(1)当連結会計年度の経営成績の分析
当連結会計年度のわが国経済は、雇用・所得環境の改善や旺盛なインバウンド需要などにより、緩やかな景気回復が見られた一方で、円安進行に起因した物価上昇の継続、不安定な国際情勢による景気下振れリスクなどを受けたほか、米国の政策動向に十分留意する必要があるなど、依然として先行き不透明な状況が続いております。
このような状況下、当社グループは、「中期経営計画-2026 Diversify into Nutrition &Health」の達成に向け、グループ全体の成長戦略「グループビジネスモデルの変革」と「経営資源の再配分」のもと、グループ内事業の最適化を図ることで、①国内砂糖事業の強靭化、②海外事業の拡大、③ライフ・エナジー事業の成長、④グループの持つ研究開発力の集積・強化、⑤持続可能な社会実現への貢献、の5つの柱を実現すべく、各種施策を推進してまいりました。
砂糖事業
海外粗糖相場は、1ポンド当たり22セント後半から始まり、一時はサトウキビ主要生産各国における生産増加見通しなどにより17セント半ばまで下落したものの、サトウキビ最大生産国ブラジルで発生した干ばつや山火事による減産懸念を材料に23セント後半まで急騰いたしました。その後、ブラジルやインドといったサトウキビ主要生産各国における不安定な天候を背景に、刻々と変化する生産見通しなどを受け上下し、18セント後半で当連結会計年度末を迎えました。また、国内市中相場は、期を通じて1キログラム当たり249円~251円で推移いたしました。
国内の精製糖販売は、家庭用需要において、原材料価格の高騰などに伴う食品値上げラッシュによる消費マインド委縮の影響を受けました。一方、業務用販売は、今夏の記録的な猛暑により飲料・冷菓などの需要が伸長し、師走以降は強い寒気の影響から、ホット飲料などの冬物商品向けが好調に推移いたしました。また、全体として、円安やエネルギー価格の高騰を受けた海上運賃、包装資材及び物流費などの高止まりを、販売単価の引き上げ浸透及び原材料の安定調達により吸収してまいりました。
国内の原料糖販売は、北海道糖業㈱(連結子会社)において、前連結会計年度における産糖量減に伴う販売減の影響を受けたものの、鹿児島県の生和糖業㈱及び沖縄県の石垣島製糖㈱(ともに連結子会社)においては生産増により損益が改善いたしました。
海外では、シンガポールのSIS’ 88 Pte Ltd(連結子会社)において、生産拠点の移転遅延などによる販売減やコスト増の影響を受けました。新生産拠点につきましては、6月にアラブ首長国連邦(UAE)、7月にベトナムにおいて、それぞれ開所が完了しております。
また、事業管理区分の見直しに伴い、当連結会計年度よりライフ・エナジー事業から移管した機能性商材では、パラチノース及びパラチニットに一部足踏みが見られたものの、さとうきび抽出物は食品用途、環境消臭用途を主として堅調に推移いたしました。
なお、2月より、DM三井製糖㈱(連結子会社)と和田製糖㈱との業務提携契約に基づき、DM三井製糖㈱は、和田製糖㈱製品の受託生産を開始いたしました。
以上の結果、砂糖事業は、売上高151,295百万円(前連結会計年度比5.0%増)、営業利益11,747百万円(前連結会計年度比317.7%増)となりました。なお、前連結会計年度比につきましては、前連結会計年度の数値を変更後のセグメント区分に組み替えて比較しております。
期中の砂糖市況
海外粗糖相場(ニューヨーク砂糖当限、1ポンド当たり)
始値 22.65セント 高値 23.71セント 安値 17.52セント 終値 18.85セント
国内市中相場(日本経済新聞掲載、東京上白大袋キログラム当たり)
期を通じて249円~251円で推移
ライフ・エナジー事業
栄養療法食品事業や、フードテック事業における食用色素などの販売増を受け、増収増益となりました。前連結会計年度より加わった、健康やからだづくりに関心のあるアクティブ層への栄養強化食を主とした活力健康食品事業における売上も業績に寄与しております。
また、事業管理区分の見直しに伴い、当連結会計年度より、従来ライフ・エナジー事業に区分しておりました機能性商材を砂糖事業に移管しております。
以上の結果、ライフ・エナジー事業は、売上高25,071百万円(前連結会計年度比3.4%増)、営業利益1,263百万円(前連結会計年度比111.5%増)となりました。なお、前連結会計年度比につきましては、前連結会計年度の数値を変更後のセグメント区分に組み替えて比較しております。
不動産事業
岡山地区・神戸長田地区の他、国内各地に有する不動産賃貸物件は順調に稼働し、グループ収益に貢献しております。また、当社本店ビル「Mita S-Garden」(東京都港区芝)の一部賃貸開始などにより、売上高2,418百万円(前連結会計年度比1.7%増)、営業利益829百万円(前連結会計年度比1.3%減)となりました。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は178,785百万円(前連結会計年度比4.7%増)、営業利益は13,840百万円(前連結会計年度比225.6%増)となりました。
営業外損益においては、フィンゴリモド「FTY720」の開発権及び販売権の許諾に基づくロイヤリティーを主とする受取ロイヤリティー608百万円を計上いたしました。加えて、タイ及び中国や国内の関連会社における損益改善などを受け、持分法による投資利益240百万円(前連結会計年度は549百万円の投資損失)を計上したことにより、経常利益は14,483百万円(前連結会計年度比48.1%増)となりました。また、関門製糖㈱、鳳氷糖㈱及び日糖産業㈱(全て連結子会社)における2026年9月末日を目途とする生産終了方針の決定に伴い、各社が保有する生産設備等に係る固定資産の一部について減損損失等を計上したことを受け、親会社株主に帰属する当期純利益は6,295百万円(前連結会計年度比25.5%減)となりました。
なお、当社は、2025年4月1日付で、DM三井製糖㈱(連結子会社)を吸収合併し、当社の商号を「DM三井製糖㈱」に変更いたしました。今後とも、実効的かつ最適なグループガバナンス体制を構築し、各事業の更なる成長とともに、より効率的で収益力のある企業グループを目指してまいります。
(2)経営成績に重要な影響を与える要因についての分析
当社グループは、主力の砂糖事業において、原料となる粗糖が相場商品であること、また製品価格も競争や市場環境等により変動する場合があり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。このような事業環境下、当社グループでは適切な原料糖調達と適正販売価格帯の維持に努めてまいりました。
(3)経営上の目標指標に関する分析
当社グループでは、ROE(自己資本当期純利益率)7%以上を経営目標達成のための客観的な指標の一つとしております。当連結会計年度のROEは5.6%となりました。これは主として、連結子会社における生産終了方針の決定に伴い、各社が保有する生産設備等に係る固定資産の一部について、減損損失等の特別損失を計上したことによるものであります。また、将来の成長に向けて取得してきた事業・資産に伴うのれん等の償却負担が増大している財務上の特徴を踏まえ、キャッシュ創出力を表すEBITDA指標を参考として、当社グループの財務の実態把握に努めてまいります。当連結会計年度のEBITDAは20,922百万円となりました。
配当金額につきましては、引き続き株主の皆様に対する利益の還元を経営の最重要課題の一つとして位置づけ、将来の成長に向けた事業展開と、経営基盤強化のための内部留保の充実にも配慮しつつ、安定的かつ継続的な配当の実施を基本方針としております。その上で、年間配当金額は、連結配当性向が100%を超えない限り、最低配当金額として1株当たり60円の配当を実施することとし、都度の経営環境を総合的に勘案し、現金配当と機動的な資本政策を組み合わせた総還元性向50%を目処とした株主還元を行ってまいりました。
(4)キャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、営業活動で22,592百万円増加、投資活動で5,635百万円減少、財務活動で1,693百万円減少したことにより、前連結会計年度末に対して15,322百万円増加し、40,099百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次の通りであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は22,592百万円(前連結会計年度は資金の増加12,739百万円)となりました。
これは主に税金等調整前当期純利益9,942百万円、減価償却費5,942百万円、減損損失4,275百万円、売上債権の減少3,366百万円等による資金の増加があった一方で、棚卸資産の増加2,747百万円、法人税等の支払658百万円等による資金の減少があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金の減少は5,635百万円(前連結会計年度は資金の減少6,665百万円)となりました。
これは主に投資有価証券の取得による支出1,738百万円、工場設備等に係る有形固定資産の取得による支出3,880百万円等による資金の減少があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金の減少は1,693百万円(前連結会計年度は資金の減少8,990百万円)となりました。
これは主に短期借入れによる収入14,376百万円、長期借入れによる収入3,354百万円等による資金の増加があった一方で、短期借入金の返済による支出12,840百万円、長期借入金の返済による支出1,624百万円、配当金の支払4,370百万円等による資金の減少があったことによるものであります。
(資本の財源及び資金の流動性)
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原料糖の購入費用のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものであります。
短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、社債及び金融機関からの長期借入を基本としております。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は48,621百万円となっております。
生産、受注及び販売の実績
(1)生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) | 前年同期比(%) |
砂糖事業(百万円) | 128,523 | 114.2 |
ライフ・エナジー事業(百万円) | 12,744 | 100.6 |
合計(百万円) | 141,267 | 112.8 |
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) | 前年同期比(%) |
砂糖事業(百万円) | 26,642 | 108.6 |
ライフ・エナジー事業(百万円) | 4,515 | 106.4 |
合計(百万円) | 31,157 | 108.3 |
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) | 前年同期比(%) |
砂糖事業(百万円) | 151,295 | 105.0 |
ライフ・エナジー事業(百万円) | 25,071 | 103.4 |
不動産事業(百万円) | 2,418 | 101.7 |
合計(百万円) | 178,785 | 104.7 |
相手先 | 前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) | ||
金額(百万円) | 割合(%) | 金額(百万円) | 割合(%) | |
三井物産㈱ | 39,686 | 23.2 | 28,682 | 16.0 |