訂正有価証券報告書-第182期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

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2020/09/04 13:37
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※当連結会計年度から、セグメントを変更しています。
また、前連結会計年度との比較数値については、前連結会計年度の数値を新たなセグメントに組み替えて表示しています。
さらに、第181期に取得したケーエムディ・ホールディング社の暫定的な会計処理を、第182期第2四半期連結会計期間に確定させたため、第181期の関連する数値を遡及修正しています。
なお、「調整後営業損益」は、営業損益から、買収により認識した無形資産の償却費およびM&A関連費用(ファイナンシャルアドバイザリー費用等)を控除し、買収会社の全社への貢献を明確化した、本源的な事業の業績を測る利益指標です。また、「親会社の所有者に帰属する調整後当期損益」は、当期損益から営業損益に係る調整項目およびこれらに係る税金相当・非支配持分相当を控除した、親会社所有者に帰属する本源的な事業の業績を測る利益指標です。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度におけるNECグループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
① 財政状態および経営成績の状況
当連結会計年度の世界経済は、米中貿易摩擦や新型コロナウイルス感染症による影響等から減速しました。日本経済は、海外経済の減速や消費税率の引上げ等に加え、新型コロナウイルス感染症による影響から低調に推移しました。
このような事業環境のもと、NECグループは2018年1月に発表した「2020中期経営計画」に基づき、「収益構造の改革」、「成長の実現」、「実行力の改革」に取り組み、様々な変革を行いました。
「収益構造の改革」では、成長軌道への回帰に必要な投資を実現するため、収益改善に向けて課題事業への対応等の構造改革をさらに進めました。具体的には、2020年1月に日本アビオニクス㈱の普通株式をすべて売却したほか、2020年3月には、映像ソリューション事業を担う子会社であるNECディスプレイソリューションズ㈱の株式の過半数をシャープ㈱に譲渡することに合意しました。また、ワイヤレスソリューション事業においては収益性重視の事業の推進やセラゴンネットワークス社との協業による開発費削減などの収益改善施策を実行しました。
「成長の実現」では、生体認証技術やAI(人工知能)技術等のデジタル技術を活かした事業の推進を通じて社会価値創造に取り組みました。具体的には、旅客のシームレスな搭乗手続きを実現するため、2019年7月に世界最大の航空連合であるスターアライアンスと生体認証技術を活用した本人確認プラットフォームの開発に関する協業を行うことを発表しました。また、2019年8月には㈱ローソンの深夜省人化店舗の実証実験に参画し、顔認証AIエンジンを用いた入店管理システムや関連する技術・サービスを提供しました。さらに2019年9月には、㈱セブン銀行と顔認証による本人確認やQRコード決済に対応した次世代ATMを展開するとともに、この次世代ATMを用いた日本初となる顔認証によるATMでの口座開設の実証実験を実施しました。
また、㈱NTTドコモ、楽天モバイル㈱に第5世代移動通信システム(5G)ネットワークの構築のための基地局装置・無線子局の出荷を開始するとともに、5Gを地域限定で利用する「ローカル5G」事業にも本格参入し、企業や自治体に対してネットワークインフラからアプリケーションまでをトータルソリューションとして提案する活動を開始しました。
「実行力の改革」では、最新技術を活かした顧客価値創造への挑戦と社員の力を最大限に引き出す改革に取り組みました。最新技術を活かした顧客価値創造への挑戦としては、ヘルスケア事業強化の一環として、がんなどの先進的免疫治療法に特化した創薬事業に本格参入することを宣言し、個別化ネオアンチゲンワクチンの治験を開始したほか、開発途上国の新生児の出生証明・登録、ワクチン接種記録等を可能とする幼児指紋認証の実用化に向けた活動に取り組みました。次に、社員の力を最大限に引き出す改革として、社員を成果と行動の両面からフェアに評価し、その貢献に報いるパフォーマンスマネジメント制度をグループ会社に展開するとともに、当社において社員が自らのキャリアを切り拓き、成長する意欲を高める仕組みとして、社員の職務経歴と各組織の募集ポジションを社内公開しジョブマッチングをはかる「NEC Growth Careers」を導入しました。また、組織間のコラボレーションを促し、より創造的な働き方を可能にするワーキングスペースである「BASE」の設置、コアタイムのない「スーパーフレックス」の導入、テレワーク週間や全社一斉テレワーク・デイを通じたテレワーク推進など、働き方の変革を加速するための制度改革や環境整備を推進しました。
このような経営環境のもと、当連結会計年度の売上収益は3兆952億円(前連結会計年度比6.2%増)、営業損益は1,276億円の利益(同698億円改善)、調整後営業損益は1,458億円の利益(同759億円改善)、税引前損益は1,240億円の利益(同467億円改善)、親会社の所有者に帰属する当期損益は1,000億円の利益(同603億円改善)、親会社の所有者に帰属する調整後当期損益は1,112億円の利益(同642億円改善)となりました。また、当連結会計年度のフリー・キャッシュ・フロー(「営業活動によるキャッシュ・フロー」と「投資活動によるキャッシュ・フロー」の合計額)は、1,778億円の収入となりました。当連結会計年度末の有利子負債(短期借入金、コマーシャル・ペーパー、1年内返済予定の長期借入金、1年内償還予定の社債、社債、長期借入金およびリース負債を合計したもの)残高は、前連結会計年度末に比べ1,229億円増加し、6,754億円となり、デット・エクイティ・レシオ(D/Eレシオ、自己資本(「資本合計」から「非支配持分」を控除したもの)に対する有利子負債の割合)は、0.74倍(前連結会計年度末比0.10ポイント悪化)となりました。なお、有利子負債残高から現金及び現金同等物の残高を控除した有利子負債残高(NETベース)は、前連結会計年度末に比べ420億円増加の3,162億円となり、デット・エクイティ・レシオ(NETベース)は0.35倍(前連結会計年度末比0.03ポイント悪化)となりました。なお、IFRS第16号適用に伴う影響を加味した当年度期首の有利子負債残高および有利子負債残高(NETベース)からの増減はそれぞれ522億円の減少および1,332億円の減少となりました。デット・エクイティ・レシオおよびデット・エクイティ・レシオ(NETベース)は、当年度期首比でそれぞれ0.11ポイントおよび0.17ポイント改善となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、2,619億円の収入で、前連結会計年度に比べ1,976億円改善しました。これは税引前利益が改善したことに加え、IFRS第16号適用による影響および運転資本が改善したことなどによるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、840億円の支出で、前連結会計年度に比べ73億円支出額が増加しました。これは有形固定資産の取得による支出が増加したことなどによるものです。
この結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合算したフリー・キャッシュ・フローは1,778億円の収入となり、前連結会計年度に比べ1,903億円改善しました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、コマーシャル・ペーパーの償還や配当金の支払に加えリース負債の返済による支出などにより、917億円の支出となりました。
上記の結果、現金及び現金同等物は、3,593億円となり、前連結会計年度末に比べ809億円増加しました。
③ 生産、受注および販売の実績
NECグループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多いため、セグメントごとに生産規模、受注規模を金額あるいは数量で示すことはしていません。
このため、生産、受注および販売の状況については、「(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容」におけるセグメントの業績に関連づけて示しています。
なお、外部顧客への売上収益のうち、連結損益計算書の売上収益の10%以上を占める相手先がないため、主要な販売先に関する記載を省略しています。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点によるNECグループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。
なお、将来に関する事項は、当連結会計年度末(2020年3月31日)において判断したものです。連結財務諸表の作成には、期末日における資産、負債、偶発資産および偶発債務ならびに会計期間における収益および費用に影響を与えるような見積りや仮定を必要とします。結果として、このような見積りと実績が異なる場合があります。
① 当社の概要(主な事業内容)および経営成績に重要な影響を与える要因
NECグループの売上は、6つの主要なセグメントである社会公共事業、社会基盤事業、エンタープライズ事業、ネットワークサービス事業、システムプラットフォーム事業およびグローバル事業から生じます。当連結会計年度において、NECグループの売上収益の10.5%が社会公共事業、20.4%が社会基盤事業、14.7%がエンタープライズ事業、16.5%がネットワークサービス事業、17.7%がシステムプラットフォーム事業、16.0%がグローバル事業によるものです。(各セグメントの売上収益比率は、各セグメントの外部顧客に対する売上収益に基づき算出しています。)
各セグメントの製品およびサービス等の概要は次のとおりです。
社会公共事業の売上は、主に国内の地方自治体や医療機関、中規模企業に対するシステム・インテグレーションおよび開発サービスの提供によるものです。
社会基盤事業の売上は、主に航空宇宙、防衛およびメディア産業において国家・社会基盤を支える国内の政府・官庁および企業に対するシステム・インテグレーションおよび開発サービス、衛星および衛星管理サービス、センサーおよび航空交通管理システムならびに放送システムの提供によるものです。
エンタープライズ事業の売上は、主に国内の製造業、流通・サービス業および金融業におけるシステム・インテグレーションおよび開発サービス(システム構築、コンサルティング)、システム・メンテナンスおよびサポート(保守)、アウトソーシング・クラウドサービスならびに関連機器などの提供によるものです。
ネットワークサービス事業の売上は、主に国内の通信市場における携帯電話基地局、固定・携帯電話ネットワークおよびその他のICTソリューションなどの提供によるものです。
システムプラットフォーム事業の売上は、主に国内の政府機関および企業に対するカスタマイズされたまたはカスタマイズされていないハードウェア(サーバ、メインフレーム、ストレージデバイス、無線LANルータ、パソコン)、ソフトウェア製品およびサポート(保守)などの提供によるものです。
グローバル事業の売上は、主にパブリックセーフティ向けソリューション「セーファーシティ」、サービスプロバイダ向けソフトウェア・サービス、ネットワークインフラ、システムデバイスおよび蓄電ソリューションなどの国外市場における提供によるものです。
NECグループの各セグメントの業績は、景気動向およびIT投資の動向や通信事業者の投資動向等に左右されます。
経営成績に重要な影響を与えるその他の要因につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりです。
② 重要な会計方針および見積り
経営陣は、次の重要な会計方針の適用における見積りや仮定が連結財務諸表に重要な影響を与えると考えています。
重要な会計方針および見積りにつきましては、「第一部 企業情報 第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」と「第一部 企業情報 第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりです。
③ 当連結会計年度の経営成績の分析
当連結会計年度の売上収益は、3兆952億円と前連結会計年度に比べ1,818億円(6.2%)増加しました。これは、すべての報告セグメントで増収となったことによるものです。
収益面につきましては、営業損益は、前連結会計年度に比べ698億円改善し、1,276億円の利益となりました。これは、売上収益が増加したことに加え、前連結会計年度に事業構造改善費用を計上していたことなどによるものです。また、調整後営業損益は、前連結会計年度に比べ759億円改善し、1,458億円の利益となりました。
税引前損益は、前連結会計年度に関係会社株式売却益を計上していた影響があったものの、営業損益が改善したことなどにより、前連結会計年度に比べ467億円改善し、1,240億円の利益となりました。
親会社の所有者に帰属する当期損益は税引前損益が改善したことなどにより、前連結会計年度に比べ603億円改善し、1,000億円の利益となりました。また、親会社の所有者に帰属する調整後当期損益は、前連結会計年度に比べ642億円改善し、1,112億円の利益となりました。
セグメント別実績については次のとおりです。なお、各セグメント別の売上収益については、外部顧客に対する売上収益を記載しています。
a.社会公共事業
売上収益3,246億円(前連結会計年度比 13.4%増)
調整後営業損益186億円( 同 114億円改善)

社会公共事業の売上収益は、公共向けや医療向けが増加したことなどにより、前連結会計年度に比べ385億円(13.4%)増加し、3,246億円となりました。
調整後営業損益は、売上の増加に加え、収益性の改善などにより、前連結会計年度に比べ114億円改善し、186億円の利益となりました。
b.社会基盤事業
売上収益6,311億円(前連結会計年度比 1.5%増)
調整後営業損益539億円( 同 85億円改善)

社会基盤事業の売上収益は、航空宇宙・防衛向けが増加したことなどにより、前連結会計年度に比べ93億円(1.5%)増加し、6,311億円となりました。
調整後営業損益は、売上の増加に加え、収益性の改善などにより、前連結会計年度に比べ85億円改善し、539億円の利益となりました。
c.エンタープライズ事業
売上収益4,555億円(前連結会計年度比 5.5%増)
調整後営業損益372億円( 同 13億円改善)

エンタープライズ事業の売上収益は、金融業向けの増加などにより、前連結会計年度に比べ237億円(5.5%)増加し、4,555億円となりました。
調整後営業損益は、売上が増加したことなどにより、前連結会計年度に比べ13億円改善し、372億円の利益となりました。
d.ネットワークサービス事業
売上収益5,098億円(前連結会計年度比 10.8%増)
調整後営業損益382億円( 同 175億円改善)

ネットワークサービス事業の売上収益は、固定ネットワーク領域の増加に加え、一過性の大型案件があったことなどにより、前連結会計年度に比べ495億円(10.8%)増加し、5,098億円となりました。
調整後営業損益は、売上が増加したことなどにより、前連結会計年度に比べ175億円改善し、382億円の利益となりました。
e.システムプラットフォーム事業
売上収益5,487億円(前連結会計年度比 9.7%増)
調整後営業損益489億円( 同 288億円改善)

システムプラットフォーム事業の売上収益は、企業向けパソコンを中心にハードウェアが増加したことなどにより、前連結会計年度に比べ485億円(9.7%)増加し、5,487億円となりました。
調整後営業損益は、売上の増加に加え、構造改革効果などにより、前連結会計年度に比べ288億円改善し、489億円の利益となりました。
f.グローバル事業
売上収益4,938億円(前連結会計年度比 20.6%増)
調整後営業損益△38億円( 同 188億円改善)

グローバル事業の売上収益は、セーファーシティや海洋システムが増加したことなどにより、前連結会計年度に比べ844億円(20.6%)増加し、4,938億円となりました。
調整後営業損益は、セーファーシティ、サービスプロバイダ向け、ワイヤレスバックホール、海洋システムの収益性が改善したことなどにより、前連結会計年度に比べ188億円改善し、38億円の損失となりました。
g.その他
売上収益1,317億円(前連結会計年度比 35.4%減)
調整後営業損益94億円( 同 96億円悪化)

その他の売上収益は、前連結会計年度に比べ720億円(35.4%)減少し、1,317億円となりました。
調整後営業損益は、前連結会計年度に比べ96億円悪化し、94億円の利益となりました。
④ 流動性と資金の源泉
NECグループは、手許流動性、すなわち、現金及び現金同等物と複数の金融機関との間で締結したコミットメントライン契約の未使用額との合計額を今後の事業活動のための適切な水準に維持することを財務活動の重要な方針としています。当連結会計年度末は、現金及び現金同等物3,593億円、コミットメントライン未使用枠3,260億円、合計6,853億円の手許流動性を確保し、必要な流動性水準を維持しました。なお、現金及び現金同等物は主に円貨であり、その他は米ドルやユーロなどの外国通貨です。
また、NECグループは、短期・長期の資金需要を満たすのに十分な調達の枠を維持しています。まず短期資金調達では、その多くを国内コマーシャル・ペーパーの機動的な発行で賄っており、5,000億円の発行枠を維持しています。さらに、不測の短期資金需要の発生やコマーシャル・ペーパーによる調達が不安定になった場合の備えとして、コミットメントライン枠計3,280億円を維持し、常時金融機関からの借入れが可能な体制を敷いています。このうち800億円については、2023年3月までの契約期間において、短期借入を実行できるコミットメントラインとなります。一方、長期資金調達では、国内普通社債の発行枠3,000億円を維持しています。
負債構成の考え方に関しては、必要資金の安定的な確保の観点から、十分な長期資金の確保、およびバランスのとれた直接・間接調達比率の維持を当面の基本方針としており、その状況を示すと次のとおりです。
前連結会計年度末当連結会計年度末
長期資金調達比率 *171.0%70.1%
直接調達比率 *241.5%29.6%

*1 長期資金調達比率は、社債、長期借入金およびその他(1年超のリース債務)の合計を有利子負債で除して計算したものです。
*2 直接調達比率は、社債(1年以内償還予定を含む)およびコマーシャル・ペーパーの合計を有利子負債で除して計算したものです。
当連結会計年度末の長期資金調達比率は70.1%、直接調達比率は29.6%となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況について
キャッシュ・フローの状況につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりです。
(4)経営戦略と今後の方針について
経営戦略と今後の方針につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりです。
(5)新型コロナウイルス感染症の影響
新型コロナウイルス感染症について、大きな売上の減少等はなく当連結会計年度の連結財務諸表に与える影響は軽微と判断しています。
なお、事業等のリスクにつきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 2 事業等のリスク」、重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断につきましては、「第一部 企業情報 第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりです。