有価証券報告書-第122期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概況は次のとおりである。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度のグローバル全体需要は前年度比10.2%減の7,698万台となった。これは主に、世界各国の新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、特に第1四半期3か月間の全体需要が大きく減少したことによるものである。当社グループのグローバル販売台数は前年度比17.8%減の405万2千台となり、売上高7兆8,626億円と前連結会計年度に比べ2兆163億円(20.4%)の減収となった。営業損失は1,507億円と前連結会計年度に比べ1,102億円の悪化となった。
営業外損益は705億円の損失となり、前連結会計年度に比べ1,550億円の悪化となった。その結果、経常損失は2,212億円となり、前連結会計年度に比べ2,652億円の悪化となった。特別損益は1,181億円の損失となり、前連結会計年度に比べ4,989億円改善した。税金等調整前当期純損失は3,393億円と前連結会計年度に比べ2,337億円改善した。親会社株主に帰属する当期純損失は4,487億円となり、前連結会計年度に比べ2,225億円改善した。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローは、営業活動により1兆3,228億円増加、投資活動により3,691億円減少、財務活動により6,397億円減少した。また、現金及び現金同等物に係る換算差額により769億円増加し、連結範囲の変更に伴い1億円増加した結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末残高に対し3,910億円(23.8%)増加の2兆340億円となった。
③ 生産、受注及び販売の状況
a.生産実績
(注) 台数集約期間は2020年4月から2021年3月までである。
b.受注状況
当社グループの受注生産は僅少なので受注状況の記載を省略する。
c.販売実績
(注) 台数集約期間は、アジアに含まれる中国、台湾は2020年1月から2020年12月まで、日本、北米、欧州、その他、並びに中国、台湾を除くアジアは2020年4月から2021年3月までである。
(2) 経営者の視点による経営成績の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであり、原則として連結財務諸表に基づいて分析したものである。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2021年6月29日)現在において当社グループが判断したものである。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成している。この連結財務諸表の作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とする。経営者は、これらの見積りについて過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断しているが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合がある。
連結財務諸表を作成するにあたって、重要な見積りは以下のとおりである。なお、「会計上の見積りの開示に関する会計基準」の適用に伴い、翌連結会計年度に重要な影響を及ぼす可能性のある一部の項目については、第5[経理の状況]の1連結財務諸表等の(重要な会計上の見積り)に記載している。
a.製品保証引当金
当社グループは、製品のアフターサービスに対する費用の支出に備えるため、保証書の約款に従い、類似の費用特性を有する製品グループごとに保証経過期間における発生費用総額に対して、過去実績に基づく保証期間内の費用発生パターンを見積もり、引当金を算定している。当社グループは、製品の安全を最優先課題として、研究開発・製造から販売サービスまで最善の努力を傾けているが、実際の製品の不具合等により発生した保証費用の発生パターンの実績が見積りと乖離した場合、引当金の追加計上が必要となる可能性がある。
b.退職給付費用
当社グループの従業員の退職給付に備えるための退職給付費用及び債務は、割引率、退職率及び死亡率などの年金数理計算上の基礎率及び年金資産の長期期待運用収益率に基づき算出されている。ただし、国際財務報告基準(IFRS)を適用している在外連結子会社においては、年金資産の期待運用収益率ではなく、利息純額として年金数理計算上の割引率と同じ指標が用いられている。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来期間において認識される費用及び債務に影響を与える可能性がある。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度における経営成績及び財政状態の状況に関する認識及び分析・検討結果は、次のとおりである。
(業績)
a.売上高
連結売上高は前連結会計年度に対し2兆163億円(20.4%)減少し、7兆8,626億円となった。主な減収要因は、世界各国の新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、特に第1四半期3か月間の全体需要が大きく減少し、通期で販売台数が減少したことによるものである。
b.営業利益
連結営業損失は1,507億円となり、前連結会計年度に対し1,102億円の悪化となった。主な悪化要因は、販売の質の向上や固定費削減による改善はあったものの、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による販売台数の減少や為替変動によるものである。
c.営業外損益
連結営業外損益は705億円の損失となり、前連結会計年度の845億円の利益に対し、1,550億円の悪化となった。これは主に、持分法による投資利益が投資損失に転じたことによるものである。
d.特別損益
連結特別損益は1,181億円の損失となり、前連結会計年度の6,170億円の損失に対し、4,989億円改善した。これは主に、前連結会計年度において、将来の収益性改善に向けた構造改革実施のための構造改革費用及び将来台数見通しに基づいた減損損失の影響合計6,030億円を計上したことによるものである。
e.法人税等
法人税等は926億円となり、6億円(0.6%)の減少となった。
f.親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純損失は4,487億円となり、前連結会計年度に比べ2,225億円改善した。
(事業セグメント)
a.自動車事業
当社グループの全世界における自動車販売台数(小売り)は、405万2千台と前連結会計年度に比べ87万8千台(17.8%)の減少となった。これは主に、世界各国の新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、特に第1四半期3か月間の全体需要が大きく減少したことによるものである。日本国内では前年度比10.6%減の47万8千台、中国では前年度比5.8%減の145万7千台となった。メキシコとカナダを含む北米では前年度比25.1%減の121万3千台、欧州では前年度比24.8%減の39万1千台、その他地域は前年度比27.5%減の51万3千台となった。
自動車事業の売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は、6兆9,891億円と前連結会計年度に比べ1兆9,268億円(21.6%)の減収となった。
営業損失は、4,370億円と前連結会計年度に比べ1,728億円の悪化となった。これは主に、販売費用の改善や固定費の削減を通じた財務基盤の強化、商品ラインアップの刷新等により、四半期ごとに着実に業績を回復したものの、新型コロナウイルス感染症拡大により、特に第1四半期で販売台数が大きく減少したことによる影響のほか、為替変動の影響や規制対応及び商品性向上コストの増加によるものである。
b.販売金融事業
販売金融事業の売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は、1兆200億円と前連結会計年度に比べ1,433億円(12.3%)の減収となった。営業利益は2,679億円と前連結会計年度に比べ574億円(27.2%)の増益となった。これは主に、米国の販売金融会社の増益によるものである。
(地域セグメント)
a.日本
日本国内市場の全体需要は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、前年度比7.6%減の466万台となった。当社グループの販売台数は、新型コロナウイルス感染症拡大や旧型「ノート」から新型「ノート」への切り替わり期間にあたったことが影響し、前年比10.6%減の47万8千台に縮小し、市場占有率は前年度比0.3ポイント減の10.3%へと縮小した。この結果、日本地域におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は、3兆2,080億円と前連結会計年度に比べ7,765億円(19.5%)の減収となった。営業損失は2,031億円となり、前連結会計年度に比べ1,514億円の悪化となった。主な悪化要因は、販売台数(輸出含む)の減少である。
b.北米
メキシコとカナダを含む北米市場の全体需要は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、前年度比11.1%減の1,748万台となった。当社グループの販売台数は前年度比25.1%減の121万3千台となり、北米地域におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は、3兆9,752億円と前連結会計年度に比べ1兆1,654億円(22.7%)の減収となった。営業利益は463億円となり、前連結会計年度に比べ622億円の改善となった。主な改善要因は、販売台数の減少はあったものの、固定費及びインセンティブ等の削減や販売金融事業の増益である。
米国市場の全体需要は、前年度比9.5%減の1,498万台となった。そのような中で、当社グループは、以前から取り組んできた販売の質向上の取り組みが、成果を出し始めている。当社グループの販売台数は前年度比25.1%減の92万7千台となり、市場占有率は前年度比1.3ポイント減の6.2%となった。
c.欧州
欧州市場の全体需要は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、前年度比16.2%減の1,602万台となった。ロシアを除く欧州市場の当社グループの販売台数は前年度比24.1%減の32万8千台となり、市場占有率は前年度比0.2ポイント減の2.3%となった。また、ロシア市場における当社グループの販売台数は、前年度比28.1%減の6万4千台となった。欧州地域におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は、1兆951億円と前連結会計年度に比べ3,839億円(26.0%)の減収となった。営業損失は307億円となり、前連結会計年度に比べ17億円の悪化となった。主な悪化要因は、固定費の削減による改善はあったものの、販売台数の減少によるものである。
d.アジア
中国を除くアジア市場の販売台数は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、前年度比32.4%減の14万6千台となり、アジア地域におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は、1兆1,567億円と前連結会計年度に比べ1,981億円(14.6%)の減収となった。営業利益は232億円となり、前連結会計年度に比べ159億円(40.7%)の減益となった。
中国市場の全体需要は、前年度比3.6%減の2,343万台となった。新型コロナウイルス感染症拡大の影響や、市場全体における乗用車生産の減少等があったものの、「シルフィ」や「エクストレイル」等の販売が堅調に推移したことに支えられ、当社グループの販売台数は前年度比5.8%減の145万7千台となり、市場占有率は前年度比0.2ポイント減の6.2%となった。なお、合弁会社である東風汽車有限公司の業績は、営業外費用の持分法による投資損失に含まれている。
e.その他
大洋州、中近東、南アフリカ、メキシコを除く中南米等における当社グループの販売台数は、前年度比25.4%減の36万7千台となった。中南米市場の販売台数は前年比31.5%減の14万1千台、中東市場の販売台数は前年比19.2%減の11万7千台、南アフリカ等のアフリカ市場の販売台数は、前年比25.3%減の6万2千台となった。大洋州、中近東、南アフリカ、メキシコを除く中南米等におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は、6,239億円と前連結会計年度に比べ2,600億円(29.4%)の減収となった。営業利益は15億円となり、前連結会計年度に比べ55億円の改善となった。
(資本の財源及び資金の流動性についての分析)
a.キャッシュ・フローの状況
営業活動
営業活動によって生み出された資金は1兆3,228億円となり、前連結会計年度の1兆1,859億円に比べて1,369億円増加した。これは主として、自動車事業において売上債権の増減額が減少から増加に転じた一方、たな卸資産の増減額が増加から減少に転じたこと及び仕入債務の増減額が減少から増加に転じたことによるものである。一方、販売金融事業における営業活動によるキャッシュ・フローは前連結会計年度と同水準であった。
投資活動
投資活動による支出は3,691億円となり、前連結会計年度の7,087億円に比べて3,396億円減少した。これは主として、販売金融事業においてリース車両への純支出(取得と売却の純額)が減少したこと、及び固定資産の取得による支出が減少したことによるものである。なお、新商品の投入や先進運転支援技術をはじめとした新技術の開発等、自動車事業への投資を継続して行った。
財務活動
財務活動による支出は6,397億円となり、前連結会計年度の1,555億円の支出に比べて4,842億円増加した。これは主として、販売金融事業の資金需要が減少したことによるものである。
なお、当連結会計年度末における自動車事業の手元資金は有利子負債額を上回り、6,360億円のキャッシュ・ポジションとなり、当連結会計年度における自動車事業のフリーキャッシュフローは3,910億円のマイナスとなった。
セグメント別の内訳は以下のとおりである。
前連結会計年度(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日
(百万円)
当連結会計年度(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)
(百万円)
対前年度増減
(百万円)
b.財務政策
当社グループは、グループ会社の財務活動を財務・経理部門にて一括して管理している。またグローバル・キャッシュ・マネジメントにより資金効率を最大限に高める活動を行っている。
当社グループは、研究開発活動、設備投資及び金融事業に投資するために、適切な資金確保を行い、最適な流動性を保持し、健全なバランスシートを維持することを財務方針としている。
研究開発費及び設備投資については、売上高に対し概ね一定の割合となるよう管理している。今後、経営資源はコアマーケット、コアモデル、コアテクノロジーに集中して投入する計画である。金融資産は資産の質を重要視し、投資を行っている。株主への配当については、収益、キャッシュ・フロー等の状況を総合的に勘案し決定している。
2021年3月末で自動車事業の手元資金は1兆8,961億円、販売金融事業も合わせた会社全体での未使用のコミットメント・ラインが約2兆2,000億円である。また、通常の資金調達に加えて、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う資金需要に対応するため、当社及び当社グループは、2020年4月以降複数の金融機関との間で、総額1兆2,271億円の資金調達を実行した。あわせて、当社は米ドル建て普通社債を総額80億ドル、ユーロ建て普通社債を総額20億ユーロそれぞれ起債した。なお、当該資金調達1兆2,271億円のうち4,494億円は当有価証券報告書提出日現在において返済している。自動車事業における今般の資金の使用状況、格付けの引き下げ、新型コロナウイルス感染症の影響を勘案すると、資金の流動性には注視が必要であるが、当社グループは、現金及び現金同等物に加え、世界の主要銀行とコミットメントライン契約を締結しており、必要とされる十分な流動性を確保していると考えている。
当社グループによる無担保資金調達に係わるコスト及びその発行の可否は、一般に当社グループに関する信用格付けによっている。現在、当社グループの信用格付けは投資適格のレベルとなっているが、これらの格付けは当社グループの債券の売買・保有を推奨するものではない。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概況は次のとおりである。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度のグローバル全体需要は前年度比10.2%減の7,698万台となった。これは主に、世界各国の新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、特に第1四半期3か月間の全体需要が大きく減少したことによるものである。当社グループのグローバル販売台数は前年度比17.8%減の405万2千台となり、売上高7兆8,626億円と前連結会計年度に比べ2兆163億円(20.4%)の減収となった。営業損失は1,507億円と前連結会計年度に比べ1,102億円の悪化となった。
営業外損益は705億円の損失となり、前連結会計年度に比べ1,550億円の悪化となった。その結果、経常損失は2,212億円となり、前連結会計年度に比べ2,652億円の悪化となった。特別損益は1,181億円の損失となり、前連結会計年度に比べ4,989億円改善した。税金等調整前当期純損失は3,393億円と前連結会計年度に比べ2,337億円改善した。親会社株主に帰属する当期純損失は4,487億円となり、前連結会計年度に比べ2,225億円改善した。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローは、営業活動により1兆3,228億円増加、投資活動により3,691億円減少、財務活動により6,397億円減少した。また、現金及び現金同等物に係る換算差額により769億円増加し、連結範囲の変更に伴い1億円増加した結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末残高に対し3,910億円(23.8%)増加の2兆340億円となった。
③ 生産、受注及び販売の状況
a.生産実績
会社所在地 | 生産台数(台) | 増減 | 前年同期比 | |
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | (台) | (%) | |
日 本 | 757,692 | 517,044 | △240,648 | △31.8 |
米 国 | 694,305 | 429,157 | △265,148 | △38.2 |
メキシコ | 611,025 | 498,079 | △112,946 | △18.5 |
英 国 | 325,243 | 246,050 | △79,193 | △24.3 |
スペイン | 55,022 | 13,875 | △41,147 | △74.8 |
ロシア | 54,420 | 35,278 | △19,142 | △35.2 |
タ イ | 137,160 | 114,108 | △23,052 | △16.8 |
インドネシア | 3,114 | ― | △3,114 | ― |
フィリピン | 5,109 | 3,262 | △1,847 | △36.2 |
インド | 203,173 | 144,489 | △58,684 | △28.9 |
南アフリカ | 31,601 | 18,376 | △13,225 | △41.8 |
ブラジル | 101,803 | 44,672 | △57,131 | △56.1 |
アルゼンチン | 10,815 | 13,465 | 2,650 | 24.5 |
エジプト | 16,244 | 14,569 | △1,675 | △10.3 |
合計 | 3,006,726 | 2,092,424 | △914,302 | △30.4 |
(注) 台数集約期間は2020年4月から2021年3月までである。
b.受注状況
当社グループの受注生産は僅少なので受注状況の記載を省略する。
c.販売実績
仕向地 | 販売台数(連結売上台数:台) | 増減 | 前年同期比 | ||
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | (台) | (%) | ||
日 本 | 514,490 | 461,809 | △52,681 | △10.2 | |
北 米 | 1,500,667 | 1,126,121 | △374,546 | △25.0 | |
内、米国 | 1,137,598 | 852,932 | △284,666 | △25.0 | |
欧 州 | 523,752 | 350,059 | △173,693 | △33.2 | |
アジア | 299,728 | 205,594 | △94,134 | △31.4 | |
その他 | 510,987 | 327,761 | △183,226 | △35.9 | |
合計 | 3,349,624 | 2,471,344 | △878,280 | △26.2 |
(注) 台数集約期間は、アジアに含まれる中国、台湾は2020年1月から2020年12月まで、日本、北米、欧州、その他、並びに中国、台湾を除くアジアは2020年4月から2021年3月までである。
(2) 経営者の視点による経営成績の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであり、原則として連結財務諸表に基づいて分析したものである。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2021年6月29日)現在において当社グループが判断したものである。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成している。この連結財務諸表の作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とする。経営者は、これらの見積りについて過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断しているが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合がある。
連結財務諸表を作成するにあたって、重要な見積りは以下のとおりである。なお、「会計上の見積りの開示に関する会計基準」の適用に伴い、翌連結会計年度に重要な影響を及ぼす可能性のある一部の項目については、第5[経理の状況]の1連結財務諸表等の(重要な会計上の見積り)に記載している。
a.製品保証引当金
当社グループは、製品のアフターサービスに対する費用の支出に備えるため、保証書の約款に従い、類似の費用特性を有する製品グループごとに保証経過期間における発生費用総額に対して、過去実績に基づく保証期間内の費用発生パターンを見積もり、引当金を算定している。当社グループは、製品の安全を最優先課題として、研究開発・製造から販売サービスまで最善の努力を傾けているが、実際の製品の不具合等により発生した保証費用の発生パターンの実績が見積りと乖離した場合、引当金の追加計上が必要となる可能性がある。
b.退職給付費用
当社グループの従業員の退職給付に備えるための退職給付費用及び債務は、割引率、退職率及び死亡率などの年金数理計算上の基礎率及び年金資産の長期期待運用収益率に基づき算出されている。ただし、国際財務報告基準(IFRS)を適用している在外連結子会社においては、年金資産の期待運用収益率ではなく、利息純額として年金数理計算上の割引率と同じ指標が用いられている。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来期間において認識される費用及び債務に影響を与える可能性がある。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度における経営成績及び財政状態の状況に関する認識及び分析・検討結果は、次のとおりである。
(業績)
a.売上高
連結売上高は前連結会計年度に対し2兆163億円(20.4%)減少し、7兆8,626億円となった。主な減収要因は、世界各国の新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、特に第1四半期3か月間の全体需要が大きく減少し、通期で販売台数が減少したことによるものである。
b.営業利益
連結営業損失は1,507億円となり、前連結会計年度に対し1,102億円の悪化となった。主な悪化要因は、販売の質の向上や固定費削減による改善はあったものの、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による販売台数の減少や為替変動によるものである。
c.営業外損益
連結営業外損益は705億円の損失となり、前連結会計年度の845億円の利益に対し、1,550億円の悪化となった。これは主に、持分法による投資利益が投資損失に転じたことによるものである。
d.特別損益
連結特別損益は1,181億円の損失となり、前連結会計年度の6,170億円の損失に対し、4,989億円改善した。これは主に、前連結会計年度において、将来の収益性改善に向けた構造改革実施のための構造改革費用及び将来台数見通しに基づいた減損損失の影響合計6,030億円を計上したことによるものである。
e.法人税等
法人税等は926億円となり、6億円(0.6%)の減少となった。
f.親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純損失は4,487億円となり、前連結会計年度に比べ2,225億円改善した。
(事業セグメント)
a.自動車事業
当社グループの全世界における自動車販売台数(小売り)は、405万2千台と前連結会計年度に比べ87万8千台(17.8%)の減少となった。これは主に、世界各国の新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、特に第1四半期3か月間の全体需要が大きく減少したことによるものである。日本国内では前年度比10.6%減の47万8千台、中国では前年度比5.8%減の145万7千台となった。メキシコとカナダを含む北米では前年度比25.1%減の121万3千台、欧州では前年度比24.8%減の39万1千台、その他地域は前年度比27.5%減の51万3千台となった。
自動車事業の売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は、6兆9,891億円と前連結会計年度に比べ1兆9,268億円(21.6%)の減収となった。
営業損失は、4,370億円と前連結会計年度に比べ1,728億円の悪化となった。これは主に、販売費用の改善や固定費の削減を通じた財務基盤の強化、商品ラインアップの刷新等により、四半期ごとに着実に業績を回復したものの、新型コロナウイルス感染症拡大により、特に第1四半期で販売台数が大きく減少したことによる影響のほか、為替変動の影響や規制対応及び商品性向上コストの増加によるものである。
b.販売金融事業
販売金融事業の売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は、1兆200億円と前連結会計年度に比べ1,433億円(12.3%)の減収となった。営業利益は2,679億円と前連結会計年度に比べ574億円(27.2%)の増益となった。これは主に、米国の販売金融会社の増益によるものである。
(地域セグメント)
a.日本
日本国内市場の全体需要は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、前年度比7.6%減の466万台となった。当社グループの販売台数は、新型コロナウイルス感染症拡大や旧型「ノート」から新型「ノート」への切り替わり期間にあたったことが影響し、前年比10.6%減の47万8千台に縮小し、市場占有率は前年度比0.3ポイント減の10.3%へと縮小した。この結果、日本地域におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は、3兆2,080億円と前連結会計年度に比べ7,765億円(19.5%)の減収となった。営業損失は2,031億円となり、前連結会計年度に比べ1,514億円の悪化となった。主な悪化要因は、販売台数(輸出含む)の減少である。
b.北米
メキシコとカナダを含む北米市場の全体需要は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、前年度比11.1%減の1,748万台となった。当社グループの販売台数は前年度比25.1%減の121万3千台となり、北米地域におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は、3兆9,752億円と前連結会計年度に比べ1兆1,654億円(22.7%)の減収となった。営業利益は463億円となり、前連結会計年度に比べ622億円の改善となった。主な改善要因は、販売台数の減少はあったものの、固定費及びインセンティブ等の削減や販売金融事業の増益である。
米国市場の全体需要は、前年度比9.5%減の1,498万台となった。そのような中で、当社グループは、以前から取り組んできた販売の質向上の取り組みが、成果を出し始めている。当社グループの販売台数は前年度比25.1%減の92万7千台となり、市場占有率は前年度比1.3ポイント減の6.2%となった。
c.欧州
欧州市場の全体需要は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、前年度比16.2%減の1,602万台となった。ロシアを除く欧州市場の当社グループの販売台数は前年度比24.1%減の32万8千台となり、市場占有率は前年度比0.2ポイント減の2.3%となった。また、ロシア市場における当社グループの販売台数は、前年度比28.1%減の6万4千台となった。欧州地域におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は、1兆951億円と前連結会計年度に比べ3,839億円(26.0%)の減収となった。営業損失は307億円となり、前連結会計年度に比べ17億円の悪化となった。主な悪化要因は、固定費の削減による改善はあったものの、販売台数の減少によるものである。
d.アジア
中国を除くアジア市場の販売台数は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、前年度比32.4%減の14万6千台となり、アジア地域におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は、1兆1,567億円と前連結会計年度に比べ1,981億円(14.6%)の減収となった。営業利益は232億円となり、前連結会計年度に比べ159億円(40.7%)の減益となった。
中国市場の全体需要は、前年度比3.6%減の2,343万台となった。新型コロナウイルス感染症拡大の影響や、市場全体における乗用車生産の減少等があったものの、「シルフィ」や「エクストレイル」等の販売が堅調に推移したことに支えられ、当社グループの販売台数は前年度比5.8%減の145万7千台となり、市場占有率は前年度比0.2ポイント減の6.2%となった。なお、合弁会社である東風汽車有限公司の業績は、営業外費用の持分法による投資損失に含まれている。
e.その他
大洋州、中近東、南アフリカ、メキシコを除く中南米等における当社グループの販売台数は、前年度比25.4%減の36万7千台となった。中南米市場の販売台数は前年比31.5%減の14万1千台、中東市場の販売台数は前年比19.2%減の11万7千台、南アフリカ等のアフリカ市場の販売台数は、前年比25.3%減の6万2千台となった。大洋州、中近東、南アフリカ、メキシコを除く中南米等におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は、6,239億円と前連結会計年度に比べ2,600億円(29.4%)の減収となった。営業利益は15億円となり、前連結会計年度に比べ55億円の改善となった。
(資本の財源及び資金の流動性についての分析)
a.キャッシュ・フローの状況
営業活動
営業活動によって生み出された資金は1兆3,228億円となり、前連結会計年度の1兆1,859億円に比べて1,369億円増加した。これは主として、自動車事業において売上債権の増減額が減少から増加に転じた一方、たな卸資産の増減額が増加から減少に転じたこと及び仕入債務の増減額が減少から増加に転じたことによるものである。一方、販売金融事業における営業活動によるキャッシュ・フローは前連結会計年度と同水準であった。
投資活動
投資活動による支出は3,691億円となり、前連結会計年度の7,087億円に比べて3,396億円減少した。これは主として、販売金融事業においてリース車両への純支出(取得と売却の純額)が減少したこと、及び固定資産の取得による支出が減少したことによるものである。なお、新商品の投入や先進運転支援技術をはじめとした新技術の開発等、自動車事業への投資を継続して行った。
財務活動
財務活動による支出は6,397億円となり、前連結会計年度の1,555億円の支出に比べて4,842億円増加した。これは主として、販売金融事業の資金需要が減少したことによるものである。
なお、当連結会計年度末における自動車事業の手元資金は有利子負債額を上回り、6,360億円のキャッシュ・ポジションとなり、当連結会計年度における自動車事業のフリーキャッシュフローは3,910億円のマイナスとなった。
セグメント別の内訳は以下のとおりである。
前連結会計年度(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日
(百万円)
自動車事業及び消去 | 販売金融事業 | 連結計 | |
営業活動によるキャッシュ・フロー | △212,474 | 1,398,328 | 1,185,854 |
投資活動によるキャッシュ・フロー | △428,541 | △280,146 | △708,687 |
財務活動によるキャッシュ・フロー | 847,555 | △1,003,049 | △155,494 |
当連結会計年度(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)
(百万円)
自動車事業及び消去 | 販売金融事業 | 連結計 | |
営業活動によるキャッシュ・フロー | △76,490 | 1,399,279 | 1,322,789 |
投資活動によるキャッシュ・フロー | △314,530 | △54,591 | △369,121 |
財務活動によるキャッシュ・フロー | 733,152 | △1,372,844 | △639,692 |
対前年度増減
(百万円)
自動車事業及び消去 | 販売金融事業 | 連結計 | |
営業活動によるキャッシュ・フロー | 135,984 | 951 | 136,935 |
投資活動によるキャッシュ・フロー | 114,011 | 225,555 | 339,566 |
財務活動によるキャッシュ・フロー | △114,403 | △369,795 | △484,198 |
b.財務政策
当社グループは、グループ会社の財務活動を財務・経理部門にて一括して管理している。またグローバル・キャッシュ・マネジメントにより資金効率を最大限に高める活動を行っている。
当社グループは、研究開発活動、設備投資及び金融事業に投資するために、適切な資金確保を行い、最適な流動性を保持し、健全なバランスシートを維持することを財務方針としている。
研究開発費及び設備投資については、売上高に対し概ね一定の割合となるよう管理している。今後、経営資源はコアマーケット、コアモデル、コアテクノロジーに集中して投入する計画である。金融資産は資産の質を重要視し、投資を行っている。株主への配当については、収益、キャッシュ・フロー等の状況を総合的に勘案し決定している。
2021年3月末で自動車事業の手元資金は1兆8,961億円、販売金融事業も合わせた会社全体での未使用のコミットメント・ラインが約2兆2,000億円である。また、通常の資金調達に加えて、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う資金需要に対応するため、当社及び当社グループは、2020年4月以降複数の金融機関との間で、総額1兆2,271億円の資金調達を実行した。あわせて、当社は米ドル建て普通社債を総額80億ドル、ユーロ建て普通社債を総額20億ユーロそれぞれ起債した。なお、当該資金調達1兆2,271億円のうち4,494億円は当有価証券報告書提出日現在において返済している。自動車事業における今般の資金の使用状況、格付けの引き下げ、新型コロナウイルス感染症の影響を勘案すると、資金の流動性には注視が必要であるが、当社グループは、現金及び現金同等物に加え、世界の主要銀行とコミットメントライン契約を締結しており、必要とされる十分な流動性を確保していると考えている。
当社グループによる無担保資金調達に係わるコスト及びその発行の可否は、一般に当社グループに関する信用格付けによっている。現在、当社グループの信用格付けは投資適格のレベルとなっているが、これらの格付けは当社グループの債券の売買・保有を推奨するものではない。