有価証券報告書-第196期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2019/06/26 15:54
【資料】
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【項目】
177項目

対処すべき課題

[会社の経営の基本方針]
当社グループは、カワサキグループ・ミッションステートメントにおいて、「世界の人々の豊かな生活と地球環境の未来に貢献する“Global Kawasaki”」をグループミッションとして掲げ、「航空宇宙システム、エネルギー・環境プラント、精密機械・ロボット、船舶海洋、車両、モーターサイクル&エンジン」を主な事業分野として、最先端の技術で新たな価値を創造し、顧客や社会の可能性を切り開く企業グループを目指しています。
また、「選択と集中」「質主量従」「リスクマネジメント」を指針とし、資本コストを上回る利益を安定的に創出するとともに、先端的な研究開発と革新的な設備投資を持続的に行い、将来に亘る企業価値の向上を図ること、すなわち「Kawasaki-ROIC経営」の推進を経営の基本方針に掲げ、収益性・安定性・成長性を重視した事業ポートフォリオの構築に取り組んでいきます。
[目標とする経営指標]
目標とする経営指標は、利益(営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益)及び資本効率を測る指標である投下資本利益率(ROIC = EBIT(税引前利益 + 支払利息) ÷ 投下資本(有利子負債 + 自己資本))としています。
そして、最低限確保すべきハードルレートであるROIC8%を連結グループ全体で早期に上回るべく、事業を細分化したビジネスユニット(BU)毎の利益率管理をこれまで以上に徹底し、当社グループ全体の企業価値向上を図ることとしています。
これらの経営指標の改善の結果として自己資本利益率(ROE = 親会社株主に帰属する当期純利益 ÷ 自己資本)の向上も図っていきます。
[中長期的な会社の経営戦略・対処すべき課題]
当社グループは、水素サプライチェーン実証をはじめとしたエネルギー関連事業や医療事業における開発・投資なども進め、10年先の事業イメージ実現への道のりを着実に歩んできております。しかし、2016年度から2018年度までを対象期間とした中計2016では、各種の大型プロジェクトの損失や低迷した市場の回復が遅れる中で、将来に向けた成長投資を積極的に行ったこともあり、中計2016の数量目標は未達となりました。
上記の反省を踏まえ、2019年度から2021年度までを対象とする新たな中期経営計画(以下、中計2019)を策定しました。中計2019では、まずは将来の成長に備えた財務基盤の強化を最優先課題とし、全体最適の観点から経営資源の投入先を厳選していくとともに、以下の施策を実行していきます。
1.収益力向上、フリー・キャッシュ・フロー改善
2018年度には車両事業において大規模損失を計上するなど、中計2016の数量目標未達の主要因は、大型プロジェクトの損失にあります。また、将来の成長に向けた投資や老朽化設備の更新投資も膨らんだことなどから、フリー・キャッシュ・フローも低迷しました。中計2019では重点投資分野と位置付けられた事業を除き、収益力の向上並びにフリー・キャッシュ・フロー創出を最優先に注力していきます。
また、円高懸念も高まりつつある中、短期的なリスクヘッジとしての為替予約はもちろん、グローバルサプライチェーンの強化、物価・為替の変動などに伴う契約における価格調整(エスカレーション条項)の適用、価格への転嫁など事業特性に見合った対応策を追求するとともに、為替変動に強い事業運営体制の構築を目指していきます。
2.プロジェクトリスク管理の徹底
受注前のリスクチェック機能強化による徹底的なリスク排除、プロジェクトリスク管理委員会における履行中の案件のモニタリング強化などを進めています。今後は、これまでの失敗事例などから得られた教訓のグループ内共有、見識者による受注前審査の充実、初品要素の多い案件や大規模受注案件における各種規律の策定などにも着手し、プロジェクトリスク管理を徹底していきます。
3.品質管理体制の強化
全社的な品質管理体制の総点検を踏まえて、全社の品質管理について、新たに設置したTQM推進部を中心に、製品・業務プロセスの要求特性に整合したTQM(Total Quality Management)体制を確立し、品質管理教育の徹底など、経営レベルを含む全社・全部門への展開を図っているところです。
この施策に基づき、「N700系新幹線台車枠の製造不備」に関しても、今後このようなことが発生しないよう、2018年9月28日の当社公表内容のとおり、再発防止のための是正策に取り組んでおります。
4.事業ポートフォリオによる事業の位置づけ明確化、成長分野への厳選投資
将来を見据え、成長・安定・挑戦すべき領域に位置づける事業をバランス良く配置するため、事業ポートフォリオ(事業規模、収益性、成長性などの構成)を継続的に見直すとともに、中計2019期間において優先的に投資する成長分野を厳選します。更には、付加価値を高めるため、製品軸のみならず開発/調達/設計/製造/販売/サービスなどのバリューチェーンにも注目したビジネスモデルの転換を図っていきます。また、船舶海洋事業、車両事業の再建に向けた諸施策も断行します。
5.組織・風土改革
Kawasaki Workstyle Innovation活動(K‐Win活動)を通じて、変化に果敢に挑戦できるよう従業員の意識改革に取り組むとともに、スピードを意識し前向きな挑戦を促進する人事諸制度の実現を目指します。また、ダイバーシティ(多様性)を推進し、育児や介護などへの配慮だけでなく、様々な価値観や考えを持った人財が個性や能力を存分に発揮できるよう働きやすい職場環境を整備していきます。
なお、個別事業における課題については以下のとおりです。
① 航空宇宙システム事業
P-1固定翼哨戒機・C-2輸送機の修理・部品供給を含めた量産の着実な推進及び派生型機への展開、ボーイング787分担製造品量産の着実な推進及び777Xの開発・量産立ち上げ、民間航空機用ジェットエンジンの新機種開発の推進及び増産対応
② エネルギー・環境プラント事業
コアハード強化とその組み合わせによる最適システム構築、分散型エネルギー供給システムの提案、CO2フリー社会に貢献するシステムの構築、海外パートナーシップ強化による新興国・資源国を中心とした海外事業の拡大
③ 精密機械・ロボット事業
油圧機器のショベル分野における増産体制の早期実現、高シェアの維持・拡大とショベル以外の建設機械/農業機械分野向けの拡販、ロボットにおいては既存分野のシェアアップ、及びduAro、技能伝承システム「Successor」、手術支援ロボットなど新ロボットマーケットの開拓・拡大に向けた継続的な取り組み
④ 船舶海洋事業
坂出工場におけるガス関連船を主体とした選別受注と徹底した生産性向上活動によるコスト競争力の強化、中国合弁会社との共同購買・分担建造など一体運営の更なる深化、潜水艦増艦に対する神戸工場の基盤構築
⑤ 車両事業
品質管理の再構築、顧客ニーズに適合した技術・製品による競争力強化、コスト競争力の強化、アジア新興国における受注拡大、IoTを活用したメンテナンス事業及び軌道モニタリング事業参入等のストック型ビジネスの拡大、海外生産・海外調達及びパートナーシップの活用などグローバルな最適事業遂行体制の構築
⑥ モーターサイクル&エンジン事業
“Kawasaki”らしい魅力ある強いモデルの継続投入、顧客価値に根ざした高いブランドの実現、先進国市場での更なるプレゼンスの向上、新興国市場におけるコスト競争力の一層の強化及び新規市場開拓、連結ベースのマネジメントの徹底効率化
(注) 上記の将来に関する記述は、現時点で入手可能な情報に基づき判断したものであり、その達成を当社として約束する趣旨のものではありません。