有価証券報告書-第112期(2023/04/01-2024/03/31)

【提出】
2024/06/14 15:07
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【項目】
167項目
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)事業の概況
○ 当社グループは2021年4月よりスタートした中期経営計画「EWAY Future & Beyond」に基づき、「患者様とそのご家族」から「患者様と生活者の皆様」に視点を拡大し、人々の健康憂慮の解消と医療較差の是正に向けたソリューションをお届けすべく、他産業との協業によるエコシステムの構築をめざしています。また、持続的な企業価値向上のため、人財の価値を最大限に引き出すべく人的資本経営を推進しています。企業理念・経営戦略と連動した統合人事戦略を策定し、国籍・性別・年齢などを問わず多様な価値観を持つ人財が活躍できる風土づくりを進め、イノベーションの創出を目指しています。
○ 疾患の根本原因に紐づくゲノム情報、病態生理学に基づいたDeep Human Biology Learning(DHBL)創薬体制のもと、当社グループのみが有するヒューマンバイオロジーの知見や、高質な臨床サンプルから得られるゲノム情報に基づいて、注力分野である神経変性疾患および難治性がんに加えて、顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases: NTDs)をはじめとするグローバルヘルス分野における創薬を推進しています。
○ 認知症領域では、2023年度においてアルツハイマー病(AD)治療剤「レケンビ」は米国、日本、中国で承認を取得し、さらに世界各国における承認の取得とアクセス拡大に向けた取り組みを加速しています。また、すべての当事者様の健康憂慮の解消と医療較差の是正に貢献すべく、中国における認知症を対象としたワンストップオンライン健康プラットフォームの構築や、日本、アジアにおける他産業や非営利団体との提携といったソリューションを備えたエコシステムの構築を進めています。
○ がん領域では、抗がん剤「レンビマ」について、Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAの共同販促による既存適応症における価値最大化に取り組んでいます。また、肝動脈化学塞栓療法併用肝細胞がん、胃がん、食道がんなど、複数の適応追加に向けた臨床試験(LEAP試験)が進行中です。
○ これらの活動の結果、2023年度の売上収益は7,418億円となりました。うち、「レンビマ」は2,976億円、不眠症治療剤「デエビゴ」は418億円、「レケンビ」は43億円となり、前年度から大幅な成長を遂げました。営業利益は、「レケンビ」への患者様アクセス拡大や新たな適応、製剤の開発に対する投資を継続する一方、研究開発費、販売管理費の総額については、財務規律に基づいた管理を行った結果、534億円と前期から大幅な成長を果たしました。安定した利益およびフリー・キャッシュ・フロー創出により、2023年度末におけるNet DER(負債比率)は-0.19倍、自己資本比率は62.8%と健全な財務ポジションを堅持しており、成長投資と安定配当を両立しています。
(2)経営成績の状況
○ 当期(2023年4月1日~2024年3月31日)の連結業績は、次のとおりです。
(単位:億円、%)
2022年度2023年度前期比
売上収益7,4447,41899.6
売上原価1,7781,55387.3
売上総利益5,6665,864103.5
販売費及び一般管理費3,5833,744104.5
研究開発費1,7301,69097.7
営業利益400534133.4
税引前当期利益450618137.3
法人所得税△118180-
当期利益56843877.0
親会社の所有者に帰属する当期利益55442476.5
当期包括利益9691,228126.7
基本的1株当たり当期利益193円31銭147円86銭76.5

○ 売上収益は、抗がん剤「レンビマ」および不眠症治療剤「デエビゴ」(英名「Dayvigo」)が引き続き伸長したことに加え、選択的エストロゲン受容体分解薬elacestrant(一般名)に係る経済的収益受領権の譲渡による一時金を計上した一方で、前期に抗てんかん剤「フィコンパ」(英名「Fycompa」)の米国における権利の譲渡による一時金を計上した影響などにより、前期と同水準となりました。なお、Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA(以下 米メルク社)からの販売マイルストンペイメント(当期189億円、前期167億円)を計上しました。医薬品事業の売上収益は6,915億円(前期比101.0%)となりました。
○ グローバルブランドの売上収益は、「レンビマ」が2,976億円(前期比119.3%)、「デエビゴ」が418億円(同142.3%)、抗がん剤「ハラヴェン」が375億円(同90.7%)、「フィコンパ」が259億円(同69.7%)となりました。アルツハイマー病(AD)治療剤「レケンビ」の売上収益は43億円(前期は0.2億円)となりました。
○ 販売費及び一般管理費は、AD治療剤「Aduhelm」および米国における「Fycompa」の関連費用が無くなった一方で、「レケンビ」の米国と日本での上市による販売費の増加や「レンビマ」の売上拡大に伴う米メルク社への折半利益の支払いが増加したことなどにより、増加となりました。
○ 研究開発費は、「レケンビ」への積極的な資源投入を行った一方で、パートナーシップモデルの活用や優先度を踏まえた資源投入等により効率性を高めた結果、減少となりました。
○ 以上に加え、製品ミックスの改善により売上総利益が増加するとともに、精神疾患治療剤「Loxapac」およびパーキンソン病治療剤「Parkinane LP」に係るフランス等における権利の譲渡益をその他の収益に計上した結果、営業利益は大幅な増益となりました。また、医薬品事業のセグメント利益は3,436億円(前期比105.5%)となりました。
○ 当期利益については、税引前当期利益が大幅な増益となった一方で、前期に一時的な要因により税金費用の減少が生じた影響で、減益となりました。
[セグメントの状況]
(各セグメントの売上収益は外部顧客に対するものです)
当社グループは、セグメントを医薬品事業とその他事業に区分しており、医薬品事業を構成する日本、アメリカス(北米)、中国、EMEA(欧州、中東、アフリカ、ロシア、オセアニア)、アジア・ラテンアメリカ(韓国、台湾、インド、アセアン、中南米等)の5つの事業セグメントを報告セグメントとしています。なお、当連結会計年度における日本事業の再編に伴い、一般用医薬品等事業を日本医薬品事業へ統合しています。前連結会計年度のセグメント情報は、当該変更を反映しています。
<日本医薬品事業>○ 売上収益は2,169億円(前期比90.8%)、セグメント利益は728億円(同99.9%)となりました。売上収益の主な内訳は、医療用医薬品が1,943億円(同90.2%)、一般用医薬品等が227億円(同96.5%)でした。
○ 品目別売上収益については、ニューロロジー領域で、「デエビゴ」が355億円(前期比146.7%)、「フィコンパ」が69億円(同114.8%)と、共に大幅に伸長しました。オンコロジー領域では、「レンビマ」が155億円(同113.3%)と大幅に伸長し、「ハラヴェン」は79億円(同93.7%)となりました。ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体「ヒュミラ」は、2023年6月にアッヴィ合同会社(東京都)との共同販促契約が満了した影響により134億円(同28.4%)となりました。ヤヌスキナーゼ阻害剤「ジセレカ」は126億円(同171.2%)と大幅に伸長し、慢性便秘症治療剤「グーフィス」は70億円(同106.4%)と伸長しました。一般用医薬品等では、チョコラBBグループの売上収益が150億円(同106.1%)と伸長しました。
○ 2023年12月、「レケンビ」を新発売しました。
<アメリカス医薬品事業>○ 売上収益は2,324億円(前期比109.2%)、セグメント利益は1,472億円(同110.3%)となりました。
○ 品目別売上収益については、ニューロロジー領域で、「Dayvigo」は51億円(前期比108.3%)と伸長しました。オンコロジー領域では、「レンビマ」が2,041億円(同126.3%)と大幅に伸長し、「ハラヴェン」は124億円(同89.1%)となりました。
<中国医薬品事業>○ 売上収益は1,119億円(前期比101.0%)、セグメント利益は577億円(同103.7%)となりました。
○ 品目別売上収益については、「レンビマ」がジェネリック品の影響などにより269億円(前期比83.5%)となりました。めまい・平衡障害治療剤「メリスロン」は、外部パートナーとの連携で販路が拡大した影響などにより132億円(同134.1%)と大幅に伸長しました。末梢性神経障害治療剤「メチコバール」は126億円(同87.1%)、プロトンポンプ阻害剤「パリエット」は82億円(同98.4%)となり、胃炎・胃潰瘍治療剤「セルベックス」は73億円(同144.9%)と大幅に伸長しました。
○ 2023年10月、香港において、パーキンソン病治療剤「エクフィナ」を新発売しました。
○ 売上収益は760億円(前期比105.3%)、セグメント利益は420億円(同101.0%)となりました。
○ 品目別売上収益については、ニューロロジー領域で、「Fycompa」は128億円(前期比109.4%)と伸長しました。オンコロジー領域では、「レンビマ/Kisplyx」が382億円(同123.4%)と大幅に伸長し、「ハラヴェン」は117億円(同85.8%)となりました。
<アジア・ラテンアメリカ医薬品事業>○ 売上収益は542億円(前期比108.8%)、セグメント利益は240億円(同108.4%)となりました。
○ 品目別売上収益については、「レンビマ」が130億円(前期比116.8%)と伸長しました。アルツハイマー型認知症治療剤「アリセプト」は135億円(同103.8%)と伸長しました。
○ 2023年10月に台湾、同年11月に韓国において、「ジセレカ」を新発売しました。
○ 2024年2月、シンガポールにおいて、「グーフィス」を新発売しました。
(3)財政状態の状況
○ 資産合計は、1兆3,938億円(前期末より1,304億円増)となりました。円安の進行により海外連結子会社の資産が増加したことに加え、「レケンビ」の生産を進めたことなどにより棚卸資産が増加したほか、パートナーに対する未収金等が増加しました。
○ 負債合計は、4,948億円(前期末より540億円増)となりました。営業債務及びその他の債務が減少した一方で、サステナビリティ・リンク・ローンを実行したことにより借入金が増加したことに加え、未払費用が増加しました。
○ 資本合計は、8,990億円(前期末より764億円増)となりました。円安の進行に伴い在外営業活動体の換算差額が増加しました。
○ 以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は62.8%(前期末より0.5ポイント減)となりました。
(4)キャッシュ・フローの状況
○ 営業活動によるキャッシュ・フローは、560億円の収入(前期は18億円の支出)となりました。運転資本は、「レケンビ」についての棚卸資産の増加などにより増加となりました。
○ 投資活動によるキャッシュ・フローは、253億円の支出(前期より26億円の支出増)となりました。研究設備および製造設備の増強を進め、設備投資に係る支出が発生しました。
○ 財務活動によるキャッシュ・フローは、227億円の支出(前期より18億円の支出減)となりました。主に配当金の支払いによるものです。
○ 以上の結果、現金及び現金同等物の残高は3,047億円(前期末より373億円増)、営業活動によるキャッシュ・フローから資本的支出等を差し引いたフリー・キャッシュ・フローは304億円の収入となりました。
(5)生産、受注および販売の実績
① 生産実績
(a) 生産実績
当期における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)
日本医薬品事業224,418124.6
アメリカス医薬品事業550,874120.5
中国医薬品事業90,48081.4
EMEA医薬品事業111,81092.1
アジア・ラテンアメリカ医薬品事業62,345123.8
報告セグメント計1,039,927113.0
その他事業4,523149.5
合計1,044,450113.1

(注1) 金額は販売見込価格により算出し、セグメント間の取引については相殺消去しています。
(b) 商品仕入実績
当期における商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)
日本医薬品事業26,48748.1
アメリカス医薬品事業411.3
中国医薬品事業5,277125.5
アジア・ラテンアメリカ医薬品事業1,412121.2
報告セグメント計33,17954.8
その他事業668173.7
合計33,84755.6

(注1) 金額は仕入価格により算出し、セグメント間の取引については相殺消去しています。
(注2) 当期においてEMEA医薬品事業の商品仕入実績はありませんでした。
② 受注実績
当社グループは販売計画に基づいた生産を行っているため、該当事項はありません。
③ 販売実績
当期における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)
日本医薬品事業216,93590.8
アメリカス医薬品事業232,381109.2
中国医薬品事業111,928101.0
EMEA医薬品事業75,989105.3
アジア・ラテンアメリカ医薬品事業54,226108.8
報告セグメント計691,458101.0
その他事業50,29383.9
合計741,75199.6

(注1) セグメント間の取引については相殺消去しています。
(注2) 主な相手先別の販売実績については、前期・当期とも総販売実績に対する割合が100分の10以上の相手先がないため、記載を省略しています。
(6)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 重要な会計方針及び見積り
連結財務諸表作成にあたり、必要と思われる見積りは合理的な基準に基づいて実施しています。重要な会計方針及び見積りの詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3. 重要性のある会計方針、 4. 重要な会計上の見積り及び判断」に記載のとおりです。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)事業の概況、(2)経営成績の状況、 (3)財政状態の状況、(4)キャッシュ・フローの状況」に記載しています。
③ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは、資金調達手段について、「手元現金」、次に「負債による資金調達(デット)」、最後に「株式の新規発行による資金調達(エクイティ)」とするペッキング・オーダー理論にもとづく優先順位付けをしています。原則として、手元現金の活用および負債が優先であり、既存株主の価値を毀損する可能性があるエクイティによる資金調達は最終手段として考えています。
そのため、キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)管理による運転資本のコントロール、投資有価証券を含む資産売却などによるバランスシートマネジメントを継続的かつグローバルに推進することで資産効率を高め、最適資本構成にもとづく最適配当政策と積極的な成長投資の両立を可能としています。
2023年度において、株主還元については、健全なバランスシートを維持していることから、1株当たり年間配当金を前年と同額の160円としました。成長投資については、将来の成長のための川島工園・筑波研究所の設備・施設への投資継続などを積極的に実施しました。2024年度においても積極的な成長投資を継続する計画で、資本的支出は525億円を見込み、手元資金を充当する予定です。
資金の流動性については、現時点では概ね月商の3倍を適正な運転資金の水準と考えています。2023年度末における現金及び現金同等物残高は3,047億円であり、十分な流動性を確保しています。さらに、当座借越・コミットメントラインなどの流動性補完により、流動性を一層強化しています。また、手元資金の効率的な活用を企図して、日本国内・EMEA域内におけるキャッシュ・マネジメント・システム(CMS)に加え、グローバル・キャッシュ・マネジメント・システム(GCMS)を導入しています。
2023年度末時点での実質的なキャッシュ残高である有利子負債控除後のネットキャッシュは1,687億円と、実質無借金を維持しています。引き続き、「ネットキャッシュの維持」を主要な財務規律として重視するとともに、Net DERを±0.3レベルにコントロールすることで財務の健全性を維持します。
④ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(2)経営環境、経営方針・経営戦略、ならびに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題等 ③目標とする経営指標」に記載のとおり、中長期での数値目標は設定していません。その代わり、年次事業計画を精緻に策定し、中長期の経営指標として、2032年度にはROE25%レベル、10年平均ROE15%レベルを目標としています。
2023年度業績予想(売上収益:7,120億円 営業利益:500億円 親会社の所有者に帰属する当期利益:380億円ROE:4.9%、2022年度有価証券報告書提出日時点)との比較では、売上収益は7,418億円(業績予想対比104.2%)、営業利益は534億円(同106.8%)、親会社の所有者に帰属する当期利益は424億円(同111.6%)、ROE5.1%(業績予想差0.2ポイント増)となりました。
売上収益は、グローバルブランドの抗がん剤「レンビマ」が想定以上に伸長したことにより業績予想を上回りました。営業利益は、アルツハイマー病(AD)治療剤「レケンビ」へ計画どおりの資源投入を行ったことに加え、「レンビマ」の売上拡大に伴う米メルク社への折半利益の支払い増加した一方、製品ミックスの改善による売上総利益の改善、パートナーシップモデルの活用、開発テーマの優先度を踏まえた研究開発費の効率的な投入等により、業績予想を上回りました。

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