有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2019/09/02 15:00
【資料】
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【項目】
88項目
(1) 経営成績等の状況の概要
当社グループ(当社及び連結子会社)の業績、財政状態、経営成績及びキャッシュフロー(以下、経営成績等という。)の状況の概要は次のとおりであります。また、文中の将来に関する事項は、本書提出日時点において当社グループが判断したものであります。
① 経営成績の分析
第22期連結会計年度(自 2017年10月1日 至 2018年9月30日)
当連結会計年度におけるわが国経済は、企業収益や雇用情勢の改善など、総じて緩やかな回復基調が続いているものの、通商問題、世界経済や金融資本市場の動向、自然災害などによる不透明感が持続しつつ、推移いたしました。
当社グループが属するソフトウエア業界を含む情報通信サービス業界においては、クラウドサービスの利用が前年に引き続き拡大を見せています。総務省「平成29年通信利用動向調査報告書(企業編)」によれば、平成29年時点でのクラウドサービスを利用する企業の割合は、前年から9.8ポイント増の56.3%と半数を超え、利用する予定がある企業まで加えると7割近くまで拡大しております。また、同調査によれば、クラウドサービスの効果について8割を超える企業が効果ありと回答しており、より一層のクラウドサービス利用の拡大が見込まれます。これを産業別・資本金規模別で見ると、全ての産業・資本金規模においてクラウドサービスの利用が増加しており、より一層の浸透が見てとれます。
このような経営環境の中で、当社グループは、プロフェッショナル・サービス及びその他事業を継続するとともに、クラウドサービスを導入して業務効率化を図る企業に対し各クラウドサービスの利便性を損なうことなく企業が受容できないリスクを軽減させるセキュアなシングルサインオンを実現するIDaaSの提供を中心とするHENNGE One事業を推進してまいりました。
さらに、当連結会計年度においては、将来の海外展開を見据えて、いわゆるグローバル企業となるべく国際的人材の獲得に注力すると同時に、社内英語公用語化に伴う社員の英語教育に取り組みました。従業員の増加に伴うフリーアドレス化も定着しつつあり、国内外を含め場所を意識せずとも業務可能なワークスタイルを実践しております。
また、前連結会計年度のrakumo株式会社に続き、当連結会計年度においても、当社を取り巻くクラウド市場におけるビジネス機会を得ることを目的に、2018年5月にDIGGLE株式会社へ出資いたしました。
この結果、当連結会計年度の業績は、売上高2,834,900千円(前連結会計年度比27.4%増)、営業利益202,052千円(同32.9%増)、経常利益219,258千円(同41.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益123,331千円(同28.5%減)となりました。なお、売上高のうち2,654,258千円(売上高全体のうち93.6%)は解約がされない限り翌期も継続的に売上高となる性質の売上で構成されており、当社グループの安定的な収益基盤を構築しております。また、当社グループの研究開発部門において基盤システムの効率化を継続的に実施した結果、売上総利益率は前連結会計年度比3.9ポイント増の77.8%となりました。
当社グループの事業セグメントは単一セグメントでありますが、売上区分別の事業概況は、次のとおりであります。
(i) HENNGE One事業
不正ログイン対策、スマートフォン紛失対策、メールの情報漏洩対策などを一元的にクラウドサービス上で提供する「HENNGE One」については、前連結会計年度に引き続きターゲット市場の拡大を進めております。国内においては、首都圏、名阪地域に加え福岡を中心とした西日本地域に拡大し、海外においては台湾子会社(台灣惠頂益股份有限公司)の活動を中心に、顧客獲得のための積極的な施策を実施いたしました。
メディアへの掲載などの各種広告に加え、首都圏、名阪地域やその他主要都市でのイベント開催、産業別展示会への出展などをいたしました。これにより、首都圏、名阪地域を中心とした大口顧客を含む新規受注や、ユーザ増加に伴う追加アカウント受注を獲得することができました。
また、アウトソースを活用することによる業務の効率化や、ISO/IEC 27018認証(注)の運用による管理策の定着と改善のための社内教育、監視体制等を徹底し信用の維持と更なる向上に努めてまいりました。
前連結会計年度に設立したカスタマー・サクセス・ディビジョンにおいては、ユーザの声をより収集、事業反映しやすい体制を作り、よりよいサービスを目指すとともに、解約につながる相関性を調査し解約率を低減するための施策を講じております。加えて、ネガティブチャーン(解約に伴う減収を、既存契約からの追加発注に伴う増収が上回ること)の実現に向けて活動しております。
メールの情報漏洩対策サービスにおいては、より高い可用性、高機能かつ低コストを実現するサービス刷新を進め、前連結会計年度から開始しているユーザ利用環境への導入を継続しております。
この結果、当連結会計年度の「HENNGE One」売上に占める更新売上の割合が、前連結会計年度比で4.2ポイント増加し76.0%となりました。
また、当連結会計年度において、HENNGE Oneサービス基盤の改善を積極的に実施することで、前連結会計年度に引き続き原価率を低下いたしました。
この結果、HENNGE One事業の売上高は、更新売上1,738,685千円(前連結会計年度比46.8%増)、新規及び追加売上543,292千円(同17.7%増)、その他売上6,421(同24.1%増)で、合計2,288,397千円(同38.6%増)となりました。また、翌連結会計年度の収益見込みのベースとなるARRは2,551,737千円(同34.4%増)、当連結会計年度末時点の契約企業数は1,176社(前連結会計年度末は928社)、契約ユーザ数は1,371,131人(前連結会計年度末は1,027,066人)、直近12ヶ月の平均月次解約率は0.15%となりました。
(注) ISO/IEC 27018: パブリッククラウドにおける個人情報の保護に特化した国際規格です。
(ii) プロフェッショナル・サービス及びその他事業
プロフェッショナル・サービス及びその他事業のうち、「HDE Mail Application Server #Delivery」及びそれに付帯するサービスにつきましては、既存顧客からのサポート契約の継続に加えて新規受注が堅調に推移いたしました。
また、クラウド型のメール配信、メールシステム開発プラットフォーム「Customers Mail Cloud」につきましては、前連結会計年度に引き続き、既存顧客からの契約の継続に加えて追加利用に係る受注が堅調に推移いたしました。
この結果、プロフェッショナル・サービス及びその他事業の売上高の合計は、546,503千円(同4.9%減)となりました。
第23期第3四半期連結累計期間(自 2018年10月1日 至 2019年6月30日)
当第3四半期連結累計期間においては、前連結会計年度に引き続き、将来の海外展開を見据え国際的人材の獲得に注力すると同時に、社内英語公用語化に伴う社員の英語教育に取り組みました。また従業員の増加に伴うフリーアドレス化も定着しつつあり、国内外を含め場所を意識せずとも業務可能なワークスタイルを実践しております。
この結果、当第3四半期連結累計期間の業績は、売上高2,515,840千円、営業利益146,311千円、経常利益132,850千円、親会社株主に帰属する四半期純利益79,995千円となりました。また、当社グループの研究開発部門において基盤システムの効率化を継続的に実施した結果、売上総利益率は前連結会計年度比4.3ポイント増の82.1%となりました。
当社グループの事業セグメントは単一セグメントでありますが、売上区分別の事業概況は、次のとおりであります。
(i) HENNGE One事業
不正ログイン対策、スマートフォン紛失対策、メールの情報漏洩対策などを一元的にクラウドサービス上で提供する「HENNGE One」については、前連結会計年度に引き続き、営業面ではターゲット市場の拡大を進める施策を継続いたしました。また運営面では、既存ユーザの声を事業反映しやすい体制を作り、よりよいサービスを目指すとともに、解約につながる相関性を調査し解約率を低減するための施策を進めております。
これら活動の結果として、首都圏、名阪地域を中心とした大口顧客を含む新規受注や、解約率の抑制、それに加えて、ネガティブチャーン(解約に伴う減収を、既存契約からの追加発注に伴う増収が上回ること)を実現しております。
さらに開発面においては、特に既存ユーザに対して様々な働き方に対応するためのクラウドサービスの提供を実現すべく、研究開発を重ねております。
この結果、当第3四半期連結累計期間のHENNGE One事業の売上高は、更新売上1,696,664千円、新規及び追加売上427,104千円、その他売上2,896千円などで、合計2,126,664千円となりました。また、当第3四半期連結会計期間末時点の契約企業数は1,361社、契約ユーザ数は1,631,360人、直近12ヶ月の平均月次解約率は0.13%となりました。
(ii) プロフェッショナル・サービス及びその他事業
プロフェッショナル・サービス及びその他事業のうち、「HDE Mail Application Server #Delivery」及びそれに付帯するサービスにつきましては、既存顧客からのサポート契約の継続に加えて新規受注が堅調に推移いたしました。
また、クラウド型のメール配信、メールシステム開発プラットフォーム「Customers Mail Cloud」につきましては、前連結会計年度に引き続き、既存顧客からの契約の継続に加えて追加利用に係る受注が堅調に推移いたしました。
この結果、当第3四半期連結累計期間のプロフェッショナル・サービス及びその他事業の売上高の合計は、389,176千円となりました。
② 財政状態の状況
第22期連結会計年度(自 2017年10月1日 至 2018年9月30日)
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末と比べ553,644千円増加し2,315,415千円となりました。主な内訳は以下のとおりであります。
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産は、前連結会計年度末と比べ563,424千円増加し2,111,914千円となりました。これは主に、現金及び預金が493,056千円増加したこと及び前払費用が29,663千円増加したことによるものであります。
流動資産のうち、現金及び預金の占める割合が非常に高くなっておりますが、当社グループの主なサービスは、顧客から年間契約金額を一括受領しているため、役務提供が未了である前受収益も1,172,616千円と多額になっております。また、前払費用が多額になっている要因は、コストコントロールの一環として将来稼働予定のITインフラ利用料を一括して支払っていることによるものであります。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産は、前連結会計年度末と比べ9,780千円減少し203,500千円となりました。これは主に、ソフトウエアが14,052千円減少したことによるものであります。
固定資産のうち、投資その他の資産その他、建物はほとんどが当社本社に係る資産であります。投資有価証券は、最新のIT業界情報やIT技術情報を把握し、当社グループの経営に資するものと判断した投資を行った結果であります。
当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末と比べ420,724千円増加し1,731,890千円となりました。主な内訳は以下のとおりであります。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債は、前連結会計年度末と比べ427,106千円増加し1,669,120千円となりました。これは主に、前受収益が274,441千円増加したこと、未払法人税等が51,344千円増加したこと、賞与引当金が44,225千円増加したことによるものであります。
前受金については、(流動資産)に記載の理由により、流動負債に占める割合が高くなっております。未払金及び賞与引当金は、通常の会社経費や従業員に支給予定の賞与に係る引当金残高であります。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債は、前連結会計年度末と比べ6,382千円減少し62,769千円となりました。これは主に、その他固定負債が6,576千円減少したことによるものであります。資産除去債務は当社本社に係る負債であります。
当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末と比べ132,921千円増加し583,525千円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益123,331千円を計上し利益剰余金が増加したことによるものであります。
第23期第3四半期連結累計期間(自 2018年10月1日 至 2019年6月30日)
当第3四半期連結会計期間末における資産合計は、前連結会計年度末と比べ316,561千円増加し2,631,976千円となりました。主な内訳は以下のとおりであります。
(流動資産)
当第3四半期連結会計期間末における流動資産は、前連結会計年度末と比べ234,178千円増加し2,299,385千円となりました。これは主に、現金及び預金が108,099千円増加したこと、前払費用が124,276千円増加したことによるものであります。
(固定資産)
当第3四半期連結会計期間末における固定資産は、前連結会計年度末と比べ82,383千円増加し332,590千円となりました。これは主に、投資その他の資産が87,234千円増加したことによるものであります。
なお、「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)等を第1四半期連結会計期間の期首より適用しており、財政状態については遡及処理後の前連結会計年度末の数値で比較を行っております。
当第3四半期連結会計期間末における負債合計は、前連結会計年度末と比べ236,607千円増加し1,968,497千円となりました。主な内訳は以下のとおりであります。
(流動負債)
当第3四半期連結会計期間末における流動負債合計は、前連結会計年度末と比べ201,481千円増加し1,870,602千円となりました。これは主に、前受収益が414,361千円増加した一方で、買掛金が69,924千円、賞与引当金が43,510千円および未払法人税等が82,523千円それぞれ減少したことによるものであります。
(固定負債)
当第3四半期連結会計期間末における固定負債合計は、前連結会計年度末と比べ35,126千円増加し97,895千円となりました。これは主に、その他固定負債が34,979千円増加したことによるものであります。
当第3四半期連結会計期間末における純資産合計は、前連結会計年度末と比べ79,953千円増加し663,478千円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する四半期純利益79,995千円の計上による利益剰余金の増加によるものであります。
③ キャッシュ・フローの状況の分析
第22期連結会計年度(自 2017年10月1日 至 2018年9月30日)
当連結会計年度末における現金及び現金同等物等(以下「資金」という。)は、税金等調整前当期純利益189,288千円の計上、前受収益の増加274,441千円等により、前連結会計年度末と比べ493,056千円増加し、1,804,065千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は536,031千円(前連結会計年度は516,780千円の獲得)となりました。これは、税金等調整前当期純利益189,288千円及び減価償却費34,634千円の計上に加えて、当社グループの主要サービスであるHENNGE Oneの受注が好調に推移した結果、前受収益が274,441千円増加したこと及びITインフラ利用料の増加による仕入債務の増加64,565千円が主な要因となっております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は53,291千円(前連結会計年度は97,907千円の使用)となりました。これは、IT関連会社に対する投資の結果、投資有価証券の取得による支出30,000千円、PCやネットワーク機器等の有形固定資産の取得による支出8,051千円等が生じたことによります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果獲得した資金は10,000千円(前連結会計年度は発生なし)となりました。これはHENNGE従業員持株会に対する第三者割当増資によるものです。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループは生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。
b.受注実績
当社グループは新規案件について受注残が発生するものの、受注から販売までの期間が短いため、当該記載を省略しております。
c.販売実績
第22期連結会計年度及び第23期第3四半期連結累計期間の販売実績を売上区分ごとに示すと、次のとおりであります。
売上区分の名称第22期連結会計年度
(自 2017年10月1日
至 2018年9月30日)
前年同期比(%)第23期第3四半期連結累計期間
(自 2018年10月1日
至 2019年6月30日)
HENNGE One事業
(千円)
2,288,39738.62,126,664
プロフェッショナル・サービス
及びその他事業 (千円)
546,503△4.9389,176
合計(千円)2,834,90027.42,515,840

(注) 1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.総販売実績に対する販売実績の割合が100分の10以上の相手先が存在しないため、主な相手先別の販売実績等の記載は省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表はわが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成においては、経営者による会計上の見積りを行っております。経営者による会計上の見積りは、過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断しておりますが、会計上の見積りには不確実性があるため、実際の結果と見積りとは異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要」に含めて記載しております。
③ 経営戦略の現状と見通し
当社グループは、「テクノロジーの解放 (Liberation of Technology)で世の中を変えていく。」というビジョンのもと、クラウド方式による独自開発サービスの提供により業績を拡大してまいりました。今後、インターネット環境がより発達し、中小企業においても積極的なIT投資が進み、ビジネスにおけるクラウドサービスの活躍する場面は多くなると考えております。このような経営環境において、当社サービスは、より積極的な販売活動を実行することで、事業の拡大が可能であると判断しております。
また、既存サービスの概念に捉われることなく、当社グループの強みである新技術への挑戦を継続することで、新サービスの開発をあわせて実行してまいります。
④ 経営者の問題意識と今後の方針について
当社グループは、「テクノロジーの解放 (Liberation of Technology)で世の中を変えていく。」をビジョンとして、事業を拡大してきました。今後、当社グループが更なる事業拡大を図るためには、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の様々な課題に対処していくことが必要であると認識しております。それらの課題に対応するため、経営者は最新のIT技術を探求し、あわせて事業環境も把握し、当社グループの強みであるスピード感あふれる実行力を発揮し、世界に新しい価値を創造し続ける方針であります。
⑤ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、人件費、広告宣伝費、業務委託費等であります。資金の源泉と流動性を安定的に確保することを目的とし、資金需要の額や使途に合わせて自己資金、金融機関からの借入及びエクイティファイナンス等で資金調達していくことを基本方針としております。なお、これらの資金調達方法の優先順位等に特段方針はなく、資金需要の額や使途に合わせて柔軟に検討を行う予定です。当連結会計年度末の現金及び現金同等物は1,804,065千円であり、流動性を確保しております。