有価証券報告書-第23期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」といいます。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当社グループが当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績の概況、認識及び分析・検討内容
①全般的状況
当連結会計年度の世界経済は、米国での景気回復が継続した一方、米国の通商政策、中国経済の減速、地政学的なリスクなど、世界経済の変動に留意すべき状況が継続しました。また、第4四半期では新型コロナウイルス感染症の流行によって影響を受けています。
日本経済においては、雇用・所得環境の改善等により、総じて緩やかな回復基調が継続しましたが、現在も続く新型コロナウイルス感染症の流行による影響など、今後の先行きに不透明感や停滞感が増してまいりました。
化学工業界においては、原油価格の変動はあったものの、堅調な国内需要を背景に、国内のナフサクラッカーは高水準で稼働しました。ただし、年度終盤では新型コロナウイルス感染症の流行による影響を受け、稼働率の低下が見られました。
このような情勢のもとでも、当社グループは、2025年度を見据えた長期経営計画に基づき、成長3領域の「モビリティ」、「ヘルスケア」、「フード&パッケージング」の拡大・成長、「次世代事業」の創出・育成、「基盤素材」領域の更なる競争力強化に取り組みました。
モビリティ領域では、自動車やICT(情報通信技術)業界において、軽量化、電動化、快適性といった新しいニーズが拡大しています。自動車のバンパーに用いられるポリプロピレン・コンパウンドでは、欧州初の自社生産拠点を設立し、現在営業運転開始に向けて準備をしております。また、自動車のバックドアなどの金属代替により軽量化に貢献する「ガラス長繊維強化ポリプロピレン」は米国及び日本にて製造拠点を立ち上げ、稼働を開始しました。さらに、2018年1月に連結子会社としたグローバル開発支援企業である株式会社アークとともに、顧客起点でのソリューション提供力の強化に取り組みました。
ヘルスケア領域では、先進国の少子高齢化や新興国の経済成長に伴い、健康への関心が高まり、個人の志向やニーズも多様化しています。世界トップシェアのメガネレンズ材料では堅調な販売を継続するとともに、中国やインドにおける採用拡大へ取り組みました。不織布においては、衛生材料用途で培った技術を産業材料用途へ展開し、ろ過フィルター等に用いるナノ不織布の能力を増強しました。
フード&パッケージング領域では、世界の人口増加に伴う食糧の確保が社会課題となっています。また、アジアの生活水準向上によって、パッケージング分野での高機能化や環境負荷低減といったニーズが高まっています。機能性フィルム・シートにおいては、半導体製造工程用の保護テープとして世界トップシェアを有する「イクロステープ®」の新工場を、需要地である台湾にて完工し、供給能力を1.5倍としました。農薬においては、ブラジルにおけるジノテフランの農薬登録を取得し初出荷する等、グローバル展開を加速しました。
石化・基礎化学品を中心とする基盤素材領域では、自動車、住宅、家電、インフラ、包装をはじめ、様々な分野に素材を提供しています。当連結会計年度は海外市況の変動や、台風等の影響を受けましたが、差別化製品の拡充や地産地消化など、競争力強化の取り組みを進めました。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響により、各セグメント領域において販売数量の減少等の影響が出ております。当社においては、グループ全体に亘る在庫の圧縮及び固定費の一層の削減等を行い、損益への悪影響を最小限に留める努力を行っております。
これらの取組みにより、当連結会計年度の業績は以下のとおりとなりました。
| 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 親会社株主に帰属する当期純利益 | |
| 当連結会計年度(億円) | 13,390 | 716 | 655 | 379 |
| 前連結会計年度(億円) | 14,829 | 934 | 1,030 | 761 |
| 増減率(%) | △9.7 | △23.3 | △36.4 | △50.1 |
売上高は、前連結会計年度に比べ1,439億円減(9.7%減)の1兆3,390億円となりました。これは、ナフサなどの原燃料価格の下落に伴う販売価格下落の影響等があったことに加え、新型コロナウイルス感染症の影響等により販売数量が減少したことなどによるものです。
海外売上高は6,074億円となり、売上高全体に占める割合は前期に比べ0.1ポイント増の45.4%となりました。

営業利益は、前連結会計年度に比べ218億円減(23.3%減)の716億円となりました。これは、交易条件の悪化に加え、新型コロナウイルス感染症の影響等により販売数量が減少したことや固定費の増加などがあったことによるものです。
なお、当連結会計年度の為替レートは109円/$、国産ナフサ価格は42,900円/KLとなりました。
経常利益は、前連結会計年度に比べ375億円減(36.4%減)の655億円となりました。これは、営業利益の減少に加え、持分法による投資利益が減少したことなどによるものです。
特別利益・損失は、当社が出資しているNghi Son Refinery and Petrochemical LLCにおける業績低迷により出資金評価損を計上したものの、退職給付信託設定益の計上があったことなどにより、前連結会計年度に比べ7億円増の30億円の利益となりました。
以上により、税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度に比べ368億円減(35.0%減)の685億円となりました。法人税等合計は、新型コロナウイルス感染症の影響を将来の計画に織り込んだ上で繰延税金資産の回収可能性を見直した結果、繰延税金資産の一部を取崩すことになったことなどにより、34億円増の222億円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ382億円減(50.1%減)の379億円、1株当たり当期純利益は194.94円となりました。
②セグメント別の状況
セグメント別の業績は、次のとおりであります。
(モビリティ)
モビリティセグメントの売上高は、前連結会計年度に比べ278億円減の3,676億円、売上高全体に占める割合は27%となりました。また、営業利益は、主に自動車向けの需要鈍化等により、前連結会計年度に比べ35億円減の392億円となりました。以上により、セグメント全体では、減収・減益となりました。
自動車部品及び樹脂改質材用途を中心とするエラストマーは、アジアを中心に需要が鈍化し減収となりました。
機能性コンパウンド製品は、欧米・中国での自動車生産減速の影響を受け、減収となりました。
機能性ポリマーは、全般としてICT(情報通信技術)関連需要が停滞する中で確実な需要を獲得し、販売が堅調に推移しました。
海外ポリプロピレン・コンパウンド事業は、グローバルな自動車生産の減速に加え、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、減収となりました。
ソリューション事業は、欧州の開発需要が減少する中で日系顧客の開発需要を獲得し、販売が堅調に推移しました。
(ヘルスケア)
ヘルスケアセグメントの売上高は、前連結会計年度に比べ36億円減の1,430億円、売上高全体に占める割合は11%となりました。一方、営業利益は、固定費の増加があったものの、主に販売数量の増加により、前連結会計年度に比べ2億円増の138億円となりました。以上により、セグメント全体では、減収・増益となりました。
ビジョンケア材料のメガネレンズ用材料は、販売が堅調に推移しました。
不織布は、販売数量が概ね前連結会計年度並で推移しました。
歯科材料は、販売は全体では概ね安定的に推移しましたが、一部地域で新型コロナウイルス感染症拡大の影響が生じています。
(フード&パッケージング)
フード&パッケージングセグメントの売上高は、前連結会計年度に比べ56億円減の1,938億円、売上高全体に占める割合は15%となりました。一方、営業利益は、固定費の増加等があったものの、交易条件の改善により、前連結会計年度に比べ3億円増の181億円となりました。以上により、セグメント全体では、減収・増益となりました。
コーティング・機能材は、販売数量が減少したものの、固定費の減少や交易条件の改善がありました。
機能性フィルム・シートは、包装用フィルム分野における販売数量は減少したものの、産業用フィルム分野における販売は堅調に推移しました。
農薬は、販売数量が減少しました。
(基盤素材)
基盤素材セグメントの売上高は、前連結会計年度に比べ996億円減の6,169億円、売上高全体に占める割合は46%となりました。また、営業利益は、海外市況の影響等により、前連結会計年度に比べ191億円減の87億円となりました。以上により、セグメント全体では、減収・減益となりました。
ナフサクラッカーの稼働率は、市原工場の設備不具合及び台風の影響により前連結会計年度に比べ低下しました。また、ポリエチレン及びポリプロピレンは、主に包材用途で需要の鈍化に加え、新型コロナウイルス感染症拡大に起因するインバウンド需要減少の影響を受けました。
オレフィン及びフェノールの海外市況は、前連結会計年度を下回る水準で推移しました。
(その他)
当セグメントの売上高は、前連結会計年度に比べ73億円減の177億円、売上高全体に占める割合は1%となりました。また、営業損失は、前連結会計年度に比べ6億円増の20億円の損失となりました。
売上高と営業利益のセグメント別増減内訳はそれぞれ以下のとおりであります。
(売上高)
| (単位:億円) |
| 第22期 | 第23期 | 増減 | |||
| 計 | 数量差 | 価格差 | |||
| モビリティ | 3,954 | 3,676 | △278 | 8 | △286 |
| ヘルスケア | 1,466 | 1,430 | △36 | 26 | △62 |
| フード&パッケージング | 1,994 | 1,938 | △56 | △38 | △18 |
| 基盤素材 | 7,165 | 6,169 | △996 | △228 | △768 |
| その他 | 250 | 177 | △73 | △69 | △4 |
| 消去又は全社 | - | - | - | - | - |
| 合計 | 14,829 | 13,390 | △1,439 | △301 | △1,138 |
(営業利益)
| (単位:億円) |
| 第22期 | 第23期 | 増減 | ||||
| 計 | 数量差 | 交易条件 | 固定費差他 | |||
| モビリティ | 427 | 392 | △35 | △23 | 6 | △18 |
| ヘルスケア | 136 | 138 | 2 | 10 | 1 | △9 |
| フード&パッケージング | 178 | 181 | 3 | 0 | 18 | △15 |
| 基盤素材 | 278 | 87 | △191 | △64 | △135 | 8 |
| その他 | △14 | △20 | △6 | - | - | △6 |
| 消去又は全社 | △71 | △62 | 9 | - | - | 9 |
| 合計 | 934 | 716 | △218 | △77 | △110 | △31 |
(注) 交易条件=価格差+変動費差(主として原燃料価格差)
③経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因は、以下のとおりです。なお、当社グループは、モビリティ、ヘルスケア、フード&パッケージング及び基盤素材の各セグメントにおいて、多種多様な製品を取り扱っており、それぞれの製品によって経営成績に影響を与える要因及びその程度は異なります。
a 売上高について
売上高は、販売数量及び販売価格等により変動します。
販売数量については、主に顧客の状況、市場環境及び競合他社の事業展開等の要因によって影響を受ける可能性があります。
販売価格については、主にナフサ等の原燃料価格の変動の製品価格への転嫁状況、製品市況の変動及び為替変動等の要因によって影響を受ける可能性があります。
b 営業利益について
営業利益は、販売数量、交易条件及び固定費等により変動します。
販売数量については、主に顧客の状況、市場環境及び競合他社の事業展開等の要因によって影響を受ける可能性があります。
交易条件については、主にナフサ等の原燃料価格の変動、原燃料価格の製品価格への転嫁状況、製品市況の変動及び為替変動等の要因によって影響を受ける可能性があります。
固定費については、主に生産設備の新増設、研究開発の状況等の要因によって影響を受ける可能性があります。
④生産、受注及び販売の実績
a 生産実績及び受注実績
当社グループの生産品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多いため、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
このため生産実績及び受注実績については、「(1) 経営成績の概況、認識及び分析・検討内容 ②セグメント別の状況」におけるセグメント別の業績に関連付けて示しております。
b 販売実績
| セグメントの名称 | 当連結会計年度 自 2019年4月1日 至 2020年3月31日 | 前年同期比(%) |
| モビリティ(百万円) | 367,626 | △7.0 |
| ヘルスケア(百万円) | 143,016 | △2.4 |
| フード&パッケージング(百万円) | 193,822 | △2.8 |
| 基盤素材(百万円) | 616,878 | △13.9 |
| 報告セグメント計(百万円) | 1,321,342 | △9.4 |
| その他(百万円) | 17,645 | △29.4 |
| 合計(百万円) | 1,338,987 | △9.7 |
(注)1.主な相手先の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
| 相手先 | 前連結会計年度 自 2018年4月1日 至 2019年3月31日 | 当連結会計年度 自 2019年4月1日 至 2020年3月31日 | ||
| 金額(百万円) | 割合(%) | 金額(百万円) | 割合(%) | |
| 三井物産㈱ | 264,168 | 17.8 | 225,225 | 16.8 |
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 財政状態の概況、認識及び分析・検討内容
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ210億円減の1兆4,801億円となりました。
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べ27億円増の8,721億円となり、このうち、有利子負債は692億円増の5,542億円となりました。この結果、総資産に対する有利子負債の比率は前連結会計年度末に比べ5.1ポイント増の37.4%となりました。
なお、国際財務報告基準(IFRS)及び米国基準を適用している在外連結子会社において、当連結会計年度よりIFRS第16号「リース」及びASC Topic842「リース」を適用した影響で、使用権資産及びリース債務の残高が増加しております。
| 第19期 | 第20期 | 第21期 | 第22期 | 第23期 | |
| 有利子負債残高(億円) | 4,730 | 4,399 | 4,637 | 4,850 | 5,542 |
| 有利子負債比率(%) | 37.6 | 33.2 | 32.4 | 32.3 | 37.4 |
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べ237億円減の6,080億円となり、自己資本比率は前連結会計年度末に比べ1.2ポイント減の35.6%となりました。
以上により、当連結会計年度末のネットD/Eレシオ(ネット有利子負債(有利子負債-現預金・譲渡性預金・長期性預金)/自己資本)は、前連結会計年度末に比べ0.08ポイント増の0.76となりました。
ネットD/Eレシオの推移は以下のとおりです。

(3) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性
①キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、375億円増加し、当連結会計年度末には1,473億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によって得られた資金は、前連結会計年度に比べ55億円増の1,150億円となりました。これは主に、運転資金の改善などによるものです。
この結果、営業キャッシュ・フローに対する有利子負債の比率は前連結会計年度の4.4から4.8に増加し、インタレスト・カバレッジ・レシオは19.9倍から20.8倍に増加しました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によって使用された資金は、前連結会計年度に比べ209億円増の852億円となりました。これは主に、設備投資による支出の増加があったことなどによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によって得られた資金は、前連結会計年度に比べ231億円改善の90億円となりました。これは主に、コマーシャル・ペーパーの発行による収入が増加したことなどによるものです。
なお、キャッシュ・フローに関する指標は以下のとおりであります。
| 第19期 | 第20期 | 第21期 | 第22期 | 第23期 | |
| 自己資本比率(%) | 30.3 | 33.9 | 35.7 | 36.8 | 35.6 |
| 時価ベースの自己資本比率(%) | 29.8 | 41.5 | 46.6 | 34.7 | 26.5 |
| キャッシュ・フロー対有利子負債比率 | 3.2 | 4.4 | 5.6 | 4.4 | 4.8 |
| インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) | 20.7 | 17.3 | 14.8 | 19.9 | 20.8 |
(注)自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
※各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
※株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
※キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。
※有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
キャッシュ・フローの推移は以下のとおりです。

②資金の調達について
当社グループの資金調達については、
1)高い格付けを維持し、資金需要に応じて都度、社債、借入及びコマーシャル・ペーパーを主体に低コストの資金調達を行うこと。
2)一定割合の間接金融を導入し、資金調達の安定化を図ること。
3)売上債権流動化等の資産の流動化により、資金調達の多様化を図ること。
を基本的な考え方として実施しております。
また、子会社(日米欧、中国、シンガポール)の資金調達については、原則として、当社及び地域統括会社を通じたグループファイナンスを行うことにより、グループ全体での有利子負債削減と資金効率の向上に努めております。
③資金の流動性について
資金の流動性については、資産効率を考慮しながら、手元流動性を確保すると共に、コミットメント・ライン、当座貸越枠等の代替調達手段を備えております。
なお、当社は2020年3月に200億円のシンジケートローン契約を締結する等、長期で安定的な資金調達を行うとともに、複数の金融機関による400億円のコミットメントライン(全額未使用)を有しており、流動性を十分に確保しております。また、コミットメントラインについては、新型コロナウイルス感染症による影響が長期化・深刻化したワーストシナリオを想定し、設定金額を増額しました。
④資本政策のための基本方針
当社は、資本コストを意識した経営が重要との認識の下、投資効率性の向上と資本コストの低減に向けた取り組みを通じて、企業価値の最大化を図っております。投資効率性向上の取り組みとして、当社は「ポートフォリオマネジメント」、「KPIマネジメント」、「投資評価適正化」を推進しています。一方資本コスト低減に向けては、「収益ボラティリティの低減」、「最適資本構成の実現」、「投資家とのコミュニケーション強化」に取り組んでおります。
このうち、最適資本構成については、財務健全性と資本コスト最小化を両立できる資本構成を追及しております。足元のネットD/Eレシオの状況はリースの会計処理の適用の影響で増加しておりますが、営業キャッシュ・フローは高水準な状況が継続しております。
今後につきましては、現状の財政状態の水準を維持しつつ、積極投資を継続して事業の成長・拡大による更なる企業価値の向上を推進してまいります。
一方で当社は、株主の皆様への利益還元を経営上の重要課題と位置づけています。株主還元方針としては、業績の動向を踏まえた安定的かつ継続的な増配に加えて、株価水準や市場環境に応じた機動的かつ柔軟な自己株式の取得により、総還元性向30%以上を目指してまいります。なお、新型コロナウイルス感染症流行の当社事業環境に及ぼす影響が不透明であることから、翌連結会計年度の配当金額については未定としております。

(4) 目標とする経営指標の達成状況等
2025年度長期経営目標に対する2019年度の達成・進捗状況は以下のとおりです。
また、2018年度より投下資本利益率(ROIC)についても新たに8%以上という目標を設定しました。今後これらの目標達成に向けた取り組みを加速してまいります。2021年度に7.5%へ改善し、全てのセグメントで資本コストを上回ることを見込んでおります。
| 当連結会計年度(計画) | 当連結会計年度 (実績) | 当連結会計年度 (計画比) | 2025年度長期経営目標 | |
| 営業利益 | 1,050億円 | 716億円 | 334億円減 (31.8%減) | 2,000億円 |
| 売上高 | 15,400億円 | 13,390億円 | 2,010億円減 (13.1%減) | 20,000億円 |
| 売上高営業利益率 (ROS) | 6.8% | 5.3% | 1.5ポイント減 | 10% |
| 自己資本利益率 (ROE) | 13.1% | 7.0% | 6.1ポイント減 | 10%以上 |
| Net D/E | 0.65 | 0.76 | 0.11ポイント増 | 0.8以下 |
| 投下資本利益率 (ROIC) | 6.4% | 4.4% | 2.0ポイント減 | 8%以上 |
| 総還元性向 | 30%以上 | 77.2% | 47.2%増 | 30%以上 |
(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、当連結会計年度における資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える将来に関する見積りを実施する必要があります。経営者は、これらの見積りについて、当連結会計年度末時点において過去の実績やその他の様々な要因を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、将来においてこれらの見積りとは異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表作成において採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しておりますが、特に次の重要な会計方針が、連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えております。
①棚卸資産
当社グループの保有する棚卸資産について、「棚卸資産の評価に関する会計基準」に基づき、厳格な処理を実施しております。回収可能価額の評価を行うに当たっては、製品、商品については正味売却価額に基づき、原材料等については購入価格に基づき、それぞれ収益性の低下を検討しております。
当社グループの保有する棚卸資産は、価格変動の著しい経済環境の影響を受ける傾向にあるため、市場価格が下落した場合には、棚卸資産の簿価を切り下げ、売上原価を増加させることになります。特に原油価格が下落した場合は、当社が有する原材料のナフサの価格も連動して下落する傾向にあり、収益性の低下を検討することになります。
また、従来より一定期間を超えて在庫として滞留する棚卸資産についても簿価を切り下げており、在庫実態に変化が生じた場合には、同様に棚卸資産の簿価を切り下げることとなります。
②投資有価証券
当社グループの保有する投資有価証券について、従来より減損処理に関する基準を設けており、これに基づいて厳格な処理を実施しております。市場価格のある投資有価証券については、期末日における被投資会社の株価が取得原価に比べ50%以上下落している場合は原則として減損処理を行い、30%以上50%未満下落している場合は2年間継続して下落率が30%以上の場合又は3年程度の期間にわたり業績が著しく低迷している場合に「回復可能性なし」と判断して減損処理を行っております。市場価格のない投資有価証券については、被投資会社の純資産額を基にした1株当たりの実質価値を見積り、株価の代わりに用いて検討することで市場価格のある投資有価証券と同等の厳格な減損処理を行っております。
被投資会社の株価もしくは業績の著しい低迷があった場合には、投資有価証券の評価損を計上する可能性があります。
③固定資産
当社グループの保有する固定資産について、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき、適時かつ厳格な処理を実施しております。
減損の測定に至った場合に見積ることになる回収可能価額は、事業に供している資産については正味売却価額もしくは経済的残存使用年数における将来キャッシュ・フローを使用し、遊休及び休止資産については主として正味売却価額を使用しております。将来キャッシュ・フローについては、予算等社内における管理会計の計画数値を基に見積り、正味売却価額については不動産鑑定評価額等から関連する経費等を差し引いた額で見積っております。また当社グループにおいては、減損リスクの管理として、新たな案件発生の可能性の把握と対応及び既に減損処理した案件についての定期的な回収可能価額の見直しを行っております。
事業損益見込の悪化、新たな遊休及び休止資産の発生、並びに正味売却価額の変更等があった場合には、回収可能価額を見積ることになり、減損損失を計上する可能性があります。
④繰延税金資産
当社グループが計上している繰延税金資産は、将来減算一時差異等に関するものであり、定期的かつ合理的に回収可能性の評価のための見積りを実施しております。繰延税金資産の回収可能性は、主に将来の課税所得の見積りによるところが大きく、課税所得の予測は将来の市場動向や当社グループの事業活動の状況及びその他の要因により変化します。繰延税金資産の回収可能性に不確実性がある場合、将来回収される可能性が高いと考えられる金額までを繰延税金資産に計上しています。
当該見積りについて、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する繰延税金資産及び法人税等調整額の金額に重要な影響を与える可能性があります。
当連結会計年度においては新型コロナウイルス感染症の影響を将来の計画に織り込んだ上で繰延税金資産の回収可能性を見直した結果、繰延税金資産の一部を取崩しましたが、将来において見直しを実施した際の前提を上回る悪影響があった場合、将来において繰延税金資産を再度取崩す可能性があります。
なお、「第5 経理の状況」の連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項及び重要な会計方針に記載のとおり、当社及び一部の子会社は、連結納税制度を適用しており、同制度を適用する場合の会計処理を行っております。
⑤環境対策引当金
環境対策を目的とした工事等について具体的な実施計画が策定された場合には、計画に関する資料を入手の上、引当金として計上すべき金額を合理的に算定しております。また、工事等の計画に重要な変更が生じた場合には見直しを行うこととしております。
この見直しの実施、あるいは新たな案件の発生により引当金残高が増減し、結果、税金等調整前当期純損益が増減する可能性があります。
⑥退職給付に係る負債
当社グループの従業員の退職給付債務及び退職給付費用は、簡便法を採用している連結子会社を除き、割引率、退職率、昇給率、期待運用収益率等の計算基礎を決定の上、数理計算結果に基づき算定しております。
会計数値の計算上重要な要素となる計算基礎については、当社の割引率を長期国債の実績利回りに基づき決定している他、それぞれ基準を設定の上、定期的に見直しを行っております。
この見直しの結果、計算基礎を変更する場合の他、年金資産の期待運用収益と実際の運用成果との差など予め定めた基礎率と実際の数値とに差が生じる場合には、数理計算上の差異が発生し、売上原価及び一般管理費を増減させる可能性があります。また、数理計算上の差異については、一定の年数(10年~13年)による定額法により按分した額をそれぞれ発生の翌連結会計年度から費用処理することとしております。
未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用については、税効果を調整の上、純資産の部におけるその他の包括利益累計額の退職給付に係る調整累計額に計上しております。
⑦変動性のある対価を含む取引
当社グループが主原料として扱うナフサは、中東地域の情勢やその他世界の経済情勢の影響により、その価格が急激に変動する可能性があります。そのため、ナフサ価格の変動を当社製品の販売価格に転嫁するために、その変動を受けて事後的に販売価格を決定する契約を締結しております。このような契約に基づく取引は、販売価格に変動性のある金額を含んでおり、販売当初に仮で設定した製品価格に対し、決算時に事後の決定価格を合理的に見積り、売上高を見直しております。