四半期報告書-第184期第3四半期(令和3年10月1日-令和3年12月31日)
※「調整後営業損益」は、営業損益から、買収により認識した無形資産の償却費およびM&A関連費用(ファイナンシャルアドバイザリー費用等)を控除し、買収会社の全社への貢献を明確化した、本源的な事業の業績を測る利益指標です。また、「親会社の所有者に帰属する調整後四半期損益」は、四半期損益から営業損益に係る調整項目およびこれらに係る税金相当・非支配持分相当を控除した、親会社所有者に帰属する本源的な事業の業績を測る利益指標です。
(1)財政状態および経営成績の状況
当第3四半期連結累計期間の世界経済は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)(以下「新型コロナウイルス感染症」という。)により半導体不足などの供給面の影響があったものの、主要国の積極的な財政政策や経済活動制限の緩和等の需要喚起により、緩やかな改善となりました。日本経済は、度重なる緊急事態宣言の発令や期間延長の影響があったものの、積極的な財政政策等により、非常に緩やかな改善となりました。
このような事業環境のもと、当第3四半期連結累計期間の売上収益は、2兆964億円と前年同期に比べ519億円(2.5%)増加しました。これは、エンタープライズ事業やグローバル事業を中心に、増収となったことによるものです。
収益面につきましては、営業損益は、前年同期に比べ351億円悪化し、473億円の利益となりました。これは、半導体等の部材逼迫の影響や戦略的費用を計上したことなどに加え、前年度に子会社株式売却益および土地売却益の計上によるその他損益の改善があったことなどによるものです。また、調整後営業損益は、前年同期に比べ211億円悪化し、760億円の利益となりました。
税引前四半期損益は、営業損益が悪化したことなどにより、前年同期に比べ367億円悪化し、491億円の利益となりました。
親会社の所有者に帰属する四半期損益は、税引前四半期損益が悪化したことなどにより、前年同期に比べ296億円悪化し、249億円の利益となりました。また、親会社の所有者に帰属する調整後四半期損益は、前年同期に比べ194億円悪化し、443億円の利益となりました。
セグメント別の業績は以下のとおりです。なお、セグメント別の売上収益については、外部顧客への売上収益を記載しています。
a.社会公共事業
社会公共事業の売上収益は、地域産業向けや公共向けが減少したことなどにより、前年同期に比べ147億円(5.3%)減少し、2,595億円となりました。
調整後営業損益は、売上が減少したことなどにより、前年同期に比べ38億円悪化し、76億円の利益となりました。
b.社会基盤事業
社会基盤事業の売上収益は、政府のGIGAスクール構想を背景とした教育機関向けパソコンの需要の一巡に加え、メディア向けが減少したことなどにより、前年同期に比べ153億円(3.3%)減少し、4,452億円となりました。
調整後営業損益は、売上が減少したことなどにより、前年同期に比べ4億円悪化し、349億円の利益となりました。
c.エンタープライズ事業
エンタープライズ事業の売上収益は、製造業向け、流通・サービス業向け、金融業向けいずれも増加したことなどにより、前年同期に比べ594億円(16.7%)増加し、4,138億円となりました。
調整後営業損益は、売上が増加したことなどにより、前年同期に比べ82億円改善し、344億円の利益となりました。
d.ネットワークサービス事業
ネットワークサービス事業の売上収益は、固定ネットワーク領域が減少したことなどにより、前年同期に比べ157億円(4.3%)減少し、3,501億円となりました。
調整後営業損益は、5G関連の投資費用が増加したことなどにより、前年同期に比べ41億円悪化し、158億円の利益となりました。
e.グローバル事業
グローバル事業の売上収益は、デジタル・ガバメントおよびデジタル・ファイナンスの増加に加え、サービスプロバイダ向けが増加したことなどにより、前年同期に比べ293億円(9.0%)増加し、3,545億円となりました。
調整後営業損益は、デジタル・ガバメントおよびデジタル・ファイナンス、ワイヤレスの収益性の改善に加え、ディスプレイ事業を展開する子会社の非連結化などにより、前年同期に比べ100億円改善し、181億円の利益となりました。
f.その他
その他の売上収益は、前年同期に比べ89億円(3.4%)増加し、2,732億円となりました。
調整後営業損益は、前年同期に比べ82億円悪化し、14億円の利益となりました。
財政状態につきましては、当第3四半期連結会計期間末の総資産は3兆5,287億円と、前年度末に比べ1,398億円減少しました。流動資産は、棚卸資産の増加があったものの、売上債権の回収などにより、前年度末に比べ1,252億円減少し、1兆7,356億円となりました。非流動資産は、前年度末に比べ146億円減少し、1兆7,931億円となりました。
負債は、1兆9,378億円と前年度末に比べ1,690億円減少しました。これは、主に資材費の支払等による営業債務及びその他の債務の減少や賞与の支払い等による未払費用の減少などによるものです。有利子負債残高は、前年度末に比べ140億円減少の6,889億円となり、デット・エクイティ・レシオは0.52倍(前年度末比0.02ポイント改善)となりました。また、有利子負債残高から現金及び現金同等物の残高を控除した有利子負債残高(NETベース)は、前年度末に比べ955億円増加の2,750億円となり、デット・エクイティ・レシオ(NETベース)は、0.21倍(前年度末比0.07ポイント悪化)となりました。
資本は、配当金の支払があったものの、四半期利益の計上、在外営業活動体の換算差額の増加に伴うその他の資本の構成要素の増加などにより、前年度末に比べ291億円増加し、1兆5,909億円となりました。
この結果、親会社の所有者に帰属する持分は1兆3,312億円となり、親会社所有者帰属持分比率は37.7%(前年度末比2.1ポイント改善)となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当第3四半期連結累計期間の営業活動によるキャッシュ・フローは、53億円の収入で、税引前四半期損益の悪化や、運転資本の改善額が減少したことなどにより、前年同期に比べ813億円の悪化となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、327億円の支出で、前年度にアバロク・グループ社の買収に伴う子会社の取得による支出の計上があったことなどにより、前年同期に比べ1,621億円の改善となりました。
この結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合算したフリー・キャッシュ・フローは、274億円の支出となり、前年同期に比べ808億円の改善となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入による収入があったものの、長期借入金の返済による支出などにより、866億円の支出となりました。
上記の結果、現金及び現金同等物は、4,139億円となり、前年度末に比べ1,095億円減少しました。
(3)経営方針・経営戦略等
当第3四半期連結累計期間において、NECグループが定めた経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(4)事業上及び財務上の対処すべき課題
当第3四半期連結累計期間において、NECグループが対処すべき課題について重要な変更はありません。
(5)研究開発活動
当第3四半期連結累計期間におけるNECグループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
当第3四半期連結累計期間におけるNECグループの主な研究開発活動の成果は、次のとおりです。
・「ヘルスケア・ライフサイエンス事業」を通じた新たな価値の提供の一つとして、顔認証技術を応用した内視鏡画像解析によって、内視鏡検査による発見が困難なバレット食道腫瘍(食道がんに代表される食道内腫瘍)を、既存の内視鏡に接続するだけで検知することができるAI技術を開発(社会公共事業)
・人と協調して高度な判断を支援するAIの実現を目指す活動の一環として、複雑な意思決定を行う際の脳活動の分析から得られる知見を応用し、データの取得と分析を同時に行うことで、高い精度を維持しながら顔認証やサイバー攻撃の検知・分析の処理スピードを最大20倍高速化することが期待できるAI技術を開発(グローバル事業)
・量子コンピューティング技術に関する当社取り組みの一環として、当社独自開発のアルゴリズムを組み込んだソフトウェアをベクトル型スーパーコンピュータ上で動作させることで、製造業での複雑な生産計画立案業務の最適化など、様々な「組合せ最適化問題」における最適解の高速導出という量子アニーリングが得意とする処理をシミュレーテッドアニーリング方式により実現するクラウド型サービスを実用化し、2021年11月から提供開始(その他)
・顔や虹彩など複数の要素を組み合わせることで、マスクや帽子着用時でも高精度を実現するマルチモーダル生体認証のさらなる強化に取り組む中、世界的権威のある米国国立標準技術研究所(NIST)実施の虹彩認証技術および顔認証技術におけるベンチマークテスト(認証端末上の情報とデータベース上の複数人の情報を照合して本人認証する方式のテスト)において、それぞれ世界第1位を獲得(グローバル事業)
(注)虹彩認証技術においては2021年9月2日、顔認証技術においては2021年8月23日時点での順位です。
・ヘルスケア・ライフサイエンス事業強化の取り組みとして開発を進めている、AI予測技術を用いて患者毎に設計されるネオアンチゲン個別化がんワクチン「TG4050」について、第Ⅰ相臨床試験で、卵巣がんおよび頭頸部がんに対する個別化免疫療法の可能性を示す初期データを獲得(その他)
(注)本個別化がんワクチンの開発および第Ⅰ相臨床試験は、フランスのトランスジーン社と共同で実施したものです。
・ソースコードを入手することなく、ソフトウェアに仕掛けられたバックドアを短時間で自動検出する「バックドア検査技術」を開発し、当該技術を中核技術のひとつとして活用して、通信機器およびシステムの構成やリスクを可視化して通信機器のサプライチェーン全体で共有することで情報通信インフラのセキュリティに関する透明性を確保することが可能な「セキュリティトランスペアレンシー確保技術」を実現(ネットワークサービス事業)
(注)セキュリティトランスペアレンシー確保技術は、日本電信電話株式会社(NTT)と共同で開発したものです。
当第3四半期連結累計期間におけるNECグループ全体の研究開発費は、88,527百万円であり、セグメントごとの内訳は、次のとおりです。
社会公共事業 7,859百万円
社会基盤事業 8,024百万円
エンタープライズ事業 11,213百万円
ネットワークサービス事業 28,874百万円
グローバル事業 13,983百万円
その他 18,574百万円