四半期報告書-第123期第3四半期(令和3年10月1日-令和3年12月31日)

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2022/02/10 9:38
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文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものである。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第1四半期連結会計期間の期首から適用している。詳細については、第4[経理の状況]1四半期連結財務諸表の注記事項(会計方針の変更)に記載している。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
当第3四半期連結累計期間におけるグローバル全体需要は、前第3四半期連結累計期間(以下、「前年同累計期間」という。)に比べ5.7%増の5,786万台となった。当社グループのグローバル販売台数は前年同累計期間に比べ4.6%増の290万6千台となり、売上高は6兆1,540億円と、前年同累計期間に比べ8,366億円(15.7%)の増収となった。営業利益は前年同累計期間に比べ3,229億円改善し、1,913億円となった。
営業外損益は647億円の利益となり、前年同累計期間に比べ1,494億円改善した。その結果、経常利益は2,560億円となり、前年同累計期間に比べ4,723億円の改善となった。特別損益は713億円の利益となり、前年同累計期間に比べ1,802億円改善した。税金等調整前四半期純利益は3,273億円となり、前年同累計期間に比べ6,525億円の改善となった。親会社株主に帰属する四半期純利益は2,013億円となり、前年同累計期間に比べ5,690億円の改善となった。
(2) キャッシュ・フローの状況
当第3四半期連結累計期間のキャッシュ・フローは、営業活動により6,102億円増加、投資活動により2,225億円減少、財務活動により7,003億円減少した。また、現金及び現金同等物に係る換算差額により619億円増加し、連結範囲の変更に伴い57億円増加した結果、現金及び現金同等物の当第3四半期連結会計期間末残高は、前連結会計年度末残高に対し2,450億円(12.0%)減少の1兆7,891億円となった。
(3) 生産及び販売の状況
生産実績
会社所在地生産台数(台)増減前年同累計期間比
前第3四半期連結累計期間当第3四半期連結累計期間(台)(%)
日本336,506316,039△20,467△6.1
米国292,436315,06722,6317.7
メキシコ341,909354,37212,4633.6
英国164,326123,114△41,212△25.1
スペイン6,08718,67312,586206.8
ロシア24,85034,6149,76439.3
タイ80,17486,2436,0697.6
フィリピン2,951△2,951
インド83,016136,59753,58164.5
南アフリカ11,04416,1365,09246.1
ブラジル30,43034,2503,82012.6
アルゼンチン9,09218,6939,601105.6
エジプト9,63614,3134,67748.5
合計1,392,4571,468,11175,6545.4

(注)台数集約期間は2021年4月から2021年12月までである。
販売実績
仕向地販売台数(連結売上台数:台)増減前年同累計期間比
前第3四半期連結累計期間当第3四半期連結累計期間(台)(%)
日本308,228297,195△11,033△3.6
北米747,185704,896△42,289△5.7
内、米国561,867536,280△25,587△4.6
欧州235,242218,508△16,734△7.1
アジア131,607166,43534,82826.5
その他199,875303,012103,13751.6
合計1,622,1371,690,04667,9094.2

(注)台数集約期間は、アジアに含まれる中国、台湾は2021年1月から2021年9月まで、日本、北米、欧州、その他、並びに中国、台湾を除くアジアは2021年4月から2021年12月までである。
(4) セグメントの業績
(事業セグメント)
a.自動車事業
当第3四半期連結累計期間における当社グループのグローバル販売台数(小売り)は290万6千台となり、前年同累計期間に比べ12万7千台(4.6%)の増加となった。日本国内では前年同累計期間に比べ8.3%減の28万9千台、中国では前年同累計期間に比べ3.5%増の102万台となった。メキシコとカナダを含む北米では前年同累計期間に比べ8.1%増の91万4千台、欧州では前年同累計期間に比べ6.8%減の26万2千台、その他地域は前年同累計期間に比べ19.5%増の42万1千台となった。
自動車事業の業績については、売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は5兆4,351億円と、前年同累計期間に比べ7,834億円(16.8%)の増収となった。営業損失は1,318億円と、前年同累計期間に比べ2,147億円の改善となった。主な改善要因は、販売台数の増加、台当たり売上高の改善及び各種コスト・費用の削減効果によるものである。
b.販売金融事業
販売金融事業の売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は7,885億円と、前年同累計期間に比べ148億円(1.9%)の増収となった。営業利益は3,034億円と、前年同累計期間に比べ1,038億円(52.0%)の増益となった。主な改善要因は、ポートフォリオの質の向上や、資金調達コストの低下によるものである。
(地域セグメント)
a.日本
日本国内市場の全体需要は前年同累計期間に比べ6.4%減少し302万台となった。当社グループの販売台数(小売り)は前年同累計期間に比べ8.3%減の28万9千台となり、市場占有率は前年同累計期間に比べ0.2ポイント減の9.6%へと縮小した。
一方で、日本地域におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は2兆2,791億円と、前年同累計期間に比べ1,090億円(5.0%)の増収となった。営業損失は1,690億円となり、前年同累計期間に比べ57億円の改善となった。主な改善要因は、為替の影響のほか、国内子会社の収益改善によるものである。
b.北米
メキシコとカナダを含む北米市場の全体需要は前年同累計期間に比べ1.8%増加し1,317万台となり、当社グループの販売台数(小売り)は前年同累計期間に比べ8.1%増の91万4千台となった。
この結果、北米地域におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は3兆1,766億円と、前年同累計期間に比べ4,941億円(18.4%)の増収となった。営業利益は2,719億円となり、前年同累計期間に比べ2,383億円(708.4%)の増益となった。主な要因は、台当たり売上高の改善及び各種コスト・費用の削減効果によるものである。
米国市場の全体需要は前年同累計期間に比べ0.8%増加し1,115万台となった。当社グループの販売台数(小売り)は前年同累計期間に比べ7.9%増の69万2千台となり、市場占有率は前年同累計期間に比べ0.4ポイント増の6.2%となった。
c.欧州
欧州市場の全体需要は、前年同累計期間に比べ0.5%増加し1,192万台となった。ロシアを除く欧州市場の当社グループの販売台数(小売り)は前年同累計期間に比べ3.8%減の22万3千台となり、市場占有率は前年同累計期間に比べ0.1ポイント減の2.1%となった。また、ロシア市場における当社グループの販売台数(小売り)は、前年同累計期間に比べ20.8%減の3万9千台となった。
欧州地域におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は8,223億円と、前年同累計期間に比べ771億円(10.4%)の増収となった。営業損失は222億円となり、前年同累計期間に比べ22億円の悪化となった。これは、台当たり売上高の改善及び各種コスト・費用の削減効果があったものの、販売台数減少の影響によるものである。
d.アジア
中国を除くアジア市場の販売台数(小売り)は前年同累計期間に比べ7.6%増の10万7千台となり、アジア地域におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は9,677億円と、前年同累計期間に比べ1,619億円(20.1%)の増収となった。営業利益は617億円となり、前年同累計期間に比べ256億円(71.2%)の増益となった。
中国市場の全体需要は、前年同累計期間に比べ9.5%増加し1,719万台となった。当社グループの販売台数(小売り)は前年同累計期間に比べ3.5%増の102万台となり、市場占有率は前年同累計期間に比べ0.4ポイント減の5.9%となった。なお、合弁会社である東風汽車有限公司の業績は、持分法による投資損益として営業外損益に計上している。
e.その他
大洋州、中近東、南アフリカ、メキシコを除く中南米等における当社グループの販売台数(小売り)は、前年同累計期間に比べ24.2%増の31万4千台となった。
その結果、大洋州、中近東、南アフリカ、メキシコを除く中南米等におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は6,380億円と、前年同累計期間に比べ2,558億円(66.9%)の増収となった。営業利益は376億円となり、前年同累計期間に比べ435億円の改善となった。
(5) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
a.キャッシュ・フローの状況
営業活動
営業活動による収入は6,102億円となり、前年同累計期間の9,630億円の収入に比べて3,528億円減少した。これは、収益性は改善したものの、主として半導体の供給不足による運転資本の悪化、販売金融のポートフォリオの減少幅の縮小によるものである。
投資活動
投資活動による支出は2,225億円となり、前年同累計期間の2,203億円の支出に比べて22億円増加した。これは主として、ダイムラーAG株式の売却による収入が増加したものの、販売金融事業において資産担保証券取引に係る拘束性預金が増加したことによる。
財務活動
財務活動による支出は7,003億円となり、前年同累計期間の2,229億円の支出に比べて4,774億円増加した。これは主として、新規資金調達の減少及び借入金の返済によるものである。
なお、当第3四半期連結会計期間末における自動車事業の手元資金は有利子負債額を上回り、6,460億円のキャッシュ・ポジションとなり、当第3四半期連結累計期間における自動車事業のフリーキャッシュフローは3,502億円のマイナスとなった。
セグメント別の内訳は以下のとおりである。
前第3四半期連結累計期間(自 2020年4月1日 至 2020年12月31日)
(百万円)
自動車事業及び消去販売金融事業連結計
営業活動によるキャッシュ・フロー△227,3371,190,365963,028
投資活動によるキャッシュ・フロー△238,62318,327△220,296
財務活動によるキャッシュ・フロー971,233△1,194,124△222,891

当第3四半期連結累計期間(自 2021年4月1日 至 2021年12月31日)
(百万円)
自動車事業及び消去販売金融事業連結計
営業活動によるキャッシュ・フロー△277,260887,501610,241
投資活動によるキャッシュ・フロー△72,992△149,488△222,480
財務活動によるキャッシュ・フロー28,466△728,765△700,299

対前年同期比増減
(百万円)
自動車事業及び消去販売金融事業連結計
営業活動によるキャッシュ・フロー△49,923△302,864△352,787
投資活動によるキャッシュ・フロー165,631△167,815△2,184
財務活動によるキャッシュ・フロー△942,767465,359△477,408

b.財務政策
2021年12月末で自動車事業の手元資金は1兆6,372億円、販売金融事業も合わせた会社全体での未使用のコミットメントラインが約1.8兆円である。また、通常の資金調達に加えて、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う資金需要に対応するため、当社及び当社グループは、2020年4月以降複数の金融機関や資本市場から、ドル建て及びユーロ建て普通社債を含む総額2兆3,851億円の資金調達を実行したが、このうち4,784億円を返済している。世界的な半導体供給のひっ迫や自動車事業における今般の資金の使用状況を勘案すると、資金の流動性には注視が必要であるが、当社グループは、現金及び現金同等物に加え、世界の主要銀行とコミットメントライン契約を締結しており、必要とされる十分な流動性を確保していると考えている。
(6) 経営方針・経営戦略等
当社グループは、「人々の生活を豊かに。イノベーションをドライブし続ける。」というコーポレートパーパスを定めた。これは長年にわたり掲げてきた企業ビジョン「人々の生活を豊かに」を踏まえ、創業以来大切にしてきた“他がやらぬことをやる”という精神を引き継ぎながら、日産は何のために存在するか、どのように役割を果たすのか、企業としての存在意義を明確化したものである。そして、サプライヤーや販売会社の皆様との関係をさらに強化し、共にビジネスモデルを発展させていく。
グローバルなあらゆる事業活動を通じて企業として成長し、経済的に貢献すると同時に、世界をリードする自動車メーカーとして、社会が直面する課題の解決に貢献することも私たちの使命である。日産は、お客さま、株主、従業員、地域社会などすべてのステークホルダーを大切に思い、将来にわたって価値ある持続可能なモビリティの提供に努める。さらに、持続可能な社会の発展に貢献し、「ゼロ・エミッション」「ゼロ・フェイタリティ」社会を目指し、2050年までに事業活動を含むクルマのライフサイクル全体におけるカーボンニュートラルを実現することを目標としている。
この目標に向け、2021年11月29日に長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」を発表し、「共に切り拓く モビリティとその先へ」をスローガンとして、お客さまへ自信とワクワクにあふれ、より人や社会とつながる体験を提供し、移動の可能性を広げていくことを示した。概要は、以下のとおりである。
・電動化を長期的な戦略の中核に据え、今後5年間で約2兆円を投資し、車両の電動化と技術革新を加速させる。
・2030年度までに電気自動車15車種を含む23車種のワクワクする新型電動車を投入し、グローバルの電動車のモデルミックスを50%以上へ拡大させる。
・2028年度までに自社開発の全固体電池(ASSB)を搭載したEVを市場投入することを目指し、2024年度までに横浜工場内にパイロット生産ラインを導入する。ASSBの採用により、様々なセグメントにEVを投入することが可能となり、動力性能や走行性能も向上させることができる。
なお、当社とルノー及び三菱自動車工業株式会社は、2022年1月27日に、2030年に向けた共通のロードマップ「Alliance 2030」を発表した。アライアンスはEVとコネクテッド・モビリティに注力し、グローバルに持続可能な未来に向けて独自の差別化戦略に取り組んでいく。
国内では、革新的な生産技術で次世代のクルマづくりを支える日産独自のクルマづくりコンセプト「ニッサンインテリジェントファクトリー」を栃木工場の生産ラインに導入し、新型クロスオーバーEV「日産アリア」の生産を開始した。欧州では、世界初の電気自動車生産のエコシステムを構築するハブとして「EV36Zero」を始動させた。また、日本電動化アクション「ブルー・スイッチ」のもと、全国の自治体や企業と協力して、電気自動車を「動く蓄電池」として、地域課題の解決とともに、持続可能な社会の実現に向けて取り組んでいる。
当社グループは、2020年5月28日に、これまでの事業規模拡大による成長戦略から転換し、収益性を重視しながらコストを最適化することで、持続的な成長と安定的な収益の確保を目指す2023年度までの4カ年計画「NISSAN NEXT」を発表した。
当社はこれまで長年にわたり、需要が拡大することを前提に、新興市場を中心とした事業規模(生産能力)の拡大を進め、販売台数を最優先とする、ストレッチした成長戦略をとってきた。この戦略は、一時的な成功はもたらした一方で、本来なすべき商品・技術への投資が後回しされ、その結果、過度なインセンティブに頼った販売をせざるを得ない状況を生み、ブランドを棄損させた。経営資源を適正に配分できない中で販売拡大戦略を推進したことが、現下の業績の低迷につながった。
当社が復活を遂げるには、従来の事業の進め方を抜本的に改めることが必要であり、多くの厳しい取組みが求められる。同時に、従業員が一丸となって、日産の名に相応しいブランドづくりに献身的に取り組むことを意味している。2023年度末には、その先の10年を戦うための十分な事業基盤を再構築し、当社を新たなステージに移行させることが大きなミッションである。
この目的を果たすためには改革が求められる。当社は、我々の真の強さである底力、ダイバーシティ及びモノづくりの力を引き出すべく、力強い戦略を策定した。当社はしっかりとした財務基盤の構築とグローバルに競争力のある商品づくりに集中し、持続可能な事業を回復するべく、大変革を通じて、会社の真価を発揮していく。そのために、2つの重点分野に注力していく。
1つ目は最適化であり、事業の構造改革、原価低減及び効率化を目的とする確かな計画を実行している。台数規模や市場占有率にとらわれず、利益拡大と収益性の向上に集中し、強みを伸ばすことで、よりリーンな企業体質を実現する。具体的な方策としては、生産能力の最適化を図るとともに、グローバルな商品ラインアップを整理する。いずれも厳しい決断を伴うが、大幅な固定費削減を可能にする重要な活動である。
2つ目は選択と集中である。当社は、アライアンスの力を活かしながら、重点市場、主力商品及び重点技術のコア・コンピタンスに改めて注力する。お客様の見方を変えるような商品づくりを通じて、競争に今まで以上に強く挑むことができる事業基盤を確立させる。
この二つの改革を一切の妥協なく断行することで、中国の合弁企業を50%比例連結したベースで、2023年度末に営業利益率5%、マーケットシェア6%レベルとなることを見込んでいる。今回の計画の狙いは、過度な販売台数の拡大は狙わずに収益を確保しながら着実な成長を果たすこと、自社の強みに集中し、事業の質と財務基盤を強化すること、そして新しい時代の中で、『日産らしさ』を取り戻すことである。
回復に向けた道のりは決して易しくはないが、全社の力を結集し、乗り越えていく。自動車業界は大きな転換点を迎えているが、将来のモビリティ社会の実現に向けて、当社の強みを生かしながらその役割を果たし、社会にとって必要とされる、存在価値のある企業を目指していく。
また、当社とルノー及び三菱自動車工業株式会社(以下、「メンバー各社」という。)は、2020年5月27日に、メンバー各社の競争力と収益性を向上させるための新たな協力的ビジネスモデルの一環としての取り組みを発表した。メンバー各社は、各々の持つリーダー的な領域と地理的な強みを活用して、他のメンバー各社の事業をサポートする。これにより、共同購買やサプライチェーンといった既存のアライアンスのメリットを基盤とした成長が見込まれる。この新たなビジネスモデルによって、メンバー各社の専門知識と競争力が十分に発揮され、世界的に大きな変革期を迎える自動車業界においてアライアンスを強化することができる。
日産は、2023年度末までに業績を回復させ、自動車事業における健全なフリーキャッシュフローを生み出していく。お客さまに新たな価値をご提案するために常にチャレンジし、ブレークスルーを果たす、これこそが、私たち日産のDNAである。新しい時代においても、日産は常に『人』を中心に、『人』の為の技術で、日産ならではの挑戦を続けていく。
(7) 2021年度の経営環境及び主要な経営指標
当第3四半期連結累計期間における自動車業界は、新型コロナウイルス感染症拡大や世界的な半導体不足に起因するサプライチェーンひっ迫による影響を受けた。当社も予定していたほど生産できなかったが、引き続き販売の質の向上に取り組んでいく。
最新の予想に基づき、当社は2021年11月9日に公表した業績見通しを修正し、売上高を1.0%減の8兆7,100億円とした。一方で、営業利益は2,100億円、親会社株主に帰属する当期純利益は2,050億円に上方修正した。これは、為替や原材料価格の想定の見直しや、販売の質の向上と費用の最適化を含むパフォーマンスの改善によるものである。販売台数の見通し380万台に変更はない。
なお、持続的な成長と安定的な収益の確保を目指す2023年度までの4カ年計画「NISSAN NEXT」は着実に進んでいる。
(8) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当第3四半期連結累計期間における事業上及び財務上の対処すべき課題は、次のとおりである。
当社の元代表取締役が金融商品取引法違反(虚偽有価証券報告書提出罪)で起訴されるとともに、元代表取締役会長においては会社法違反(特別背任罪)でも起訴された。併せて当社自身も金融商品取引法違反により起訴された。当社はこの事態を重く受け止め、独立第三者及び独立社外取締役で構成されるガバナンス改善特別委員会を設置し、2019年3月27日に同委員会からガバナンスの改善策及び、将来にわたり事業活動を行っていくための基盤となる健全なガバナンス体制の在り方についての提言をまとめた報告書を受領した。これを受け、当社は指名委員会等設置会社へ移行した。
当社は、2019年9月9日の取締役会において、監査委員会よりゴーン氏らの不正行為に関する社内調査の報告を受けた。2019年9月9日付の「元会長らによる不正行為に関する社内調査報告について」と題する適時開示に記載したとおり、本報告では、ゴーン氏らによる不正行為を認定している。そのうち、ゴーン氏の会社資産の私的流用等及び販売代理店に対する奨励金支払いに関する不適切な行為は、以下のとおりである。2019年9月9日以降、当四半期報告書提出日時点において、下記の内容に特段の変更は生じていない。今後、下記の内容に重要な進展が生じた場合には、法令等に基づき開示する。
A) ゴーン氏の会社資産の私的流用等
ゴーン氏は、以下を含む様々な方法で当社の資産を私的に流用した。
・将来性のある技術に投資するとの名目で子会社Zi-A Capital社を設立させ、同社の投資資金のうち約2,700万米ドルを、ブラジル(リオデジャネイロ)及びレバノン(ベイルート)所在のゴーン元会長個人のための住宅の購入に流用したほか、会社資金で秘密裏に購入又は賃借した住宅を私的に利用した。
・2003年から10年以上にわたり、実体のないコンサルティング契約に基づくコンサルタント報酬名目で実姉に合計75万米ドルを超える金銭を支払った。
・コーポレートジェットを自身及び家族の私的用途に使用した。
・会社の資金を家族の旅費支払いや、個人的な贈答品支払いなどに充てた。
・業務上の必要性がないにもかかわらず自身の出身国の大学への200万米ドルを超える寄付を会社資金で行わせた。
・2008年、ゴーン氏は個人的に締結した為替スワップ契約のもと約18億5,000万円の含み損を抱え、事実と異なる取引内容を取締役会に説明したうえ為替スワップ契約を当社に承継させて、かかる含み損を当社に承継させた(金融当局の指摘を受け、2009年、当該為替スワップ契約は秘密裏にゴーン氏の関連企業に再承継された)。
・2018年4月以降、三菱自動車工業株式会社との間で設立した合弁会社であるNissan-Mitsubishi B.V.(以下「NMBV」)から、給与・契約金名目での取締役会決議を欠く支払い合計780万ユーロを受領した。
ゴーン氏がNMBV及び他の当社の子会社に対してアムステルダム地方裁判所に提起した不当解雇訴訟において、NMBVは、ゴーン氏がNMBVから不正に着服した資金の返還を求めゴーン氏に対し反対請求を提起した。2021年5月20日にアムステルダム地方裁判所による判決が出され、ゴーン氏の請求は棄却されるとともに、ゴーン氏に対し約500万ユーロの返還が命じられた。2021年8月20日、ゴーン氏は控訴状をアムステルダム高等裁判所に提出した。
ゴーン氏による会社資金の不正使用により購入された住居の一部については、売却が完了している。
B) 販売代理店に対する奨励金支払いに関する不適切な行為
ゴーン氏は、国外の知人から私的な資金援助を得ていることを当社取締役会及び関係部署に秘したまま、当社子会社から当該知人の経営する企業に対し、自身とその直属の特定少数の部下が承認すれば金銭支出が可能となる予備費予算(CEOリザーブ)を使用して、特別ビジネスプロジェクト費用などの名目で合計1,470万米ドルの支払いを行わせた。
また、国外の販売代理店の関係者からゴーン氏自身又はその関係企業に対して数千万米ドルの支払いがなされていることを当社取締役会及び関係部署に秘したまま、当社子会社から当該販売代理店に対し、CEOリザーブを使用して、販売奨励金名目で合計3,200万米ドルの支払いを行わせた。
当社は、既に英領バージン諸島においてゴーン氏及びその関係者を相手に、豪華ヨットに対する仮処分命令を申立て、同命令を得た上で、損害賠償等を求めて訴訟を提起し、また2020年2月12日には日本国内においてもゴーン氏に対する損害賠償請求を提起しているが、本社内調査結果を踏まえ、今後も、ゴーン氏らの責任を明確にすべく、ゴーン氏等の法令違反や不正行為によって被った損害の賠償請求のための提訴を含めた必要な対応をとっていく方針である。
金融庁長官から、2019年12月13日付で審判手続開始決定通知書を受領した。これにつき、当社は、課徴金に係る事実及び納付すべき課徴金の額を認める旨の答弁書を2019年12月23日に提出した。その後、2020年2月27日付で金融庁長官から24億2,489万5,000円の課徴金納付命令の決定の送達を受けた。当社は課徴金納付命令決定及び納付告知書に従い、当該課徴金のうち納付期限が到来した14億625万円を国庫に納付した。
指名委員会の選出による経営層の新体制が2019年12月に発足、内部監査による監督機能を強化したこと、などに見られるように、種々の再発防止策に取り組んでいる。
当社は、2020年1月16日に東京証券取引所に提出した改善状況報告書に記載した改善措置の継続的実施を含め、これからも必要な改善を随時検討するなど、引き続きガバナンスの向上に努めるとともに、企業風土の改革、企業倫理の再構築、企業情報の適切な開示、コンプライアンスを遵守した経営に努めていく所存であることを表明している。
(9) 研究開発活動
当社グループは、将来にわたって持続性のある車社会の実現に向けて、環境や安全など様々な分野での研究開発活動を積極的に行っている。
当第3四半期連結累計期間における当社グループ全体の研究開発費の金額は3,468億円である。
(10) 主要な設備
2021年度(2021年4月~2022年3月)の当社グループの設備投資計画は、前事業年度の有価証券報告書に記載した見通しから変更し、4,000億円と計画している。この設備投資に関わる所要資金は自己資金で充当する予定である。