有価証券報告書-第129期(2025/04/01-2026/03/31)
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりである。
① 経営成績の状況
売上高は、建設事業の売上高増加により、前連結会計年度比5.3%増の3兆672億円(前連結会計年度は2兆9,118億円)となった。
利益については、建設事業の売上総利益の向上を主因に、営業利益は前連結会計年度比58.5%増の2,407億円(前連結会計年度は1,518億円)、経常利益は同49.6%増の2,404億円(同1,606億円)、親会社株主に帰属する当期純利益は同40.9%増の1,773億円(同1,258億円)となった。
セグメントごとの経営成績は次のとおりである。(セグメントの経営成績については、セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載している。)
a 土木事業
(当社における建設事業のうち土木工事に関する事業)
売上高は、大型工事を中心に施工が着実に進捗したことから、前連結会計年度比6.6%増の4,307億円(前連結会計年度は4,041億円)となった。
営業利益は、売上総利益率が大幅に向上したことを主因に、前連結会計年度比114.9%増の767億円(前連結会計年度は357億円)となった。
b 建築事業
(当社における建設事業のうち建築工事に関する事業)
売上高は、竣工工事を中心に大型工事の施工量が増加し、前連結会計年度比12.3%増の1兆1,829億円(前連結会計年度は1兆534億円)となった。
営業利益は、売上高の増加に加え、売上総利益率も向上したことから、前連結会計年度比62.6%増の832億円(前連結会計年度は512億円)となった。
c 開発事業等
(当社における不動産開発全般に関する事業及び意匠・構造設計、その他設計、エンジニアリング全般の事業)
当連結会計年度に複数の不動産開発物件を販売したものの、収益性の高い大型プロジェクトの販売、引渡しがあった前連結会計年度と比べ売上高、売上総利益が減少し、売上高は前連結会計年度比5.8%減の964億円(前連結会計年度は1,023億円)、営業利益は同36.8%減の176億円(同278億円)となった。
d 国内関係会社
(当社の国内関係会社が行っている事業であり、主に日本国内における建設資機材の販売、専門工事の請負、総合リース業、ビル賃貸事業等)
当連結会計年度は、建設事業における売上高の増加及び売上総利益率の向上に加え、開発系関係会社が保有する販売用不動産の売却により、売上高、営業利益が増加し、売上高は前連結会計年度比16.9%増の4,146億円(前連結会計年度は3,546億円)、営業利益は同118.1%増の357億円(同164億円)となった。
e 海外関係会社
(当社の海外関係会社が行っている事業であり、北米、欧州、アジア、大洋州などの海外地域における建設事業、開発事業等)
売上高は、建設事業売上高が増加したものの、米国における開発物件の売却が減少したことを主因に、前連結会計年度比2.0%減の1兆919億円(前連結会計年度は1兆1,145億円)となった。
営業利益は、開発事業等の売上総利益が減少した一方で、建設事業における売上総利益率の向上を主因に、前連結会計年度比32.8%増の266億円(前連結会計年度は200億円)となった。
② 財政状態の状況
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末比1,697億円増加し、3兆6,243億円(前連結会計年度末は3兆4,545億円)となった。これは、投資有価証券の増加812億円、受取手形・完成工事未収入金等の増加508億円、現金預金の増加488億円及び有形固定資産の増加287億円があった一方で、棚卸資産(販売用不動産、未成工事支出金、開発事業支出金及びその他の棚卸資産)の減少680億円があったこと等によるものである。なお、政策保有株式については、当連結会計年度に23銘柄を210億円で売却した一方で、株価変動等により保有時価が716億円増加したため、当連結会計年度末の残高は3,041億円(前連結会計年度末は2,535億円)、純資産に対する比率は21.2%(前連結会計年度末は19.8%)となった。
負債合計は、前連結会計年度末比115億円増加し、2兆1,881億円(前連結会計年度末は2兆1,766億円)となった。これは、有利子負債残高※の増加411億円及び未払法人税等の増加287億円があった一方で、支払手形・工事未払金等の減少953億円があったこと等によるものである。なお、有利子負債残高は、8,331億円(前連結会計年度末は7,920億円)となった。
純資産合計は、株主資本1兆1,040億円、その他の包括利益累計額3,109億円、非支配株主持分212億円を合わせて、前連結会計年度末比1,582億円増加の1兆4,362億円(前連結会計年度末は1兆2,779億円)となった。
また、自己資本比率は、前連結会計年度末比2.6ポイント好転し、39.0%(前連結会計年度末は36.4%)となった。
(注) ※短期借入金、コマーシャル・ペーパー、社債(1年内償還予定の社債を含む)及び長期借入金の合計額
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、1,146億円の収入超過(前連結会計年度は306億円の収入超過)となった。これは、税金等調整前当期純利益2,553億円に減価償却費334億円等の調整を加味した収入に加えて、未払又は未収消費税等の増減573億円の収入があった一方で、仕入債務の減少974億円、売上債権の増加645億円、法人税等の支払額525億円並びに未成工事受入金及び開発事業等受入金の減少262億円の支出があったこと等によるものである。
投資活動によるキャッシュ・フローは、465億円の支出超過(前連結会計年度は1,048億円の支出超過)となった。これは、有形固定資産の取得による支出505億円、貸付けによる支出365億円及び投資有価証券の取得による支出183億円があった一方で、投資有価証券の売却等による収入352億円及び貸付金の回収による収入342億円があったこと等によるものである。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額540億円及び自己株式の取得による支出200億円があった一方で、短期借入金、長期借入金、コマーシャル・ペーパー及び社債による資金調達と返済の収支が464億円の収入超過となったこと等により、305億円の支出超過(前連結会計年度は616億円の収入超過)となった。
これらにより、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末から427億円増加し、3,922億円(前連結会計年度末は3,495億円)となった。
④ 生産、受注及び販売の実績
当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため、また、受注高について当社グループ各社の受注概念が異なるため、「生産の実績」及び「受注の実績」は記載していない。
売上実績
(注) 1 売上実績においては、「外部顧客への売上高」について記載している。
2 前連結会計年度及び当連結会計年度ともに売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。
[参考]提出会社単独の受注高及び売上高の状況
a 受注高、売上高及び繰越高
(注) 1 前事業年度以前に受注したもので、契約の更改により請負金額に変更があるものについては、当期受注高にその増減額を含む。したがって、当期売上高にもかかる増減額が含まれる。
2 期末繰越高は、(期首繰越高+当期受注高-当期売上高)である。
b 受注工事高
c 受注工事高の受注方法別比率
建設工事の受注方法は、特命と競争に大別される。
(注) 百分比は請負金額比である。
d 完成工事高
(注) 1 前事業年度及び当事業年度ともに完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。
2 当事業年度の完成工事のうち主なものは、次のとおりである。
(※) 当社からの受注高は完成工事高に含んでいない。
e 繰越工事高(2026年3月31日現在)
(注) 繰越工事のうち主なものは、次のとおりである。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り当連結会計年度末現在において判断したものである。
① 経営成績及び財政状態の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績は、国内建設事業(土木事業・建築事業)の順調な工事進捗と売上総利益率向上を主因に、5期連続で前連結会計年度比増収増益を達成し、売上高(3兆672億円)、営業利益(2,407億円)、経常利益(2,404億円)、親会社株主に帰属する当期純利益(1,773億円)はいずれも過去最高となった。ROEは13.3%となり、前連結会計年度の10.2%から向上した。国内建設事業については、適切な施工体制や採算性を確保した工事受注や、最適な施工計画に沿った安全、品質、コストに対する組織的な管理体制が有効に機能しており、各工事の収益性向上につながっている。
業績予想との比較では、売上高が増加し、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益も業績予想を上回った。
当連結会計年度の経営成績(連結業績予想との対比) (単位:百万円)
財政状態については、当連結会計年度末の資産合計が前連結会計年度末比1,697億円増加し、3兆6,243億円となった。国内外の不動産開発物件の売却などにより開発事業資産(販売用不動産及び開発事業支出金)が減少した一方で、建設事業における売上債権(受取手形・完成工事未収入金等)が増加している。また、サプライチェーン強化に向けた工事代金の支払早期化や不動産開発投資に伴う今後の資金需要に対して、国内金利の上昇を見据え、先行して長期資金調達を実施したことから、現金預金が一時的に増加している。投資有価証券のうち政策保有株式については、中長期的な縮減に向けて、保有する株式のうち23銘柄を210億円で売却したものの、株価変動等により保有株式の時価が716億円増加したことを主因に、前連結会計年度末比505億円増加し、当連結会計年度末の残高は3,041億円、純資産に対する比率は21.2%となった。中期経営計画に掲げた政策保有株式の残高縮減目標(2027年3月期末までに連結純資産の20%未満)の達成に向け引き続き縮減を進めていく。連結自己資本は、保有株式の株価上昇などにより、その他有価証券評価差額金が413億円増加したことに加え、1,700億円を上回る親会社株主に帰属する当期純利益の計上に伴い前連結会計年度末から1,568億円増加の1兆4,150億円、自己資本比率は39.0%となった。連結有利子負債残高は、国内外の不動産開発投資における外部資金活用などにより前連結会計年度末から411億円増加し、8,331億円となったものの、D/Eレシオは0.59倍であり、財務の健全性は十分に維持できていると考えている。
経営成績に重要な影響を与える主な要因は、国内外の建設事業及び開発事業における需要やコストの急激な変動等に伴う事業環境の変化である。当連結会計年度において、国内建設需要は、底堅い公共投資と民間企業の旺盛な設備投資により高い水準を維持しており、供給可能な施工量を上回る需要を背景に受注競争の緩和傾向が継続している。海外における建設需要は、AI・デジタル関連投資が拡大していることに加え、景気の影響を受けにくい医療福祉・教育関連施設等の需要も堅調である。コストに関しては、国内外ともに資機材価格は総じて高い価格水準に留まっており、労務費にも上昇の傾向が見られるため、動向を注視した適切な対応が必要と考えている。また、国際情勢の緊迫化や通商政策の動向が事業環境に大きな影響を及ぼす不安定な状況が継続していることから、早期の情報収集に努め、その結果を踏まえた対策を事前に講じることが重要になると認識している。
今後については、国内建設需要が当面、高い水準で推移することが予想されるため、旺盛な需要に応えられる施工体制を確保したうえで、安全、環境、品質、工程、コストを守る組織的な管理を徹底するとともに、AI・デジタル技術を積極的に活用した施工の自動化、遠隔管理化などによる建設プロセスの生産性向上を推進していく。また、長期的には建設技能労働者が減少していく見通しであることから、賃金・休暇等の処遇改善を推進するとともに、工事代金の支払早期化など、協力会社の財務基盤強化に対する支援を通じて、強固なサプライチェーンの構築に取り組んでいる。国内外の開発事業においては、地政学的リスクの高まりや各国・地域の通商・金融政策が事業環境に与える影響を慎重に見極めつつ、資本効率性と財務健全性を考慮した丁寧な投資判断を徹底し、時機を捉えた不動産開発物件の売却などにより収益力向上を図っていく。
セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりである。
a 土木事業
(当社における建設事業のうち土木工事に関する事業)
売上高は、最盛期を迎えた大型工事を中心に施工が着実に進捗したことなどから前連結会計年度を上回る4,307億円となった。2027年3月期についても、最盛期にある大型工事が継続することに加え、短工期の大型工事が進捗することを踏まえ4,800億円を予想し、それ以降も4,000億円から4,500億円程度の水準が継続すると見込んでいる。売上総利益率に関しては、大型工事における大規模な追加・設計変更の獲得が重なったことから、前連結会計年度の利益率(15.4%)を大きく上回る24.6%となった。2027年3月期についても、施工が継続している各工事の収益性は引き続き高い水準にあり、売上総利益率は20.4%になると予想している。
土木事業における建設需要は、インフラ更新などの国土強靭化に関連した分野や、電力需要の増加に対応するエネルギー分野などの需要拡大が続き、今後も安定的に推移すると考えている。
b 建築事業
(当社における建設事業のうち建築工事に関する事業)
売上高は、複数の大型竣工工事が順調に進捗したことを主因に、前連結会計年度比増収の1兆1,829億円となった。2027年3月期は、売上高が伸びない施工初期段階の工事が多く、減収となる1兆500億円を予想している。売上総利益率は、受注時利益率の向上が緩やかながら継続したことに加え、施工中のリスク管理徹底により各工事の収益性が向上したことから、前連結会計年度の9.6%から11.8%に上昇した。2027年3月期は、竣工工事による利益の押し上げが少ない時期に当たるものの、建設コストの上昇リスクを一定程度織り込んだうえで、売上総利益率は12.0%に向上すると見込んでいる。
競争環境は、高い水準の建設需要を背景に緩和状態にあり、受注時の利益率は改善傾向が継続している。適切な施工体制の確保に向けたサプライチェーン強化に取り組みつつ、技術力や提案力を軸とした顧客のニーズに応える工事受注を徹底することにより、売上総利益率の維持、向上を図っていく。
c 開発事業等
(当社における不動産開発全般に関する事業及び意匠・構造設計、その他設計、エンジニアリング全般の事業)
開発事業等の売上高は、複数のオフィスビルなどの売却により、前連結会計年度と概ね同水準を確保したものの、営業利益は、大型分譲マンションの販売、引渡しがあった前連結会計年度から減少した。
2027年3月期については、不動産販売事業において、引き続き複数物件の売却を計画していることに加え、高い稼働率を確保している不動産賃貸物件の収益性が向上することから、売上高、営業利益ともに当連結会計年度を上回る見通しである。国内の不動産開発事業は、中期経営計画(2024~2026)の投資計画に基づき、レパートリー拡充、優良資産の積み上げによる収益源の多様化及び収益機会の拡大を目指している。建設コスト上昇や金融環境の変化を踏まえ、事業リスクの低減と資本効率性の向上を両立させる取組みを推進しており、当連結会計年度において、外部資金の積極的活用を企図した大型プロジェクトの共同事業化が実現している。
d 国内関係会社
(当社の国内関係会社が行っている事業であり、主に日本国内における建設資機材の販売、専門工事の請負、総合リース業、ビル賃貸事業等)
当連結会計年度は、建設系国内関係会社が総じて良好な業績となったことに加え、開発系国内関係会社の保有するテナントビルの売却が計画通り実現したことから、売上高、営業利益ともに前連結会計年度を大きく上回った。
2027年3月期は、売上高、営業利益ともに高水準であった当連結会計年度から減少するものの、建設事業は、大型工事の着実な進捗などにより、堅調な業績を確保する見通しである。また、開発系国内関係会社は、2027年3月期における不動産開発物件の売却予定はないものの、中長期的な収益力強化につながる投資を推進していく。
e 海外関係会社
(当社の海外関係会社が行っている事業であり、北米、欧州、アジア、大洋州などの海外地域における建設事業、開発事業等)
海外関係会社は、米国を中心に不動産開発物件の売却件数が減少したことから、売上高は前連結会計年度を下回ったものの、建設事業の収益性向上を主因に、営業利益は増益となった。建設事業は、欧州や東南アジアにおける工事原価の低減や追加変更契約の獲得などが寄与し、前連結会計年度を大きく上回る利益を確保している。一方で、開発事業等は、金融環境や不動産取引市況の動向などを踏まえた判断により、米国や欧州などにおいて、現地パートナーとの共同事業案件を含め複数物件の売却時期を2027年3月期以降に変更しており、海外関係会社全体の当期純利益は前連結会計年度比で減益となった。
2027年3月期については、各地域における施工中工事の着実な進捗と開発事業における物件売却により、売上高は引き続き1兆円を上回る見通しであり、利益は不動産開発物件の売却件数増加を主因に、増益を予想している。建設事業では、高水準の利益を確保した当連結会計年度を下回るものの、引き続き堅調な業績を見込んでいる。開発事業については、主力である米国の金利は高止まりしているものの、不動産市場への投資が回復基調にあり、流通倉庫、賃貸集合住宅などの物件売却が進展する見通しである。また、アジアにおける貸工場、オフィス、商業施設などの売却に加え、金利の低下により事業環境が改善している欧州においても、流通倉庫や再生可能エネルギー施設などの売却件数増加を見込んでいる。
海外事業は当社グループの成長領域であり、中期経営計画(2024~2026)に定めた施策や投資を推進している。各地域の物価、金利、不動産市況の変化に的確に対応し、建設・開発両事業のプラットフォームを活かして、中長期的な収益性向上を目指していく。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは当連結会計年度において、国内建設事業を中心に過去最高を更新する利益を確保するとともに、国内外の不動産開発事業における物件売却などにより資金を創出した。これに加え、政策保有株式の売却や有利子負債の活用等による資金収入を原資として、R&D・デジタル投資や国内外の不動産開発投資などの当社グループの中長期的な収益性向上と経営基盤強化に繋がる投資を積極的に推進した。また、工事代金の支払いを早期化することにより協力会社の財務基盤強化を支援するなど、強固なサプライチェーン構築を目指す取組みに必要な資金を充当している。株主還元については、増配や200億円の自己株式取得により、利益成長に見合った拡充に取り組んでいる。
鹿島グループ中期経営計画(2024~2026)において、連結当期純利益や資産売却に伴う回収資金などを、成長投資と株主還元に配分する財務戦略を策定し、中長期的な企業価値、市場評価の向上を目指している。中期経営計画3か年における利益成長が加速するなど、資金収入が増加する見通しを踏まえ、財務戦略を更新し、資金使途及びその配分額を変更した。計画策定時と比較して、国内の建設事業、開発事業の貢献により当期純利益が1,200億円増加することに加え、政策保有株式の残高を『2027年3月期末までに連結純資産の20%未満』とする目標達成に向け、売却額を400億円増額した。また、企業価値向上に資する投資を厳選しており、成長投資額から資産売却に伴う回収資金を差し引きしたネット投資額が200億円減少することから、資金は合計1,800億円増加する見通しである。増加した資金の使途については、1,000億円をサプライチェーン強化に向けた取組みに充てるとともに、株主還元を800億円増額することを決定した。
今後も国内外における建設事業の収益力を高め、資金の創出に努めるとともに、開発事業資産の計画的な売却を進めていく方針である。株主還元については、配当性向の目安を40%としており、利益成長に連動した配当金の引き上げを目指すとともに、資本効率の向上と株主還元の充実のため、自己株式の取得を継続する方針である。自己株式の取得は、政策保有株式の売却実績をベースとして機動的に実施しており、2027年3月期については、中期経営計画3か年の利益成長が加速している現状を踏まえ、当連結会計年度の政策保有株式売却額210億円を上回る400億円程度を予定している。工事の大型化に伴い、協力会社等への支払先行による資金需要が増大し、2027年3月末の連結有利子負債残高は9,800億円まで一時的に増加する見通しであるが、D/Eレシオは目安としている0.7倍程度を維持することから、十分な財務健全性は確保できる見込みである。
また、資金運営に関しては、月商と同水準の現金及び現金同等物の残高保有を目安としていることに加え、コミットメントラインを設定する等、安定的かつ多様な資金調達手段を備えていることから、特段の懸念はないと考えている。なお、不動産開発投資等による長期資金需要の増加を見据え、特に金利上昇が見込まれる国内の有利子負債調達においては、長期、固定金利の比率を高めている。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されているが、この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されている。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っているが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらとは異なることがある。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載している。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりである。
① 経営成績の状況
売上高は、建設事業の売上高増加により、前連結会計年度比5.3%増の3兆672億円(前連結会計年度は2兆9,118億円)となった。
利益については、建設事業の売上総利益の向上を主因に、営業利益は前連結会計年度比58.5%増の2,407億円(前連結会計年度は1,518億円)、経常利益は同49.6%増の2,404億円(同1,606億円)、親会社株主に帰属する当期純利益は同40.9%増の1,773億円(同1,258億円)となった。
セグメントごとの経営成績は次のとおりである。(セグメントの経営成績については、セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載している。)
a 土木事業
(当社における建設事業のうち土木工事に関する事業)
売上高は、大型工事を中心に施工が着実に進捗したことから、前連結会計年度比6.6%増の4,307億円(前連結会計年度は4,041億円)となった。
営業利益は、売上総利益率が大幅に向上したことを主因に、前連結会計年度比114.9%増の767億円(前連結会計年度は357億円)となった。
b 建築事業
(当社における建設事業のうち建築工事に関する事業)
売上高は、竣工工事を中心に大型工事の施工量が増加し、前連結会計年度比12.3%増の1兆1,829億円(前連結会計年度は1兆534億円)となった。
営業利益は、売上高の増加に加え、売上総利益率も向上したことから、前連結会計年度比62.6%増の832億円(前連結会計年度は512億円)となった。
c 開発事業等
(当社における不動産開発全般に関する事業及び意匠・構造設計、その他設計、エンジニアリング全般の事業)
当連結会計年度に複数の不動産開発物件を販売したものの、収益性の高い大型プロジェクトの販売、引渡しがあった前連結会計年度と比べ売上高、売上総利益が減少し、売上高は前連結会計年度比5.8%減の964億円(前連結会計年度は1,023億円)、営業利益は同36.8%減の176億円(同278億円)となった。
d 国内関係会社
(当社の国内関係会社が行っている事業であり、主に日本国内における建設資機材の販売、専門工事の請負、総合リース業、ビル賃貸事業等)
当連結会計年度は、建設事業における売上高の増加及び売上総利益率の向上に加え、開発系関係会社が保有する販売用不動産の売却により、売上高、営業利益が増加し、売上高は前連結会計年度比16.9%増の4,146億円(前連結会計年度は3,546億円)、営業利益は同118.1%増の357億円(同164億円)となった。
e 海外関係会社
(当社の海外関係会社が行っている事業であり、北米、欧州、アジア、大洋州などの海外地域における建設事業、開発事業等)
売上高は、建設事業売上高が増加したものの、米国における開発物件の売却が減少したことを主因に、前連結会計年度比2.0%減の1兆919億円(前連結会計年度は1兆1,145億円)となった。
営業利益は、開発事業等の売上総利益が減少した一方で、建設事業における売上総利益率の向上を主因に、前連結会計年度比32.8%増の266億円(前連結会計年度は200億円)となった。
② 財政状態の状況
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末比1,697億円増加し、3兆6,243億円(前連結会計年度末は3兆4,545億円)となった。これは、投資有価証券の増加812億円、受取手形・完成工事未収入金等の増加508億円、現金預金の増加488億円及び有形固定資産の増加287億円があった一方で、棚卸資産(販売用不動産、未成工事支出金、開発事業支出金及びその他の棚卸資産)の減少680億円があったこと等によるものである。なお、政策保有株式については、当連結会計年度に23銘柄を210億円で売却した一方で、株価変動等により保有時価が716億円増加したため、当連結会計年度末の残高は3,041億円(前連結会計年度末は2,535億円)、純資産に対する比率は21.2%(前連結会計年度末は19.8%)となった。
負債合計は、前連結会計年度末比115億円増加し、2兆1,881億円(前連結会計年度末は2兆1,766億円)となった。これは、有利子負債残高※の増加411億円及び未払法人税等の増加287億円があった一方で、支払手形・工事未払金等の減少953億円があったこと等によるものである。なお、有利子負債残高は、8,331億円(前連結会計年度末は7,920億円)となった。
純資産合計は、株主資本1兆1,040億円、その他の包括利益累計額3,109億円、非支配株主持分212億円を合わせて、前連結会計年度末比1,582億円増加の1兆4,362億円(前連結会計年度末は1兆2,779億円)となった。
また、自己資本比率は、前連結会計年度末比2.6ポイント好転し、39.0%(前連結会計年度末は36.4%)となった。
(注) ※短期借入金、コマーシャル・ペーパー、社債(1年内償還予定の社債を含む)及び長期借入金の合計額
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、1,146億円の収入超過(前連結会計年度は306億円の収入超過)となった。これは、税金等調整前当期純利益2,553億円に減価償却費334億円等の調整を加味した収入に加えて、未払又は未収消費税等の増減573億円の収入があった一方で、仕入債務の減少974億円、売上債権の増加645億円、法人税等の支払額525億円並びに未成工事受入金及び開発事業等受入金の減少262億円の支出があったこと等によるものである。
投資活動によるキャッシュ・フローは、465億円の支出超過(前連結会計年度は1,048億円の支出超過)となった。これは、有形固定資産の取得による支出505億円、貸付けによる支出365億円及び投資有価証券の取得による支出183億円があった一方で、投資有価証券の売却等による収入352億円及び貸付金の回収による収入342億円があったこと等によるものである。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額540億円及び自己株式の取得による支出200億円があった一方で、短期借入金、長期借入金、コマーシャル・ペーパー及び社債による資金調達と返済の収支が464億円の収入超過となったこと等により、305億円の支出超過(前連結会計年度は616億円の収入超過)となった。
これらにより、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末から427億円増加し、3,922億円(前連結会計年度末は3,495億円)となった。
④ 生産、受注及び販売の実績
当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため、また、受注高について当社グループ各社の受注概念が異なるため、「生産の実績」及び「受注の実績」は記載していない。
売上実績
| セグメントの名称 | 前連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2025年4月1日 至 2026年3月31日) | 増減(△)率 (%) | |||||||
| 土木事業 | (百万円) | 404,143 | ( | 13.9 | %) | 430,767 | ( | 14.1 | %) | 6.6 |
| 建築事業 | (百万円) | 1,052,902 | ( | 36.1 | %) | 1,180,918 | ( | 38.5 | %) | 12.2 |
| 開発事業等 | (百万円) | 97,953 | ( | 3.4 | %) | 92,676 | ( | 3.0 | %) | △5.4 |
| 国内関係会社 | (百万円) | 242,463 | ( | 8.3 | %) | 271,117 | ( | 8.8 | %) | 11.8 |
| 海外関係会社 | (百万円) | 1,114,353 | ( | 38.3 | %) | 1,091,795 | ( | 35.6 | %) | △2.0 |
| 合計 | (百万円) | 2,911,816 | ( | 100 | %) | 3,067,275 | ( | 100 | %) | 5.3 |
(注) 1 売上実績においては、「外部顧客への売上高」について記載している。
2 前連結会計年度及び当連結会計年度ともに売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。
[参考]提出会社単独の受注高及び売上高の状況
a 受注高、売上高及び繰越高
| 期別 | 種類別 | 期首繰越高 (百万円) | 当期受注高 (百万円) | 計 (百万円) | 当期売上高 (百万円) | 期末繰越高 (百万円) | ||
| 前事業 年度 | 建 設 事 業 | 建築工事 | 1,469,102 | 1,334,668 | 2,803,771 | 1,053,474 | 1,750,297 | |
| 自 2 0 2 4 年 4 月 1 日 | 至 2 0 2 5 年 3 月 31 日 | 土木工事 | 729,017 | 438,899 | 1,167,916 | 404,143 | 763,773 | |
| 計 | 2,198,120 | 1,773,567 | 3,971,688 | 1,457,617 | 2,514,070 | |||
| 開発事業等 | 81,652 | 57,539 | 139,192 | 102,398 | 36,793 | |||
| 合計 | 2,279,773 | 1,831,107 | 4,110,880 | 1,560,016 | 2,550,864 | |||
| 当事業 年度 | 建 設 事 業 | 建築工事 | 1,750,297 | 1,555,678 | 3,305,975 | 1,182,901 | 2,123,074 | |
| 自 2 0 2 5 年 4 月 1 日 | 至 2 0 2 6 年 3 月 31 日 | 土木工事 | 763,773 | 615,874 | 1,379,648 | 430,767 | 948,880 | |
| 計 | 2,514,070 | 2,171,552 | 4,685,623 | 1,613,668 | 3,071,954 | |||
| 開発事業等 | 36,793 | 103,762 | 140,555 | 96,416 | 44,139 | |||
| 合計 | 2,550,864 | 2,275,314 | 4,826,178 | 1,710,084 | 3,116,093 | |||
(注) 1 前事業年度以前に受注したもので、契約の更改により請負金額に変更があるものについては、当期受注高にその増減額を含む。したがって、当期売上高にもかかる増減額が含まれる。
2 期末繰越高は、(期首繰越高+当期受注高-当期売上高)である。
b 受注工事高
| 期別 | 区分 | 国内 | 海外 | 計 | |
| 官公庁 (百万円) | 民間 (百万円) | (百万円) | (百万円) | ||
| 前事業年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) | 建築工事 | 13,655 | 1,321,013 | - | 1,334,668 |
| 土木工事 | 251,294 | 147,904 | 39,700 | 438,899 | |
| 計 | 264,949 | 1,468,917 | 39,700 | 1,773,567 | |
| 当事業年度 (自 2025年4月1日 至 2026年3月31日) | 建築工事 | 132,151 | 1,423,526 | - | 1,555,678 |
| 土木工事 | 353,397 | 256,851 | 5,625 | 615,874 | |
| 計 | 485,549 | 1,680,377 | 5,625 | 2,171,552 | |
c 受注工事高の受注方法別比率
建設工事の受注方法は、特命と競争に大別される。
| 期別 | 区分 | 特命(%) | 競争(%) | 計(%) | |||
| 前事業年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) | 建築工事 | 45.0 | 55.0 | 100 | |||
| 土木工事 | 27.8 | 72.2 | 100 | ||||
| 当事業年度 (自 2025年4月1日 至 2026年3月31日) | 建築工事 | 52.7 | 47.3 | 100 | |||
| 土木工事 | 35.5 | 64.5 | 100 | ||||
(注) 百分比は請負金額比である。
d 完成工事高
| 期別 | 区分 | 国内 | 海外 | 計 | |
| 官公庁 (百万円) | 民間 (百万円) | (百万円) | (百万円) | ||
| 前事業年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) | 建築工事 | 29,522 | 1,023,951 | - | 1,053,474 |
| 土木工事 | 271,946 | 129,771 | 2,425 | 404,143 | |
| 計 | 301,468 | 1,153,723 | 2,425 | 1,457,617 | |
| 当事業年度 (自 2025年4月1日 至 2026年3月31日) | 建築工事 | 48,458 | 1,134,442 | - | 1,182,901 |
| 土木工事 | 285,190 | 142,605 | 2,971 | 430,767 | |
| 計 | 333,648 | 1,277,048 | 2,971 | 1,613,668 | |
(注) 1 前事業年度及び当事業年度ともに完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。
2 当事業年度の完成工事のうち主なものは、次のとおりである。
| 発注者 | 工事名称 |
| ○ Rapidus㈱ | Rapidus新工場IIM-1 |
| ○ SMC㈱ | SMC Japan Technical Center building A SMC Japan Technical Center building B SMC Japan Technical Center building C |
| ○ 東日本旅客鉄道㈱ | MoN Takanawa:The Museum of Narratives |
| ○ ㈱IHI・三菱地所㈱ | 豊洲セイルパークビル |
| ○ 三井不動産㈱、鹿島建設㈱、京浜急行電鉄㈱、第一生命保険㈱、㈱竹中工務店、㈱ディー・エヌ・エー、東急㈱ | BASEGATE横浜関内 タワー(※) |
| ○ MABD(同) | 表参道 Grid Tower |
| ○ 国土交通省北陸地方整備局 | 大河津分水路新第二床固改築Ⅰ期工事 大河津分水路新第二床固改築1期その2工事 |
| ○ いわき神楽山復興エナジー(同) | 神楽山風力発電所 |
(※) 当社からの受注高は完成工事高に含んでいない。
e 繰越工事高(2026年3月31日現在)
| 区分 | 国内 | 海外 | 計 | |
| 官公庁 (百万円) | 民間 (百万円) | (百万円) | (百万円) | |
| 建築工事 | 169,000 | 1,954,073 | - | 2,123,074 |
| 土木工事 | 557,672 | 340,294 | 50,913 | 948,880 |
| 計 | 726,673 | 2,294,368 | 50,913 | 3,071,954 |
(注) 繰越工事のうち主なものは、次のとおりである。
| 発注者 | 工事名称 |
| ○ 八重洲二丁目中地区市街地再開発組合 | 八重洲二丁目中地区第一種市街地再開発事業新築工事 |
| ○ Japan Advanced Semiconductor Manufacturing㈱ | JASM F23P2Project |
| ○ 防衛省 | 馬毛島(R5)仮設工事他 |
| ○ 三菱地所㈱・㈱TBSホールディングス | 赤坂二・六丁目地区開発計画(A工区)既存建物地下解体工事及び新築工事他 |
| ○ ㈱世界貿易センタービルディング | 世界貿易センタービルディング新本館・ターミナル建設工事 |
| ○ 東急不動産㈱・京浜急行電鉄㈱ | 泉岳寺駅地区第二種市街地再開発事業特定施設建築物新築工事 |
| ○ 札幌駅南口北4西3地区市街地再開発組合 | 北4西3地区第一種市街地再開発事業に伴う新築工事他 |
| ○ 西日本高速道路㈱ | 新名神高速道路城陽工事 |
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り当連結会計年度末現在において判断したものである。
① 経営成績及び財政状態の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績は、国内建設事業(土木事業・建築事業)の順調な工事進捗と売上総利益率向上を主因に、5期連続で前連結会計年度比増収増益を達成し、売上高(3兆672億円)、営業利益(2,407億円)、経常利益(2,404億円)、親会社株主に帰属する当期純利益(1,773億円)はいずれも過去最高となった。ROEは13.3%となり、前連結会計年度の10.2%から向上した。国内建設事業については、適切な施工体制や採算性を確保した工事受注や、最適な施工計画に沿った安全、品質、コストに対する組織的な管理体制が有効に機能しており、各工事の収益性向上につながっている。
業績予想との比較では、売上高が増加し、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益も業績予想を上回った。
当連結会計年度の経営成績(連結業績予想との対比) (単位:百万円)
| 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 親会社株主に 帰属する 当期純利益 | |
| 連結業績予想(A) 2026年2月12日公表 | 3,030,000 | 228,000 | 226,000 | 170,000 |
| 経営成績 (B) | 3,067,275 | 240,780 | 240,420 | 177,334 |
| 増減額(B-A) | 37,275 | 12,780 | 14,420 | 7,334 |
| 増減率(%) | 1.2% | 5.6% | 6.4% | 4.3% |
財政状態については、当連結会計年度末の資産合計が前連結会計年度末比1,697億円増加し、3兆6,243億円となった。国内外の不動産開発物件の売却などにより開発事業資産(販売用不動産及び開発事業支出金)が減少した一方で、建設事業における売上債権(受取手形・完成工事未収入金等)が増加している。また、サプライチェーン強化に向けた工事代金の支払早期化や不動産開発投資に伴う今後の資金需要に対して、国内金利の上昇を見据え、先行して長期資金調達を実施したことから、現金預金が一時的に増加している。投資有価証券のうち政策保有株式については、中長期的な縮減に向けて、保有する株式のうち23銘柄を210億円で売却したものの、株価変動等により保有株式の時価が716億円増加したことを主因に、前連結会計年度末比505億円増加し、当連結会計年度末の残高は3,041億円、純資産に対する比率は21.2%となった。中期経営計画に掲げた政策保有株式の残高縮減目標(2027年3月期末までに連結純資産の20%未満)の達成に向け引き続き縮減を進めていく。連結自己資本は、保有株式の株価上昇などにより、その他有価証券評価差額金が413億円増加したことに加え、1,700億円を上回る親会社株主に帰属する当期純利益の計上に伴い前連結会計年度末から1,568億円増加の1兆4,150億円、自己資本比率は39.0%となった。連結有利子負債残高は、国内外の不動産開発投資における外部資金活用などにより前連結会計年度末から411億円増加し、8,331億円となったものの、D/Eレシオは0.59倍であり、財務の健全性は十分に維持できていると考えている。
経営成績に重要な影響を与える主な要因は、国内外の建設事業及び開発事業における需要やコストの急激な変動等に伴う事業環境の変化である。当連結会計年度において、国内建設需要は、底堅い公共投資と民間企業の旺盛な設備投資により高い水準を維持しており、供給可能な施工量を上回る需要を背景に受注競争の緩和傾向が継続している。海外における建設需要は、AI・デジタル関連投資が拡大していることに加え、景気の影響を受けにくい医療福祉・教育関連施設等の需要も堅調である。コストに関しては、国内外ともに資機材価格は総じて高い価格水準に留まっており、労務費にも上昇の傾向が見られるため、動向を注視した適切な対応が必要と考えている。また、国際情勢の緊迫化や通商政策の動向が事業環境に大きな影響を及ぼす不安定な状況が継続していることから、早期の情報収集に努め、その結果を踏まえた対策を事前に講じることが重要になると認識している。
今後については、国内建設需要が当面、高い水準で推移することが予想されるため、旺盛な需要に応えられる施工体制を確保したうえで、安全、環境、品質、工程、コストを守る組織的な管理を徹底するとともに、AI・デジタル技術を積極的に活用した施工の自動化、遠隔管理化などによる建設プロセスの生産性向上を推進していく。また、長期的には建設技能労働者が減少していく見通しであることから、賃金・休暇等の処遇改善を推進するとともに、工事代金の支払早期化など、協力会社の財務基盤強化に対する支援を通じて、強固なサプライチェーンの構築に取り組んでいる。国内外の開発事業においては、地政学的リスクの高まりや各国・地域の通商・金融政策が事業環境に与える影響を慎重に見極めつつ、資本効率性と財務健全性を考慮した丁寧な投資判断を徹底し、時機を捉えた不動産開発物件の売却などにより収益力向上を図っていく。
セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりである。
a 土木事業
(当社における建設事業のうち土木工事に関する事業)
売上高は、最盛期を迎えた大型工事を中心に施工が着実に進捗したことなどから前連結会計年度を上回る4,307億円となった。2027年3月期についても、最盛期にある大型工事が継続することに加え、短工期の大型工事が進捗することを踏まえ4,800億円を予想し、それ以降も4,000億円から4,500億円程度の水準が継続すると見込んでいる。売上総利益率に関しては、大型工事における大規模な追加・設計変更の獲得が重なったことから、前連結会計年度の利益率(15.4%)を大きく上回る24.6%となった。2027年3月期についても、施工が継続している各工事の収益性は引き続き高い水準にあり、売上総利益率は20.4%になると予想している。
土木事業における建設需要は、インフラ更新などの国土強靭化に関連した分野や、電力需要の増加に対応するエネルギー分野などの需要拡大が続き、今後も安定的に推移すると考えている。
b 建築事業
(当社における建設事業のうち建築工事に関する事業)
売上高は、複数の大型竣工工事が順調に進捗したことを主因に、前連結会計年度比増収の1兆1,829億円となった。2027年3月期は、売上高が伸びない施工初期段階の工事が多く、減収となる1兆500億円を予想している。売上総利益率は、受注時利益率の向上が緩やかながら継続したことに加え、施工中のリスク管理徹底により各工事の収益性が向上したことから、前連結会計年度の9.6%から11.8%に上昇した。2027年3月期は、竣工工事による利益の押し上げが少ない時期に当たるものの、建設コストの上昇リスクを一定程度織り込んだうえで、売上総利益率は12.0%に向上すると見込んでいる。
競争環境は、高い水準の建設需要を背景に緩和状態にあり、受注時の利益率は改善傾向が継続している。適切な施工体制の確保に向けたサプライチェーン強化に取り組みつつ、技術力や提案力を軸とした顧客のニーズに応える工事受注を徹底することにより、売上総利益率の維持、向上を図っていく。
c 開発事業等
(当社における不動産開発全般に関する事業及び意匠・構造設計、その他設計、エンジニアリング全般の事業)
開発事業等の売上高は、複数のオフィスビルなどの売却により、前連結会計年度と概ね同水準を確保したものの、営業利益は、大型分譲マンションの販売、引渡しがあった前連結会計年度から減少した。
2027年3月期については、不動産販売事業において、引き続き複数物件の売却を計画していることに加え、高い稼働率を確保している不動産賃貸物件の収益性が向上することから、売上高、営業利益ともに当連結会計年度を上回る見通しである。国内の不動産開発事業は、中期経営計画(2024~2026)の投資計画に基づき、レパートリー拡充、優良資産の積み上げによる収益源の多様化及び収益機会の拡大を目指している。建設コスト上昇や金融環境の変化を踏まえ、事業リスクの低減と資本効率性の向上を両立させる取組みを推進しており、当連結会計年度において、外部資金の積極的活用を企図した大型プロジェクトの共同事業化が実現している。
d 国内関係会社
(当社の国内関係会社が行っている事業であり、主に日本国内における建設資機材の販売、専門工事の請負、総合リース業、ビル賃貸事業等)
当連結会計年度は、建設系国内関係会社が総じて良好な業績となったことに加え、開発系国内関係会社の保有するテナントビルの売却が計画通り実現したことから、売上高、営業利益ともに前連結会計年度を大きく上回った。
2027年3月期は、売上高、営業利益ともに高水準であった当連結会計年度から減少するものの、建設事業は、大型工事の着実な進捗などにより、堅調な業績を確保する見通しである。また、開発系国内関係会社は、2027年3月期における不動産開発物件の売却予定はないものの、中長期的な収益力強化につながる投資を推進していく。
e 海外関係会社
(当社の海外関係会社が行っている事業であり、北米、欧州、アジア、大洋州などの海外地域における建設事業、開発事業等)
海外関係会社は、米国を中心に不動産開発物件の売却件数が減少したことから、売上高は前連結会計年度を下回ったものの、建設事業の収益性向上を主因に、営業利益は増益となった。建設事業は、欧州や東南アジアにおける工事原価の低減や追加変更契約の獲得などが寄与し、前連結会計年度を大きく上回る利益を確保している。一方で、開発事業等は、金融環境や不動産取引市況の動向などを踏まえた判断により、米国や欧州などにおいて、現地パートナーとの共同事業案件を含め複数物件の売却時期を2027年3月期以降に変更しており、海外関係会社全体の当期純利益は前連結会計年度比で減益となった。
2027年3月期については、各地域における施工中工事の着実な進捗と開発事業における物件売却により、売上高は引き続き1兆円を上回る見通しであり、利益は不動産開発物件の売却件数増加を主因に、増益を予想している。建設事業では、高水準の利益を確保した当連結会計年度を下回るものの、引き続き堅調な業績を見込んでいる。開発事業については、主力である米国の金利は高止まりしているものの、不動産市場への投資が回復基調にあり、流通倉庫、賃貸集合住宅などの物件売却が進展する見通しである。また、アジアにおける貸工場、オフィス、商業施設などの売却に加え、金利の低下により事業環境が改善している欧州においても、流通倉庫や再生可能エネルギー施設などの売却件数増加を見込んでいる。
海外事業は当社グループの成長領域であり、中期経営計画(2024~2026)に定めた施策や投資を推進している。各地域の物価、金利、不動産市況の変化に的確に対応し、建設・開発両事業のプラットフォームを活かして、中長期的な収益性向上を目指していく。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは当連結会計年度において、国内建設事業を中心に過去最高を更新する利益を確保するとともに、国内外の不動産開発事業における物件売却などにより資金を創出した。これに加え、政策保有株式の売却や有利子負債の活用等による資金収入を原資として、R&D・デジタル投資や国内外の不動産開発投資などの当社グループの中長期的な収益性向上と経営基盤強化に繋がる投資を積極的に推進した。また、工事代金の支払いを早期化することにより協力会社の財務基盤強化を支援するなど、強固なサプライチェーン構築を目指す取組みに必要な資金を充当している。株主還元については、増配や200億円の自己株式取得により、利益成長に見合った拡充に取り組んでいる。
鹿島グループ中期経営計画(2024~2026)において、連結当期純利益や資産売却に伴う回収資金などを、成長投資と株主還元に配分する財務戦略を策定し、中長期的な企業価値、市場評価の向上を目指している。中期経営計画3か年における利益成長が加速するなど、資金収入が増加する見通しを踏まえ、財務戦略を更新し、資金使途及びその配分額を変更した。計画策定時と比較して、国内の建設事業、開発事業の貢献により当期純利益が1,200億円増加することに加え、政策保有株式の残高を『2027年3月期末までに連結純資産の20%未満』とする目標達成に向け、売却額を400億円増額した。また、企業価値向上に資する投資を厳選しており、成長投資額から資産売却に伴う回収資金を差し引きしたネット投資額が200億円減少することから、資金は合計1,800億円増加する見通しである。増加した資金の使途については、1,000億円をサプライチェーン強化に向けた取組みに充てるとともに、株主還元を800億円増額することを決定した。
今後も国内外における建設事業の収益力を高め、資金の創出に努めるとともに、開発事業資産の計画的な売却を進めていく方針である。株主還元については、配当性向の目安を40%としており、利益成長に連動した配当金の引き上げを目指すとともに、資本効率の向上と株主還元の充実のため、自己株式の取得を継続する方針である。自己株式の取得は、政策保有株式の売却実績をベースとして機動的に実施しており、2027年3月期については、中期経営計画3か年の利益成長が加速している現状を踏まえ、当連結会計年度の政策保有株式売却額210億円を上回る400億円程度を予定している。工事の大型化に伴い、協力会社等への支払先行による資金需要が増大し、2027年3月末の連結有利子負債残高は9,800億円まで一時的に増加する見通しであるが、D/Eレシオは目安としている0.7倍程度を維持することから、十分な財務健全性は確保できる見込みである。
また、資金運営に関しては、月商と同水準の現金及び現金同等物の残高保有を目安としていることに加え、コミットメントラインを設定する等、安定的かつ多様な資金調達手段を備えていることから、特段の懸念はないと考えている。なお、不動産開発投資等による長期資金需要の増加を見据え、特に金利上昇が見込まれる国内の有利子負債調達においては、長期、固定金利の比率を高めている。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されているが、この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されている。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っているが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらとは異なることがある。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載している。