有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2023/02/17 15:00
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128項目
(1) 経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態の状況
第6期事業年度(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)
(資産)
当事業年度末における流動資産は7,168,447千円となり、前事業年度末に比べ4,119,661千円増加いたしました。これは主に事業規模の拡大に伴う、税引前当期純利益の増加に加え、自社ECサイト稼働開始による前受金の増加による現金及び預金の増加が2,745,280千円、2022年3月に開催された大型イベントの収益発生に伴う売掛金の増加が968,329千円生じたことによるものであります。固定資産は1,069,674千円となり、前事業年度末に比べ602,290千円増加いたしました。これは主に、オフィスの増床に伴う差入保証金の増加が309,550千円、新規事業の開発に伴うソフトウエア仮勘定の増加が150,336千円、減損損失の計上による一時差異の増加に伴う繰延税金資産の増加が107,682千円生じたことによるものであります。
この結果、総資産は、8,238,121千円となり、前事業年度末に比べ4,721,951千円増加いたしました。
(負債)
当事業年度末における流動負債は4,738,179千円となり、前事業年度末に比べ3,461,188千円増加いたしました。これは主に自社ECサイトの稼働開始に伴ったグッズの受注販売による前受金の増加が2,174,477千円、2022年3月に開催された大型イベントの費用発生に伴う買掛金の増加が1,075,792千円、事業規模拡大と連動した販管費の増加に伴う未払費用の増加が360,416千円生じたことによるものであります。固定負債は42,493千円となり、前事業年度末に比べ16,297千円増加いたしました。これはオフィスの増床に伴い資産除去債務が16,297千円増加したことによるものであります。
この結果、負債合計は、4,780,672千円となり、前事業年度末に比べ3,477,485千円増加いたしました。
(純資産)
当事業年度末における純資産合計は3,457,448千円となり、前事業年度末に比べ1,244,465千円増加いたしました。これは、当期純利益1,244,465千円の計上による利益剰余金の増加によるものであります。
第7期第3四半期累計期間(自 2022年4月1日 至 2022年12月31日)
(資産)
当第3四半期会計期間末における資産合計は、前事業年度末より3,551,173千円増加し、11,789,294千円となりました。これは主に、現金及び預金が2,696,799千円、新スタジオ建設に伴う建設仮勘定が518,918千円、新規事業の開発に伴うソフトウエア仮勘定が483,048千円増加した一方で、2022年3月に開催された大型イベントに関する売掛金の回収に伴い、売掛金が1,031,285千円減少したことによるものであります。
(負債)
当第3四半期会計期間末における負債合計は、前事業年度末より2,270,139千円増加し、7,050,812千円となりました。これは主に、自社ECの受注販売額が増加したことにより前受金が2,342,561千円増加した一方で、2022年3月に開催された大型イベントに関する買掛金の支払いに伴い、買掛金が277,633千円減少したことによるものであります。
(純資産)
当第3四半期会計期間末における純資産合計は、前事業年度末より1,281,033千円増加し、4,738,482千円となりました。これは利益剰余金が1,281,033千円増加したことによるものであります。
② 経営成績の状況
第6期事業年度(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)
当事業年度における国内経済は、夏場にかけて COVID-19 変異株(デルタ株)感染拡大の影響により軟化したものの、後半にかけてはワクチン普及による状況改善及び消費回復等を受けて復調しました。一方で、足許のマクロ経済環境は、新たな COVID-19 変異株(オミクロン株)の流行、国際的なインフレの進行、及びウクライナをめぐる地政学リスク等の影響により先行き不透明感が強くなっています。
このような市場環境のもと、当社はキャラクターIPの開発・運用に係る質的改善、ライブ配信等に係る技術力の向上、及びマーチャンダイジングの拡大等を背景として業績を大きく伸長させました。また、海外事業展開については COVID-19 に関する水際対策強化が一部足枷となったものの、海外イベント出展等の露出強化が国際的なユーザー層の拡大に寄与しました。
以上の結果、当事業年度における売上高は、13,663,728千円と前年同期と比べ7,938,934千円(前年同期比138.7%増)の増収、営業利益は、1,855,171千円と前年同期と比べ156,751千円(前年同期比9.2%増)の増益、経常利益は1,853,978千円と前年同期と比べ148,406千円(前年同期比8.7%増)の増益、当期純利益は1,244,465千円と前年同期と比べ23,714千円(前年同期比1.9%増)の増益となりました。
なお、当社はVTuber事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。
第7期第3四半期累計期間(自 2022年4月1日 至 2022年12月31日)
当社は「つくろう。世界が愛するカルチャーを。」を企業ミッションとしております。日本発のエンターテインメント・カルチャーを作り出し世界中のユーザーに広めていくことにより、日本のユニークな強みであるアニメ、ゲームといった文化に関わるクリエイターの活動の場を増やしていくことを目指しております。当第3四半期累計期間における国内経済は、前期に引き続き、新型コロナウィルス感染症、国際的なインフレの進行及びウクライナをめぐる地政学リスク等の影響により先行き不透明感が強くなっておりますが、当社では現在の経済環境に適応した事業運営を進めております。
2022年12月末時点でホロライブプロダクションのVTuber在籍数は71名(言語地域別で日本が48名、インドネシアが9名、英語圏が14名)となっており、そのうち31名はYouTubeのチャンネル登録数が100万登録を超える幅広い支持を得ていると認識しております。ホロライブプロダクション所属VTuberのYouTubeチャンネル登録数は延べ7,200万登録を超えており、当社には日本、北米、東南アジア地域における登録数トップのVTuberをはじめ、登録数ランキング上位のVTuberが数多く所属しております。
VTuber IPはライブ配信をコンテンツ供給の媒体とすることにより、ゲームやアニメといった媒体のキャラクターIPと比較して相対的に低コストで継続的な視聴者との接点を持つことができる独自性を有していると考えられます。これにより高まったIPの影響力をより多様で収益性の高い関連商品・サービスの提供に繋げていくことにより、今後も継続的な事業の成長と収益性の向上の両面を目指します。
このような状況のもと、当第3四半期累計期間の経営成績は、売上高12,802,099千円、営業利益1,734,609千円、経常利益1,727,539千円、四半期純利益1,281,033千円となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
第6期事業年度(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、4,644,695千円と前年同期と比べ2,745,280千円の増加となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とその要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において、営業活動により獲得した資金は3,537,470千円(前年同期は1,419,291千円)となりました。
これは、主に事業規模の拡大に伴う、税引前当期純利益1,641,155千円の計上、2022年3月期に開催された、大型イベントの費用発生に伴う仕入債務の増加1,075,792千円に加え、自社運営ECサイトの運営開始に伴う、グッズ販売受注時に受領する前受金の増加2,174,477千円が発生した一方、大型イベントの収益発生に伴う売上債権の増加968,329千円が発生したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において、投資活動により使用した資金は、793,940千円(前年同期は△402,594千円)となりました。
これは、オフィスの増床に伴う建物附属設備、工具器具備品といった有形固定資産の取得による支出327,874千円、新規事業開発を目的としたソフトウエア開発や、商標権を始めとした知的財産権の取得による無形固定資産支出の156,515千円、オフィス増床に伴う敷金の差入による差入保証金の差入による支出309,550千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により増減した資金はありません(前年同期は526,881千円)。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社は生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。
b.仕入実績
当事業年度の仕入実績は、次のとおりであります。
サービスの名称仕入高(千円)
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
前期比(%)
マーチャンダイジング1,472,526346.6
合計1,472,526346.6

(注) 当社はVTuber事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。
c.受注実績
当社は概ね受注から役務提供までの期間が短いため、受注実績に関する記載を省略しております。
d.販売実績
当事業年度における販売実績を主要サービスごとに示すと次のとおりであります。
サービスの名称販売高(千円)
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
前期比(%)
配信/コンテンツ5,249,683199.3
ライブ/イベント2,203,839270.5
マーチャンダイジング4,832,311261.6
ライセンス/タイアップ1,377,894321.5
合計13,663,728238.7

(注) 1.当社はVTuber事業の単一セグメントであるため、上記ではサービス別の販売実績を記載しております。
2.最近2事業年度及び第7期第3四半期累計期間の主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は以下のとおりであります。
相手先前事業年度
(自 2020年4月1日
至 2021年3月31日)
当事業年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
第7期第3四半期累計期間
(自 2022年4月1日
至 2022年12月31日)
販売高(千円)割合(%)販売高(千円)割合(%)販売高(千円)割合(%)
Google LLC2,415,10742.14,659,36034.13,939,33430.8
ピクシブ株式会社1,583,74827.63,733,09127.3277,1932.2
Shopify Inc.--327,6522.35,129,33840.1

(注)1. Google LLCは動画配信プラットフォーム提供会社であります。
2. ピクシブ株式会社及びShopify Inc.は当社のグッズ販売プラットフォームの提供会社であります。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
財務諸表の作成において適用する会計基準等につきましては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項」の(重要な会計方針)、(重要な会計上の見積り)に記載のとおりです。
② 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
第6期事業年度(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)
(売上高)
当事業年度の売上高は、13,663,728千円(前年同期比138.7%増)となりました。
主な要因は、所属VTuber数の増員及び国内外を含めたYouTubeチャンネル登録者数の増加を背景とした、配信/コンテンツサービスの売上増2,615,812千円に加え、キャラクターグッズのラインナップ強化や、ファンベースの拡大によるグッズ販売の促進に伴うマーチャンダイジングサービスの売上増2,984,840千円によるものです。
(売上原価、売上総利益)
当事業年度の売上原価は、8,388,956千円(前年同期比184.6%増)となりました。
主な要因は、所属するVTuberへのサポート体制の拡充や、グッズ、デジタルグッズの販売拡大への対応、ライブイベントの開催に伴う費用の増加によるものです。
この結果、売上総利益は5,274,772千円(前年同期は2,777,241千円)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当事業年度の販売費及び一般管理費は、3,419,600千円(前年同期比217.0%増)となりました。
主な要因は、グッズの販売に関する諸経費、オフィス移転に伴う地代家賃、事業規模拡大に伴う人件費、支払報酬等の増加によるものです。この結果、営業利益は、1,855,171千円(前年同期は1,698,419千円)となりました。
(営業外収益、営業外費用及び経常利益)
当事業年度において、営業外収益は15,995千円、営業外費用は17,188千円発生しました。
主な要因は、企業案件のキャンセルに伴う受取補償金13,131千円、支払和解金15,888千円が発生したことによるものです。この結果、経常利益は、1,853,978千円(前年同期は1,705,571千円)となりました。
(特別損益、当期純利益)
当事業年度において、事務所移転の意思決定に伴う減損損失が特別損失として、211,483千円発生しました。
税金費用(法人税、住民税及び事業税並びに法人税等調整額)を396,690千円計上した結果、当期純利益は1,244,465千円(前年同期は1,220,751千円)となりました。
なお、財政状態の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態の状況」に、キャッシュ・フローの状況については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
第7期第3四半期累計期間(自 2022年4月1日 至 2022年12月31日)
(売上高)
当第3四半期累計期間の売上高は、12,802,099千円となりました。
主な内訳として、VTuber IPによる配信/コンテンツサービスの安定的な売上計上4,598,139千円に加え、IPを活用したコマース展開により、マーチャンダイジングサービス売上5,262,967千円、ライセンス/タイアップサービス売上1,699,675千円に成長しております。
(売上原価、売上総利益)
当第3四半期累計期間の売上原価は、7,058,844千円となりました。
主な内訳は、所属するVTuberへの報酬の支払いや、グッズの製造原価、ライブ、イベントの製作費用等によるものです。
この結果、売上総利益は、5,743,255千円となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当第3四半期累計期間の販売費及び一般管理費は、4,008,645千円となりました。
主な内訳は、グッズの販売に関する諸経費、オフィス移転に伴う地代家賃、人件費、業務委託費用によるものです。
この結果、営業利益は、1,734,609千円となりました。
(営業外収益、営業外費用及び経常利益)
当第3四半期累計期間において、営業外収益は6,790千円、営業外費用は13,860千円発生しました。
主な要因は、為替差益5,974千円、支払和解金11,557千円が発生したことによるものです。
この結果、経常利益は、1,727,539千円となりました。
(特別損益、四半期純利益)
当第3四半期累計期間において、固定資産の売却に伴う固定資産売却損が特別損失として、2,574千円発生しました。
税金費用(法人税、住民税及び事業税並びに法人税等調整額)を443,931千円計上した結果、四半期純利益は1,281,033千円となりました。
③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社の事業年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社の運転資金需要のうち主要なものは、所属VTuberへの報酬やグッズ制作原価等の売上原価の他、人件費や地代家賃、グッズ販売に伴う倉庫費用や決済手数料等の販売費及び一般管理費といった営業費用であります。
投資を目的とした資金需要は、配信用スタジオの設備更新や新規事業・新規サービスの開発費用等であります。
当社は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、短期運転資金及び設備投資資金共に自己資金での運用を基本としておりますが、資金繰りが悪化する傾向が見受けられる場合には、金融機関による借入やエクイティファイナンスによる外部からの資金調達についても資金需要の額や用途、当該タイミングにおける金利及び資本コストを比較した上で実施する想定です。
なお、第6期事業年度末(2022年3月31日)における現金及び現金同等物の残高は4,644,695千円となっております。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおり、当社の経営成績に影響を与えるおそれがあるリスクが存在していることを認識しております。
これらリスク要因の発生を回避するためにも、運営する事業の強化、人員増強、財務基盤の安定化等、継続的な経営基盤の強化が必要であるものと認識し、実行に努めております。
⑤ 経営者の問題意識と今後の方針について
経営者の問題意識と今後の方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
⑥ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な経営指標等」に記載のとおり、主な経営指標としてYouTubeチャンネル登録数、売上高、サービス別売上高を経営上重要な指標として位置付けております。
当社ではYouTube等の動画配信プラットフォームを通じて、所属VTuberによる高頻度なライブ配信、3Dモーション・キャプチャー・スタジオを用いたバーチャルライブ・コンサート、IPアセットを用いたアニメーション・コンテンツ等の供給を行うことに加え、二次創作ガイドラインを定めた上でファンによる二次創作活動を幅広く奨励しております。この結果、当社のVTuberは幅広いファンからの支持を得ていると認識しており、当社が保有するホロライブプロダクションのYouTubeチャンネル登録数は延べ7,200万登録を超えました。こうした大きなファンベースの存在が魅力的な演者や国内外の主要なクリエイターとの継続的な共創を可能としております。
YouTubeチャンネル登録数の推移
(単位:人)
2021年3月期2022年3月期2023年3月期
第3四半期
37,325,40061,377,80072,383,700

サービス別売上の推移
(単位:千円)
サービスの名称2021年3月期2022年3月期2023年3月期
第3四半期
配信/コンテンツ2,633,8705,249,6834,598,139
ライブ/イベント814,8662,203,8391,241,317
マーチャンダイジング1,847,4714,832,3115,262,967
ライセンス/タイアップ428,5851,377,8941,699,675
合計5,724,79413,663,72812,802,099