有価証券報告書-第8期(2024/04/01-2025/03/31)

【提出】
2025/06/25 16:00
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【項目】
140項目
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。なお、当連結会計年度において、企業結合に係る暫定的な会計処理の確定を行っており、前連結会計年度に係る各数値については、暫定的な会計処理の確定による取得原価の当初配分額の重要な見直しが反映された後の金額によっております。
(1) 経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における国内経済は、雇用・所得環境の改善やインバウンド消費の拡大等により、景気は緩やかな回復基調で推移いたしました。一方、国内の慢性的な人手不足や中東情勢の地政学的リスク、急激な為替相場の変動等により、依然として先行き不透明な状況が続いております。
当社事業を取り巻く環境は、世界的な異常気象や円安に伴う原材料高、物流費の上昇、包装資材の価格高騰などを背景とした食品の値上げが相次いだことで、消費者の節約志向は継続しております。
このような経済環境の中、当社グループは、2023年12月に刷新いたしました中期経営計画の達成に向け、国内・既存事業の更なる強化に留まらず、海外市場や新規領域へ積極的に展開し、多様な事業ポートフォリオの構築に取り組んでまいりました。その具体施策といたしまして、前連結会計年度のオランダ進出による本格的な海外展開に続き、当連結会計年度におきましては、新規事業として取り組んできたきのこを主原料とした代替肉「キノコのお肉」を発売いたしました。
この大きな転換期を迎えるにあたり、当社は、2024年6月26日開催の第7期定時株主総会におきまして商号の変更による定款一部変更議案の承認をいただき、2025年4月1日よりユキグニファクトリー株式会社(英文商号:YUKIGUNI FACTORY CO.,LTD.)に社名(コーポレートブランド)を刷新いたしました。自らのコアバリュー・独自性を改めて見直し、引き継いでいくべき伝統と信頼、そして未来に向かってあるべき姿を見据え、その想いと決意を胸に、このたび相応しい社名に一新いたしました。なお、今回の商号変更に至った背景、新たな価値観、ブランド構成イメージ等につきましては、当社ホームページをご覧ください。
当社グループは、引き続き、これまでの「雪国」において磨き上げてきた技術や探求心、伝統と信頼を引き継いで、自然の恩恵であるきのこが持つあらゆる可能性を追求し、新たな価値を提供し続けることで世界の健康に貢献してまいります。
当連結会計年度におきましては、野菜の価格高騰等を背景にきのこへの需要が高まる中、当社は、強みである豊富なラインアップを活かした製品戦略の展開等によりその需要に応え、前連結会計年度を上回る単価水準を実現いたしました。
以上の結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は、次のとおりとなりました。
a.財政状態
当連結会計年度末(2025年3月31日時点)の資産合計は、37,868百万円(前連結会計年度末に比べ391百万円減)となりました。流動資産は、11,501百万円(同886百万円増)となりました。これは主に、現金及び現金同等物が1,105百万円、棚卸資産が362百万円増加した一方、営業債権及びその他の債権が721百万円減少したこと等によるものであります。非流動資産は、26,367百万円(同1,277百万円減)となりました。これは主に、有形固定資産が1,837百万円減少した一方、繰延税金資産が731百万円増加したこと等によるものであります。
当連結会計年度末の負債合計は、25,343百万円(同1,306百万円減)となりました。流動負債は、9,502百万円(同223百万円増)となりました。これは主に、営業債務及びその他の債務が683百万円減少した一方、未払法人所得税が430百万円、従業員給付に係る負債が373百万円それぞれ増加したこと等によるものであります。非流動負債は、15,841百万円(同1,529百万円減)となりました。これは主に、約定返済により借入金が1,421百万円減少したこと等によるものであります。
当連結会計年度末の資本合計は、12,525百万円(同914百万円増)となりました。これは主に、親会社の所有者に帰属する当期利益1,502百万円の計上及び剰余金の配当518百万円の支払いを実施したことにより利益剰余金が929百万円増加したこと等によるものであります。
b.経営成績
当連結会計年度の収益は53,139百万円(前連結会計年度比11.9%増)、このうち、売上収益は37,102百万円(同10.9%増)となりました。うち茸事業の売上収益は36,779百万円(同11.0%増)となりました。季節のイベントに合わせた商品ラベルや売り場の改善を通じ、消費者の購買意欲を刺激したことに加え、野菜の生育不良を背景とした野菜の価格高騰に伴うきのこへの需要拡大が後押しとなり市場取引価格は前連結会計年度より高い水準で推移いたしました。一方、世界的なインフレによる原材料価格高騰や労働環境の変化に伴う労務費の上昇が原価押し上げ要因となり、売上原価は39,487百万円(同10.1%増)、売上総利益は13,651百万円(同17.5%増)となりました。販売費及び一般管理費は、労務費や販売手数料、運賃などが増加し、9,550百万円(同7.9%増)となりました。
また、当社が業績を評価する上で有用な指標であるとしているコア営業利益は3,858百万円(同50.3%増)、コアEBITDAは6,196百万円(同29.0%増)と、いずれも前連結会計年度を上回る結果となりました。(「コア営業利益」等の定義については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (参考情報)」を参照ください。)
なお、当社では、IFRS農業会計(IAS第41号)の適用に伴い、きのこ製品で構成される生物資産を売却費用控除後の公正価値で測定しており、当該公正価値の変動による利益又は損失が、連結損益計算書の「公正価値変動による利得」に含まれております。当連結会計年度においては、IAS第41号「農業」の適用に関する公正価値変動による利得が、収益に16,037百万円、売上原価に15,758百万円、それぞれ含まれております。
当連結会計年度における事業セグメント別の売上収益の状況は、次のとおりであります。
[茸事業]
(ⅰ) まいたけ
ヘルシー且つ旨味成分豊富なまいたけを、消費者の皆様のニーズに合わせ手軽に美味しく調理していただけるよう、他食品メーカーとの共同企画により、季節に応じた幅広いメニュー提案を展開する等、まいたけの魅力や調理の汎用性の高さを訴求した販売施策に取り組み、需要拡大を推進しております。また、当社の強みである豊富な商品ラインアップを活かし、店頭シェアの拡大及びプレミアムブランド戦略の強化に努めてまいりました。これにより、前年同期に比べ販売量、販売単価はいずれも上回りました。この結果、まいたけ事業の売上収益は、20,055百万円(前年同期比8.6%増)となりました。
(ⅱ) エリンギ
小型パックから大型パックまで各種量目を取り揃えた定番トレー製品をはじめ、利便性の高いスライス製品等、お客様ニーズに応じた多様な商品提案に取り組んでおります。これにより、前年同期に比べ販売量は減少いたしましたが、販売単価は上回りました。この結果、エリンギ事業の売上収益は、3,822百万円(同6.5%増)となりました。
(ⅲ) ぶなしめじ
青果市況と市場の動向を注視しながら、需給バランスに応じて1株製品と2株製品といった量目の異なる製品を活用した柔軟な製品投入を実施し、安定供給に取り組んでおります。これにより、販売量はほぼ前年並みとなりましたが、販売単価は上回りました。この結果、ぶなしめじ事業の売上収益は、7,563百万円(同10.5%増)となりました。
(ⅳ) その他の茸
マッシュルームは、生産状況の安定化に注力するとともに、販促企画の実施等により販売強化及び新たな需要創造に取り組んでおります。これにより、前年同期に比べ販売は伸長しました。また、海外事業会社で扱うマッシュルーム、エキゾチック・マッシュルームの売上収益を本セグメントに含めております。この結果、その他の茸事業の売上収益は、5,337百万円(同25.9%増)となりました。
[その他]
その他の売上収益は、主に健康食品の販売及び瑞穂農林株式会社が取り扱う培地活性剤によるものであります。また、2025年2月に販売を開始いたしました新規事業製品「キノコのお肉」シリーズの売上収益も、当連結会計年度より本セグメントに含めております。この結果、その他の売上収益は、322百万円(同4.1%増)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ1,105百万円増加し、3,903百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(ⅰ) 営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動の結果獲得した資金は、5,519百万円(前期は5,322百万円の獲得)となりました。これは主に、減価償却費及び償却費2,347百万円や税引前利益2,175百万円、減損損失1,599百万円、営業債権及びその他の債権の減少額685百万円等の計上があった一方、法人所得税の支払い964百万円、営業債務及びその他の債務の減少額556百万円があったこと等によるものであります。
(ⅱ) 投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動の結果使用した資金は、2,252百万円(前期は3,361百万円の使用)となりました。これは主に、生産設備の増強・更新等に伴う有形固定資産の取得による支出2,205百万円があったこと等によるものであります。
(ⅲ) 財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動の結果使用した資金は、2,159百万円(前期は227百万円の使用)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出1,431百万円や配当金の支払額520百万円、リース負債の返済による支出207百万円があったこと等によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(単位:百万円)
セグメントの名称当連結会計年度
(自2024年4月1日
至2025年3月31日)
前年同期比(%)
茸事業46,43718.2
その他--
合計46,43718.2

(注) 1.生産実績は、販売価格にて算定しております。
2.上記生産実績は国内における茸事業を算定しております。
3.その他セグメントは生産活動によらない事業を含むため記載を省略しております。
b.受注実績
当社グループは主に見込み生産を行っており、当連結会計年度における受注実績の重要性が乏しいため記載を省略しております。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(単位:百万円)
セグメントの名称当連結会計年度
(自2024年4月1日
至2025年3月31日)
前年同期比(%)
茸事業まいたけ20,0558.6
エリンギ3,8226.5
ぶなしめじ7,56310.5
その他の茸5,33725.9
その他3224.1
合計37,10210.9

(注) 1.茸事業のその他の茸には、マッシュルーム、本しめじ、はたけしめじ、海外事業等の売上収益が含まれております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績については、連結売上収益10%以上に該当する販売先がないため、その記載を省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(ⅰ) 資産
資産につきましては、当連結会計年度末37,868百万円となり、前連結会計年度末に比べ391百万円減少いたしました。これは主に、現金及び現金同等物や棚卸資産が増加したこと等により、流動資産が886百万円増加した一方、有形固定資産が減少したこと等により、非流動資産が1,277百万円減少したことによるものであります。
(ⅱ) 負債
負債につきましては、当連結会計年度末25,343百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,306百万円減少いたしました。これは主に、未払法人所得税や従業員給付に係る負債が増加したこと等により、流動負債が223百万円増加した一方、約定返済により借入金が減少したこと等により、非流動負債が1,529百万円減少したことによるものであります。また、結果として当連結会計年度末時点のレバレッジ・レシオ(連結総有利子負債/直前12カ月のコアEBITDA)は2.7倍となっております。
(ⅲ) 資本
資本につきましては、当連結会計年度末12,525百万円となり、前連結会計年度末に比べ914百万円増加いたしました。これは主に、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上及び剰余金の配当の支払いを実施したことにより利益剰余金が929百万円増加したこと等によるものであります。
経営成績の分析につきましては、前記「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」を参照ください。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に関する情報
キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容につきましては、前記「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」を参照ください。
資本の財源及び資金の流動性に関する情報につきましては、当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。当社グループの主な資金の源泉は、営業活動によるキャッシュ・フロー及び金融機関からの借入金となります。
設備投資等の長期資金需要は、自己資金又は金融機関からの長期借入金等により賄い、運転資金等の短期資金需要は、主に自己資金にて賄っており、必要に応じて金融機関からの短期借入金にて調達しております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたりましては、決算日における財政状態、報告期間における経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える見積り・予測を必要としております。当社グループは、過去の実績や状況を踏まえ、合理的と判断される前提に基づき、継続してこの見積り・予測の評価を実施しております。なお、重要な会計上の見積りとした項目は「生物資産の測定」、「非金融資産の減損」及び「確定給付債務の測定」であり、見積りの詳細及び当該見積りに用いた仮定は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (4) 見積り及び判断の利用」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針」に記載のとおりであります。
これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果はこれらと異なる場合があります。
(参考情報)
当社グループは、経営成績の推移を把握するために、以下の算式により算定されたコア営業利益、コアEBITDA及びコアEBITDAマージンを、重要な経営指標として位置づけております。
コア営業利益、コアEBITDA及びコアEBITDAマージンは、次のとおりであります。
なお、中期経営計画における定量目標については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中長期的な経営戦略等」に記載しております。
(単位:百万円)
回次国際会計基準
第7期第8期
決算年月2024年3月2025年3月
売上収益33,44337,102
営業利益2,7982,419
(調整額)
- IAS第41号「農業」適用による影響額 (注) 4△404△242
- その他の収益及び費用 (注) 5△351,681
- 一時的な収益及び費用 (注) 6208-
調整額小計△2311,438
コア営業利益 (注) 1、72,5673,858
(調整額)
+ 減価償却費及び償却費
2,2352,337
コアEBITDA (注) 2、74,8026,196
コアEBITDAマージン(%) (注) 3、714.416.7


(注) 1.コア営業利益=営業利益 - IAS第41号「農業」適用による影響額 - その他の収益及び費用 - 一時的な収益及び費用
2.コアEBITDA=コア営業利益 + 減価償却費及び償却費
3.コアEBITDAマージン=コアEBITDA ÷ 売上収益
4.IAS第41号「農業」適用による影響額とは、IAS第41号「農業」を適用し、きのこの生産工程である仕込みから収穫時までのきのこを生物資産として、売却費用控除後の公正価値で測定するものであり、当該公正価値の変動による利得及び損失を影響額としております。
5.その他の収益及び費用とは、主に減損損失、固定資産除却損等となります。
6.一時的な収益及び費用とは、通常の営業活動では発生しない一過性の収益及び費用となります。2024年3月期においては、2023年12月4日付にて実施いたしました海外事業会社の株式取得に関する費用を一時的な費用としております。2025年3月期においては、一時的な収益及び費用の発生はありません。
7.コア営業利益、コアEBITDA及びコアEBITDAマージンは国際会計基準により規定された指標ではなく、投資家が当社グループの業績を評価する上で、当社グループが有用であると考える財務指標であります。当該財務指標は、非経常的損益項目及び競合他社に対する当社グループの業績を適切に示さない項目の影響を除外しております。なお、コア営業利益、コアEBITDA及びコアEBITDAマージンは、国際会計基準に準拠して表示された他の指標の代替的指標として考慮されるべきではありません。当社グループにおけるコア営業利益、コアEBITDA及びコアEBITDAマージンは、同業他社の同指標あるいは類似の指標とは算定方法が異なるために、他社における指標とは比較可能でない場合があり、その結果、有用性が低下する可能性があります。