有価証券報告書-第54期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/26 16:39
【資料】
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【項目】
56項目
1.経営成績等の状況の概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において提出会社グループが判断したものです。
(1) 業績
当連結グループは、2017年度からの中期経営計画「CONNECT TOGETHER 2019」に掲げる経営施策を推進しています。お客様の事業課題である「安全性向上」「生産性向上」「ライフサイクルコスト(燃料費・維持費・故障対策費等を含むトータルコスト)低減」に繋がるICT・IoTを活用した解決策を「Solution Linkage」と位置付け、その開発・提供を推進しています。また、前連結会計年度に連結子会社化したH-E Parts International LLC及びその子会社とBradken Limited及びその子会社のマイニング設備及び機械のアフターセールスにおける部品・サービス事業強化の取り組みなど、新車販売以外での収益拡大を図るべくバリューチェーンの深化を推進中です。併せて、全世界でお客様や代理店へのサポート体制を強化し、シェア向上、コスト低減を進めるなど、経営の体質強化と効率化に取り組んでいます。
以上の結果、当連結会計年度の売上収益については、前連結会計年度に実施した日立住友重機械建機クレーン株式会社の持分法適用会社化による影響があるものの、特に中国をはじめとする建設機械の販売増加と、H-E Parts International LLC及びその子会社とBradken Limited及びその子会社の連結子会社化による売上収益増加の結果、前連結会計年度比127%の9,591億5千3百万円となりました。営業利益は前連結会計年度比405%の957億3千7百万円となり、税引前当期利益は前連結会計年度比401%の956億1千2百万円、親会社株主に帰属する当期利益は前連結会計年度比748%の600億4百万円となりました。
① 建設機械ビジネス
当期における油圧ショベル需要は、中近東を除く各地域で前連結会計年度を上回りました。当連結グループでは、お客様の機械を総合的にサポートするサービスソリューション「ConSite(コンサイト)」のグローバル展開や、部品供給体制の拡充等により、部品・サービス事業の強化を図り、収益の拡大に努めています。「ConSite」では、建設機械業界初となる、センサによりオイルの状態を遠隔で検知し、エンジンや油圧機器の故障予知を行う「ConSite OIL」をメニューに加え、10月から欧州・豪州で提供開始しました。日本では、国土交通省が推進するi-Constructionへの対応として、茨城県ひたちなか市に開設したICTデモサイトでの講習会や、施工プロセスの効率化に繋がる解決策の提供等、ICT施工の普及に努めています。
マイニング機械需要は、鉱山会社の投資増加を受け、前連結会計年度を大きく上回っています。提出会社では、日立グループの力を合せて高度な車体安定化制御を実現したリジッドダンプトラックAC-3シリーズの拡販に努めると共に、マイニング機械の運行管理システムの提供や自律運転技術の開発等、鉱山運営の効率化に取り組んでいます。また、より高度なレベルの顧客サポート体制の構築を進め、部品・サービスの売上収益拡大に努めています。
連結売上収益は、前連結会計年度比116%の8,668億6千6百万円となりました。
② ソリューションビジネス
当事業は、前連結会計年度に連結子会社化した、主としてマイニング設備及び機械のアフターセールスにおける部品・サービス事業を行うBradken Limited及びその子会社とサービスソリューションを提供するH-E Parts International LLC及びその子会社で構成されています。
連結売上収益は、オーストラリアや南米でマイニング機械向けの売上収益が堅調に推移し、前連結会計年度比1,385%の926億3千8百万円となりました。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は819億2千9百万円となり、当連結会計年度期首より164億7千4百万円増加しました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動に関するキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動に関するキャッシュ・フローは、当期利益が692億2千2百万円、減価償却費及び償却費378億3千2百万円、買掛金及び支払手形の増加533億3千7百万円を計上した一方で、売掛金及び受取手形の増加274億9千7百万円、棚卸資産の増加246億6千4百万円、ファイナンス・リース債権の増加142億5千7百万円等がありました。
この結果、当連結会計年度は845億2千8百万円の収入となりました。
(投資活動に関するキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動に関するキャッシュ・フローは、主として、有形固定資産の取得168億8千7百万円、有価証券及びその他の金融資産(子会社及び持分法で会計処理されている投資を含む)の取得214億1千6百万円があったため375億6千2百万円の支出となりました。
(財務活動に関するキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動に関するキャッシュ・フローは、主として、短期借入金の減少338億6千4百万円、社債及び長期借入金の増加195億4千2百万円、配当金(非支配持分株主への配当金を含む)の支払114億6千4百万円等があったことにより304億8千3百万円の支出となりました。
(3) 生産、受注及び販売の状況
(1)生産実績
当連結会計年度の生産実績は、次のとおりです。
セグメントの名称生産高(百万円)前連結会計年度比(%)
建設機械ビジネス896,796136
ソリューションビジネス88,3561,430
合計985,152148

(注)1.金額は、販売価格によっています。
2.「ソリューションビジネス」セグメントの主な変動理由は、2016年12月にH-E Parts社およびその連結子会社、2017年3月にBradken Limited社およびその連結子会社を連結子会社化したことによります。
3.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
(2)受注実績
当連結グループの製品は、そのほとんどが見込生産のため受注実績の記載は省略しています。
(3)販売実績
当連結会計年度の販売実績は、次のとおりです。
セグメントの名称販売高(百万円)前連結会計年度比(%)
建設機械ビジネス866,866116
ソリューションビジネス92,2871,379
合計959,153127

(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
2.「ソリューションビジネス」セグメントの主な変動理由は、2016年12月にH-E Parts社およびその連結子会社、2017年3月にBradken Limited社およびその連結子会社を連結子会社化したことによります。
3.総販売実績に対し10%以上に該当する販売先はありません。
2.財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
(1)重要な会計方針及び見積り
当連結グループは連結財務諸表の作成に際し、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、財政状態及び経営成績の金額に影響を与える見積りを行っていますが、特に以下の重要な会計方針が、提出会社の連結財務諸表の作成における重要な見積りに大きな影響を及ぼすと考えています。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当連結グループが判断したものです。
① 棚卸資産
当連結グループは、棚卸資産は取得原価と正味実現可能価額のいずれか低い方の金額で評価しており、実際の将来需要または市場状況が悪化した場合は、評価減が必要となる可能性があります。
② 有形固定資産及び無形資産
当連結グループは、有形固定資産及び無形資産について減損の兆候の有無の判定を行い、その帳簿価額が回収不可能であるような兆候がある場合、減損テストを実施しています。将来の営業活動から生ずる損益またはキャッシュ・フローの悪化等により回収可能価額が低下した場合には追加の減損損失の計上が必要になる可能性があります。
また、耐用年数を確定できない無形資産及びのれんについては、減損の兆候の有無にかかわらず、毎年、主に第4四半期において、その資産の属する資金生成単位ごとに回収可能価額を見積もり、減損テストを実施しています。のれんが発生している連結子会社の超過収益力が低下した場合には、追加の減損損失の計上が必要になる可能性があります。
③ 営業債権及びその他の金融資産
金融資産については、減損を示す客観的な証拠が金融資産の当初認識後に発生しており、その金融資産の見積将来キャッシュ・フローが帳簿価額を下回る場合、当該金融資産について減損損失が発生する可能性があります。
また、営業債権にかかる減損損失については、事業を行う国あるいは地域の特有な商慣行を含む、事業環境に関連した潜在的なリスクを評価した上で、過去の経験等を考慮に入れ算定される貸倒実績率又は回収可能額の見積りに基づき減損損失を計上しており、将来の市況悪化や取引先の業績不振により、現在の簿価に反映されていない損失または簿価の回収不能が発生した場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。
④ 繰延税金資産
繰延税金資産は、未使用の税務上の繰越欠損金、税額控除及び将来減算一時差異のうち、将来課税所得に対して利用できる可能性が高いものに限り認識しています。将来において業績及び課税所得が見積額より悪化した場合、繰延税金資産に対し追加の評価減の計上が必要となる可能性があります。
⑤ 退職給付に係る負債
当連結グループは、退職給付制度に基づく確定給付債務及び制度資産の測定に当たっては、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出しています。これらの前提条件には、割引率、昇給率、退職率及び死亡率などが含まれます。将来において、実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、退職給付に係る負債、退職給付費用及び退職給付制度の再測定に影響を及ぼす可能性があります。
(2)当連結会計年度の経営成績の分析
当連結会計年度における当連結グループの業績については、1.経営成績等の状況の概要(1)業績に記載のとおりです。
変化に強い企業体質づくりと成長戦略の刈取りを促進すべく策定した2017年度から3か年の中期経営計画の達成・進捗状況は、以下のとおりです。
指標2019年度目標当連結会計年度実績前連結会計年度比
収益性営業利益からその他の収益及びその他の費用を除いた利益率 9%以上をめざす9.8%6.0%pt増
効率性ROE 9%以上をめざす14.1%12.1%pt増
ネットD/Eレシオ0.4以下をめざす0.330.13減
株主還元連結配当性向を30%程度、もしくはそれ以上をめざす30.1%-

(注)2019年度目標の前提となる為替レートは、米ドル100円、ユーロ110円、人民元15円としています。
引き続き中期経営計画策定時の前提市況ならびに為替水準をベースにした場合においても各数値目標が達成できるよう取り組みます。
① 売上収益
当連結会計年度の連結売上収益は前連結会計年度比27.2%増加の9,591億5千3百万円となりました。
② 売上原価、販売費及び一般管理費
当連結会計年度の売上原価は、前連結会計年度比19.3%増加の6,953億1千6百万円となりました。売上原価の売上収益に対する比率は前連結会計年度より4.8ポイント減少し72.5%となりました。
また、販売費及び一般管理費は前連結会計年度比19.3%増加の1,702億5千5百万円となりました。
③ 営業利益
営業利益は、前連結会計年度より305.3%増加し957億3千7百万円となりました。営業利益の売上収益に対する比率は前連結会計年度から6.9ポイント増加し10.0%となりました。
④ 金融収益及び金融費用
金融収益及び金融費用は、前連結会計年度の5億4千8百万円の利益(純額)から当連結会計年度44億8千万円の損失(純額)と、利益が50億2千8百万円減少しました。これは主に、為替差損益が、前連結会計年度6億6千4百万円の利益(純額)から当連結会計年度16億5千2百万円の損失(純額)と、利益が23億1千6百万円減少したことによるものです。
⑤ 税引前当期利益
税引前当期利益は、前連結会計年度より300.7%増加し956億1千2百万円となりました。
⑥ 法人所得税費用
当連結会計年度における法人所得税費用は、前連結会計年度より172.9%増加し、263億9千万円となりました。
(3)経営成績に重要な影響を与える要因について
当連結グループに与える業績変動要因、並びに国内外の政治的・経済的変動及び需要変動による影響については 2[事業等のリスク]に記載のとおりです。
(4)財政状態の分析
(注)当連結会計年度において、企業結合に係る暫定的な会計処理の確定を行っており、2017年3月期の
数値については暫定的な会計処理の確定による重要な見直しが反映された後の金額を記載しております。
[資産]
流動資産は、前連結会計年度末に比べて、12.8%、676億3千万円増加し、5,978億2千9百万円となりました。これは主として営業債権が351億3千9百万円、棚卸資産が201億1百万円増加したことによります。
非流動資産は、前連結会計年度末に比べて、2.1%、99億5千8百万円増加し、4,919億6千7百万円となりました。これは主として、営業債権が101億1千3百万円、持分法で会計処理されている投資が64億2千3百万円増加した一方で、繰延税金資産が50億4千5百万円減少したことによります。
この結果、資産合計は、前連結会計年度末に比べて、7.7%、775億8千8百万円増加し、1兆897億9千6百万円となりました。
[負債]
流動負債は、前連結会計年度末に比べて、8.5%、341億1千3百万円減少し、3,664億2千2百万円となりました。これは主として営業債務及びその他の債務が625億8百万円増加した一方で、社債及び借入金が839億9千1百万円減少したことによります。
非流動負債は、前連結会計年度末に比べて35.4%、571億1百万円増加し2,183億4千4百万円となりました。これは主として社債及び借入金が659億5千5百万円増加したことによります。
この結果、負債合計は、前連結会計年度末に比べて4.1%、229億8千8百万円増加し、5,847億6千6百万円となりました。
[資本]
資本合計は、前連結会計年度末に比べて、12.1%、546億円増加し、5,050億3千万円となりました。
(5)資本の財源及び資金の流動性についての分析
① キャッシュ・フロー
当連結グループの資本の財源及び資金の流動性については、1.経営成績等の状況の概要(2)キャッシュ・フローの状況に記載のとおりです。
② 資金需要及び財務政策
当連結グループは、当期の運転・設備投資及び投融資資金に充当し、かつ借入金の長短、直間のバランスの適正化を目的として、長期借入金803億8千6百万円の調達、社債の発行100億円を行い、短期借入金338億6千4百万円、長期借入金508億4千4百万円の返済、社債200億円の償還を実施しました。
また、当連結グループは適時に資金繰り計画を作成・更新すると共に、手元流動性を極小化し資金効率を高める一方でコミットメント・ライン及び当座借越枠の確保により流動性リスクを回避する管理をしています。
(経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報)
IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに関する項目との差異は以下のとおりです。なお、提出会社は日本基準に基づく連結財務諸表を作成していないため、差異の金額は概算額で記載しています。
(のれん)
日本基準ではのれんを償却していましたが、IFRSでは償却を行っていません。この影響により、当連結会計年度にて、IFRSでは日本基準に比べて、連結損益計算書の「販売費及び一般管理費」が15億円減少しています。
(従業員給付)
日本基準では、数理計算上の差異及び過去勤務費用のうち、当期の費用として認識しなかった部分をその他
の包括利益累計額にて認識し、将来の一定期間にわたり純損益として認識しています。また、勤務費用、利息費用及び期待運用収益を純損益として認識しています。
一方、IFRSでは、確定給付型企業年金制度及び退職一時金制度から生じる再測定は、その他の包括利益にて認識しています。再測定は、確定給付制度債務に係る数理計算上の差異、制度資産に係る収益(制度資産に係る利息収益の金額を除く)により構成されています。過去勤務費用は直ちに純損益として認識しています。また、勤務費用は発生時に純損益として認識し、純利息費用は確定給付負債(資産)の純額に割引率を乗じた金額を純損益として認識しています。
この影響により、IFRSは日本基準に比べて、連結損益計算書の当連結会計年度の「売上原価」及び「販売費及び一般管理費」が15億円減少し、連結包括利益計算書の当連結会計年度の「確定給付制度の再測定」が10億円減少しています。
(法人所得税)
内部未実現利益の消去に伴う税効果について、日本基準では繰延税金資産を売却元の実効税率を用いて計
算していましたが、IFRSでは売却先の実効税率を用いて計算しています。
この影響により、当連結会計年度にて、IFRSでは日本基準に比べて、連結損益計算書の「持分法による投資損益」が3億円増加し、「法人所得税費用」が5億円減少しています。