四半期報告書-第124期第1四半期(令和4年4月1日-令和4年6月30日)
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものである。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
当第1四半期連結累計期間におけるグローバル全体需要は、前第1四半期連結累計期間(以下、「前年同累計期間」という。)に比べ7.1%減の1,930万台となった。当社グループのグローバル販売台数(小売り)は前年同累計期間に比べ21.8%減の81万9千台となったが、売上高は2兆1,373億円と、前年同累計期間に比べ1,291億円(6.4%)の増収となった。営業利益は前年同累計期間に比べ108億円(14.2%)減少し、649億円となった。
営業外損益は391億円の利益となり、前年同累計期間に比べ245億円増加した。その結果、経常利益は1,040億円となり、前年同累計期間に比べ137億円(15.2%)の増益となった。特別損益は16億円の利益となり、前年同累計期間に比べ786億円減少した。税金等調整前四半期純利益は1,056億円となり、前年同累計期間に比べ649億円(38.1%)の減益となった。親会社株主に帰属する四半期純利益は471億円となり、前年同累計期間に比べ674億円(58.9%)の減益となった。
(2) キャッシュ・フローの状況
当第1四半期連結累計期間のキャッシュ・フローは、営業活動により1,745億円増加、投資活動により623億円減少、財務活動により5,642億円減少した。また、現金及び現金同等物に係る換算差額により1,281億円増加し、連結範囲の変更に伴い4億円増加した結果、現金及び現金同等物の当第1四半期連結会計期間末残高は、前連結会計年度末残高に対し3,235億円(18.0%)減少の1兆4,692億円となった。
(3) 生産及び販売の状況
生産実績
(注)台数集約期間は2022年4月から2022年6月までである。
販売実績
(注)台数集約期間は、アジアに含まれる中国、台湾は2022年1月から2022年3月まで、日本、北米、欧州、その他、並びに中国、台湾を除くアジアは2022年4月から2022年6月までである。
(4) セグメントの業績
(事業セグメント)
a. 自動車事業
当第1四半期連結累計期間における当社グループのグローバル販売台数(小売り)は81万9千台となり、前年同累計期間に比べ22万9千台(21.8%)の減少となった。これは主に上海ロックダウンによるサプライチェーンの分断及び半導体供給不足によるものである。日本国内では前年同累計期間に比べ0.1%減の8万9千台、中国では前年同累計期間に比べ15.2%減の29万9千台となった。メキシコとカナダを含む北米では前年同累計期間に比べ34.8%減の24万7千台、欧州では前年同累計期間に比べ25.2%減の6万8千台、その他地域は前年同累計期間に比べ14.9%減の11万6千台となった。
自動車事業の業績については、売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は1兆8,969億円と、前年同累計期間に比べ1,329億円(7.5%)の増収となった。営業損失は275億円と、前年同累計期間に比べ6億円の改善となった。これは主に、大幅な販売台数減少や原材料価格の高騰があったものの、継続的に取り組んでいる販売の質の向上による収益力の強化に加え、コスト・費用の改善効果及び為替変動により改善したことによるものである。
b. 販売金融事業
販売金融事業の売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は2,590億円と、前年同累計期間に比べ121億円(4.5%)の減収となった。営業利益868億円と、前年同累計期間に比べ109億円(11.1%)の減益となった。これは主に、米国の販売金融会社におけるクレジットロスに係る引当金の戻入れの減少等によるものである。
(地域セグメント)
a.日本
日本国内市場の全体需要は前年同累計期間に比べ14.1%減少し89万台となった。当社グループの販売台数(小売り)は前年同累計期間に比べ0.1%減の8万9千台となり、市場占有率は前年同累計期間に比べ1.5ポイント増の10.1%へと拡大した。
この結果、日本地域におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は7,343億円と、前年同累計期間に比べ186億円(2.5%)の減収となった。営業損失は517億円となり、前年同累計期間に比べ15億円の悪化となった。これは主に、上海ロックダウンによるサプライチェーンの分断及び半導体供給不足による輸出販売台数の減少、並びに原材料価格の高騰によるものである。
b.北米
メキシコとカナダを含む北米市場の全体需要は前年同累計期間に比べ19.4%減少し415万台となり、当社グループの販売台数(小売り)は前年同累計期間に比べ34.8%減の24万7千台となった。
一方で、北米地域におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は1兆1,655億円と、前年同累計期間に比べ963億円(9.0%)の増収となった。営業利益は768億円となり、前年同累計期間に比べ330億円(30.0%)の減益となった。主な増収要因は、半導体供給不足に伴う販売台数の減少があったものの、徹底した販売奨励金管理による台当たり正味売上高の増加並びに為替変動によるものである。一方で主な減益要因は、原材料費の高騰及び販売金融事業が減益となったことによるものである。
米国市場の全体需要は前年同累計期間に比べ21.6%減少し346万台となった。当社グループの販売台数(小売り)は前年同累計期間に比べ38.6%減の18万3千台となり、市場占有率は前年同累計期間に比べ1.5ポイント減の5.3%となった。
c.欧州
欧州市場の全体需要は、前年同累計期間に比べ24.4%減少し348万台となった。欧州市場の当社グループの販売台数(小売り)は前年同累計期間に比べ25.2%減の6万8千台となり、市場占有率は前年同水準の2.0%となった。
一方で、欧州地域におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は2,606億円と、前年同累計期間に比べ167億円(6.8%)の増収となった。営業利益は3億円となり、前年同累計期間に比べ193億円の改善となった。主な改善要因は、新型「キャシュカイ」の販売増による車種ミックスの改善並びに徹底した販売奨励金と販売価格の管理による台当たり正味売上高の増加によるものである。
d.アジア
中国を除くアジア市場の販売台数(小売り)は前年同累計期間に比べ8.1%減の3万1千台となり、アジア地域におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は3,062億円と、前年同累計期間に比べ132億円(4.1%)の減収となった。営業利益は193億円となり、前年同累計期間に比べ13億円(6.5%)の減益となった。
中国市場の全体需要は、前年同累計期間に比べ5.9%増加し623万台となった。当社グループの販売台数(小売り)は前年同累計期間に比べ15.2%減の29万9千台となり、市場占有率は前年同累計期間に比べ1.2ポイント減の4.8%となった。これは主に、半導体供給不足等による「シルフィ」及び「エクストレイル」に起因するものである。なお、合弁会社である東風汽車有限公司の業績は、持分法による投資損益として営業外損益に計上している。
e.その他
大洋州、中近東、南アフリカ、メキシコを除く中南米等における当社グループの販売台数(小売り)は、前年同累計期間に比べ17.2%減の8万5千台となった。
一方で、大洋州、中近東、南アフリカ、メキシコを除く中南米等におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は2,539億円と、前年同累計期間に比べ480億円(23.3%)の増収となった。営業利益は216億円となり、前年同累計期間に比べ106億円(95.4%)の増益となった。
(5) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
a.キャッシュ・フローの状況
営業活動
営業活動による収入は1,745億円となり、前年同累計期間の2,117億円の収入に比べて372億円減少した。これは主として、販売金融のポートフォリオの縮小によるものである。
投資活動
投資活動による支出は623億円となり、前年同累計期間の792億円の支出に比べて169億円支出が減少した。これは主として、ダイムラーAG株式の売却による収入が減少したものの、販売金融事業において、リース車両の取得による支出が減少し、資産担保証券取引に係る拘束性預金が減少したことによるものである。
財務活動
財務活動による支出は5,642億円となり、前年同累計期間の2,931億円の支出に比べて2,711億円の支出の増加となった。これは主として、借入金の返済の増加によるものである。
なお、当第1四半期連結会計期間末における自動車事業の手元資金は有利子負債額を上回り、8,264憶円のキャッシュ・ポジションとなり、当第1四半期連結会計期間における自動車事業のフリーキャッシュフローは3,046億円のマイナスとなった。
セグメント別の内訳は以下のとおりである。
前第1四半期連結累計期間(自 2021年4月1日 至 2021年6月30日)
(百万円)
当第1四半期連結累計期間(自 2022年4月1日 至 2022年6月30日)
(百万円)
対前年同期比増減
(百万円)
b.財務政策
当社グループは、グループ会社の財務活動を財務・経理部門にて一括して管理している。またグローバル・キャッシュ・マネジメントにより資金効率を最大限に高める活動を行っている。
当社グループは、研究開発活動、設備投資及び金融事業に投資するために、適切な資金確保を行い、最適な流動性を保持し、健全なバランスシートを維持することを財務方針としている。
2022年6月末で自動車事業の手元資金は1兆3,875億円、販売金融事業も合わせた会社全体での未使用のコミットメントラインが約2.1兆円である。世界的な半導体供給のひっ迫や自動車事業における今般の資金の使用状況を勘案すると、資金の流動性には注視が必要であるが、当社グループは、現金及び現金同等物に加え、世界の主要銀行とコミットメントライン契約を締結しており、必要とされる十分な流動性を確保していると考えている。
(6) 経営方針・経営戦略等
当社グループは、「人々の生活を豊かに。イノベーションをドライブし続ける。」というコーポレートパーパスを定めた。これは長年にわたり掲げてきた企業ビジョン「人々の生活を豊かに」を踏まえ、創業以来大切にしてきた“他がやらぬことをやる”という精神を引き継ぎながら、日産は何のために存在するか、どのように役割を果たすのか、企業としての存在意義を明確化したものである。そして、サプライヤーや販売会社の皆様との関係をさらに強化し、共にビジネスモデルを発展させていく。
グローバルなあらゆる事業活動を通じて企業として成長し、経済的に貢献すると同時に、世界をリードする自動車メーカーとして、社会が直面する課題の解決に貢献することも私たちの使命である。日産は、お客さま、株主、従業員、地域社会などすべてのステークホルダーを大切に思い、将来にわたって価値ある持続可能なモビリティの提供に努める。さらに、持続可能な社会の発展に貢献し、「ゼロ・エミッション」「ゼロ・フェイタリティ」社会を目指し、2050年までに事業活動を含むクルマのライフサイクル全体におけるカーボンニュートラルを実現することを目標としている。
この目標に向け、2021年11月29日に長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」を発表し、「共に切り拓く モビリティとその先へ」をスローガンとして、当社ならではの2つの価値「移動の可能性を広げる」、「社会の可能性を広げる」を提供するため、以下の分野において、イノベーションを推進する。
<電動化を推進し、多様な選択肢と体験を提供>電動化を長期的な戦略の中核に据えて、ワクワクする多様なクルマを求めるお客さまの要望にお応えし、2030年度までに15車種のEVを含む23車種の電動車を導入、ニッサン、インフィニティの両ブランドをあわせてグローバルに電動車のモデルミックスを50%以上とすることを目指す。本目標の達成に向け、2026年度までに約2兆円を投資し、EVとe-POWER搭載車を合わせて20車種導入を通じて、グローバルに電動車のモデルミックスを40%以上とすることを目指す。
<より多くの人の自由な移動を実現するモビリティの革新>リチウムイオン電池の技術をさらに進化させ、コバルトフリー技術を採用することで、2028年度までに1kWhあたりのコストを現在と比べ65%削減することを目指す。さらに、2028年度までに自社開発の全固体電池(ASSB)を搭載したEVを市場投入することを目指し、2024年度までに当社横浜工場内にパイロット生産ラインを導入する。ASSBの採用により、様々なセグメントにEVを投入することが可能となり、動力性能や走行性能も向上させることができる。
加えて、需要及び市場のEV台数の増加に対応し、グローバルな電池供給体制を確立していく。さらに、最先端の運転支援技術や知能化技術を、より多くのお客さまに提供し、交通事故によって亡くなられる方をゼロにすることを目指すとともに、移動手段を多様化していくことを目指す。このため、2026年度までにプロパイロット技術を搭載したニッサン及びインフィニティ車で250万台以上販売することを目指し、また、高性能次世代LiDAR(ライダー)技術の開発を2020年代半ばまでに完了させ、2030年度までにほぼ全ての新型車に搭載することを目指す。
<モビリティとその先に向けたグローバルなエコシステムを構築>技術の進化に加え、EVをより競争力のあるものにするため、EVの生産と調達の現地化を進めていく。英国で始動させた、世界初の電気自動車生産のエコシステムを構築するEV生産ハブ「EV36Zero」を日本、中国、米国を含む主要地域へ拡大していく。モビリティとエネルギーマネジメントを組み合わせ、生産とサービスを統合したこのエコシステムにより、カーボンニュートラルの実現を目指す。また、フォーアールエナジー社とバッテリーの二次利用を推進するためのインフラを整備し、エネルギーマネジメントにおける循環サイクルを構築することで、2020年代半ばには、V2Xと家庭用バッテリーシステムの商用化を目指す。
また、長期ビジョンを達成する上で、アライアンスでの連携も不可欠である。当社とルノー及び三菱自動車工業株式会社(以下、「メンバー各社」という。)は、新たな協力的ビジネスモデルを通して、各社の強みを生かし、互いの戦略を補完することで、競争力と収益性を高めることを目指し、共通のプロジェクトと実行計画(ロードマップ)である「Alliance 2030」を2022年1月27日に発表した。アライアンス共同で今後5年間に230億ユーロを投資すること、プラットフォームの共用化率の向上、グローバルで220GWhのバッテリー生産能力を確保することを目指し共通のバッテリー戦略を強化すること等を掲げている。本ロードマップに基づき、アライアンスは、メンバー各社とそれぞれのお客さまへより高い価値を提供していく。なお、2020年5月27日に発表した、メンバー各社の競争力と収益性を支える新たな協業ビジネスモデルにより、強固な基盤の上でガバナンス体制や組織運営を効率化し、強力で柔軟な協力関係を築いている。リーダーとフォロワーの枠組みにより、主要な技術についてはリーダー会社がフォロワー会社のサポートを得ながら開発を行い、メンバー各社が全ての主要技術を活用できるようにしている。
当社グループは、2020年5月28日に、これまでの事業規模拡大による成長戦略から転換し、収益性を重視しながらコストを最適化することで、持続的な成長と安定的な収益の確保を目指す2023年度までの4カ年計画「Nissan NEXT」を発表した。この計画により、中国の合弁企業を50%比例連結したベースで、2023年度末に営業利益率5%、マーケットシェア6%レベルとなることを見込んでいる。また、この計画の狙いは、過度な販売台数の拡大は狙わずに収益を確保しながら着実な成長を果たすこと、自社の強みに集中し、事業の質と財務基盤を強化すること、そして新しい時代の中で、『日産らしさ』を取り戻すことである。
日産は、2023年度末までに業績を回復させ、自動車事業における健全なフリーキャッシュフローを生み出していく。2021年度には、親会社株主に帰属する当期純利益と自動車事業における下期のフリーキャッシュフローの黒字化を達成した。お客さまに新たな価値をご提案するために常にチャレンジし、ブレークスルーを果たす、これこそが、私たち日産のDNAである。新しい時代においても、日産は常に『人』を中心に、『人』の為の技術で、日産ならではの挑戦を続けていく。
(7) 2022年度の経営環境及び主要な経営指標
当第1四半期連結累計期間におけるグローバル経済は、長引く新型コロナウイルスの感染拡大による先行き不透明な状況と、ロシアとウクライナをめぐる地政学的な問題の影響を受ける環境が続いた。当社は上海のロックダウンによるサプライチェーンの分断や、引き続き半導体の供給不足、原材料価格の高騰などに直面した。
このような環境の中、積極的な新車投入、販売の質の向上、事業基盤の強化に継続して取り組んでおり、「Nissan NEXT」は着実に進んでいる。
(8) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当第1四半期連結累計期間における事業上及び財務上の対処すべき課題は、次のとおりである。
当社の元代表取締役が金融商品取引法違反(虚偽有価証券報告書提出罪)で起訴されるとともに、元代表取締役会長においては会社法違反(特別背任罪)でも起訴された。併せて当社自身も金融商品取引法違反により起訴された。当社はこの事態を重く受け止め、独立第三者及び独立社外取締役で構成されるガバナンス改善特別委員会を設置し、2019年3月27日に同委員会からガバナンスの改善策及び、将来にわたり事業活動を行っていくための基盤となる健全なガバナンス体制の在り方についての提言をまとめた報告書を受領した。これを受け、当社は指名委員会等設置会社へ移行した。
当社は、2019年9月9日の取締役会において、監査委員会よりゴーン氏らの不正行為に関する社内調査の報告を受けた。2019年9月9日付の「元会長らによる不正行為に関する社内調査報告について」と題する適時開示に記載したとおり、本報告では、ゴーン氏らによる不正行為を認定している。そのうち、ゴーン氏の会社資産の私的流用等及び販売代理店に対する奨励金支払いに関する不適切な行為は、以下のとおりである。2019年9月9日以降、当四半期報告書提出日時点において、下記の内容に特段の変更は生じていない。今後、下記の内容に重要な進展が生じた場合には、法令等に基づき開示する。
A) ゴーン氏の会社資産の私的流用等
ゴーン氏は、以下を含む様々な方法で当社の資産を私的に流用した。
・将来性のある技術に投資するとの名目で子会社Zi-A Capital社を設立させ、同社の投資資金のうち約2,700万米ドルを、ブラジル(リオデジャネイロ)及びレバノン(ベイルート)所在のゴーン元会長個人のための住宅の購入に流用したほか、会社資金で秘密裏に購入又は賃借した住宅を私的に利用した。
・2003年から10年以上にわたり、実体のないコンサルティング契約に基づくコンサルタント報酬名目で実姉に合計75万米ドルを超える金銭を支払った。
・コーポレートジェットを自身及び家族の私的用途に使用した。
・会社の資金を家族の旅費支払いや、個人的な贈答品支払いなどに充てた。
・業務上の必要性がないにもかかわらず自身の出身国の大学への200万米ドルを超える寄付を会社資金で行わせた。
・2008年、ゴーン氏は個人的に締結した為替スワップ契約のもと約18億5,000万円の含み損を抱え、事実と異なる取引内容を取締役会に説明したうえ為替スワップ契約を当社に承継させて、かかる含み損を当社に承継させた(金融当局の指摘を受け、2009年、当該為替スワップ契約は秘密裏にゴーン氏の関連企業に再承継された)。
・2018年4月以降、三菱自動車工業株式会社との間で設立した合弁会社であるNissan-Mitsubishi B.V.(以下「NMBV」)から、給与・契約金名目での取締役会決議を欠く支払い合計780万ユーロを受領した。
B) 販売代理店に対する奨励金支払いに関する不適切な行為
ゴーン氏は、国外の知人から私的な資金援助を得ていることを当社取締役会及び関係部署に秘したまま、当社子会社から当該知人の経営する企業に対し、自身とその直属の特定少数の部下が承認すれば金銭支出が可能となる予備費予算(CEOリザーブ)を使用して、特別ビジネスプロジェクト費用などの名目で合計1,470万米ドルの支払いを行わせた。
また、国外の販売代理店の関係者からゴーン氏自身又はその関係企業に対して数千万米ドルの支払いがなされていることを当社取締役会及び関係部署に秘したまま、当社子会社から当該販売代理店に対し、CEOリザーブを使用して、販売奨励金名目で合計3,200万米ドルの支払いを行わせた。
金融庁長官から、2019年12月13日付で審判手続開始決定通知書を受領した。これにつき、当社は、課徴金に係る事実及び納付すべき課徴金の額を認める旨の答弁書を2019年12月23日に提出した。その後、2020年2月27日付で金融庁長官から24億2,489万5,000円の課徴金納付命令の決定の送達を受けた。
2022年3月3日、当社は東京地方裁判所から金融商品取引法違反(虚偽有価証券報告書提出罪)により、罰金2億円に処するとの有罪判決を受けた。当社は、当社に対する当該判決を厳粛に受け止め、判決の主文並びに理由として述べられた事項を慎重に検討した結果、当該判決に対する控訴を行わないことを決定した。その後、当社及び検察官のいずれも刑事訴訟法が定める控訴期間内に控訴しなかったため、当該判決は確定した。
上記課徴金に関して、金融商品取引法第185条の8第6項の規定に基づき、当該刑事裁判の判決による罰金額である2億円を控除し、課徴金の総額を22億2,489万5,000円に変更する処分が2022年4月26日付で行われた。当該課徴金については、すでに全額納付済である。
また、ゴーン氏がNMBV及び他の当社の子会社に対してアムステルダム地方裁判所に提起した不当解雇訴訟において、NMBVは、ゴーン氏がNMBVから不正に着服した資金の返還を求めゴーン氏に対し反対請求を提起した。2021年5月20日にアムステルダム地方裁判所による判決が出され、ゴーン氏の請求は棄却されるとともに、ゴーン氏に対し約500万ユーロの返還が命じられた。2021年8月20日、ゴーン氏は控訴状をアムステルダム高等裁判所に提出した。
ゴーン氏による会社資金の不正使用により購入された住居の一部については、売却が完了している。
当社は、既に英領バージン諸島においてゴーン氏及びその関係者を相手に、豪華ヨットに対する仮処分命令を申立て、同命令を得た上で、損害賠償等を求めて訴訟を提起し、また日本国内においても、2020年2月12日にゴーン氏に対し、2022年1月19日に当社元代表取締役ケリー氏に対し、損害賠償請求訴訟を提起しているが、本社内調査結果を踏まえ、今後も、ゴーン氏らの責任を明確にすべく、ゴーン氏らの法令違反や不正行為によって被った損害の回復のため法的措置を含めた必要な対応をとっていく方針である。
指名委員会の選出による経営層の新体制が2019年12月に発足、内部監査による監督機能を強化したこと、などに見られるように、種々の再発防止策に取り組んでいる。
当社は、2020年1月16日に東京証券取引所に提出した改善状況報告書に記載した改善措置の継続的実施を含め、これからも必要な改善を随時検討するなど、引き続きガバナンスの向上に努めるとともに、企業風土の改革、企業倫理の再構築、企業情報の適切な開示、コンプライアンスを遵守した経営に努めていく所存であることを表明している。
(9) 研究開発活動
当社グループは、将来にわたって持続性のある車社会の実現に向けて、環境や安全など様々な分野での研究開発活動を積極的に行っている。
当第1四半期連結累計期間における当社グループ全体の研究開発費の金額は1,155億円である。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
当第1四半期連結累計期間におけるグローバル全体需要は、前第1四半期連結累計期間(以下、「前年同累計期間」という。)に比べ7.1%減の1,930万台となった。当社グループのグローバル販売台数(小売り)は前年同累計期間に比べ21.8%減の81万9千台となったが、売上高は2兆1,373億円と、前年同累計期間に比べ1,291億円(6.4%)の増収となった。営業利益は前年同累計期間に比べ108億円(14.2%)減少し、649億円となった。
営業外損益は391億円の利益となり、前年同累計期間に比べ245億円増加した。その結果、経常利益は1,040億円となり、前年同累計期間に比べ137億円(15.2%)の増益となった。特別損益は16億円の利益となり、前年同累計期間に比べ786億円減少した。税金等調整前四半期純利益は1,056億円となり、前年同累計期間に比べ649億円(38.1%)の減益となった。親会社株主に帰属する四半期純利益は471億円となり、前年同累計期間に比べ674億円(58.9%)の減益となった。
(2) キャッシュ・フローの状況
当第1四半期連結累計期間のキャッシュ・フローは、営業活動により1,745億円増加、投資活動により623億円減少、財務活動により5,642億円減少した。また、現金及び現金同等物に係る換算差額により1,281億円増加し、連結範囲の変更に伴い4億円増加した結果、現金及び現金同等物の当第1四半期連結会計期間末残高は、前連結会計年度末残高に対し3,235億円(18.0%)減少の1兆4,692億円となった。
(3) 生産及び販売の状況
生産実績
会社所在地 | 生産台数(台) | 増減 | 前年同累計期間比 | |
前第1四半期連結累計期間 | 当第1四半期連結累計期間 | (台) | (%) | |
日本 | 104,059 | 103,882 | △177 | △0.2 |
米国 | 103,456 | 111,561 | 8,105 | 7.8 |
メキシコ | 123,646 | 98,889 | △24,757 | △20.0 |
英国 | 28,264 | 58,157 | 29,893 | 105.8 |
スペイン | 7,944 | ― | △7,944 | ― |
ロシア | 9,543 | ― | △9,543 | ― |
タイ | 27,008 | 16,832 | △10,176 | △37.7 |
インド | 38,933 | 49,078 | 10,145 | 26.1 |
南アフリカ | 5,020 | 6,269 | 1,249 | 24.9 |
ブラジル | 11,118 | 15,107 | 3,989 | 35.9 |
アルゼンチン | 5,253 | 5,497 | 244 | 4.6 |
エジプト | 4,755 | 4,996 | 241 | 5.1 |
合計 | 468,999 | 470,268 | 1,269 | 0.3 |
(注)台数集約期間は2022年4月から2022年6月までである。
販売実績
仕向地 | 販売台数(連結売上台数:台) | 増減 | 前年同累計期間比 | ||
前第1四半期連結累計期間 | 当第1四半期連結累計期間 | (台) | (%) | ||
日本 | 95,023 | 97,873 | 2,850 | 3.0 | |
北米 | 243,301 | 213,108 | △30,193 | △12.4 | |
内、米国 | 190,127 | 154,916 | △35,211 | △18.5 | |
欧州 | 63,049 | 64,128 | 1,079 | 1.7 | |
アジア | 53,658 | 49,133 | △4,525 | △8.4 | |
その他 | 95,148 | 95,219 | 71 | 0.1 | |
合計 | 550,179 | 519,461 | △30,718 | △5.6 |
(注)台数集約期間は、アジアに含まれる中国、台湾は2022年1月から2022年3月まで、日本、北米、欧州、その他、並びに中国、台湾を除くアジアは2022年4月から2022年6月までである。
(4) セグメントの業績
(事業セグメント)
a. 自動車事業
当第1四半期連結累計期間における当社グループのグローバル販売台数(小売り)は81万9千台となり、前年同累計期間に比べ22万9千台(21.8%)の減少となった。これは主に上海ロックダウンによるサプライチェーンの分断及び半導体供給不足によるものである。日本国内では前年同累計期間に比べ0.1%減の8万9千台、中国では前年同累計期間に比べ15.2%減の29万9千台となった。メキシコとカナダを含む北米では前年同累計期間に比べ34.8%減の24万7千台、欧州では前年同累計期間に比べ25.2%減の6万8千台、その他地域は前年同累計期間に比べ14.9%減の11万6千台となった。
自動車事業の業績については、売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は1兆8,969億円と、前年同累計期間に比べ1,329億円(7.5%)の増収となった。営業損失は275億円と、前年同累計期間に比べ6億円の改善となった。これは主に、大幅な販売台数減少や原材料価格の高騰があったものの、継続的に取り組んでいる販売の質の向上による収益力の強化に加え、コスト・費用の改善効果及び為替変動により改善したことによるものである。
b. 販売金融事業
販売金融事業の売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は2,590億円と、前年同累計期間に比べ121億円(4.5%)の減収となった。営業利益868億円と、前年同累計期間に比べ109億円(11.1%)の減益となった。これは主に、米国の販売金融会社におけるクレジットロスに係る引当金の戻入れの減少等によるものである。
(地域セグメント)
a.日本
日本国内市場の全体需要は前年同累計期間に比べ14.1%減少し89万台となった。当社グループの販売台数(小売り)は前年同累計期間に比べ0.1%減の8万9千台となり、市場占有率は前年同累計期間に比べ1.5ポイント増の10.1%へと拡大した。
この結果、日本地域におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は7,343億円と、前年同累計期間に比べ186億円(2.5%)の減収となった。営業損失は517億円となり、前年同累計期間に比べ15億円の悪化となった。これは主に、上海ロックダウンによるサプライチェーンの分断及び半導体供給不足による輸出販売台数の減少、並びに原材料価格の高騰によるものである。
b.北米
メキシコとカナダを含む北米市場の全体需要は前年同累計期間に比べ19.4%減少し415万台となり、当社グループの販売台数(小売り)は前年同累計期間に比べ34.8%減の24万7千台となった。
一方で、北米地域におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は1兆1,655億円と、前年同累計期間に比べ963億円(9.0%)の増収となった。営業利益は768億円となり、前年同累計期間に比べ330億円(30.0%)の減益となった。主な増収要因は、半導体供給不足に伴う販売台数の減少があったものの、徹底した販売奨励金管理による台当たり正味売上高の増加並びに為替変動によるものである。一方で主な減益要因は、原材料費の高騰及び販売金融事業が減益となったことによるものである。
米国市場の全体需要は前年同累計期間に比べ21.6%減少し346万台となった。当社グループの販売台数(小売り)は前年同累計期間に比べ38.6%減の18万3千台となり、市場占有率は前年同累計期間に比べ1.5ポイント減の5.3%となった。
c.欧州
欧州市場の全体需要は、前年同累計期間に比べ24.4%減少し348万台となった。欧州市場の当社グループの販売台数(小売り)は前年同累計期間に比べ25.2%減の6万8千台となり、市場占有率は前年同水準の2.0%となった。
一方で、欧州地域におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は2,606億円と、前年同累計期間に比べ167億円(6.8%)の増収となった。営業利益は3億円となり、前年同累計期間に比べ193億円の改善となった。主な改善要因は、新型「キャシュカイ」の販売増による車種ミックスの改善並びに徹底した販売奨励金と販売価格の管理による台当たり正味売上高の増加によるものである。
d.アジア
中国を除くアジア市場の販売台数(小売り)は前年同累計期間に比べ8.1%減の3万1千台となり、アジア地域におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は3,062億円と、前年同累計期間に比べ132億円(4.1%)の減収となった。営業利益は193億円となり、前年同累計期間に比べ13億円(6.5%)の減益となった。
中国市場の全体需要は、前年同累計期間に比べ5.9%増加し623万台となった。当社グループの販売台数(小売り)は前年同累計期間に比べ15.2%減の29万9千台となり、市場占有率は前年同累計期間に比べ1.2ポイント減の4.8%となった。これは主に、半導体供給不足等による「シルフィ」及び「エクストレイル」に起因するものである。なお、合弁会社である東風汽車有限公司の業績は、持分法による投資損益として営業外損益に計上している。
e.その他
大洋州、中近東、南アフリカ、メキシコを除く中南米等における当社グループの販売台数(小売り)は、前年同累計期間に比べ17.2%減の8万5千台となった。
一方で、大洋州、中近東、南アフリカ、メキシコを除く中南米等におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は2,539億円と、前年同累計期間に比べ480億円(23.3%)の増収となった。営業利益は216億円となり、前年同累計期間に比べ106億円(95.4%)の増益となった。
(5) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
a.キャッシュ・フローの状況
営業活動
営業活動による収入は1,745億円となり、前年同累計期間の2,117億円の収入に比べて372億円減少した。これは主として、販売金融のポートフォリオの縮小によるものである。
投資活動
投資活動による支出は623億円となり、前年同累計期間の792億円の支出に比べて169億円支出が減少した。これは主として、ダイムラーAG株式の売却による収入が減少したものの、販売金融事業において、リース車両の取得による支出が減少し、資産担保証券取引に係る拘束性預金が減少したことによるものである。
財務活動
財務活動による支出は5,642億円となり、前年同累計期間の2,931億円の支出に比べて2,711億円の支出の増加となった。これは主として、借入金の返済の増加によるものである。
なお、当第1四半期連結会計期間末における自動車事業の手元資金は有利子負債額を上回り、8,264憶円のキャッシュ・ポジションとなり、当第1四半期連結会計期間における自動車事業のフリーキャッシュフローは3,046億円のマイナスとなった。
セグメント別の内訳は以下のとおりである。
前第1四半期連結累計期間(自 2021年4月1日 至 2021年6月30日)
(百万円)
自動車事業及び消去 | 販売金融事業 | 連結計 | |
営業活動によるキャッシュ・フロー | △242,095 | 453,827 | 211,732 |
投資活動によるキャッシュ・フロー | 67,702 | △146,924 | △79,222 |
小計:フリーキャッシュフロー | △174,393 | 306,903 | 132,510 |
財務活動によるキャッシュ・フロー | △48,086 | △245,030 | △293,116 |
当第1四半期連結累計期間(自 2022年4月1日 至 2022年6月30日)
(百万円)
自動車事業及び消去 | 販売金融事業 | 連結計 | |
営業活動によるキャッシュ・フロー | △218,229 | 392,735 | 174,506 |
投資活動によるキャッシュ・フロー | △86,322 | 24,026 | △62,296 |
小計:フリーキャッシュフロー | △304,551 | 416,761 | 112,210 |
財務活動によるキャッシュ・フロー | △132,633 | △431,572 | △564,205 |
対前年同期比増減
(百万円)
自動車事業及び消去 | 販売金融事業 | 連結計 | |
営業活動によるキャッシュ・フロー | 23,866 | △61,092 | △37,226 |
投資活動によるキャッシュ・フロー | △154,024 | 170,950 | 16,926 |
小計:フリーキャッシュフロー | △130,158 | 109,858 | △20,300 |
財務活動によるキャッシュ・フロー | △84,547 | △186,542 | △271,089 |
b.財務政策
当社グループは、グループ会社の財務活動を財務・経理部門にて一括して管理している。またグローバル・キャッシュ・マネジメントにより資金効率を最大限に高める活動を行っている。
当社グループは、研究開発活動、設備投資及び金融事業に投資するために、適切な資金確保を行い、最適な流動性を保持し、健全なバランスシートを維持することを財務方針としている。
2022年6月末で自動車事業の手元資金は1兆3,875億円、販売金融事業も合わせた会社全体での未使用のコミットメントラインが約2.1兆円である。世界的な半導体供給のひっ迫や自動車事業における今般の資金の使用状況を勘案すると、資金の流動性には注視が必要であるが、当社グループは、現金及び現金同等物に加え、世界の主要銀行とコミットメントライン契約を締結しており、必要とされる十分な流動性を確保していると考えている。
(6) 経営方針・経営戦略等
当社グループは、「人々の生活を豊かに。イノベーションをドライブし続ける。」というコーポレートパーパスを定めた。これは長年にわたり掲げてきた企業ビジョン「人々の生活を豊かに」を踏まえ、創業以来大切にしてきた“他がやらぬことをやる”という精神を引き継ぎながら、日産は何のために存在するか、どのように役割を果たすのか、企業としての存在意義を明確化したものである。そして、サプライヤーや販売会社の皆様との関係をさらに強化し、共にビジネスモデルを発展させていく。
グローバルなあらゆる事業活動を通じて企業として成長し、経済的に貢献すると同時に、世界をリードする自動車メーカーとして、社会が直面する課題の解決に貢献することも私たちの使命である。日産は、お客さま、株主、従業員、地域社会などすべてのステークホルダーを大切に思い、将来にわたって価値ある持続可能なモビリティの提供に努める。さらに、持続可能な社会の発展に貢献し、「ゼロ・エミッション」「ゼロ・フェイタリティ」社会を目指し、2050年までに事業活動を含むクルマのライフサイクル全体におけるカーボンニュートラルを実現することを目標としている。
この目標に向け、2021年11月29日に長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」を発表し、「共に切り拓く モビリティとその先へ」をスローガンとして、当社ならではの2つの価値「移動の可能性を広げる」、「社会の可能性を広げる」を提供するため、以下の分野において、イノベーションを推進する。
<電動化を推進し、多様な選択肢と体験を提供>電動化を長期的な戦略の中核に据えて、ワクワクする多様なクルマを求めるお客さまの要望にお応えし、2030年度までに15車種のEVを含む23車種の電動車を導入、ニッサン、インフィニティの両ブランドをあわせてグローバルに電動車のモデルミックスを50%以上とすることを目指す。本目標の達成に向け、2026年度までに約2兆円を投資し、EVとe-POWER搭載車を合わせて20車種導入を通じて、グローバルに電動車のモデルミックスを40%以上とすることを目指す。
<より多くの人の自由な移動を実現するモビリティの革新>リチウムイオン電池の技術をさらに進化させ、コバルトフリー技術を採用することで、2028年度までに1kWhあたりのコストを現在と比べ65%削減することを目指す。さらに、2028年度までに自社開発の全固体電池(ASSB)を搭載したEVを市場投入することを目指し、2024年度までに当社横浜工場内にパイロット生産ラインを導入する。ASSBの採用により、様々なセグメントにEVを投入することが可能となり、動力性能や走行性能も向上させることができる。
加えて、需要及び市場のEV台数の増加に対応し、グローバルな電池供給体制を確立していく。さらに、最先端の運転支援技術や知能化技術を、より多くのお客さまに提供し、交通事故によって亡くなられる方をゼロにすることを目指すとともに、移動手段を多様化していくことを目指す。このため、2026年度までにプロパイロット技術を搭載したニッサン及びインフィニティ車で250万台以上販売することを目指し、また、高性能次世代LiDAR(ライダー)技術の開発を2020年代半ばまでに完了させ、2030年度までにほぼ全ての新型車に搭載することを目指す。
<モビリティとその先に向けたグローバルなエコシステムを構築>技術の進化に加え、EVをより競争力のあるものにするため、EVの生産と調達の現地化を進めていく。英国で始動させた、世界初の電気自動車生産のエコシステムを構築するEV生産ハブ「EV36Zero」を日本、中国、米国を含む主要地域へ拡大していく。モビリティとエネルギーマネジメントを組み合わせ、生産とサービスを統合したこのエコシステムにより、カーボンニュートラルの実現を目指す。また、フォーアールエナジー社とバッテリーの二次利用を推進するためのインフラを整備し、エネルギーマネジメントにおける循環サイクルを構築することで、2020年代半ばには、V2Xと家庭用バッテリーシステムの商用化を目指す。
また、長期ビジョンを達成する上で、アライアンスでの連携も不可欠である。当社とルノー及び三菱自動車工業株式会社(以下、「メンバー各社」という。)は、新たな協力的ビジネスモデルを通して、各社の強みを生かし、互いの戦略を補完することで、競争力と収益性を高めることを目指し、共通のプロジェクトと実行計画(ロードマップ)である「Alliance 2030」を2022年1月27日に発表した。アライアンス共同で今後5年間に230億ユーロを投資すること、プラットフォームの共用化率の向上、グローバルで220GWhのバッテリー生産能力を確保することを目指し共通のバッテリー戦略を強化すること等を掲げている。本ロードマップに基づき、アライアンスは、メンバー各社とそれぞれのお客さまへより高い価値を提供していく。なお、2020年5月27日に発表した、メンバー各社の競争力と収益性を支える新たな協業ビジネスモデルにより、強固な基盤の上でガバナンス体制や組織運営を効率化し、強力で柔軟な協力関係を築いている。リーダーとフォロワーの枠組みにより、主要な技術についてはリーダー会社がフォロワー会社のサポートを得ながら開発を行い、メンバー各社が全ての主要技術を活用できるようにしている。
当社グループは、2020年5月28日に、これまでの事業規模拡大による成長戦略から転換し、収益性を重視しながらコストを最適化することで、持続的な成長と安定的な収益の確保を目指す2023年度までの4カ年計画「Nissan NEXT」を発表した。この計画により、中国の合弁企業を50%比例連結したベースで、2023年度末に営業利益率5%、マーケットシェア6%レベルとなることを見込んでいる。また、この計画の狙いは、過度な販売台数の拡大は狙わずに収益を確保しながら着実な成長を果たすこと、自社の強みに集中し、事業の質と財務基盤を強化すること、そして新しい時代の中で、『日産らしさ』を取り戻すことである。
日産は、2023年度末までに業績を回復させ、自動車事業における健全なフリーキャッシュフローを生み出していく。2021年度には、親会社株主に帰属する当期純利益と自動車事業における下期のフリーキャッシュフローの黒字化を達成した。お客さまに新たな価値をご提案するために常にチャレンジし、ブレークスルーを果たす、これこそが、私たち日産のDNAである。新しい時代においても、日産は常に『人』を中心に、『人』の為の技術で、日産ならではの挑戦を続けていく。
(7) 2022年度の経営環境及び主要な経営指標
当第1四半期連結累計期間におけるグローバル経済は、長引く新型コロナウイルスの感染拡大による先行き不透明な状況と、ロシアとウクライナをめぐる地政学的な問題の影響を受ける環境が続いた。当社は上海のロックダウンによるサプライチェーンの分断や、引き続き半導体の供給不足、原材料価格の高騰などに直面した。
このような環境の中、積極的な新車投入、販売の質の向上、事業基盤の強化に継続して取り組んでおり、「Nissan NEXT」は着実に進んでいる。
(8) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当第1四半期連結累計期間における事業上及び財務上の対処すべき課題は、次のとおりである。
当社の元代表取締役が金融商品取引法違反(虚偽有価証券報告書提出罪)で起訴されるとともに、元代表取締役会長においては会社法違反(特別背任罪)でも起訴された。併せて当社自身も金融商品取引法違反により起訴された。当社はこの事態を重く受け止め、独立第三者及び独立社外取締役で構成されるガバナンス改善特別委員会を設置し、2019年3月27日に同委員会からガバナンスの改善策及び、将来にわたり事業活動を行っていくための基盤となる健全なガバナンス体制の在り方についての提言をまとめた報告書を受領した。これを受け、当社は指名委員会等設置会社へ移行した。
当社は、2019年9月9日の取締役会において、監査委員会よりゴーン氏らの不正行為に関する社内調査の報告を受けた。2019年9月9日付の「元会長らによる不正行為に関する社内調査報告について」と題する適時開示に記載したとおり、本報告では、ゴーン氏らによる不正行為を認定している。そのうち、ゴーン氏の会社資産の私的流用等及び販売代理店に対する奨励金支払いに関する不適切な行為は、以下のとおりである。2019年9月9日以降、当四半期報告書提出日時点において、下記の内容に特段の変更は生じていない。今後、下記の内容に重要な進展が生じた場合には、法令等に基づき開示する。
A) ゴーン氏の会社資産の私的流用等
ゴーン氏は、以下を含む様々な方法で当社の資産を私的に流用した。
・将来性のある技術に投資するとの名目で子会社Zi-A Capital社を設立させ、同社の投資資金のうち約2,700万米ドルを、ブラジル(リオデジャネイロ)及びレバノン(ベイルート)所在のゴーン元会長個人のための住宅の購入に流用したほか、会社資金で秘密裏に購入又は賃借した住宅を私的に利用した。
・2003年から10年以上にわたり、実体のないコンサルティング契約に基づくコンサルタント報酬名目で実姉に合計75万米ドルを超える金銭を支払った。
・コーポレートジェットを自身及び家族の私的用途に使用した。
・会社の資金を家族の旅費支払いや、個人的な贈答品支払いなどに充てた。
・業務上の必要性がないにもかかわらず自身の出身国の大学への200万米ドルを超える寄付を会社資金で行わせた。
・2008年、ゴーン氏は個人的に締結した為替スワップ契約のもと約18億5,000万円の含み損を抱え、事実と異なる取引内容を取締役会に説明したうえ為替スワップ契約を当社に承継させて、かかる含み損を当社に承継させた(金融当局の指摘を受け、2009年、当該為替スワップ契約は秘密裏にゴーン氏の関連企業に再承継された)。
・2018年4月以降、三菱自動車工業株式会社との間で設立した合弁会社であるNissan-Mitsubishi B.V.(以下「NMBV」)から、給与・契約金名目での取締役会決議を欠く支払い合計780万ユーロを受領した。
B) 販売代理店に対する奨励金支払いに関する不適切な行為
ゴーン氏は、国外の知人から私的な資金援助を得ていることを当社取締役会及び関係部署に秘したまま、当社子会社から当該知人の経営する企業に対し、自身とその直属の特定少数の部下が承認すれば金銭支出が可能となる予備費予算(CEOリザーブ)を使用して、特別ビジネスプロジェクト費用などの名目で合計1,470万米ドルの支払いを行わせた。
また、国外の販売代理店の関係者からゴーン氏自身又はその関係企業に対して数千万米ドルの支払いがなされていることを当社取締役会及び関係部署に秘したまま、当社子会社から当該販売代理店に対し、CEOリザーブを使用して、販売奨励金名目で合計3,200万米ドルの支払いを行わせた。
金融庁長官から、2019年12月13日付で審判手続開始決定通知書を受領した。これにつき、当社は、課徴金に係る事実及び納付すべき課徴金の額を認める旨の答弁書を2019年12月23日に提出した。その後、2020年2月27日付で金融庁長官から24億2,489万5,000円の課徴金納付命令の決定の送達を受けた。
2022年3月3日、当社は東京地方裁判所から金融商品取引法違反(虚偽有価証券報告書提出罪)により、罰金2億円に処するとの有罪判決を受けた。当社は、当社に対する当該判決を厳粛に受け止め、判決の主文並びに理由として述べられた事項を慎重に検討した結果、当該判決に対する控訴を行わないことを決定した。その後、当社及び検察官のいずれも刑事訴訟法が定める控訴期間内に控訴しなかったため、当該判決は確定した。
上記課徴金に関して、金融商品取引法第185条の8第6項の規定に基づき、当該刑事裁判の判決による罰金額である2億円を控除し、課徴金の総額を22億2,489万5,000円に変更する処分が2022年4月26日付で行われた。当該課徴金については、すでに全額納付済である。
また、ゴーン氏がNMBV及び他の当社の子会社に対してアムステルダム地方裁判所に提起した不当解雇訴訟において、NMBVは、ゴーン氏がNMBVから不正に着服した資金の返還を求めゴーン氏に対し反対請求を提起した。2021年5月20日にアムステルダム地方裁判所による判決が出され、ゴーン氏の請求は棄却されるとともに、ゴーン氏に対し約500万ユーロの返還が命じられた。2021年8月20日、ゴーン氏は控訴状をアムステルダム高等裁判所に提出した。
ゴーン氏による会社資金の不正使用により購入された住居の一部については、売却が完了している。
当社は、既に英領バージン諸島においてゴーン氏及びその関係者を相手に、豪華ヨットに対する仮処分命令を申立て、同命令を得た上で、損害賠償等を求めて訴訟を提起し、また日本国内においても、2020年2月12日にゴーン氏に対し、2022年1月19日に当社元代表取締役ケリー氏に対し、損害賠償請求訴訟を提起しているが、本社内調査結果を踏まえ、今後も、ゴーン氏らの責任を明確にすべく、ゴーン氏らの法令違反や不正行為によって被った損害の回復のため法的措置を含めた必要な対応をとっていく方針である。
指名委員会の選出による経営層の新体制が2019年12月に発足、内部監査による監督機能を強化したこと、などに見られるように、種々の再発防止策に取り組んでいる。
当社は、2020年1月16日に東京証券取引所に提出した改善状況報告書に記載した改善措置の継続的実施を含め、これからも必要な改善を随時検討するなど、引き続きガバナンスの向上に努めるとともに、企業風土の改革、企業倫理の再構築、企業情報の適切な開示、コンプライアンスを遵守した経営に努めていく所存であることを表明している。
(9) 研究開発活動
当社グループは、将来にわたって持続性のある車社会の実現に向けて、環境や安全など様々な分野での研究開発活動を積極的に行っている。
当第1四半期連結累計期間における当社グループ全体の研究開発費の金額は1,155億円である。