有価証券報告書-第56期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/07/21 13:16
【資料】
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【項目】
99項目
1.経営成績等の状況の概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1)業績
当連結グループは、2019年度が最終年度となる3カ年の中期経営計画「CONNECT TOGETHER 2019」の経営施策を重点的に推進し、お客様の事業課題である「安全性向上」「生産性向上」「ライフサイクルコスト(燃料費・維持費・修理費等を含む費用)低減」に繋がるICT・IoTを活用した解決策を「Solution Linkage®」と位置付け、積極的に取り組んでまいりました。
部品サービス事業では、「ConSite®」の浸透を図っており、とりわけ2017年度より始めた建設機械業界初の、センサーによりオイルの状態を遠隔で検知しエンジンや油圧機器の故障予知を行う「ConSite® OIL」を、ヨーロッパ、日本、オーストラリアに続き、当連結会計年度は東南アジア・中国市場へ提供を開始するなど、世界各地のお客様のライフサイクルコストの低減に取り組みました。
マイニング事業については、日立グループとの協業により高度な車体安定化制御を実現した、リジッドダンプトラックAC-3シリーズの拡販に努め、鉱山運営の効率化に貢献するマイニング機械の運行管理システムの提供や自律運転技術(AHS)の開発に積極的に取り組んでおり、今年前半の商用化をめざし、オーストラリアのWhitehaven Coal Mining Limitedと協業を進めてきました。
また、買収したH-E Parts International LLC及びその子会社と、Bradken Pty Limited及びその子会社ではマイニング設備関連の部品サービス等を推進するソリューション事業を強化しています。Bradken Pty Limited及びその子会社では、当連結会計年度から日立建機のダンプトラック用の純正荷台の製作を始め、更にグループの協業を深化させてきました。
レンタル事業では、米国のAcme Business Holdco, LLCへの出資やイギリスのSynergy Hire Limited設立に続き、中国でも事業強化を進めており、今後更にアジア・大洋州でも展開を図っていきます。
以上、提出会社では新車販売以外のバリューチェーン(新車販売以外の事業である部品サービス、ソリューションビジネス、レンタル等の事業)事業の強化を進め、収益の拡大を図ってきました。
一方、世界的に先行き不透明感の広がる中、当第4四半期会計期間から世界中で深刻化した新型コロナウイルス感染拡大の影響による油圧ショベル需要の減少、資源価格下落の影響による中小規模鉱山会社からのマイニング機械需要の減少、また当第3四半期会計期間に発生した日本国内の台風による出荷遅れ、並びに前連結会計年度と比較し円高基調で推移した為替の影響等により、当連結会計年度(2019年4月1日~2020年3月31日)の連結売上収益は、前連結会計年度比90%の9,313億4千7百万円となりました。
連結の利益項目については、前連結会計年度比では、売上収益の減少、為替の円高影響等により、営業利益は前連結会計年度比71%の728億4千9百万円、税引前当期利益は前連結会計年度比65%の671億3百万円、親会社株主に帰属する当期利益は前連結会計年度比60%の411億7千1百万円となりました。
① 建設機械ビジネス
当連結会計年度における油圧ショベル需要は、日本や北米においては堅調に推移したものの、世界的に先行き不透明感の広がる中、当第4四半期会計期間から新型コロナウイルスの影響が各地に広がり、中国・アジア・インド・オセアニア・アフリカ・西欧等、多く地域で前連結会計年度を下回りました。一方、マイニング機械需要は大規模鉱山を所有する大手鉱山会社からの需要は、前年同様の水準で推移しましたが、中規模鉱山会社からの需要は減少しました。
この結果、当連結会計年度の売上収益は、新型コロナウイルスの影響による市場の減速に伴う新車販売の減少や円高影響等を受け、前連結会計年度比90%の8,407億6千2百万円となりました。
② ソリューションビジネス
当事業は、2016年度に連結子会社化した、主としてマイニング設備及び機械のアフターセールスにおける部品サービス事業を行うBradken Pty Limited及びその子会社と、サービスソリューションを提供するH-E Parts International LLC及びその子会社で構成されています。
当連結会計年度の売上収益は、ロシアCISやアジア等でマイニング機械向け売上が堅調に推移し、前連結会計年度比で現地通貨ベースでは増収を確保したものの、為替の円高影響により、前連結会計年度比95%の919億7千5百万円となりました。
なお、上記、①②の売上収益については、セグメント間調整前の数値です。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は621億6千5百万円となり、当連結会計年度期首より51億8千2百万円減少しました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動に関するキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動に関するキャッシュ・フローは、当期利益が447億6千8百万円、償却費461億4千7百万円をベースに、売掛金及び受取手形及び契約資産の減少6億4千6百万円、ファイナンス・リース債権の減少92億1千3百万円、棚卸資産の減少1億7百万円の計上等があった一方で、買掛金、支払手形の減少327億6千9百万円、法人所得税の支払314億4百万円等がありました。
この結果、当連結会計年度は226億8千2百万円の収入となりました。
(投資活動に関するキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動に関するキャッシュ・フローは、主として、有形固定資産の取得320億4千4百万円、無形資産の取得73億1千1百万円があったため347億4千9百万円の支出となりました。
(財務活動に関するキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動に関するキャッシュ・フローは、主として、配当金の支払(非支配持分株主への配当金を含む)253億8百万円があったものの、短期借入金の増加96億9千4百万円、社債及び長期借入金の増加393億8千2百万円等により、109億9千3百万円の収入となりました。
(3)生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度の生産実績は、次のとおりです。
セグメントの名称生産高(百万円)前連結会計年度比(%)
建設機械ビジネス830,27283
ソリューションビジネス87,39293
合計917,66484

(注)1.金額は、販売価格によっています。
2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
② 受注実績
当連結グループの製品は、そのほとんどが見込生産のため受注実績の記載は省略しています。
③ 販売実績
当連結会計年度の販売実績は、次のとおりです。
セグメントの名称販売高(百万円)前連結会計年度比(%)
建設機械ビジネス840,75190
ソリューションビジネス90,59694
合計931,34790

(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
2.総販売実績に対し10%以上に該当する販売先はありません。
2.財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
(1)重要な会計方針及び見積り
当連結グループは連結財務諸表の作成に際し、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、財政状態及び経営成績の金額に影響を与える見積りを行っていますが、特に以下の重要な会計方針が、提出会社の連結財務諸表の作成における重要な見積りに大きな影響を及ぼすと考えています。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
また、当連結会計年度における繰延税金資産の実現可能性の評価やのれん等の非金融資産の減損テストなどの将来業績予測に基づく重要な会計上の見積りについて、当連結グループはグローバルに事業活動を行っており、セグメントや地域によって状況は異なるものの、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)拡大に伴う経済活動停滞による影響は概ね2020年度上半期で発生し、一部は下半期まで及ぶという仮定に基づいております。
この仮定のもとでは当連結会計年度の連結財務諸表に与える重要な影響はありませんが、実際の経済活動の推移が今後この仮定から乖離した場合には、翌期以降の重要な会計上の見積りの判断に影響を及ぼす可能性があります。
① 棚卸資産
当連結グループは、棚卸資産は取得原価と正味実現可能価額のいずれか低い方の金額で評価しており、実際の将来需要または市場状況が悪化した場合は、評価減が必要となる可能性があります。
② 有形固定資産及び無形資産
当連結グループは、有形固定資産及び無形資産について減損の兆候の有無の判定を行い、その帳簿価額が回収不可能であるような兆候がある場合、減損テストを実施しています。将来の営業活動から生ずる損益またはキャッシュ・フローの悪化等により回収可能価額が低下した場合には追加の減損損失の計上が必要になる可能性があります。
また、耐用年数を確定できない無形資産及びのれんについては、減損の兆候の有無にかかわらず、毎年、主に第4四半期において、その資産の属する資金生成単位ごとに回収可能価額を見積もり、減損テストを実施しています。のれんが発生している連結子会社の超過収益力が低下した場合には、追加の減損損失の計上が必要になる可能性があります。
③ 営業債権及びその他の金融資産
金融資産については、減損を示す客観的な証拠が金融資産の当初認識後に発生しており、その金融資産の見積将来キャッシュ・フローが帳簿価額を下回る場合、当該金融資産について減損損失が発生する可能性があります。
また、営業債権にかかる減損損失については、事業を行う国あるいは地域の特有な商慣行を含む、事業環境に関連した潜在的なリスクを評価した上で、過去の経験等を考慮に入れ算定される貸倒実績率又は回収可能額の見積りに基づき減損損失を計上しており、将来の市況悪化や取引先の業績不振により、現在の簿価に反映されていない損失または簿価の回収不能が発生した場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。
④ 繰延税金資産
繰延税金資産は、未使用の税務上の繰越欠損金、税額控除及び将来減算一時差異のうち、将来課税所得に対して利用できる可能性が高いものに限り認識しています。将来において業績及び課税所得が見積額より悪化した場合、繰延税金資産に対し追加の評価減の計上が必要となる可能性があります。
⑤ 退職給付に係る負債
当連結グループは、退職給付制度に基づく確定給付債務及び制度資産の測定に当たっては、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出しています。これらの前提条件には、割引率、昇給率、退職率及び死亡率などが含まれます。将来において、実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、退職給付に係る負債、退職給付費用及び退職給付制度の再測定に影響を及ぼす可能性があります。
(2)当連結会計年度の経営成績の分析
当連結会計年度における当連結グループの業績については、1.経営成績等の状況の概要(1)業績に記載のとおりです。
変化に強い企業体質づくりと成長戦略の刈取りを促進すべく策定した2017年度から3か年の中期経営計画の達成・進捗状況は、以下のとおりです。
指標2019年度目標当連結会計年度実績前連結会計年度比
収益性営業利益からその他の収益及びその他の費用を除いた利益率9%以上をめざす8.2%3.1%pt減
効率性ROE9%以上をめざす8.6%6.1%pt減
ネットD/Eレシオ0.4以下をめざす0.580.09増
株主還元連結配当性向を30%程度、もしくはそれ以上をめざす31.0%-

(注)2020年度目標の前提となる為替レートは、米ドル105円、ユーロ120円、人民元15円、豪ドル72円としています。
引き続き中期経営計画策定時の前提市況ならびに為替水準をベースにした場合においても各数値目標が達成できるよう取り組みます。
① 売上収益
当連結会計年度の連結売上収益は前連結会計年度比9.9%減少の9,313億4千7百万円となりました。
② 売上原価、販売費及び一般管理費
当連結会計年度の売上原価は、前連結会計年度比7.5%減少の6,805億9千万円となりました。売上原価の売上収益に対する比率は前連結会計年度より1.9ポイント増加し73.1%となりました。
また、販売費及び一般管理費は前連結会計年度比4.0%減少の1,741億3千9百万円となりました。
③ 営業利益
営業利益は、前連結会計年度より28.8%減少し728億4千9百万円となりました。営業利益の売上収益に対する比率は前連結会計年度から2.1ポイント減少し7.8%となりました。
④ 金融収益及び金融費用
金融収益及び金融費用は、前連結会計年度の43億1千万円の損失(純額)から当連結会計年度84億2千8百万円の損失(純額)と、損失が41億1千8百万円増加しました。これは主に、支払利息が、前連結会計年度52億6千4百万円から当連結会計年度65億8千6百万円と、13億2千2百万円増加したことによるものです。
⑤ 税引前当期利益
税引前当期利益は、前連結会計年度より34.7%減少し671億3百万円となりました。
⑥ 法人所得税費用
当連結会計年度における法人所得税費用は、前連結会計年度より21.7%減少し、223億3千5百万円となりました。
(3)経営成績に重要な影響を与える要因
当連結グループに与える業績変動要因、並びに国内外の政治的・経済的変動及び需要変動による影響については 2[事業等のリスク]に記載のとおりです。
(4)財政状態の分析
[資産]
流動資産は、前連結会計年度末に比べて、△9.1%、611億9百万円減少し、6,127億7千9百万円となりました。これは主として営業債権が283億2千1百万円、棚卸資産が236億2千2百万円減少したことによります。
非流動資産は、前連結会計年度末に比べて、8.5%、434億2千万円増加し、5,547億8千8百万円となりました。これは主として、当連結会計年度期首からのIFRS第16号「リース」適用により、使用権資産が578億5千3百万円増加したことによります。
この結果、資産合計は、前連結会計年度末に比べて、△1.5%、176億8千9百万円減少し、1兆1,675億6千7百万円となりました。
[負債]
流動負債は、前連結会計年度末に比べて、△21.1%、992億5千7百万円減少し、3,713億6千6百万円となりました。これは主として営業債務及びその他の債務が771億9千5百万円減少したことによります。
非流動負債は、前連結会計年度末に比べて57.6%、991億1千8百万円増加し2,710億9千万円となりました。これは主として当連結会計年度期首からのIFRS第16号適用により、リース負債が477億9千5百万円、社債及び借入金が593億2千9百万円増加したことによります。
この結果、負債合計は、前連結会計年度末に比べて1億3千9百万円減少し、6,424億5千6百万円となりました。
[資本]
資本合計は、前連結会計年度末に比べて、△3.2%、175億5千万円減少し、5,251億1千1百万円となりました。
(5)資本の財源及び資金の流動性についての分析
① キャッシュ・フロー
当連結グループの資本の財源及び資金の流動性については、1.経営成績等の状況の概要(2)キャッシュ・フローの状況に記載のとおりです。
② 資金需要及び財務政策
当連結グループは、当期の運転・設備投資及び投融資資金に充当し、かつ借入金の長短、直間のバランスの適正化を目的として、短期借入金96億9千4百万円、長期借入金618億6千8百万円、社債300億円の資金調達を行い、長期借入金224億8千6百万円、社債300億円の返済を実施しました。
また、当連結グループは適時に資金繰り計画を作成・更新すると共に、手元流動性を極小化し資金効率を高める一方でコミットメント・ライン及び当座借越枠の確保により流動性リスクを回避する管理をしています。