有価証券報告書-第15期(2024/01/01-2024/12/31)

【提出】
2025/03/25 15:30
【資料】
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【項目】
116項目
(1)経営成績等の状況の概要
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。なお、当社グループは法人向けクラウドサービス事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は行っておりません。また、当連結会計年度は連結財務諸表作成初年度であるため、前連結会計年度との比較は行っておりません。
① 経営成績の状況
当社グループは法人向けクラウドサービスの開発・販売を行っております。主なサービスとして、緊急時に簡単に情報共有できるように設計したシンプルなクラウドサービス「安否確認サービス」の開発・販売、サイボウズ株式会社の提供する業務アプリケーション構築サービス「kintone」と連携することで、より便利に利用するためのクラウドサービス「kintone連携サービス」の開発・販売を行っております。そのほか、社内のスケジュール管理と社外との日程調整が可能な新しいコンセプトのスケジューラー「トヨクモ スケジューラー」などを展開しております。
当社グループが主なサービスを展開している国内のクラウド市場は、2011年の東日本大震災を背景に、企業におけるリスク管理やBCP(事業継続計画)に関する意識の高まりによって広がり始めました。また、新型コロナウイルスの感染拡大を背景に、リモート勤務をはじめとする多様な働き方の普及に伴い、時間や場所にとらわれず利用可能なクラウドサービスの需要が高まっております。今後は、従前において多くみられた基幹系システムをクラウドサービスへ移行するだけでなく、デジタルトランスフォーメーション(以下、DX(注1))やデータ駆動型ビジネス(注2)、生成AI(注3)の普及によるITインフラへの投資の拡大が見込まれております。国内民間企業によるIT投資の市場規模は、2023年度の15兆500億円から、2026年度は17兆1,000億円になると予測(注4)されており、国内民間企業においてDXへの投資の必要性と意欲は継続されると考えております。
当社グループが提供する「安否確認サービス」は、災害時に従業員等の安否確認を自動で行うクラウドサービスであります。地震をはじめ、津波や特別警報などにも連動して自動で安否確認を送信します。利用者が回答した最新の情報を、管理者権限を持つユーザーが、いつでもリアルタイムで確認することができます。また、全社で利用できる掲示板だけでなく、限定されたメンバーのみが利用できる、グループメッセージ機能を備えています。これにより、災害対策本部をオンライン上に設置し、運営することが可能となっております。パンデミックをはじめとした非常時においては、従業員等に適切な予防方法を周知する、定期的に体温の報告をしてもらうなど従業員の健康管理として活用したり、サプライチェーン等に納期の懸念があるかを確認するといった、BCP(事業継続計画)対策としても活用したりすることが可能なため、今後もサービスを利用して頂ける機会は拡大していくものと認識しております。
2024年10月1日には、実際の災害を想定し、安否確認サービスをご利用中のお客様のうち、1,921社、702,114ユーザーに向けて全国同時一斉訓練を実施いたしました。前年を上回る過去最大規模の実施となりましたが、災害時のようなアクセス負荷状況であっても、システムが安定して稼働することを確認しております。
「ITreview」が発表する「ITreview Grid Award 2024 Fall 安否確認システム部門」においては、満足度と認知度の高い製品に贈られる最高評価の「Leader」に18期連続で選ばれております。また、他社システムとの連携も強化しており、2024年10月には、サイボウズ株式会社の提供するkintoneのアプリに登録されている従業員の情報を、当社グループの「安否確認サービス」に簡単に取り込むことができる、アプリ連携機能を実装いたしました。
近年、南海トラフ、首都直下地震をはじめとする巨大地震のリスクに加えて、豪雨災害を中心とした自然災害の頻発化・激甚化に伴い、住民生活や社会経済に大きな影響を与えており、防災情報システム・サービス市場は2021年度に1,050億円だった市場が、2027年度には約1,533億円市場に発展すると予測(注5)されており、災害対策のニーズは高まる方向にあると考えております。このような認識のもと、交通広告、インターネット広告、テレビCM、展示会への出展等を通じて、安否確認サービスの知名度向上と普及を進めてまいります。
当社グループが提供する「kintone連携サービス」は、サイボウズ株式会社の提供する「kintone」と連携することで、より便利に「kintone」を利用するためのクラウドサービスであります。「kintone」内にある情報を参照した帳票の作成やWebフォームの作成など、用途に応じた6つのサービスを提供しております。「kintone連携サービス」は、1つのサービス導入でも「kintone」を便利に利用することが可能になりますが、複数のサービスを導入していただくことで、「kintone」をノーコード、ローコードでWebシステムのように活用することができるようになります。
2024年11月には、「kintone連携サービス」の各サービスに「テンプレートギャラリー」の提供を開始いたしました。これは、勤怠登録システムやログイン認証付きマイページシステムなど、さまざまな業務シーンですぐに活用できるテンプレートを提供するものになります。これにより、お客様がゼロからシステムを構築する非効率さを解消し、時間を有効活用できるような環境づくりを目指しているものになります。2024年12月には「kintone連携サービス」の「PrintCreator」の全コースに「電子契約」機能を実装し、「kintone」を用いることで契約業務の一元管理と、迅速化、効率化を実現が可能となりました。また、「kintone」のアカウントを持っていない社外の取引先や顧客などとの情報共有を「よりセキュアに」「よりカンタン」に行うことができる機能「Toyokumo kintoneApp認証」の利用者数が2024年12月に累計で60万人を突破いたしました。
先述の通り、従前から使い続けてきたシステムの刷新のため、自治体や民間企業によるITインフラへの投資が見込まれており、クラウドサービスを導入することが期待されております。2021年は1兆3,000億円だったクラウド基盤(IaaS/PaaS(注6))サービスの売上高は、2027年には年間平均成長率が19.6%、3兆8,000億円まで発展すると予測(注7)されております。また、国内のSaaS市場は、2023年に1.4兆円に達しており、2027年には年間平均成長率が11%、2兆円を突破すると予想(注8)されております。そのため、「kintone」を導入する企業は引き続き増加し、それに伴い、「kintone連携サービス」の契約数も増えていくものと考えております。このような認識のもと、今後もインターネット広告、イベント及び展示会への出展に加えて、設定方法や活用事例のコンテンツを充実させていくことで、「kintone連携サービス」の普及を進めてまいります。
当社グループが提供する「トヨクモ スケジューラー」は、従来のグループスケジューラーがもつ社内の日程調整に加えて、社外の人との日程調整もできる新しいコンセプトのスケジューラーであります。予定を作成する際、サイボウズ株式会社の提供する「kintone」、「cybozu.com」と連携することで手入力の手間を省いたり、WebミーティングのURLをワンクリックで発行したりすることが可能であります。日程調整を目的としたサービスであるため、業種や規模を問わずご利用いただけるものであり、競合他社は多いものの市場規模は大きいと考えております。そのため、インターネット広告等を通じて、知名度向上に努めてまいりました。
2023年11月に設立した子会社であるトヨクモクラウドコネクト株式会社(以下、TCC)は、当社のビジネスモデルである、IT初心者の方でも簡単で安価にご利用いただけるものとは異なり、主なターゲットとして自治体や大企業を想定し、業務パックというかたちで、kintoneをはじめとする複数のクラウドサービスを組み合わせたパッケージ製品を開発・提供することを目的としております。2024年12月には、株式会社インバウンドテックとTCCが協業し、自治体向けの給付金事業において、BPOサービスとシステムの提供を開始いたしました。こうした活動を通じて、従来はBPOサービスを利用していた案件に対して、SaaSを活用することで、低コストでのシステム構築と業務の効率化を実現できるようなサービスの開発を進めております。
これらの結果、当連結会計年度における売上高は3,146百万円、営業利益は1,162百万円、経常利益は1,162百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は841百万円となりました。
(注1) デジタル技術を活用することで、業務を改善するだけでなく、製品やサービス、ビジネスモデルを改革し、業務や企業文化なども変革することで、競争力を高めること。
(注2) データをもとに、企業の意思決定を行ったり、ビジネスに活かしたりすること。
(注3) 文字などによる入力(プロンプト)に対して、テキスト、画像、その他のコンテンツを生成する人工知能。
(注4) 株式会社矢野経済研究所「国内企業のIT投資に関する調査(2024年)」(2024年11月21日発表)
(注5) 株式会社シード・プランニング「2023年版 防災情報システム・サービス市場の最新動向と市場展望」(2023年1月25日発表)
(注6) IaaSはソフトウェアを実行するための仮想サーバーやストレージ、ネットワークなどを提供するサービス。PaaSはソフトウェアを実行するためのデータベースやワークフローなどを提供するサービス。
(注7) 株式会社矢野経済研究所「クラウド基盤(IaaS/PaaS)サービス市場に関する調査(2024年)」(2024年4月23日発表)
(注8) One Capital「Japan SaaS Insights 2024」(2024年3月26日発表)
② 財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末における総資産は4,663百万円となりました。主な内訳は、現金及び預金4,196百万円、売掛金107百万円であります。
(負債)
当連結会計年度末における負債は1,606百万円となりました。主な内訳は、未払金及び未払費用242百万円、未払法人税等235百万円、契約負債977百万円であります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は3,056百万円となりました。主な内訳は、利益剰余金2,398百万円であります。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、4,196百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は1,337百万円となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益の計上1,162百万円、契約負債の増加額256百万円、法人税等の支払額265百万円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は70百万円となりました。これは主に、無形固定資産の取得による支出63百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は107百万円となりました。これは主に、配当金の支払額108百万円によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループの事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しております。
b.受注実績
当社グループの事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、記載を省略しております。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績は、次のとおりです。なお、当社グループは法人向けクラウドサービス事業の単一セグメントであるため、セグメント別の販売実績の記載は省略しております。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2024年1月1日
至 2024年12月31日)
販売高(百万円)前年同期比(%)
法人向けクラウドサービス事業3,146-

(注)当連結会計年度の主な相手先の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については次のとおりであります。
相手先当連結会計年度
(自 2024年1月1日
至 2024年12月31日)
金額(百万円)割合(%)
SB C&S株式会社36611.6
ダイワボウ情報システム株式会社35411.3

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。また、当連結会計年度は連結財務諸表作成初年度であるため、前連結会計年度との比較は行っておりません。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成に当たり、連結決算日における財政状態及び会計期間における経営成績に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、この見積りと異なる場合があります。当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(売上高)
売上高に関する認識及び分析・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要」に含めて記載しております。
(営業利益)
当社グループの売上原価は、主にサーバー運用に係る労務費、通信費で構成され、販売費及び一般管理費は、主に人件費、広告宣伝費で構成されております。人件費については、優秀な人材を獲得し、その能力を発揮できる環境を提供することが当社グループの成長に繋がると考えているため、既存の従業員の賃金水準を高めることも含め、積極的に投資をしております。また、広告宣伝費につきましても、サービスの知名度を向上させるため積極的な投資を続けております。
以上の結果、当連結会計年度における営業利益は1,162百万円となりました。
(経常利益)
特に大きな営業外収益、営業外費用は発生しておりません。
以上の結果、当連結会計年度における経常利益は1,162百万円となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
特別損益は発生しておりません。法人税等は322百万円となりました。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は841百万円となりました。
③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。資金需要のうち主なものは、既存サービスの向上及び新規サービス開発に伴う人材採用費及び人件費、サービス知名度向上のための広告宣伝費、並びに新規事業展開のための投資資金であります。必要な資金については自己資金により賄う方針です。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。また、今後の経営成績に影響を与える課題につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。当社グループは経営成績に重要な影響を与えるリスク要因を分散・低減するため、常に市場動向に留意しつつ、内部管理体制の強化、人材の確保及び育成等に努めてまいります。
⑤ 経営者の問題意識と今後の方針について
経営者の問題意識と今後の方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。