四半期報告書-第122期第3四半期(令和2年10月1日-令和2年12月31日)

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2021/02/12 9:35
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文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものである。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
世界各国の新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、当第3四半期連結累計期間におけるグローバル全体需要は、前第3四半期連結累計期間(以下、「前年同累計期間」という。)に比べ16.2%減の5,471万台となり、当社グループのグローバル販売台数も前年同累計期間に比べ24.8%減の278万台に落ち込んだ。また、販売台数の減少に伴い、売上高は5兆3,174億円と、前年同累計期間に比べ2兆1,899億円(29.2%)の減収となった。営業損失は前年同累計期間に比べ1,859億円悪化し、1,316億円となった。
営業外損益は847億円の損失となり、前年同累計期間に比べ1,718億円悪化した。その結果、経常損失は2,163億円となり、前年同累計期間に比べ3,577億円の悪化となった。特別損益は1,089億円の損失となり、前年同累計期間に比べ820億円悪化した。税金等調整前四半期純損失は3,252億円となり、前年同累計期間に比べ4,397億円の悪化となった。親会社株主に帰属する四半期純損失は3,677億円となり、前年同累計期間に比べ4,070億円の悪化となった。
(2) キャッシュ・フローの状況
当第3四半期連結累計期間のキャッシュ・フローは、営業活動により9,630億円増加、投資活動により2,203億円減少、財務活動により2,229億円減少した。また、現金及び現金同等物に係る換算差額により51億円減少し、連結範囲の変更に伴い1億円増加した結果、現金及び現金同等物の当第3四半期連結会計期間末残高は、前連結会計年度末残高に対し5,148億円(31.3%)増加の2兆1,578億円となった。
(3) 生産及び販売の状況
生産実績
会社所在地生産台数(台)増減前年同累計期間比
前第3四半期連結累計期間当第3四半期連結累計期間(台)(%)
日本584,974336,506△248,468△42.5
米国555,693292,436△263,257△47.4
メキシコ456,513341,909△114,604△25.1
英国243,723164,326△79,397△32.6
スペイン44,5076,087△38,420△86.3
ロシア40,92024,850△16,070△39.3
タイ109,38780,174△29,213△26.7
インドネシア2,808△2,808
フィリピン4,0562,951△1,105△27.2
インド150,40783,016△67,391△44.8
南アフリカ26,41411,044△15,370△58.2
ブラジル81,44430,430△51,014△62.6
アルゼンチン8,0779,0921,01512.6
エジプト12,0289,636△2,392△19.9
合計2,320,9511,392,457△928,494△40.0

(注)台数集約期間は2020年4月から2020年12月までである。
販売実績
仕向地販売台数(連結売上台数:台)増減前年同累計期間比
前第3四半期連結累計期間当第3四半期連結累計期間(台)(%)
日本369,099308,228△60,871△16.5
北米1,173,175747,185△425,990△36.3
内、米国890,864561,867△328,997△36.9
欧州390,803235,242△155,561△39.8
アジア222,620131,607△91,013△40.9
その他379,184199,875△179,309△47.3
合計2,534,8811,622,137△912,744△36.0

(注)台数集約期間は、アジアに含まれる中国、台湾は2020年1月から2020年9月まで、日本、北米、欧州、その他、並びに中国、台湾を除くアジアは2020年4月から2020年12月までである。
(4) セグメントの業績
(事業セグメント)
a. 自動車事業
当第3四半期連結累計期間における当社グループのグローバル販売台数(小売り)は278万台となり、前年同累計期間に比べ91万7千台(24.8%)の減少となった。これは主に、世界各国の新型コロナウイルス感染症の影響によるものである。日本国内では前年同累計期間に比べ17.3%減の31万5千台、中国では前年同累計期間に比べ9.7%減の98万5千台となった。メキシコとカナダを含む北米では前年同累計期間に比べ34.0%減の84万5千台、欧州では前年同累計期間に比べ28.9%減の28万1千台、その他地域は前年同累計期間に比べ35.6%減の35万2千台となった。
自動車事業の業績については、売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は4兆6,517億円と、前年同累計期間に比べ2兆1,404億円(31.5%)の減収となった。営業損失は3,465億円と、前年同累計期間に比べ2,155億円の悪化となった。主な悪化要因は、固定費削減による改善はあったものの、販売台数の減少によるものである。
b. 販売金融事業
販売金融事業の売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は7,737億円と、前年同累計期間に比べ1,000億円(11.5%)の減収となった。営業利益は1,996億円と、前年同累計期間に比べ217億円(12.2%)の増益となった。これは主に、米国や中国の販売金融会社の増益によるものである。
(地域セグメント)
a.日本
新型コロナウイルス感染症拡大に伴う影響により、日本国内市場の全体需要は前年同累計期間に比べ12.0%減の323万台となった。当社グループの販売台数は前年同累計期間に比べ17.3%減の31万5千台に縮小し、市場占有率は前年同累計期間に比べ0.6ポイント減の9.8%となった。
この結果、日本地域におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は、2兆1,701億円と、前年同累計期間に比べ8,653億円(28.5%)の減収となった。営業損失は1,747億円となり、前年同累計期間に比べ1,843億円の悪化となった。主な悪化要因は、販売台数(輸出含む)の減少である。
b.北米
メキシコとカナダを含む北米市場の全体需要は前年同累計期間に比べ16.8%減の1,293万台となり、当社グループの販売台数は前年同累計期間に比べ34.0%減の84万5千台となった。
この結果、北米地域におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は2兆6,825億円と、前年同累計期間に比べ1兆2,996億円(32.6%)の減収となった。営業利益は336億円となり、前年同累計期間に比べ246億円(42.2%)の減益となった。主な減益要因は、販売台数の減少である。
米国の全体需要は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、前年同累計期間に比べ15.1%減の1,107万台となった。当社グループの販売台数は前年同累計期間に比べ34.5%減の64万2千台となり、市場占有率は前年同累計期間に比べ1.7ポイント減の5.8%となった。
c.欧州
欧州の全体需要は、新型コロナウイルス感染症の影響で、前年同累計期間に比べ21.4%減の1,186万台となった。ロシアを除く欧州市場の当社グループの販売台数は前年同累計期間に対し29.9%減の23万2千台となり、市場占有率は前年同累計期間に比べ0.2ポイント減の2.2%となった。ロシアにおける当社グループの販売台数は前年同累計期間に対し23.9%減の4万9千台となった。
その結果、欧州地域におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は7,452億円と、前年同累計期間に比べ3,742億円(33.4%)の減収となった。営業損失は200億円となり、前年同累計期間に比べ59億円の改善となった。主な改善要因は、販売台数の減少があったものの、固定費の削減によるものである。
d.アジア
中国を除くアジア市場の販売台数は前年同累計期間に比べ40.7%減の9万9千台となり、アジア地域におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は8,058億円と、前年同累計期間に比べ2,387億円(22.9%)の減収となった。営業利益は361億円となり、前年同累計期間に比べ34億円(10.4%)の増益となった。
中国の全体需要は、新型コロナウイルス感染症の影響で減少し、前年同累計期間に比べ9.1%減の1,570万台となった。当社グループの販売台数は前年同累計期間に対し9.7%減の98万5千台となり、市場占有率は前年同累計期間に比べ横ばいの6.3%となった。なお、合弁会社である東風日産有限公司の業績は、持分法による投資利益として営業外利益に計上している。
e.その他
大洋州、中近東、アフリカ、メキシコを除く中南米等における当社グループの販売台数は、前年同累計期間に対し33.4%減の25万3千台となった。
その結果、大洋州、中近東、アフリカ、メキシコを除く中南米等におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は3,822億円と、前年同累計期間に比べ2,784億円(42.1%)の減収となった。営業損失は59億円となり、前年同累計期間に比べ24億円の悪化となった。
(5) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
a.キャッシュ・フローの状況
営業活動
営業活動による収入は9,630億円となり、前年同累計期間の8,103億円の収入に対し1,527億円の増加となった。これは主として、税金等調整前四半期純損失を計上したものの、たな卸資産が増加から減少に転じ、仕入債務の減少幅が小さくなったことによるものである。
投資活動
投資活動による支出は2,203億円となり、前年同累計期間の5,229億円の支出に対し3,026億円減少した。これは主として、固定資産の取得による支出が減少し、リース車両の純支出(取得と売却の純額)が減少したことによるものである。
財務活動
財務活動による支出は2,229億円となり、前年同累計期間の2,149億円の支出に対し80億円増加した。これは主として、社債の発行及び長期借入れによる収入が増加したものの、短期借入金の返済による支出が増加したことによるものである。
なお、当第3四半期連結会計期間末における自動車事業の手元資金は有利子負債を上回り、5,255億円のキャッシュ・ポジションとなった。当第3四半期連結会計期間における自動車事業のフリーキャッシュ・フローは、運転資本の改善などにより、387億円のプラスとなった。一方、当第3四半期連結累計期間における自動車事業のフリーキャッシュ・フローは新型コロナウイルス感染症による減益の影響を反映して、4,660億円のマイナスとなった。
セグメント別の内訳は以下のとおりである。
前第3四半期連結累計期間(自 2019年4月1日 至 2019年12月31日)
(百万円)
自動車事業及び消去販売金融事業連結計
営業活動によるキャッシュ・フロー△337,4291,147,712810,283
投資活動によるキャッシュ・フロー△333,487△189,447△522,934
財務活動によるキャッシュ・フロー716,776△931,697△214,921

当第3四半期連結累計期間(自 2020年4月1日 至 2020年12月31日)
(百万円)
自動車事業及び消去販売金融事業連結計
営業活動によるキャッシュ・フロー△227,3371,190,365963,028
投資活動によるキャッシュ・フロー△238,62318,327△220,296
財務活動によるキャッシュ・フロー971,233△1,194,124△222,891

対前年同期比増減
(百万円)
自動車事業及び消去販売金融事業連結計
営業活動によるキャッシュ・フロー110,09242,653152,745
投資活動によるキャッシュ・フロー94,864207,774302,638
財務活動によるキャッシュ・フロー254,457△262,427△7,970

b.財務政策
自動車事業における今般の資金の使用状況、格付けの引き下げ、新型コロナウイルス感染症の影響を勘案すると、資金の流動性には注視が必要であるが、当社グループは、現金及び現金同等物に加え、世界の主要銀行とコミットメント・ライン契約を締結しており、必要とされる十分な流動性を確保していると考えている。なお、2020年12月末で自動車事業の手元資金は1兆9,838億円であった。通常の資金調達に加えて、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う資金需要に対応するため、当社及び当社グループは、2020年4月以降複数の金融機関との間で、総額1兆2,271億円の資金調達を確保した。また、当社は米ドル建て普通社債を総額80億ドル、ユーロ建て普通社債を総額20億ユーロそれぞれ起債した。また、販売金融事業もあわせた会社全体での12月末時点での未使用のコミットメント・ライン約2.1兆円を確保している。
(6) 経営方針・経営戦略等
当社グループは、「人々の生活を豊かに。イノベーションをドライブし続ける。」というコーポレートパーパスを新たに定めた。これは長年にわたり掲げてきた企業ビジョン「人々の生活を豊かに」を踏まえ、創業以来大切にしてきた“他がやらぬことをやる”という精神を引き継ぎながら、日産は何のために存在するか、どのように役割を果たすのか、企業としての存在意義を明確化したものである。そして、サプライヤーや販売会社の皆様との関係をさらに強化し、共にビジネスモデルを発展させていく。
グローバルなあらゆる事業活動を通じて企業として成長し、経済的に貢献すると同時に、世界をリードする自動車メーカーとして、社会が直面する課題の解決に貢献することも私たちの使命である。日産は、お客さま、株主、従業員、地域社会などすべてのステークホルダーを大切に思い、将来にわたって価値ある持続可能なモビリティの提供に努める。さらに、持続可能な社会の発展に貢献し、「ゼロ・エミッション」「ゼロ・フェイタリティ」社会の実現を目指していく。具体的には、2050年までに事業活動を含むクルマのライフサイクル全体におけるカーボンニュートラルを実現する新たな目標を設定した。その目標の達成に向け、2030年代早期より、主要市場に投入する新型車をすべて電動車両とすることを目指し、電動化と生産技術のイノベーションを推進する。
当社グループは、2020年5月28日に、これまでの事業規模拡大による成長戦略から転換し、収益性を重視しながらコストを最適化することで、持続的な成長と安定的な収益の確保を目指す2023年度までの4か年計画「NISSAN NEXT」を発表した。
当社はこれまで長年にわたり、需要が拡大することを前提に、新興市場を中心とした事業規模(生産能力)の拡大を進め、販売台数を最優先とする、ストレッチした成長戦略をとってきた。この戦略は、一時的な成功はもたらした一方で、本来なすべき商品・技術への投資が後回しされ、その結果、過度なインセンティブに頼った販売をせざるを得ない状況を生み、ブランドを棄損させた。経営資源を適正に配分できない中で販売拡大戦略を推進したことが、現下の業績の低迷につながった。
当社が復活を遂げるには、従来の事業の進め方を抜本的に改めることが必要であり、多くの厳しい取組みが求められる。同時に、従業員が一丸となって、日産の名に相応しいブランドづくりに献身的に取り組むことを意味している。2023年度末には、その先の10年を戦うための十分な事業基盤を再構築し、当社を新たなステージに移行させることが大きなミッションである。
この目的を果たすためには改革が求められる。当社は、我々の真の強さである底力、ダイバーシティ及びモノづくりの力を引き出すべく、力強い戦略を策定した。当社はしっかりとした財務基盤の構築とグローバルに競争力のある商品づくりに集中し、持続可能な事業を回復するべく、大変革を通じて、会社の真価を発揮していく。そのために、2つの重点分野に注力していく。
1つ目は最適化であり、事業の構造改革、原価低減及び効率化を目的とする確かな計画を実行していく。台数規模や市場占有率にとらわれず、利益拡大と収益性の向上に集中し、強みを伸ばすことで、よりリーンな企業体質を実現する。具体的な方策としては、生産能力の最適化を図るとともに、グローバルな商品ラインアップを整理する。いずれも厳しい決断を伴うが、大幅な固定費削減を可能にする重要な活動である。
2つ目は選択と集中である。当社は、アライアンスの力を活かしながら、重点市場、主力商品及び重点技術のコア・コンピタンスに改めて注力する。お客様の見方を変えるような商品づくりを通じて、競争に今まで以上に強く挑むことができる事業基盤を確立させる。
回復に向けた道のりは決して易しくはないが、全社の力を結集し、乗り越えていく。自動車業界は大きな転換点を迎えているが、将来のモビリティ社会の実現に向けて、当社の強みを生かしながらその役割を果たし、社会にとって必要とされる、存在価値のある企業を目指していく。
この二つの改革を一切の妥協なく断行することで、中国の合弁企業を50%比例連結したベースで、2023年度末に営業利益率5%、マーケットシェア6%レベルとなることを見込んでいる。今回の計画の狙いは、過度な販売台数の拡大は狙わずに収益を確保しながら着実な成長を果たすこと、自社の強みに集中し、事業の質と財務基盤を強化すること、そして新しい時代の中で、『日産らしさ』を取り戻すことである。
また、当社とルノー及び三菱自動車工業株式会社(以下、「メンバー各社」という。)は、2020年5月27日に、メンバー各社の競争力と収益性を向上させるための新たな協力的ビジネスモデルの一環としての取り組みを発表した。メンバー各社は、各々の持つリーダー的な領域と地理的な強みを活用して、他のメンバー各社の事業をサポートする。これにより、共同購買やサプライチェーンといった既存のアライアンスのメリットを基盤とした成長が見込まれる。この新たなビジネスモデルによって、メンバー各社の専門知識と競争力が十分に発揮され、世界的に大きな変革期を迎える自動車業界においてアライアンスを強化することができる。
日産は、2023年度末までに業績を回復させ、自動車事業における健全なフリーキャッシュ・フローを生み出していく。お客さまに新たな価値をご提案するために常にチャレンジし、ブレークスルーを果たす、これこそが、私たち日産のDNAである。新しい時代においても、日産は常に『人』を中心に、『人』の為の技術で、日産ならではの挑戦を続けていく。
(7) 2020年度の経営環境及び主要な経営指標
当第3四半期連結累計期間におけるグローバル経済は、新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大したことにより、グローバルの景気は減速し、経済活動にも深刻な影響を及ぼしている。自動車業界においては全体需要が減少し、当社の販売台数も合わせて減少した。その後も新型コロナウイルス感染症再拡大を含む不透明感が強まる中、自動車業界は世界的な半導体不足という課題に直面し、ニーズに見合う生産を行うことが困難な状況となっている。
このような環境の中、当社は2020年11月12日に公表した業績見通しに対し、販売台数は3.6%減の401万5千台、売上高は3.0%減の7兆7,000億円に変更した。一方で営業損失は2,050億円、親会社株主に帰属する当期純損失は5,300億円と、前回公表値に対し、それぞれ1,350億円、850億円の改善を見込んでいる。営業損失の改善要因は、販売台数の減少による570億円の減益があるものの、販売費用で600億円の増益、販売金融事業で510億円の増益、モノづくり・その他で810億円の増益である。
なお、2020年5月28日に発表した「NISSAN NEXT」で掲げる2020年度に2018年度対比で3,000億円の固定費を削減する取り組みは計画通り進んでいる。
2020年9月には、2020年10月1日付け、地域事業運営体制の再編並びにそれに伴う役員体制の変更を発表した。「NISSAN NEXT」の一環として、持続可能な成長を実現するため、よりスリムで機敏な組織への変革を目指し、地域事業運営体制を現在の7つの事業地域区分から4つの事業地域区分に再編成した。これにより、各事業地域における活動スピードを向上させ、競争力の向上を図り、グローバルおよび地域の統合を強化、事業運営の改革を実行していく。
当連結会計年度の当社グループの業績目標は、前連結会計年度の4項目を見直し、限界利益、自動車事業のフリーキャッシュ・フロー、固定費、市場占有率、品質、従業員エンゲージメントの6項目を用いることとした。当該6項目は、「NISSAN NEXT」の実現を示す代表指標として選択したものである。
(8) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当第3四半期連結累計期間における事業上及び財務上の対処すべき課題は、次のとおりである。
当社の元代表取締役が金融商品取引法違反(虚偽有価証券報告書提出罪)で起訴されるとともに、元代表取締役会長においては会社法違反(特別背任罪)でも起訴された。併せて当社自身も金融商品取引法違反により起訴された。当社はこの事態を重く受け止め、独立第三者及び独立社外取締役で構成されるガバナンス改善特別委員会を設置し、2019年3月27日に同委員会からガバナンスの改善策及び、将来にわたり事業活動を行っていくための基盤となる健全なガバナンス体制の在り方についての提言をまとめた報告書を受領した。これを受け、当社は指名委員会等設置会社へ移行した。
当社は、2019年9月9日の取締役会において、監査委員会よりゴーン氏らの不正行為に関する社内調査の報告を受けた。2019年9月9日付の「元会長らによる不正行為に関する社内調査報告について」と題する適時開示に記載したとおり、本報告では、ゴーン氏らによる不正行為を認定している。そのうち、ゴーン氏の会社資産の私的流用等及び販売代理店に対する奨励金支払いに関する不適切な行為は、以下のとおりである。2019年9月9日以降、当有価証券報告書提出日時点において、下記の内容に特段の変更は生じていない。今後、下記の内容に重要な進展が生じた場合には、法令等に基づき開示する。
A) ゴーン氏の会社資産の私的流用等
ゴーン氏は、以下を含む様々な方法で当社の資産を私的に流用した。
・将来性のある技術に投資するとの名目で子会社Zi-A Capital社を設立させ、同社の投資資金のうち約2,700万米ドルを、ブラジル(リオデジャネイロ)及びレバノン(ベイルート)所在のゴーン元会長個人のための住宅の購入に流用したほか、会社資金で秘密裏に購入又は賃借した住宅を私的に利用した。
・2003年から10年以上にわたり、実体のないコンサルティング契約に基づくコンサルタント報酬名目で実姉に合計75万米ドルを超える金銭を支払った。
・コーポレートジェットを自身及び家族の私的用途に使用した。
・会社の資金を家族の旅費支払いや、個人的な贈答品支払いなどに充てた。
・業務上の必要性がないにもかかわらず自身の出身国の大学への200万米ドルを超える寄付を会社資金で行わせた。
・2008年、ゴーン氏は個人的に締結した為替スワップ契約のもと約18億5,000万円の含み損を抱え、事実と異なる取引内容を取締役会に説明したうえ為替スワップ契約を当社に承継させて、かかる含み損を当社に承継させた(金融当局の指摘を受け、2009年、当該為替スワップ契約は秘密裏にゴーン氏の関連企業に再承継された)。
・2018年4月以降、三菱自動車工業株式会社との間で設立した合弁会社から、給与・契約金名目での取締役会決議を欠く支払い合計780万ユーロを受領した。
B) 販売代理店に対する奨励金支払いに関する不適切な行為
ゴーン氏は、国外の知人から私的な資金援助を得ていることを当社取締役会及び関係部署に秘したまま、当社子会社から当該知人の経営する企業に対し、自身とその直属の特定少数の部下が承認すれば金銭支出が可能となる予備費予算(CEO リザーブ)を使用して、特別ビジネスプロジェクト費用などの名目で合計1,470万米ドルの支払いを行わせた。
また、国外の販売代理店の関係者からゴーン氏自身又はその関係企業に対して数千万米ドルの支払いがなされていることを当社取締役会及び関係部署に秘したまま、当社子会社から当該販売代理店に対し、CEOリザーブを使用して、販売奨励金名目で合計3,200万米ドルの支払いを行わせた。
当社は、既に英領バージン諸島においてゴーン氏及びその関係者を相手に、豪華ヨットに対する仮処分命令を申立て、同命令を得た上で、損害賠償等を求めて訴訟を提起し、また2020年2月12日には日本国内においてもゴーン氏に対する損害賠償請求を提起しているが、本社内調査結果を踏まえ、今後も、ゴーン氏らの責任を明確にすべく、ゴーン氏等の法令違反や不正行為によって被った損害の賠償請求のための提訴を含めた必要な対応をとっていく方針である。
金融庁長官から、2019年12月13日付で審判手続開始決定通知書を受領した。これにつき、当社は、課徴金に係る事実及び納付すべき課徴金の額を認める旨の答弁書を2019年12月23日に提出した。その後、2020年2月27日付で金融庁長官から24億2,489万5,000円の課徴金納付命令の決定の送達を受けた。当社は課徴金納付命令決定及び納付告知書に従い、当該課徴金のうち納付期限が到来した14億625万円を国庫に納付した。
指名委員会の選出による経営層の新体制が2019年12月に発足、内部監査による監督機能を強化したこと、などに見られるように、種々の再発防止策に取り組んでいる。
当社は、2020年1月16日に東京証券取引所に提出した改善状況報告書に記載した改善措置の継続的実施を含め、これからも必要な改善を随時検討するなど、引き続きガバナンスの向上に努めるとともに、企業風土の改革、企業倫理の再構築、企業情報の適切な開示、コンプライアンスを遵守した経営に努めていく所存であることを表明している。
(9) 重要な会計方針及び見積り
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」の中の「重要な会計方針及び見積り」の貸倒引当金の記載について重要な変更を行っており、米国会計基準を採用している海外関係会社における貸倒引当金について、第1四半期連結会計期間の期首から金融資産の全期間にわたって予想される信用損失の現在価値で測定している。
当該変更は、第1四半期連結会計期間の期首から適用される新会計基準による変更であり、当該新会計基準の適用については、第4[経理の状況]の(会計方針の変更)の(1)を参照。
(10) 研究開発活動
当社グループは、将来にわたって持続性のある車社会の実現に向けて、環境や安全など様々な分野での研究開発活動を積極的に行っている。
当第3四半期連結累計期間における当社グループ全体の研究開発費の金額は3,647億円である。
(11) 主要な設備
2020年度(2020年4月~2021年3月)の当社グループの設備投資計画は、2020年11月12日に公表した見通しから変更し、4,200億円と計画している。この設備投資に関わる所要資金は自己資金で充当する予定である。