケーション事業の売上増加に伴う外注費の増加や、ソーシャル・ウェブメディア事業での外部に委託していた一部のシステム運用を内製化することで利益率の改善を図っておりますが、時間を要しており外注費が増加したなどにより、売上原価773,376千円(前年同期比20.4%増)となりました。
販売費及び一般管理費は、「TimeTicket(タイムチケット)」のユーザー数増加のため広告宣伝費を投資したことや人件費の増加などにより、623,377千円(前年同期比22.8%増)となりました。
(当期純損失)
当期純損失につきましては、当事業年度において営業損失になる見込みであることから「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき、当社の固定資産について減損の兆候が把握されました。これを受けて、将来の回収可能性を慎重に検討した結果、帳簿価額を使用価値に基づいた回収可能価額まで減額し、当該減少額である70,355千円を減損損失として計上しております。また、一部の投資先について当初想定した収益計画が遅れており、回復可能性が不確実となったことから、投資有価証券評価損25,325千円及び関係会社株式評価損50,869千円を計上いたしました。以上の結果、当期純損失は299,342千円となりました。
3)キャッシュ・フローの状況
当事業年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社は、ソーシャル・ウェブメディア事業とビジネス・ウェブアプリケーション事業の二つの事業を営んでおり、これらの事業を拡大させることが、当社の更なる成長と発展を遂げるために必要であると認識しております。並行して、新サービス分野における他社との事業・資本提携を推進し、さらに、今後急成長が予想される東南アジア及び南アジアの新興市場でのインターネット関連企業及びクラウド関連企業との事業・資本提携を行ってまいります。
ソーシャル・ウェブメディア事業では、「キャリコネ」プラットフォーム上のサービス機能の充実を図り「キャ
リコネ」の訪問者数、登録者数を増加させるとともに、会員の個人情報等の情報管理体制を強化することで、持続
的で健全な成長を目指してまいります。また、衣・食・住・職に加えて、教育や冠婚葬祭などのライフイベントに
向けたインターネットサービスを提供し、さらに、C2C向けサービス、シェアリング・エコノミー型サービス及び
FinTechサービスに注力し本分野における他社との事業・資本提携を積極的に行ってまいります。
ビジネス・ウェブアプリケーション事業では、サービスデリバリ・サポートでのクラウド・インテグレーション
案件でノウハウを蓄積し、ソフトウェア部品の販売による利益率改善を目指してまいります。プロダクト・ディベロップメントにおいては、Salesforce.com社、Amazon社及びGoogle社との提携関係を活かした製品開発を継続し、IoTやBigData、AIを活用した次世代のソフトウェア企業と資本・事業提携を行ってまいります。
c.資本の財源及び資金の流動性
資金需要
当社の事業活動における運転資金需要の主なものは、外注費及びシステム関連費用の製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。
財務政策
当社は、運転資金及び設備資金につきましては、内部資金又は借入により資金調達することとしております。このうち、借入による資金調達に関しましては、長期借入金で調達しております。
平成30年3月31日現在、長期借入金の残高は144,969千円であります。
d.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、継続的な成長と収益力の向上に努め、時価総額の拡大を目指してまいります。主な経営指標として
「EBITDA」(注)の中長期的な成長を重視しております。
(注)EBITDA=営業利益+減価償却費及び償却額
e.セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
ソーシャル・ウェブメディア事業
ソーシャル・ウェブメディア事業は、インターネット上にて運営している働く人のための情報プラットホーム「キャリコネ」は、当事業年度の訪問者数は62,237千人(前期は、47,820千人)となりました。訪問者数と売上高が強く相関する収益構造である「キャリコネ」へのユーザーを誘導するため、転職希望者向けに企業情報をまとめた特化型キュレーションメディア「TENSHOCK(テンショック)」や、働く人のキャリア形成のための「キャリ
コネニュース」を展開し、当該施策によって、訪問者数は増加いたしました。また、4月1日に事業を譲り受けた国内求職者向け転職Webサービス(キャリタス転職)と当社既存サービス(キャリコネ転職)との統合が完了し「新キャリコネ転職」としてサービスを開始いたしました。契約企業数は約1,100社から3,000社超に増加し、さらに求人掲載企業の獲得等を目的とし、熊本県に営業拠点を4月に開設し運営を開始しておりますが、営業拠点の体制構築が遅れたため、当社が求人企業から直接掲載を依頼された求人情報を介して求人企業が採用に成功した場合の成果報酬売上が期初の想定より減少しました。期初に想定していた効率化は、外部に委託していた一部のシステム運用を内製化することで利益率の改善を図っておりますが、時間を要しており外注費が増加しております。人材紹介を行うリクルーティング・サービスは、サービス品質の向上を目的としたキャリア・コンサルタント教育に引き続き注力しております。C2C向けサービス(注1)及びシェアリング・エコノミー型サービス(注2)を展開する「TimeTicket(タイムチケット)」においては、ユーザー数増加及びサービス利用の活性化に重点を置いており、広告宣伝費の投資及びシステム改修を行っております。
ビジネス・ウェブアプリケーション事業
ビジネス・ウェブアプリケーション事業は、eコマース/CRM(注3)、販売管理、IoT/BigDataを今年度の重点領域に定め技術力を蓄積するとともに、Salesforce.com社、Talend社、Domo社及びAmazon社との協業を進めておりま
す。これらパートナー製品の再販及び導入支援サービスに加えて、Voxerをはじめとしたクラウド型自社製品の開発と販売にも注力しております。当事業年度においては、上記重点領域での新規契約が順調に推移しました。
(注1)C2C向けサービスとは、商取引の形態のうち主に一般消費者どうしの売買・取引を扱う形態のサービス。
(注2)シェアリング・エコノミー型サービスとは、個人間で、個人が保有する遊休資産(スキルのような無形のものも含む)の貸出しを仲介するサービス。
(注3)eコマース/CRMとは、企業のマーケティング活動及び商談管理を効率化するクラウド型サービス。