四半期報告書-第183期第3四半期(令和2年10月1日-令和2年12月31日)
※第1四半期連結会計期間から、セグメントを変更しています。
また、前年同期との比較数値については、前年同期の数値を新たなセグメントに組み替えて表示しています。
なお、「調整後営業損益」は、営業損益から、買収により認識した無形資産の償却費およびM&A関連費用(ファイナンシャルアドバイザリー費用等)を控除し、買収会社の全社への貢献を明確化した、本源的な事業の業績を測る利益指標です。また、「親会社の所有者に帰属する調整後四半期損益」は、四半期損益から営業損益に係る調整項目およびこれらに係る税金相当・非支配持分相当を控除した、親会社所有者に帰属する本源的な事業の業績を測る利益指標です。
(1)財政状態および経営成績の状況
当第3四半期連結累計期間の経済環境は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)(以下「新型コロナウイルス感染症」という。)の世界的な流行に伴う外出制限や営業・生産活動の停止等の影響から、世界経済、日本経済ともに、第1四半期に大きく悪化し、第2四半期以降はやや持ち直したものの、総じて低調に推移しました。
このような事業環境のもと、当第3四半期連結累計期間の売上収益は、2兆444億円と前年同期に比べ1,312億円(6.0%)減少しました。これは、ネットワークサービス事業が増収だったものの、エンタープライズ事業や、社会公共事業、グローバル事業などが減収となったことによるものです。
収益面につきましては、営業損益は、前年同期に比べ45億円改善し、824億円の利益となりました。これは、売上収益が減少したものの、費用の効率化により販売費及び一般管理費が改善したことに加え、土地売却益および子会社株式売却益の計上によるその他の損益の改善があったことなどによるものです。また、調整後営業損益は、前年同期に比べ64億円改善し、970億円の利益となりました。
税引前四半期損益は、営業損益が改善したことなどにより、前年同期に比べ69億円改善し、858億円の利益となりました。
親会社の所有者に帰属する四半期損益は、税引前四半期損益が改善したことなどにより、前年同期に比べ53億円改善し、545億円の利益となりました。また、親会社の所有者に帰属する調整後四半期損益は、前年同期に比べ68億円改善し、637億円の利益となりました。
セグメント別の業績は以下のとおりです。なお、セグメント別の売上収益については、外部顧客への売上収益を記載しています。
a.社会公共事業
社会公共事業の売上収益は、医療向けや地域産業向けが減少したことに加え、企業向けパソコンの更新需要の一巡などにより、前年同期に比べ418億円(13.2%)減少し、2,742億円となりました。
調整後営業損益は、売上が減少したことなどにより、前年同期に比べ65億円悪化し、114億円の利益となりました。
b.社会基盤事業
社会基盤事業の売上収益は、政府のGIGAスクール構想を背景にして教育機関向けパソコンを中心に官公向けが増加したものの、連結子会社の売上が減少したことなどにより、前年同期に比べ47億円(1.0%)減少し、4,605億円となりました。
調整後営業損益は、官公向けが売上の増加に伴い増益となった一方、連結子会社が減益となったことなどにより、前年同期に比べ71億円悪化し、353億円の利益となりました。
c.エンタープライズ事業
エンタープライズ事業の売上収益は、前年同期にあった大型案件の売上の減少や企業向けパソコンの更新需要の一巡に加え、製造業や流通・サービス業におけるIT投資の抑制などにより、前年同期に比べ547億円(13.4%)減少し、3,544億円となりました。
調整後営業損益は、売上が減少したことなどにより、前年同期に比べ101億円悪化し、262億円の利益となりました。
d.ネットワークサービス事業
ネットワークサービス事業の売上収益は、通信事業者の5G導入を背景に移動ネットワーク領域や固定ネットワーク領域で増加したことなどにより、前年同期に比べ431億円(13.4%)増加し、3,658億円となりました。
調整後営業損益は、売上が増加したことなどにより、前年同期に比べ61億円改善し、199億円の利益となりました。
e.グローバル事業
グローバル事業の売上収益は、海洋システムが増加したものの、ディスプレイの減少およびディスプレイ事業を展開する子会社の非連結化やワイヤレスバックホールの減少に加え、買収時から見込んでいたケーエムディ社における一部の事業の終息などにより、前年同期に比べ411億円(11.2%)減少し、3,252億円となりました。
調整後営業損益は、サービスプロバイダ向けの収益性の改善や海洋システムの売上の増加に加え、子会社株式売却益の計上などにより、前年同期に比べ65億円改善し、81億円の利益となりました。
f.その他
その他の売上収益は、前年同期に比べ320億円(10.8%)減少し、2,644億円となりました。
調整後営業損益は、前年同期に比べ135億円悪化し、96億円の利益となりました。
財政状態につきましては、第3四半期連結会計期間末の総資産は、3兆3,439億円と前年度末に比べ2,206億円増加しました。流動資産は、棚卸資産の増加があったものの、売上債権の回収などにより、前年度末に比べ671億円減少し、1兆6,318億円となりました。非流動資産は、アバロク・グループ社の買収に伴うのれんの増加および株式の時価上昇に伴うその他の金融資産の増加などにより、前年度末に比べ2,877億円増加し、1兆7,121億円となりました。
負債は、2兆882億円と前年度末に比べ795億円増加しました。これは、主に資材費の支払等による営業債務及びその他の債務の減少があったものの、コマーシャル・ペーパーの発行や長期借入れなどによる有利子負債の増加などによるものです。有利子負債残高は、前年度末に比べ1,582億円増加の8,336億円となり、デット・エクイティ・レシオは0.79倍(前年度末比0.05ポイント悪化)となりました。また、有利子負債残高から現金及び現金同等物の残高を控除した有利子負債残高(NETベース)は、前年度末に比べ1,497億円増加の4,659億円となり、デット・エクイティ・レシオ(NETベース)は、0.44倍(前年度末比0.09ポイント悪化)となりました。
資本は、配当金の支払があったものの、日本電信電話㈱に対する第三者割当増資の実行に加え、株式の時価上昇に伴うその他の資本の構成要素の増加、四半期利益を計上したことなどにより、前年度末に比べ1,411億円増加し、1兆2,557億円となりました。
この結果、親会社の所有者に帰属する持分は1兆494億円となり、親会社所有者帰属持分比率は31.4%(前年度末比2.2ポイント改善)となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当第3四半期連結累計期間の営業活動によるキャッシュ・フローは、866億円の収入で、税引前四半期損益および運転資本が改善した一方、土地売却益などの投資キャッシュ・フローへの組替額が増加したことなどにより、前年同期に比べ256億円悪化しました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、1,948億円の支出で、有形固定資産の売却による収入が増加したものの、アバロク・グループ社の買収に伴う子会社の取得による支出を計上したことなどにより、前年同期に比べ1,318億円支出額が増加しました。
この結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合算したフリー・キャッシュ・フローは、1,082億円の支出となり、前年同期に比べ1,574億円の悪化となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の償還やリース負債の返済による支出に加え、配当金の支払があったものの、コマーシャル・ペーパーの発行、株式の発行による収入および社債の発行による収入などにより、1,127億円の収入となりました。
上記の結果、現金及び現金同等物は、3,677億円となり、前年度末に比べ85億円増加しました。
(3)経営方針・経営戦略等
当第3四半期連結累計期間において、NECグループが定めた経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(4)事業上及び財務上の対処すべき課題
当第3四半期連結累計期間において、NECグループが対処すべき課題について重要な変更はありません。
(5)研究開発活動
当第3四半期連結累計期間におけるNECグループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
当第3四半期連結累計期間におけるNECグループの主な研究開発活動の成果は、次のとおりです。
・新型コロナウイルスの感染拡大の防止に向け、駅や空港といった公共施設や店舗など人が集まる場所に設置されたカメラの映像を解析し、個人を特定しないかたちで人の密集度合いをリアルタイムに可視化するソーシャルディスタンシング判定技術を開発(グローバル事業)
・新型コロナウイルスのワクチン開発を支援する取り組みとして、個別化がん免疫療法の開発で培ったAI予測技術を適用し、新型コロナウイルスの遺伝子解析を行い、その解析結果を公開(その他)
・ロボット専門家による事前の手順設計などを要することなく、現場の作業者が作業目標を指示するだけで、全自動でロボットの作業手順を設定し、最も効率的で安全な動作を導き出して制御することができるAI技術「目標指向タスクプランニング技術」を開発(エンタープライズ事業)
・フロンを含まず、地球温暖化への影響が少ない新冷媒を用いた空調設備を世界で初めて実用化し、データセンター内で発生する大量の熱を冷却するために要する空調消費電力を、従来の冷却システムと比較して半減できることを実証(その他)
(注)本実証実験は、NTTコミュニケーションズ㈱と共同で行いました。
・化学プラントなどの大規模インフラの安定運用を支援するAI技術「論理思考AI」と、シミュレータ上に再現したミラープラントを組み合わせた運転支援システムを構築し、運転員の手動操作と比較して40%効率的な運転ができることを実証(エンタープライズ事業)
(注)本実証実験は、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)、三井化学㈱および㈱オメガシミュレーションと共同で行いました。なお、論理思考AI技術は、2018年度に産総研と共同で開発したものです。
・これまで人手により試行錯誤を繰り返すことで行っていた多種多様なデータ間の因果関係の抽出を自動的に行うことができるAI技術「因果分析技術」を開発、実用化(その他)
当第3四半期連結累計期間におけるNECグループ全体の研究開発費は、77,017百万円であり、セグメントごとの内訳は、次のとおりです。
社会公共事業 7,203百万円
社会基盤事業 7,861百万円
エンタープライズ事業 10,698百万円
ネットワークサービス事業 21,178百万円
グローバル事業 12,593百万円
その他 17,484百万円
(6)主要な設備
当社は、経営資源の有効活用および財務体質の強化をはかるため、相模原事業場(神奈川県相模原市中央区)の土地を2020年10月に売却しました。その結果、2021年3月期の連結業績において約160億円を営業利益に計上しました。また、個別業績においては、約310億円を特別利益に計上しました。なお、売却後も当該土地を賃借し、継続利用しています。