有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2019/11/14 15:00
【資料】
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【項目】
163項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、実業(リアル)である「不動産事業」、ITの高度なテクノロジーとAI技術を基盤とした「ITプラットフォーム事業」及び「AIソリューション事業」の3つの事業を有機的に結合させた『AI×リアル』ソリューション事業を展開しております。
今後の経営の基本方針といたしましては、不動産業界に対して実績のあるAI技術とITを使った実業(リアル)の課題を解決する力を、先ずは、不動産業界と関係のある銀行業界に展開し、さらには、証券、電力、人材、情報通信、ホテル、百貨店、商社など、多種多様な産業に対して展開していく方針であります。
この方針を明確にするため、当社グループは、「A DECADE AHEAD 今の先鋭が10年後の当たり前を造る」を企業理念として掲げております。
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、現在、「不動産事業」において安定的な収益を確保しつつ、「ITプラットフォーム事業」及び「AIソリューション事業」が急速に成長しているとの認識であり、今後、「ITプラットフォーム事業」及び「AIソリューション事業」の更なる成長のためにAI技術及びITに多くの投資を行ってまいります。その結果、「ITプラットフォーム事業」及び「AIソリューション事業」の収益貢献拡大が予想されるため、当社グループといたしましては、売上高、営業利益及び売上高販管費率を客観的な指標として重視しております。
(3)経営戦略等
上記(2)の指標を確実に達成するために、当社グループは、事業ごとに以下の計画を設定しております。
① 不動産事業
不動産仲介サービスにおいては、専門性の高い不動産仲介エージェントが、大量の不動産取引データをAI技術によって処理する「不動産価格推定エンジン」を活用し、さらに顧客満足度の高いコンサルティングサービスを提供してまいりますとともに、今後は、より専門性の高い法人仲介サービスを展開してまいります。
スマートホームサービスにおいては、ソニーグループ等が提供する最先端のIoT及びデザインを組み合わせた他社とは異なるサービスを強化してまいります。
② ITプラットフォーム事業
不動産仲介業務支援機能については、2018年度から、①物件を売りたい売主からの問合せをインターネット上で集める集客機能、②問合せがあった売主に対して、「不動産価格推定エンジン」の提示する不動産査定価格のみならず周辺の物件の成約情報など売主の意思決定にあたって必要な情報も盛り込んだ査定書を作成する機能、③不動産仲介業者が不動産売却媒介契約を締結できた売主の物件をインターネット上に掲載して買主を募集する広告機能及び④AI技術による優良顧客特定機能の4つの機能を提供しております。今後は、⑤契約書作成機能等を加え、現在、不動産事業者が個別のツールを利用して分断して行っている各種業務を、全て1つのシステム上で完結できるプラットフォームへと発展させていく予定であります。これらの機能拡張を踏まえて、新規法人契約のさらなる獲得を目指してまいります。
セルフ売却機能については、不動産仲介業者を通さずに自らインターネット上で直接マンションの売出しを行う個人を支援する機能を拡張することで、さらなる利用者増を目指してまいります。
③ AIソリューション事業
2018年10月に事業を開始しているため、事業活動期間としては短く、事業規模としては3つの事業の中では相対的に小さい状態でありますが、順調な立ち上がりをみせていることから、今後は、中長期的な成長ドライバーと位置付けております。
AIクラウドサービスについては、「不動産事業」から得られる実業の知見及び不動産取引オペレーションデータに加えて「ITプラットフォーム事業」から継続的に生成される豊富な不動産取引データを活用することで「不動産価格推定エンジン」のさらなる高精度化を進めるとともに、「不動産価格推定エンジン」の対応地域及び対応物件種別を順次拡大してまいります。これらの精度向上及び機能拡張を踏まえて、不動産業界と関係のある銀行業界における融資担保評価業務への不動産価格推定エンジンの導入を進めてまいります。
また、AIクラウドサービスで獲得した顧客とのリレーションの中で、さらに当該顧客の顕在的、潜在的な経営課題を発見し、当該課題をAIコンサルティングサービスで解決するクロスセルを引き続き実現してまいります。
加えて、AIコンサルティングサービスで顧客の経営課題を解決するプロセスの中で、当該顧客以外にもあてはまる共通の汎用的な経営課題を特定し、当該課題を解決するための新たな汎用的なAIクラウドサービスを生成し、販売していくといったエコシステムを構築してまいります。
(4)事業上及び財務上の対処すべき課題
上記(3)の経営戦略等を達成するために、対処すべき現状の課題は以下のとおりであります。
① 経営管理体制の強化
当社グループは、安定的な事業規模拡大の前提となる経営管理体制を一層強化し、透明・公正・迅速な意思決定を行うためのコンプライアンスの徹底、ディスクロージャーへの対応等に一層取り組んでまいります。具体的には、人員増加や、担当者が各種勉強会に進んで参加することによる専門性強化により、コーポレート・ガバナンス体制、リスク管理体制、コンプライアンス体制、内部監査体制及び適時開示体制を更に強化してまいります。
② 人材の確保及び育成
「不動産事業」、「ITプラットフォーム事業」及び「AIソリューション事業」を発展させるため、高い専門性や技術力を有する優秀な人材の確保及び育成を積極的に行ってまいります。
③ 財務基盤の強化
限界利益率の高い「ITプラットフォーム事業」及び「AIソリューション事業」への投資を強化し、更に、中期的には売上高販管費率を30%水準にしていくことで、財務基盤の強化を行ってまいります。
④ 研究開発
「ITプラットフォーム事業」及び「AIソリューション事業」における競争力を確立・維持するため、研究開発投資を積極的に行ってまいります。
(5)経営環境
当社グループの現在の経営環境は総じて良好であると考えております。「不動産事業」の属する中古不動産市場におきましては、歴史的な低金利政策や新築住宅価格の高騰を背景として、依然堅調な状況が続くものと思われます。「ITプラットフォーム事業」の属する不動産テック市場は、2020年には6,267億円の市場規模になると見込まれております(出所:株式会社矢野経済研究所「2018年版 不動産テック市場の実態と展望」2018年5月23日発行)。「AIソリューション事業」の属するAI市場は、2021年には11,030億円、2030年には20,250億円の市場規模になると見込まれております(出所:株式会社富士キメラ総研「2018 人工知能ビジネス総調査」2017年11月17日発行)。