有価証券報告書-第104期(平成31年3月1日-令和2年2月29日)

【提出】
2020/05/28 14:33
【資料】
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【項目】
90項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、創業以来、「事業の遂行を通じて広く社会の発展、人類の福祉に貢献すること」を使命とし、この使命達成のため、「品質重視の考えに立ち、常に世界に誇る技術を開発、向上させる」、「経営効率の向上に努め、企業の存続と発展に必要な利益を確保する」、「市場志向の精神に従い、市場ニーズにこたえ、需要家への奉仕に徹する」の3項目を掲げ、その実現に努力することを経営理念といたしております。このような経営理念のもと、顧客ニーズを高い次元で実現できる製品・サービスの提供や、従業員にとって働きがいのある会社づくりに取り組んでいます。これらにより、継続的な利益の創出を実現し、ステークホルダーのみなさまへの一層の還元を図ることで、持続的な企業価値の向上に努めてまいります。
(2) 中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、2016年度にスタートした長期経営計画「2025年ビジョン」(※1)の見直しを2019年6月に行いました。この度の見直しでは、メカトロニクスを軸とした「工場自動化・最適化」と「メカトロニクスの応用領域」を事業領域に設定し直し、経営目標についても営業利益を最も重要な経営指標と定め、「質」の向上を加速させることを明確にしております。
2019年度には、この「2025年ビジョン」実現に向けた第2ステップとして、新中期経営計画(2019~2021年度)「Challenge 25」(※1)を始動いたしました。前中期経営計画で進めてきた施策をさらに加速させ、新しいソリューションコンセプトである「i3-Mechatronics(アイキューブ メカトロニクス)」(※2)にチャレンジし、新たな価値・市場の創造に挑戦しております。
※1 「2025年ビジョン」および「Challenge 25」の詳細は、以下のURLからご覧いただくことができます。
2025年ビジョン:https://www.yaskawa.co.jp/wp-content/uploads/2019/06/Vision2025_Revision.pdf
Challenge 25 : https://www.yaskawa.co.jp/wp-content/uploads/2019/06/Challenge25.pdf
※2 i3-Mechatronics(アイキューブ メカトロニクス):機械工学を表すメカニズムと、電気工学を表すエレクトロニクスを融合させた「Mechatronics(メカトロニクス)」に、3つの“i”(integrated:統合的、intelligent:知能的、innovative:革新的)を重ね合わせ、お客さまの工場の生産現場から、経営課題の解決に貢献するソリューションコンセプト。2017年10月に発表。
■中期経営計画「Challenge 25」の基本方針/重点方策
① i3-Mechatronicsによるビジネスモデル変革
▶ i3-Mechatronicsを実現する販売体制の構築
“モノ売り+コト売り”への変革に対応した販売スキームの進化
▶ i3-Mechatronicsを実現する技術/製品開発の強化
“安川テクノロジーセンタ”による技術開発機能の強化
▶ i3-Mechatronicsを実践する生産機能の強化
次世代工場“安川ソリューションファクトリ”におけるコンセプトの実践
② 拡大する“ロボティクス”ビジネスでの収益最大化
▶ 「3C(※3)」を中心とした中国・アジア市場の攻略
▶ 「自動車」完成車/部品メーカーとの取り組み加速
▶ 「半導体」製造装置市場での取り組み強化
※3 3C:コンシューマー向け、デジタルコミュニケーション機器の略
(Computer、Communication、Consumer Electronicsの3語の頭文字から)
③ “選択と集中”によるリソース強化で新領域拡大
▶ Energy Saving 省エネ機器の高機能化と高効率モータの組み合わせによる高付加価値提案を通じて省エネの応用領域を拡大
▶ Food & Agri 食品生産工程向け自動化ソリューションの取り組みを強化
▶ Clean Power 競争力のある領域・特定の地域に注力することで収益力を強化
▶ Humatronics Humatronics機器の実証拡大によるビジネスモデルを構築
④ デジタル経営と品質経営を通じた経営効率の向上
デジタル経営により「シンプルで一つの経営基盤」を確立するとともに、TQM(※4)の運用により「業務品質と現場力の向上」を実現し、経営のさらなる効率化を目指します。
※4 TQM:Total Quality Management、組織全体として統一した品質管理目標を経営戦略へ適用したもの
⑤ 社会の持続的成長と企業価値の向上に向けた取り組み
事業活動を通じ、さまざまな社会的課題の解決を加速させるとともに、社会の持続的成長を実現させるESGの取り組みを通じ経営基盤の強化を図ります。
(3) 目標とする経営指標
当社グループは、「2025年ビジョン」において、営業利益を最も重要な経営指標に据え、過去最高となる1,000億円の営業利益の創出を目指しています。このビジョン実現に向けた第2ステップとして、中期経営計画「Challenge 25」においては、更なる高収益体質の実現と資本効率の向上を目指し、2021年度をターゲットする中期戦略目標を設定しております。
■「Challenge 25」における主な経営目標
0102010_001.png[参考] 前提為替レート 1米ドル=110円、1ユーロ=125円
※5 2018年度実績の数値については、IFRSに基づき遡及変更しています。そのため、これまで開示した他資料と差異がある場合があります。
※6 ROE/Return on Equity (親会社所有者帰属持分当期利益率) = 親会社の所有者に帰属する当期利益/親会社の所有者に帰属する持分
※7 ROIC/Return on Invested Capital (投下資本利益率) = 親会社の所有者に帰属する当期利益/投下資本
(4) 経営環境および対処すべき課題
年初に発生した新型コロナウイルスの感染拡大によるグローバルでの生産・物流の停滞などもあり、2020年度の当社グループを取り巻く経営環境は厳しい状況が見込まれています。
一方、労働力不足の深刻化に伴う省人化のための生産自動化や、スマートフォンを中心とした半導体関連投資の再開など需要回復の兆しも見られています。そのため、新型コロナウイルス問題の沈静化後は、市場は緩やかに回復に向かうことを見込んでいます。
このような状況下、当社グループは長期経営計画「2025年ビジョン」で掲げる「産業自動化革命の実現」に向け、中期経営計画「Challenge 25」では、新たなソリューション「i3-Mechatronics」の推進により、お客さまの経営課題の解決に貢献することを目標とした積極的な取り組みを進めていきます。
① 「i3-Mechatronics」とビジネスモデルの確立
2020年度においては、「i3-Mechatronics」のソリューション提供力の強化を図るため、開発・生産・販売面での取り組みを推進していきます。
開発では、開発力強化に向けて建設中である「安川テクノロジーセンタ」の2021年での稼動を見据え、新たな体制構築のための組織再編と機能強化を加速させます。製品開発および生産技術の機能を事業横断的に集約させ、基礎研究から量産試作の実証、そして品質管理までの一貫した開発体制の構築を目指していきます。
また、「i3-Mechatronics」の実行力強化に向けては、当社コンポーネントとロボットの一括コントロールを可能とする「YRMコントローラ(仮称)」の開発を加速させます。具体的なソリューションの提供を拡大させ、システム実証を通じたアプリケーション技術の開発とノウハウの蓄積を図っていきます。
生産について、2018年12月に本格稼動させた、ACサーボドライブ「Σ-7シリーズ」を生産する次世代生産工場「安川ソリューションファクトリ(埼玉県入間市)」の生産方式をグローバルで展開していきます。これにより、生産現場のデータ活用を通じた生産自動化を進めると同時に、急な需要変動に対応できるフレキシブルな生産のシステム構築を図り、生産効率化を進めることで、事業体質を強化していきます。
販売では、トップセールスによる販売活動強化を通じ、お客さまの経営課題の把握を深化させるとともに、ワンフェースによる事業部横断的な営業の浸透・定着を図ることで、最適なソリューションの提供を強化させていきます。また、サービス部門と営業部門を一体化させることにより、お客さまの要望に迅速かつ的確に応えられる体制を整備していきます。
② 拡大する“ロボティクスビジネス”での収益最大化
高い成長が見込まれる3C分野においては、トップ企業との関係・協業強化を図ることで受注拡大につなげていきます。自動車分野ではグローバルに展開する完成車・部品供給メーカーとの協業強化に向けて、ロボットを中心に製品ラインアップの拡充と機能強化を行っていきます。半導体分野では、市場の立ち上がりに対応してグローバルにおける製造装置メーカーとのリレーション強化を図っていきます。
③ “選択と集中”によるリソース強化で新領域拡大
事業の持続的成長を実現するため、新規事業についてはリソースの選択と集中を進めています。Energy Saving事業では、新製品投入と新たな機能開発により拡販を進めていきます。Food & Agri事業では、中食分野におけるロボット導入による自動化を着実に進めるとともに、野菜自動生産システムについては実証フェーズを完了させ、本格的な事業拡大を進めていきます。Clean Power事業では、グローバルでの事業体制の最適化を図るべく、事務所等の再編を進めるなど徹底したコストダウンにより黒字転換を図っていきます。Humatronics機器事業では、バイオメディカルロボットによるゲノム解析分野での事業化に向けた取組みを強化していきます。
④ デジタル経営の基盤構築
企業活動におけるグローバルデータの一元化と業務プロセスの標準化を加速させます。具体的には、経理をはじめ販売・生産・購買・開発・品質・人事などの社内におけるグローバルデータの一元管理に向けて、基幹システムの統合と、各システムで使われるコード統一を進めていきます。これにより、グループガバナンス強化ならびに業務品質の向上に加え、徹底した業務効率化を通じた企業体質の強化を図ります。
なお、各セグメントにおける具体策については、それぞれ以下のとおりです。
[モーションコントロール]
ACサーボモータ・コントローラ事業においては、2018年12月に稼動を開始した「安川ソリューションファクトリ」における生産効率の追求に加え、この生産方式をグローバルの生産工場に展開することで、さらなる体質強化を図ります。また、「i3-Mechatronics」を具現化する次期主力製品の開発加速・投入により、お客さまへのソリューション提案力を強化し、収益の拡大を図ります。
インバータ事業においては、新インバータシリーズの販売を拡大するとともに、さらなる原価低減を進め収益性の改善を図ります。また、お客さまの機械を画期的に進化させる差別化機能を拡充し、着実なシェアの向上を進めていきます。
[ロボット]
主力製品を展開する自動車産業においては、グローバルに展開する完成車・部品供給メーカーへの拡販を進めます。また、成長が期待される3Cを中心とした一般産業においては、トップセールスによる販売活動を活性化し、お客さまとの協業・連携をこれまで以上に推進させることで事業拡大を図っていきます。
また、2019年1月に稼動を開始した欧州スロベニア工場における現地生産を拡大し、最大限活用することで、グローバルで最適かつ需要変動に強い生産体制の構築と、さらなる自動化推進による収益性の改善を進めていきます。
さらに、「i3-Mechatronics」を軸とした自立分散型の生産システム実現に向けた製品開発およびデジタルデータマネージメントの強化を推進し、自動化領域を拡大していきます。
[システムエンジニアリング]
環境・エネルギー分野においては、欧州を中心とした大型風力発電市場において、主要なお客さまとの協業強化を図り、洋上風力発電案件の安定した受注拡大を目指します。また、米州を中心とした太陽光発電市場ではパワーコンディショナーの新製品による売上拡大を図ります。加えて、事務所再編を中心に経費削減をさらに進め、採算性改善を加速させます。
鉄鋼プラントシステム・社会システム分野では、グループ内で実施した事業再編により経営の効率化を進めます。また、国内の公共事業関連のビジネスにおいて、AI・IoT技術による新たな取り組みを加速させると同時に、民間ビジネスなどの獲得を通じた高収益体質化を目指します。