有価証券報告書-第111期(2022/04/01-2023/03/31)
文中の将来に関する事項は、当期末現在において当社グループが判断したものです。
(1)事業の概況
○ 当社グループは2021年4月よりスタートした中期経営計画「EWAY Future & Beyond」に基づき、「患者様とそのご家族」から「患者様と生活者の皆様」に視点を拡大し、人々の健康憂慮の解消と医療較差の是正に向けたソリューションをお届けすべく、他産業との協業によるエコシステムの構築をめざしています。
○ アルツハイマー病(AD)治療剤「Leqembi」(一般名:レカネマブ)は、2023年1月に、米国において迅速承認を取得し、さらに世界各国における薬事承認の取得とアクセス拡大に向けた取り組みを加速しています。当社グループは、適格なAD当事者様に「Leqembi」をお届けすることを通じて、薬剤がもたらす臨床的価値に加え、当事者様と介護者のQOL(Quality of Life)や生産性の向上、医療・介護財政への負担軽減をもたらす経済的価値等の社会的インパクトの創出をめざしています。また、すべての当事者様の健康憂慮の解消と医療較差の是正に貢献すべく、中国における認知症を対象としたワンストップオンライン健康プラットフォームの構築や、アジアにおける他産業や非営利団体との提携といったソリューションを備えたエコシステムの構築を進めています。
○ 疾患の根本原因に紐づくゲノム情報、病態生理学に基づいたDeep Human Biology Learning(DHBL)創薬体制に移行しました。当社グループのみが有するヒューマンバイオロジーの知見や、高質な臨床サンプルから得られるゲノム情報に基づいて、注力分野である神経変性疾患および難治性がんに加えて、顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases: NTDs)をはじめとするグローバルヘルス分野における創薬を推進します。
(2)経営成績の状況
○ 当期(2022年4月1日~2023年3月31日)の連結業績は、次のとおりです。
(単位:億円、%)
○ 売上収益は、抗がん剤「レンビマ」をはじめとするグローバルブランドが引き続き伸長した一方で、Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA(以下 米メルク社)からの販売マイルストンペイメントの減少(当期167億円、前期692億円)および前期に抗体薬物複合体「MORAb-202」に関するBristol Myers Squibb(米国、以下 BMS社)との戦略的提携による契約一時金(496億円)を計上した影響などにより、減収となりました。医薬品事業の売上収益は6,844億円(前期比110.9%)と大幅に増加しました。
○ グローバルブランドの売上収益は、「レンビマ」が2,496億円(前期比129.8%)、抗がん剤「ハラヴェン」が413億円(同104.9%)、抗てんかん剤「フィコンパ」(英名「Fycompa」)が371億円(同116.5%)、不眠症治療剤「デエビゴ」(英名「Dayvigo」)が294億円(同178.7%)となりました。
○ 販売費及び一般管理費は、「レンビマ」の売上拡大に伴い米メルク社への折半利益の支払いが増加した一方で、提携契約の変更に伴いAD治療剤「Aduhelm」の関連費用が大幅に減少したことにより、減少となりました。
○ 研究開発費は、パートナーシップモデルの活用により効率性を高めた一方で、「Leqembi」の臨床試験の順調な進捗に伴う積極的な資源投入や円安の進行による影響などにより、前期と同水準となりました。
○ 以上の結果、営業利益は減益となりましたが、医薬品事業のセグメント利益は3,256億円(前期比125.3%)と大幅な増益となりました。
○ 当期利益については、当社グループの資本政策の一環としてグローバルな資金配分の最適化を企図し、米国連結子会社から資金を回収するために当社が米国連結子会社から払込資本の払戻しを受けた結果、税務上の譲渡損失等が当社にて発生した影響により法人所得税が利益方向で計上され、税引前当期利益と比較して増加しました。
[セグメントの状況]
(各セグメントの売上収益は外部顧客に対するものです)
当社グループは、セグメントを医薬品事業とその他事業に区分しており、医薬品事業を構成する日本、アメリカス(北米)、中国、EMEA(欧州、中東、アフリカ、ロシア、オセアニア)、アジア・ラテンアメリカ(韓国、台湾、インド、アセアン、中南米等)、一般用医薬品等(日本)の6つの事業セグメントを報告セグメントとしています。当連結会計年度において、香港をアジア・ラテンアメリカ医薬品事業から中国医薬品事業にセグメント変更しました。また、2022年3月に、Biogen Inc.(米国、以下 バイオジェン社)との「Aduhelm」に関する共同開発・共同販促契約が変更されたことを受け、当社が負担する「Aduhelm」の関連費用(販売費及び一般管理費)を親会社の本社管理費等に含めています。加えて、ライセンス供与の対価として受領する契約一時金等をその他事業に含め、固定資産売却損益を親会社の本社管理費等に含めています。なお、本資料のセグメント情報に関する対前期の数値は新たな報告セグメントに基づいて記載しています。
<日本医薬品事業>○ 売上収益は2,154億円(前期比100.6%)、セグメント利益は678億円(同111.1%)となりました。
○ 品目別売上収益については、ニューロロジー領域で、「デエビゴ」は242億円(前期比190.3%)、「フィコンパ」が61億円(同112.6%)と共に大幅に伸長しました。オンコロジー領域では、「レンビマ」が適応追加の影響により137億円(同132.6%)と大幅に伸長し、「ハラヴェン」は85億円(同101.8%)となりました。ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体「ヒュミラ」は472億円(同93.2%)、慢性便秘症治療剤「グーフィス」は65億円(同107.3%)となりました。ヤヌスキナーゼ阻害剤「ジセレカ」は73億円(前期は15億円)と大幅に伸長しました。
○ 2022年11月、抗リウマチ剤「メトジェクト」を新発売しました。
<アメリカス医薬品事業>○ 売上収益は2,127億円(前期比126.9%)、セグメント利益は1,334億円(同146.3%)となりました。
○ 品目別売上収益については、ニューロロジー領域で、「Fycompa」は152億円(前期比104.1%)となり、「Dayvigo」は48億円(同129.9%)と伸長しました。オンコロジー領域では、「レンビマ」が適応追加の影響により1,616億円(同138.8%)と大幅に伸長し、「ハラヴェン」は139億円(同97.3%)となりました。
○ 2023年1月、米国において、「Leqembi」を新発売しました。
<中国医薬品事業>○ 売上収益は1,108億円(前期比106.7%)、セグメント利益は556億円(同106.1%)となりました。
○ 品目別売上収益については、「レンビマ」がジェネリック品の影響などにより322億円(前期比89.9%)となりました。末梢性神経障害治療剤「メチコバール」は145億円(同114.7%)と伸長しました。プロトンポンプ阻害剤「パリエット」は84億円(同92.4%)、肝臓疾患用剤・アレルギー用薬「強力ネオミノファーゲンシー/グリチロン錠」は79億円(同83.0%)となりました。
○ 売上収益は722億円(前期比121.6%)、セグメント利益は416億円(同137.9%)となりました。
○ 品目別売上収益については、ニューロロジー領域で、「Fycompa」は117億円(前期比127.2%)と大幅に伸長しました。オンコロジー領域では、「レンビマ/Kisplyx」が309億円(同142.2%)と大幅に伸長し、「ハラヴェン」は136億円(同106.2%)となりました。
○ 2023年1月にイスラエルにおいて、「レンビマ」などを新発売しました。
<アジア・ラテンアメリカ医薬品事業>○ 売上収益は498億円(前期比102.5%)、セグメント利益は221億円(同108.4%)となりました。
○ 品目別売上収益については、「レンビマ」が111億円(前期比140.1%)と大幅に伸長しました。アルツハイマー型認知症治療剤「アリセプト」は130億円(同109.8%)となりました。
○ 2022年4月にインドおよびシンガポール、同年5月に台湾、同年11月にフィリピンおよびタイ、同年12月にインドネシア、2023年2月にマレーシアにおいて、「Dayvigo」を新発売しました。
<一般用医薬品等事業>○ 売上収益は235億円(前期比98.6%)、セグメント利益は51億円(同108.6%)となりました。
○ チョコラBBグループの売上収益は、141億円(前期比98.8%)となりました。
(3)財政状態の状況
○ 資産合計は、1兆2,634億円(前期末より240億円増)となりました。現金及び現金同等物が減少した一方で、円安の進行により海外連結子会社の資産が増加したことに加え、当社の繰延税金資産が増加しました。また、「Leqembi」について米国における上市に伴い生産を進めたことにより、棚卸資産が増加しました。
○ 負債合計は、4,408億円(前期末より270億円減)となりました。短期借入金が増加した一方で、パートナーに対する未払金が減少しました。
○ 資本合計は、8,226億円(前期末より510億円増)となりました。円安の進行に伴い在外営業活動体の換算差額が増加しました。
○ 以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は63.3%(前期末より2.9ポイント増)となりました。
(4)キャッシュ・フローの状況
○ 営業活動によるキャッシュ・フローは、18億円の支出(前期は1,176億円の収入)となりました。「Leqembi」について米国における上市に伴い、生産を進めたことによる棚卸資産の増加やパートナーへの未払金の支払いなどにより、運転資本が増加しました。
○ 投資活動によるキャッシュ・フローは、227億円の支出(前期より61億円の支出減)となりました。研究設備および製造設備の増強を進め、設備投資に係る支出が発生しました。
○ 財務活動によるキャッシュ・フローは、245億円の支出(前期より244億円の支出減)となりました。短期借入金が増加した一方で、配当金の支払いを実施しました。
○ 以上の結果、現金及び現金同等物の残高は2,674億円(前期末より423億円減)、営業活動によるキャッシュ・フローから資本的支出等を差し引いたフリー・キャッシュ・フローは243億円の支出となりました。
(5)生産、受注および販売の実績
① 生産実績
(a) 生産実績
当期における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注1) 金額は販売見込価格により算出し、セグメント間の取引については相殺消去しています。
(注2) 前期より生産実績が増加した理由は、主に抗がん剤「レンビマ」の販売の増加に伴うものです。
(b) 商品仕入実績
当期における商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注1) 金額は仕入価格により算出し、セグメント間の取引については相殺消去しています。
(注2) 当期においてEMEA医薬品事業の商品仕入実績はありませんでした。
② 受注実績
当社グループは販売計画に基づいた生産を行っているため、該当事項はありません。
③ 販売実績
当期における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注1) セグメント間の取引については相殺消去しています。
(注2) 主な相手先別の販売実績については、前期・当期とも総販売実績に対する割合が100分の10以上の相手先がないため、記載を省略しています。
(6)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 重要な会計方針及び見積り
連結財務諸表作成にあたり、必要と思われる見積りは合理的な基準に基づいて実施しています。重要な会計方針及び見積りの詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3. 重要な会計方針、 4. 重要な会計上の見積り及び判断」に記載のとおりです。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)事業の概況、(2)経営成績の状況、 (3)財政状態の状況、(4)キャッシュ・フローの状況」に記載しています。
③ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは、資金調達手段について、「手元現金」、次に「負債による資金調達(デット)」、最後に「株式の新規発行による資金調達(エクイティ)」とするペッキング・オーダー理論にもとづく優先順位付けをしています。原則として、手元現金の活用および負債が優先であり、既存株主の価値を毀損する可能性があるエクイティによる資金調達は最終手段として考えています。
そのため、キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)管理による運転資本のコントロール、投資有価証券を含む資産売却などによるバランスシートマネジメントを継続的かつグローバルに推進することで資産効率を高め、最適資本構成にもとづく最適配当政策と積極的な成長投資の両立を可能としています。
2022年度において、株主還元については、健全なバランスシートを維持していることから、1株当たり年間配当金を前年と同額の160円としました。成長投資については、将来の成長のための川島工園・筑波研究所の設備・施設への投資継続などを積極的に実施しました。2023年度においても積極的な成長投資を継続する計画で、資本的支出は355億円を見込み、手元資金を充当する予定です。
資金の流動性については、現時点では概ね月商の3倍を適正な運転資金の水準と考えています。2022年度末における現金及び現金同等物残高は2,674億円であり、十分な流動性を確保しています。さらに、当座借越・コミットメントラインなどの流動性補完により、流動性を一層強化しています。また、手元資金の効率的な活用を企図して、日本国内・EMEA域内におけるキャッシュ・マネジメント・システム(CMS)に加え、グローバル・キャッシュ・マネジメント・システム(GCMS)を導入しています。
2022年度末時点での実質的なキャッシュ残高である有利子負債控除後のネットキャッシュは1,654億円と、実質無借金を維持しています。引き続き、「ネットキャッシュの維持」を主要な財務規律として重視するとともに、Net DERを±0.3レベルにコントロールすることで財務の健全性を維持します。
④ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(2)経営環境、経営方針・経営戦略、ならびに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題等 ③目標とする経営指標」に記載のとおり、中長期での数値目標は設定していません。その代わり、年次事業計画を精緻に策定し、経営指標として平均ROEを掲げ、中長期的に平均ROE10%、2025年度は15%以上を目安としています。
2022年度業績予想(売上収益:7,000億円 営業利益:550億円 親会社の所有者に帰属する当期利益:570億円 ROE:7.5%、2021年度有価証券報告書提出日時点)との比較では、売上収益は7,444億円(業績予想対比106.3%)、営業利益は400億円(同72.8%)、親会社の所有者に帰属する当期利益は554億円(同97.2%)、ROE7.2%(同95.4%)となりました。
売上収益は、「レンビマ」をはじめとするグローバルブランドの伸長により業績予想を上回りました。一方営業利益は、「レンビマ」の売上拡大に伴う米メルク社への折半利益の支払い増加に加え、アルツハイマー病治療剤レカネマブの臨床試験の順調な進捗に伴う積極的な投資や既存開発プロジェクトの見直し等に伴う研究開発費の増加により業績予想を下回りました。なお、2018年度から2022年度までの直近5年間の平均ROEは9.8%と目安となる10%程度となりました。
(1)事業の概況
○ 当社グループは2021年4月よりスタートした中期経営計画「EWAY Future & Beyond」に基づき、「患者様とそのご家族」から「患者様と生活者の皆様」に視点を拡大し、人々の健康憂慮の解消と医療較差の是正に向けたソリューションをお届けすべく、他産業との協業によるエコシステムの構築をめざしています。
○ アルツハイマー病(AD)治療剤「Leqembi」(一般名:レカネマブ)は、2023年1月に、米国において迅速承認を取得し、さらに世界各国における薬事承認の取得とアクセス拡大に向けた取り組みを加速しています。当社グループは、適格なAD当事者様に「Leqembi」をお届けすることを通じて、薬剤がもたらす臨床的価値に加え、当事者様と介護者のQOL(Quality of Life)や生産性の向上、医療・介護財政への負担軽減をもたらす経済的価値等の社会的インパクトの創出をめざしています。また、すべての当事者様の健康憂慮の解消と医療較差の是正に貢献すべく、中国における認知症を対象としたワンストップオンライン健康プラットフォームの構築や、アジアにおける他産業や非営利団体との提携といったソリューションを備えたエコシステムの構築を進めています。
○ 疾患の根本原因に紐づくゲノム情報、病態生理学に基づいたDeep Human Biology Learning(DHBL)創薬体制に移行しました。当社グループのみが有するヒューマンバイオロジーの知見や、高質な臨床サンプルから得られるゲノム情報に基づいて、注力分野である神経変性疾患および難治性がんに加えて、顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases: NTDs)をはじめとするグローバルヘルス分野における創薬を推進します。
(2)経営成績の状況
○ 当期(2022年4月1日~2023年3月31日)の連結業績は、次のとおりです。
(単位:億円、%)
| 2021年度 | 2022年度 | 前期比 | |
| 売上収益 | 7,562 | 7,444 | 98.4 |
| 売上原価 | 1,748 | 1,778 | 101.7 |
| 売上総利益 | 5,814 | 5,666 | 97.4 |
| 販売費及び一般管理費 | 3,664 | 3,583 | 97.8 |
| 研究開発費 | 1,717 | 1,730 | 100.7 |
| 営業利益 | 537 | 400 | 74.5 |
| 税引前当期利益 | 545 | 450 | 82.7 |
| 法人所得税 | 87 | △118 | - |
| 当期利益 | 457 | 568 | 124.3 |
| 親会社の所有者に帰属する当期利益 | 480 | 554 | 115.6 |
| 当期包括利益 | 908 | 969 | 106.7 |
| 基本的1株当たり当期利益 | 167円27銭 | 193円31銭 | 115.6 |
○ 売上収益は、抗がん剤「レンビマ」をはじめとするグローバルブランドが引き続き伸長した一方で、Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA(以下 米メルク社)からの販売マイルストンペイメントの減少(当期167億円、前期692億円)および前期に抗体薬物複合体「MORAb-202」に関するBristol Myers Squibb(米国、以下 BMS社)との戦略的提携による契約一時金(496億円)を計上した影響などにより、減収となりました。医薬品事業の売上収益は6,844億円(前期比110.9%)と大幅に増加しました。
○ グローバルブランドの売上収益は、「レンビマ」が2,496億円(前期比129.8%)、抗がん剤「ハラヴェン」が413億円(同104.9%)、抗てんかん剤「フィコンパ」(英名「Fycompa」)が371億円(同116.5%)、不眠症治療剤「デエビゴ」(英名「Dayvigo」)が294億円(同178.7%)となりました。
○ 販売費及び一般管理費は、「レンビマ」の売上拡大に伴い米メルク社への折半利益の支払いが増加した一方で、提携契約の変更に伴いAD治療剤「Aduhelm」の関連費用が大幅に減少したことにより、減少となりました。
○ 研究開発費は、パートナーシップモデルの活用により効率性を高めた一方で、「Leqembi」の臨床試験の順調な進捗に伴う積極的な資源投入や円安の進行による影響などにより、前期と同水準となりました。
○ 以上の結果、営業利益は減益となりましたが、医薬品事業のセグメント利益は3,256億円(前期比125.3%)と大幅な増益となりました。
○ 当期利益については、当社グループの資本政策の一環としてグローバルな資金配分の最適化を企図し、米国連結子会社から資金を回収するために当社が米国連結子会社から払込資本の払戻しを受けた結果、税務上の譲渡損失等が当社にて発生した影響により法人所得税が利益方向で計上され、税引前当期利益と比較して増加しました。
[セグメントの状況]
(各セグメントの売上収益は外部顧客に対するものです)
当社グループは、セグメントを医薬品事業とその他事業に区分しており、医薬品事業を構成する日本、アメリカス(北米)、中国、EMEA(欧州、中東、アフリカ、ロシア、オセアニア)、アジア・ラテンアメリカ(韓国、台湾、インド、アセアン、中南米等)、一般用医薬品等(日本)の6つの事業セグメントを報告セグメントとしています。当連結会計年度において、香港をアジア・ラテンアメリカ医薬品事業から中国医薬品事業にセグメント変更しました。また、2022年3月に、Biogen Inc.(米国、以下 バイオジェン社)との「Aduhelm」に関する共同開発・共同販促契約が変更されたことを受け、当社が負担する「Aduhelm」の関連費用(販売費及び一般管理費)を親会社の本社管理費等に含めています。加えて、ライセンス供与の対価として受領する契約一時金等をその他事業に含め、固定資産売却損益を親会社の本社管理費等に含めています。なお、本資料のセグメント情報に関する対前期の数値は新たな報告セグメントに基づいて記載しています。
<日本医薬品事業>○ 売上収益は2,154億円(前期比100.6%)、セグメント利益は678億円(同111.1%)となりました。
○ 品目別売上収益については、ニューロロジー領域で、「デエビゴ」は242億円(前期比190.3%)、「フィコンパ」が61億円(同112.6%)と共に大幅に伸長しました。オンコロジー領域では、「レンビマ」が適応追加の影響により137億円(同132.6%)と大幅に伸長し、「ハラヴェン」は85億円(同101.8%)となりました。ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体「ヒュミラ」は472億円(同93.2%)、慢性便秘症治療剤「グーフィス」は65億円(同107.3%)となりました。ヤヌスキナーゼ阻害剤「ジセレカ」は73億円(前期は15億円)と大幅に伸長しました。
○ 2022年11月、抗リウマチ剤「メトジェクト」を新発売しました。
<アメリカス医薬品事業>○ 売上収益は2,127億円(前期比126.9%)、セグメント利益は1,334億円(同146.3%)となりました。
○ 品目別売上収益については、ニューロロジー領域で、「Fycompa」は152億円(前期比104.1%)となり、「Dayvigo」は48億円(同129.9%)と伸長しました。オンコロジー領域では、「レンビマ」が適応追加の影響により1,616億円(同138.8%)と大幅に伸長し、「ハラヴェン」は139億円(同97.3%)となりました。
○ 2023年1月、米国において、「Leqembi」を新発売しました。
<中国医薬品事業>○ 売上収益は1,108億円(前期比106.7%)、セグメント利益は556億円(同106.1%)となりました。
○ 品目別売上収益については、「レンビマ」がジェネリック品の影響などにより322億円(前期比89.9%)となりました。末梢性神経障害治療剤「メチコバール」は145億円(同114.7%)と伸長しました。プロトンポンプ阻害剤「パリエット」は84億円(同92.4%)、肝臓疾患用剤・アレルギー用薬「強力ネオミノファーゲンシー/グリチロン錠」は79億円(同83.0%)となりました。
○ 品目別売上収益については、ニューロロジー領域で、「Fycompa」は117億円(前期比127.2%)と大幅に伸長しました。オンコロジー領域では、「レンビマ/Kisplyx」が309億円(同142.2%)と大幅に伸長し、「ハラヴェン」は136億円(同106.2%)となりました。
○ 2023年1月にイスラエルにおいて、「レンビマ」などを新発売しました。
<アジア・ラテンアメリカ医薬品事業>○ 売上収益は498億円(前期比102.5%)、セグメント利益は221億円(同108.4%)となりました。
○ 品目別売上収益については、「レンビマ」が111億円(前期比140.1%)と大幅に伸長しました。アルツハイマー型認知症治療剤「アリセプト」は130億円(同109.8%)となりました。
○ 2022年4月にインドおよびシンガポール、同年5月に台湾、同年11月にフィリピンおよびタイ、同年12月にインドネシア、2023年2月にマレーシアにおいて、「Dayvigo」を新発売しました。
<一般用医薬品等事業>○ 売上収益は235億円(前期比98.6%)、セグメント利益は51億円(同108.6%)となりました。
○ チョコラBBグループの売上収益は、141億円(前期比98.8%)となりました。
(3)財政状態の状況
○ 資産合計は、1兆2,634億円(前期末より240億円増)となりました。現金及び現金同等物が減少した一方で、円安の進行により海外連結子会社の資産が増加したことに加え、当社の繰延税金資産が増加しました。また、「Leqembi」について米国における上市に伴い生産を進めたことにより、棚卸資産が増加しました。
○ 負債合計は、4,408億円(前期末より270億円減)となりました。短期借入金が増加した一方で、パートナーに対する未払金が減少しました。
○ 資本合計は、8,226億円(前期末より510億円増)となりました。円安の進行に伴い在外営業活動体の換算差額が増加しました。
○ 以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は63.3%(前期末より2.9ポイント増)となりました。
(4)キャッシュ・フローの状況
○ 営業活動によるキャッシュ・フローは、18億円の支出(前期は1,176億円の収入)となりました。「Leqembi」について米国における上市に伴い、生産を進めたことによる棚卸資産の増加やパートナーへの未払金の支払いなどにより、運転資本が増加しました。
○ 投資活動によるキャッシュ・フローは、227億円の支出(前期より61億円の支出減)となりました。研究設備および製造設備の増強を進め、設備投資に係る支出が発生しました。
○ 財務活動によるキャッシュ・フローは、245億円の支出(前期より244億円の支出減)となりました。短期借入金が増加した一方で、配当金の支払いを実施しました。
○ 以上の結果、現金及び現金同等物の残高は2,674億円(前期末より423億円減)、営業活動によるキャッシュ・フローから資本的支出等を差し引いたフリー・キャッシュ・フローは243億円の支出となりました。
(5)生産、受注および販売の実績
① 生産実績
(a) 生産実績
当期における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
| セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前期比(%) |
| 日本医薬品事業 | 173,122 | 120.3 |
| アメリカス医薬品事業(注2) | 457,198 | 225.1 |
| 中国医薬品事業 | 111,117 | 105.3 |
| EMEA医薬品事業 | 121,450 | 146.5 |
| アジア・ラテンアメリカ医薬品事業 | 50,373 | 102.1 |
| 一般用医薬品等 | 7,032 | 81.7 |
| 報告セグメント計 | 920,292 | 155.1 |
| その他事業 | 3,025 | 139.9 |
| 合計 | 923,317 | 155.0 |
(注1) 金額は販売見込価格により算出し、セグメント間の取引については相殺消去しています。
(注2) 前期より生産実績が増加した理由は、主に抗がん剤「レンビマ」の販売の増加に伴うものです。
(b) 商品仕入実績
当期における商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
| セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前期比(%) |
| 日本医薬品事業 | 49,616 | 101.4 |
| アメリカス医薬品事業 | 35 | 165.1 |
| 中国医薬品事業 | 4,205 | 159.3 |
| アジア・ラテンアメリカ医薬品事業 | 1,165 | 16.9 |
| 一般用医薬品等 | 5,472 | 104.8 |
| 報告セグメント計 | 60,494 | 95.0 |
| その他事業 | 385 | 130.1 |
| 合計 | 60,878 | 95.1 |
(注1) 金額は仕入価格により算出し、セグメント間の取引については相殺消去しています。
(注2) 当期においてEMEA医薬品事業の商品仕入実績はありませんでした。
② 受注実績
当社グループは販売計画に基づいた生産を行っているため、該当事項はありません。
③ 販売実績
当期における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
| セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前期比(%) |
| 日本医薬品事業 | 215,422 | 100.6 |
| アメリカス医薬品事業 | 212,742 | 126.9 |
| 中国医薬品事業 | 110,768 | 106.7 |
| EMEA医薬品事業 | 72,159 | 121.6 |
| アジア・ラテンアメリカ医薬品事業 | 49,839 | 102.5 |
| 一般用医薬品等 | 23,505 | 98.6 |
| 報告セグメント計 | 684,434 | 110.9 |
| その他事業 | 59,969 | 43.2 |
| 合計 | 744,402 | 98.4 |
(注1) セグメント間の取引については相殺消去しています。
(注2) 主な相手先別の販売実績については、前期・当期とも総販売実績に対する割合が100分の10以上の相手先がないため、記載を省略しています。
(6)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 重要な会計方針及び見積り
連結財務諸表作成にあたり、必要と思われる見積りは合理的な基準に基づいて実施しています。重要な会計方針及び見積りの詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3. 重要な会計方針、 4. 重要な会計上の見積り及び判断」に記載のとおりです。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)事業の概況、(2)経営成績の状況、 (3)財政状態の状況、(4)キャッシュ・フローの状況」に記載しています。
③ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは、資金調達手段について、「手元現金」、次に「負債による資金調達(デット)」、最後に「株式の新規発行による資金調達(エクイティ)」とするペッキング・オーダー理論にもとづく優先順位付けをしています。原則として、手元現金の活用および負債が優先であり、既存株主の価値を毀損する可能性があるエクイティによる資金調達は最終手段として考えています。
そのため、キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)管理による運転資本のコントロール、投資有価証券を含む資産売却などによるバランスシートマネジメントを継続的かつグローバルに推進することで資産効率を高め、最適資本構成にもとづく最適配当政策と積極的な成長投資の両立を可能としています。
2022年度において、株主還元については、健全なバランスシートを維持していることから、1株当たり年間配当金を前年と同額の160円としました。成長投資については、将来の成長のための川島工園・筑波研究所の設備・施設への投資継続などを積極的に実施しました。2023年度においても積極的な成長投資を継続する計画で、資本的支出は355億円を見込み、手元資金を充当する予定です。
資金の流動性については、現時点では概ね月商の3倍を適正な運転資金の水準と考えています。2022年度末における現金及び現金同等物残高は2,674億円であり、十分な流動性を確保しています。さらに、当座借越・コミットメントラインなどの流動性補完により、流動性を一層強化しています。また、手元資金の効率的な活用を企図して、日本国内・EMEA域内におけるキャッシュ・マネジメント・システム(CMS)に加え、グローバル・キャッシュ・マネジメント・システム(GCMS)を導入しています。
2022年度末時点での実質的なキャッシュ残高である有利子負債控除後のネットキャッシュは1,654億円と、実質無借金を維持しています。引き続き、「ネットキャッシュの維持」を主要な財務規律として重視するとともに、Net DERを±0.3レベルにコントロールすることで財務の健全性を維持します。
④ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(2)経営環境、経営方針・経営戦略、ならびに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題等 ③目標とする経営指標」に記載のとおり、中長期での数値目標は設定していません。その代わり、年次事業計画を精緻に策定し、経営指標として平均ROEを掲げ、中長期的に平均ROE10%、2025年度は15%以上を目安としています。
2022年度業績予想(売上収益:7,000億円 営業利益:550億円 親会社の所有者に帰属する当期利益:570億円 ROE:7.5%、2021年度有価証券報告書提出日時点)との比較では、売上収益は7,444億円(業績予想対比106.3%)、営業利益は400億円(同72.8%)、親会社の所有者に帰属する当期利益は554億円(同97.2%)、ROE7.2%(同95.4%)となりました。
売上収益は、「レンビマ」をはじめとするグローバルブランドの伸長により業績予想を上回りました。一方営業利益は、「レンビマ」の売上拡大に伴う米メルク社への折半利益の支払い増加に加え、アルツハイマー病治療剤レカネマブの臨床試験の順調な進捗に伴う積極的な投資や既存開発プロジェクトの見直し等に伴う研究開発費の増加により業績予想を下回りました。なお、2018年度から2022年度までの直近5年間の平均ROEは9.8%と目安となる10%程度となりました。