(1)当連結会計年度の経営成績の分析
当連結会計年度のわが国経済は、上半期は雇用・所得環境の改善を背景に緩やかな回復が続いておりましたが、下半期からは自然災害や消費税増税による個人消費の低下が見られた他、新型コロナウイルス感染拡大による経済への悪影響が特に懸念されております。
このような状況の中、当社グループでは砂糖をはじめとする安全、安心な食品素材を安定してお届けする社会的責任を果たすことを第一としながら既存事業の収益力強化を図り、また、中国においては家庭用小袋や各種加工糖の製造販売を目的とする新たな合弁会社「遼寧長和制糖有限公司」を昨年12月に設立するなど、引き続きアジア地域を基点とした海外市場の成長の取り込みを目指し、国内と海外双方で事業基盤の強化に取り組んでまいりました。
なお、2020年3月25日開催の当社取締役会におきまして、国内砂糖事業の一層の基盤強化を目指し、① 2021年4月1日を効力発生予定日とする当社と大日本明治製糖㈱との経営統合に関する協議、ならびに② 当社、大日本明治製糖㈱及び日本甜菜製糖㈱が別途合意する日を効力発生日とする資本業務提携に関する協議の双方を開始することを決議いたしました。詳細は決議同日開示いたしました「三井製糖㈱と大日本明治製糖㈱との経営統合、及び日本甜菜製糖㈱との資本業務提携に向けた協議開始について」をご参照ください。
砂糖事業
砂糖事業の原料価格に影響を及ぼす海外粗糖相場は、期初は1ポンド当たり12セント台でスタートした後、世界的な需給緩和観測の拡大を受け、一時10セント台まで下落しました。その後、翌年度の主要生産国の減産見通しが相次ぐと相場は上昇基調に転じ、12月末には13セント台、2020年2月には15セント後半に到達したものの、新型コロナウイルス感染拡大による世界経済の減速感からマクロ環境が一転し、複合的な要因が砂糖需給環境に間接的に影響したことで粗糖価格が急落、10セント台で期末を迎えました。一方、精製上白糖の国内市中相場につきましては、期を通じて187円~188円で推移しました。 販売面では、梅雨寒や夏場の長雨の影響で飲料ユーザー向けの出荷が振るわなかった他、第4四半期の工場操業遅れの影響もあり、全体の販売量は前期を下回りました。消費の傾向として家庭用1㎏小袋の販売量が漸減する中、当社では保存に適したチャック付き小容量小袋製品のアイテム数を増やし、首都圏の量販店を中心に定番化を進めてまいりました。 コスト面では、人手不足による物流コストが増加し、安定操業のための設備更新により減価償却費等の固定費が増加しましたが、適切な原料糖調達に努めた結果、原料費が改善し、営業利益は前期を上回りました。
海外では、中国において合弁会社「遼寧長和制糖有限公司」を設立し、今秋より日本で培ってきた家庭用小袋や各種加工糖を中国市場へ展開するための準備を進めております。 一方、連結子会社につきましては、生和糖業㈱においては天候不順により生産量が減少した他、北海道糖業㈱においては販売単価が低下し、販売量が減少したことにより減益となりましたが、前第3四半期末に連結子会社化したSIS’88 Pte Ltdが期を通じて概ね順調に推移したことで収益に貢献いたしました。 以上の結果、売上高は92,145百万円(前連結会計年度比9.5%増)、営業利益は3,240百万円(同37.9%増)となり
ました。
期中の砂糖市況
国内市中相場(日本経済新聞掲載、東京上白大袋1㎏当たり)
期を通じて187円~188円で推移
海外粗糖相場(ニューヨーク砂糖当限、1ポンド当たり)
始値 12.53セント 高値 15.90セント 安値 10.42セント 終値 10.42セント
フードサイエンス事業
フードサイエンス事業につきましては、パラチノース、パラチニットの販売はやや低調な動きとなりましたが、パラチノースの利益率が改善され、営業利益は前連結会計年度を上回りました。また、さとうきび抽出物はサニテーション用途への採用が増えるなど増収増益となりました。なお、7月には、パラチノースを配合したスローカロリーシュガーが食後血糖値の上昇を抑える機能により機能性表示食品として受理されたことから、消費者の機能認知に向けた積極的な広告宣伝を行ってまいりました。
連結子会社につきましては、㈱タイショーテクノスは販売増や新工場の稼働で原価率が改善したことにより、増収増益となりました。ニュートリー㈱は当期に譲り受けた流動食事業の販売増加等により増収増益となりました。 以上の結果、売上高は19,766百万円(前連結会計年度比2.9%増)、営業利益は679百万円(同44.3%増)となりました。
不動産事業
不動産事業につきましては、岡山市で2018年11月に開始した物流倉庫の賃貸が通年で寄与しましたが、売上高・営業利益ともに前連結会計年度並となり、売上高1,942百万円(前連結会計年度比0.7%減)、営業利益928百万円(前連結会計年度比0.7%増)となりました。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は113,854百万円(前連結会計年度比8.1%増)、営業利益は4,848百万円(同29.5%増)となりました。
営業外損益におきましては、フィンゴリモド「FTY720」の開発権及び販売権の許諾に基づく受取ロイヤリティーを1,340百万円計上いたしました。なお、当社の共同特許権者である田辺三菱製薬㈱とNovartis Pharma AG(以下、「ノバルティス社」)との間で仲裁手続きが進行中であることを受け、ノバルティス社が契約の有効性に関し疑義を提起している部分については、引き続き収益としての認識を行いませんでした。
この他、タイ国関連会社における海外粗糖相場の低迷を受けた販売単価下落や販売量減少を主要因とする持分法投資損失の計上等により、経常利益は4,982百万円(同51.7%減)となり、また、北海道糖業㈱で発生した重油流出事故による環境対策費234百万円を特別損失に計上したことも影響し、親会社株主に帰属する当期純利益は2,422百万円(同64.7%減)となりました。
なお、将来の成長に向けて取得してきた事業・資産に伴うのれん等の償却負担が増大している財務上の特徴を踏まえ、当社がキャッシュ創出力の把握のため期間損益と並行的に重視しているEBITDA指標(※1)は11,132百万円となり、当社グループの事業活動における健全性を引き続き維持しております。(4)キャッシュ・フローの状況の分析も併せてご参照ください。
※1 連結営業利益に連結減価償却費等を簡便的に加えた計算値を用いております。
(2)経営成績に重要な影響を与える要因についての分析
当社グループは、主力の砂糖事業において、原料となる粗糖が相場商品であること、また製品価格も競争や市場環境等により変動する場合があり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。このような事業環境下、当社では適切な原料糖調達と適正販売価格帯の維持に努めてまいりました。
(3)経営上の目標指標に関する分析
当社グループでは、ROE(自己資本当期純利益率)8~10%を経営目標達成のための客観的な指標の一つとしております。当連結会計年度のROEは2.9%となりました。また、将来の成長に向けて取得してきた事業・資産に伴うのれん等の償却負担が増大している財務上の特徴を踏まえ、キャッシュ創出力を表すEBITDA指標を参考として、当社の財務の実態把握に努めてまいります。当連結会計年度のEBITDAは11,132百万円となりました。
配当金額につきましては、安定的かつ継続的な配当を基本とし、将来の成長に向けた事業展開と、経営基盤強化のための内部留保の充実にも配慮し、現金配当と機動的な資本政策を組み合わせた総還元性向50%を目途として、都度の経営環境を考慮しつつ株主還元策を決定してまいりました。
(4)キャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、営業活動で11,167百万円増加した一方で、投資活動と財務活動で10,571百万円減少したことにより、前連結会計年度末に対して588百万円増加し、15,414百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次の通りであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は11,167百万円(前連結会計年度は資金の増加12,081百万円)となりました。
これは主に税金等調整前当期純利益4,678百万円、減価償却費5,191百万円等による資金の増加があった一方で、法人税等の支払3,119百万円等による資金の減少があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金の減少は7,146百万円(前連結会計年度は資金の減少20,652百万円)となりました。
これは主に工場設備等に係る有形固定資産の取得による支出6,919百万円等による資金の減少があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金の減少は3,425百万円(前連結会計年度は資金の減少1,050百万円)となりました。
これは主に借入金の純増加11,032百万円等による資金の増加があった一方で、社債の償還による支出10,000百万円、自己株式の取得による支出2,305百万円、配当金の支払2,106百万円等による資金の減少があったことによるものであります。
(資本の財源及び資金の流動性)
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原料糖の購入費用のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものであります。
短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、社債及び金融機関からの長期借入を基本としております。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は19,906百万円となっております。
生産、受注及び販売の実績
(1)生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 前年同期比(%) |
砂糖事業(百万円) | 73,419 | 100.0 |
フードサイエンス事業(百万円) | 9,581 | 100.7 |
合計(百万円) | 83,001 | 100.1 |
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 前年同期比(%) |
砂糖事業(百万円) | 16,812 | 189.4 |
フードサイエンス事業(百万円) | 4,384 | 95.3 |
合計(百万円) | 21,196 | 157.3 |
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 前年同期比(%) |
砂糖事業(百万円) | 92,145 | 109.5 |
フードサイエンス事業(百万円) | 19,766 | 102.9 |
不動産事業(百万円) | 1,942 | 99.3 |
合計(百万円) | 113,854 | 108.1 |
相手先 | 前連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | ||
金額(百万円) | 割合(%) | 金額(百万円) | 割合(%) | |
三井物産㈱ | 49,578 | 47.1 | 49,041 | 43.1 |
双日㈱ | 10,359 | 9.8 | 10,209 | 9.0 |