有価証券報告書-第123期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概況は次のとおりである。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用している。詳細については、第5[経理の状況]1連結財務諸表等の注記事項(会計方針の変更)に記載している。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度のグローバル全体需要は前年度比1.8%増の7,836万台となった。一方、当社グループのグローバル販売台数(小売り)は前年度比4.3%減の387万6千台となった。売上高は8兆4,246億円と前連結会計年度に比べ5,620億円(7.1%)の増収となり、営業利益は2,473億円と前連結会計年度に比べ3,980億円の改善となった。
営業外損益は588億円の利益となり、前連結会計年度に比べ1,293億円の改善となった。その結果、経常利益は3,061億円となり、前連結会計年度に比べ5,273億円の改善となった。特別損益は781億円の利益となり、前連結会計年度に比べ1,962億円改善した。税金等調整前当期純利益は3,842億円と前連結会計年度に比べ7,235億円改善した。親会社株主に帰属する当期純利益は2,155億円となり、前連結会計年度に比べ6,642億円改善した。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローは、営業活動により8,472億円増加、投資活動により1,468億円減少、財務活動により1兆926億円減少した。また、現金及び現金同等物に係る換算差額により1,450億円増加し、連結範囲の変更に伴い59億円増加した結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末残高に対し2,413億円(11.9%)減少の1兆7,927億円となった。
③ 生産、受注及び販売の状況
a.生産実績
(注) 台数集約期間は2021年4月から2022年3月までである。
b.受注状況
当社グループの受注生産は僅少なので受注状況の記載を省略する。
c.販売実績
(注) 台数集約期間は、アジアに含まれる中国、台湾は2021年1月から2021年12月まで、日本、北米、欧州、その他、並びに中国、台湾を除くアジアは2021年4月から2022年3月までである。
(2) 経営者の視点による経営成績の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであり、原則として連結財務諸表に基づいて分析したものである。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2022年6月30日)現在において当社グループが判断したものである。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成している。この連結財務諸表の作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とする。経営者は、これらの見積りについて過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断しているが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合がある。
連結財務諸表を作成するにあたって、重要な見積りは以下のとおりである。なお、「会計上の見積りの開示に関する会計基準」の適用に伴い、翌連結会計年度に重要な影響を及ぼす可能性のある一部の項目については、第5[経理の状況]の1連結財務諸表等の(重要な会計上の見積り)に記載している。
a.製品保証引当金
当社グループは、製品のアフターサービスに対する費用の支出に備えるため、保証書の約款に従い、類似の費用特性を有する製品グループごとに保証経過期間における発生費用総額に対して、過去実績に基づく保証期間内の費用発生パターンを見積もり、引当金を算定している。当社グループは、製品の安全を最優先課題として、研究開発・製造から販売サービスまで最善の努力を傾けているが、実際の製品の不具合等により発生した保証費用の発生パターンの実績が見積りと乖離した場合、引当金の追加計上が必要となる可能性がある。
b.退職給付費用
当社グループの従業員の退職給付に備えるための退職給付費用及び債務は、割引率、退職率及び死亡率などの年金数理計算上の基礎率及び年金資産の長期期待運用収益率に基づき算出されている。ただし、国際財務報告基準(IFRS)を適用している在外関係会社においては、年金資産の期待運用収益率ではなく、利息純額として年金数理計算上の割引率と同じ指標が用いられている。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来期間において認識される費用及び債務に影響を与える可能性がある。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度における経営成績及び財政状態の状況に関する認識及び分析・検討結果は、次のとおりである。
(業績)
a.売上高
連結売上高は前連結会計年度に対し5,620億円(7.1%)増加し、8兆4,246億円となった。主な増収要因は、販売台数の減少はあったものの、販売の質の向上や為替変動によるものである。
b.営業利益
連結営業利益は2,473億円となり、売上高営業利益率は2.9%となった。前連結会計年度の1,507億円の損失に対し3,980億円の改善となった。主な改善要因は、原材料価格の高騰があったものの、販売の質の向上、徹底した費用管理及び為替変動により改善したことによるものである。
c.営業外損益
連結営業外損益は588億円の利益となり、前連結会計年度の705億円の損失に対し、1,293億円の改善となった。これは主に、持分法による投資利益の改善によるものである。
d.特別損益
連結特別損益は781億円の利益となり、前連結会計年度の1,181億円の損失に対し、1,962億円改善した。これは主に、第1四半期連結会計期間において、当社が保有するダイムラーAG株式の売却による投資有価証券売却益761億円を計上したことによるものである。
e.法人税等
法人税等は1,454億円となり、528億円(57.1%)の増加となった。
f.親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は2,155億円となり、前連結会計年度に比べ6,642億円改善した。
(事業セグメント)
a.自動車事業
当社グループの全世界における自動車販売台数(小売り)は、387万6千台と前連結会計年度に比べ17万6千台(4.3%)の減少となった。これは主に、半導体の供給不足等によるものである。日本国内では前年度比10.3%減の42万8千台、中国では前年度比5.2%減の138万1千台となった。メキシコとカナダを含む北米では前年度比2.4%減の118万3千台、欧州では前年度比13.3%減の34万台、その他地域は前年度比5.9%増の54万3千台となった。
自動車事業の売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は、7兆4,757億円と前連結会計年度に比べ4,866億円(7.0%)の増収となった。
営業損失は、1,550億円と前連結会計年度に比べ2,820億円の改善となった。これは主に、原材料価格の高騰があったものの、継続的に取り組んでいる販売の質の向上による収益力の強化に加え、半導体の供給不足による需給バランスの寄与や為替変動により改善したことによるものである。
b.販売金融事業
販売金融事業の売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は、1兆317億円と前連結会計年度に比べ117億円(1.1%)の増収となった。営業利益は3,748億円と前連結会計年度に比べ1,069億円(39.9%)の増益となった。これは主に、クレジットロスに係る引当金の戻入れ、中古車価格の上昇及びポートフォリオの質の向上による米国の販売金融会社の増益によるものである。
(地域セグメント)
a.日本
日本国内市場の全体需要は、前年度比9.5%減の422万台となった。当社グループの販売台数(小売り)は、半導体の供給不足のほか「ルークス」の出荷停止などが影響し、前年比10.3%減の42万8千台に縮小し、市場占有率は前年度比0.1ポイント減の10.2%へと縮小した。この結果、日本地域におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は、3兆1,221億円と前連結会計年度に比べ859億円(2.7%)の減収となった。営業損失は2,298億円となり、前連結会計年度に比べ267億円の悪化となった。主な悪化要因は、原材料価格の高騰及び販売台数(輸出含む)の減少である。
b.北米
メキシコとカナダを含む北米市場の全体需要は、前年度比2.4%減の1,707万台となった。当社グループの販売台数(小売り)は前年度比2.4%減の118万3千台となり、北米地域におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は、4兆3,452億円と前連結会計年度に比べ3,700億円(9.3%)の増収となった。営業利益は3,307億円となり、前連結会計年度に比べ2,844億円(613.7%)の増益となった。主な増益要因は、原材料価格の高騰及び販売台数の減少はあったものの、魅力的な商品ラインナップの刷新等によるブランド力の向上及び徹底した販売奨励金管理による台当たり正味売上高の増加、並びに販売金融事業における増益である。
米国市場の全体需要は、前年度比3.4%減の1,447万台となった。新型「ローグ」や新型「フロンティア」等の販売が堅調に推移したものの、半導体の供給不足等があり、当社グループの販売台数(小売り)は前年度比3.7%減の89万3千台となり、市場占有率は前年同水準の6.2%となった。
c.欧州
欧州市場の全体需要は、前年度比3.3%減の1,550万台となった。ロシアを除く欧州市場の当社グループの販売台数(小売り)は前年度比11.9%減の28万9千台となり、市場占有率は前年度比0.2ポイント減の2.1%となった。また、ロシア市場における当社グループの販売台数(小売り)は、前年度比20.1%減の5万1千台となった。欧州地域におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は、1兆1,072億円と前連結会計年度に比べ121億円(1.1%)の増収となった。営業損失は284億円となり、前連結会計年度に比べ23億円の改善となった。主な改善要因は、好調な新型「キャシュカイ」の投入及び徹底した販売奨励金と価格管理による台当たり正味売上高の増加である。
d.アジア
中国を除くアジア市場の販売台数は、前年度比0.8%減の14万5千台となり、アジア地域におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は、1兆2,798億円と前連結会計年度に比べ1,231億円(10.7%)の増収となった。営業利益は944億円となり、前連結会計年度に比べ712億円(307.4%)の増益となった。
中国市場の全体需要は、前年度比5.0%増の2,461万台となった。「シルフィ」や「アルティマ」等の販売が堅調に推移したものの、半導体の供給不足等があり、当社グループの販売台数(小売り)は前年度比5.2%減の138万1千台となり、市場占有率は前年度比0.6ポイント減の5.6%となった。なお、合弁会社である東風汽車有限公司の業績は、持分法による投資損益として営業外損益に計上している。
e.その他
大洋州、中近東、南アフリカ、メキシコを除く中南米等における当社グループの販売台数(小売り)は、前年度比8.5%増の39万8千台となった。中南米市場の販売台数(小売り)は前年比19.7%増の16万9千台、中東市場の販売台数(小売り)は前年比0.9%減の11万6千台、南アフリカ等のアフリカ市場の販売台数(小売り)は、前年比10.0%増の6万8千台となった。大洋州、中近東、南アフリカ、メキシコを除く中南米等におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は、8,666億円と前連結会計年度に比べ2,427億円(38.9%)の増収となった。営業利益は557億円となり、前連結会計年度に比べ542億円の増益となった。
(資本の財源及び資金の流動性についての分析)
a.キャッシュ・フローの状況
営業活動
営業活動による収入は8,472億円となり、前連結会計年度の1兆3,228億円の収入に比べて4,756億円減少した。これは、収益性は改善したものの、主として半導体の供給不足による運転資本の悪化、販売金融のポートフォリオの減少幅の縮小によるものである。
投資活動
投資活動による支出は1,468億円となり、前連結会計年度の3,691億円の支出に比べて2,223億円減少した。これは主として、ダイムラーAG株式の売却による収入の増加による。
財務活動
財務活動による支出は1兆926億円となり、前連結会計年度の6,397億円の支出に比べて4,529億円増加した。これは主として、新規資金調達の減少によるものである。
なお、当連結会計年度末における自動車事業の手元資金は有利子負債額を上回り、7,280億円のキャッシュ・ポジションとなり、当連結会計年度における自動車事業のフリーキャッシュフローは2,947億円のマイナスとなった。
セグメント別の内訳は以下のとおりである。
前連結会計年度(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)
(百万円)
当連結会計年度(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)
(百万円)
対前年度増減
(百万円)
b.財務政策
当社グループは、グループ会社の財務活動を財務・経理部門にて一括して管理している。またグローバル・キャッシュ・マネジメントにより資金効率を最大限に高める活動を行っている。
当社グループは、研究開発活動、設備投資及び金融事業に投資するために、適切な資金確保を行い、最適な流動性を保持し、健全なバランスシートを維持することを財務方針としている。
研究開発費及び設備投資については、売上高に対し概ね一定の割合となるよう管理している。今後、経営資源はコアマーケット、コアモデル、コアテクノロジーに集中して投入する計画である。金融資産は資産の質を重要視し、投資を行っている。株主への配当については、収益、キャッシュ・フロー等の状況を総合的に勘案し決定している。
2022年3月末で自動車事業の手元資金は1兆7,010億円、販売金融事業も合わせた会社全体での未使用のコミットメントラインが約1兆9,103億円である。また、通常の資金調達に加えて、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う資金需要に対応するため、当社及び当社グループは、2020年4月以降複数の金融機関や資本市場から、ドル建て及びユーロ建て普通社債を含む総額2兆3,851億円の資金調達を実行したが、このうち7,044億円は当有価証券報告書提出日現在において返済している。世界的な半導体供給のひっ迫や新型コロナウイルス感染症の影響等を勘案すると、資金の流動性には注視が必要であるが、当社グループは、現金及び現金同等物に加え、世界の主要銀行とコミットメントライン契約を締結しており、必要とされる十分な流動性を確保していると考えている。
当社グループによる無担保資金調達に係わるコスト及びその発行の可否は、一般に当社グループに関する信用格付けによっている。現在、当社グループの信用格付けは投資適格のレベルとなっているが、これらの格付けは当社グループの債券の売買・保有を推奨するものではない。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概況は次のとおりである。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用している。詳細については、第5[経理の状況]1連結財務諸表等の注記事項(会計方針の変更)に記載している。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度のグローバル全体需要は前年度比1.8%増の7,836万台となった。一方、当社グループのグローバル販売台数(小売り)は前年度比4.3%減の387万6千台となった。売上高は8兆4,246億円と前連結会計年度に比べ5,620億円(7.1%)の増収となり、営業利益は2,473億円と前連結会計年度に比べ3,980億円の改善となった。
営業外損益は588億円の利益となり、前連結会計年度に比べ1,293億円の改善となった。その結果、経常利益は3,061億円となり、前連結会計年度に比べ5,273億円の改善となった。特別損益は781億円の利益となり、前連結会計年度に比べ1,962億円改善した。税金等調整前当期純利益は3,842億円と前連結会計年度に比べ7,235億円改善した。親会社株主に帰属する当期純利益は2,155億円となり、前連結会計年度に比べ6,642億円改善した。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローは、営業活動により8,472億円増加、投資活動により1,468億円減少、財務活動により1兆926億円減少した。また、現金及び現金同等物に係る換算差額により1,450億円増加し、連結範囲の変更に伴い59億円増加した結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末残高に対し2,413億円(11.9%)減少の1兆7,927億円となった。
③ 生産、受注及び販売の状況
a.生産実績
会社所在地 | 生産台数(台) | 増減 | 前年同期比 | |
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | (台) | (%) | |
日 本 | 517,044 | 445,836 | △71,208 | △13.8 |
米 国 | 429,157 | 455,871 | 26,714 | 6.2 |
メキシコ | 498,079 | 454,620 | △43,459 | △8.7 |
英 国 | 246,050 | 181,618 | △64,432 | △26.2 |
スペイン | 13,875 | 18,673 | 4,798 | 34.6 |
ロシア | 35,278 | 43,872 | 8,594 | 24.4 |
タ イ | 114,108 | 103,717 | △10,391 | △9.1 |
フィリピン | 3,262 | ― | △3,262 | ― |
インド | 144,489 | 184,686 | 40,197 | 27.8 |
南アフリカ | 18,376 | 22,032 | 3,656 | 19.9 |
ブラジル | 44,672 | 40,973 | △3,699 | △8.3 |
アルゼンチン | 13,465 | 22,258 | 8,793 | 65.3 |
エジプト | 14,569 | 19,963 | 5,394 | 37.0 |
合計 | 2,092,424 | 1,994,119 | △98,305 | △4.7 |
(注) 台数集約期間は2021年4月から2022年3月までである。
b.受注状況
当社グループの受注生産は僅少なので受注状況の記載を省略する。
c.販売実績
仕向地 | 販売台数(連結売上台数:台) | 増減 | 前年同期比 | ||
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | (台) | (%) | ||
日 本 | 461,809 | 417,776 | △44,033 | △9.5 | |
北 米 | 1,126,121 | 970,301 | △155,820 | △13.8 | |
内、米国 | 852,932 | 737,865 | △115,067 | △13.5 | |
欧 州 | 350,059 | 293,286 | △56,773 | △16.2 | |
アジア | 205,594 | 222,643 | 17,049 | 8.3 | |
その他 | 327,761 | 389,569 | 61,808 | 18.9 | |
合計 | 2,471,344 | 2,293,575 | △177,769 | △7.2 |
(注) 台数集約期間は、アジアに含まれる中国、台湾は2021年1月から2021年12月まで、日本、北米、欧州、その他、並びに中国、台湾を除くアジアは2021年4月から2022年3月までである。
(2) 経営者の視点による経営成績の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであり、原則として連結財務諸表に基づいて分析したものである。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2022年6月30日)現在において当社グループが判断したものである。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成している。この連結財務諸表の作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とする。経営者は、これらの見積りについて過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断しているが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合がある。
連結財務諸表を作成するにあたって、重要な見積りは以下のとおりである。なお、「会計上の見積りの開示に関する会計基準」の適用に伴い、翌連結会計年度に重要な影響を及ぼす可能性のある一部の項目については、第5[経理の状況]の1連結財務諸表等の(重要な会計上の見積り)に記載している。
a.製品保証引当金
当社グループは、製品のアフターサービスに対する費用の支出に備えるため、保証書の約款に従い、類似の費用特性を有する製品グループごとに保証経過期間における発生費用総額に対して、過去実績に基づく保証期間内の費用発生パターンを見積もり、引当金を算定している。当社グループは、製品の安全を最優先課題として、研究開発・製造から販売サービスまで最善の努力を傾けているが、実際の製品の不具合等により発生した保証費用の発生パターンの実績が見積りと乖離した場合、引当金の追加計上が必要となる可能性がある。
b.退職給付費用
当社グループの従業員の退職給付に備えるための退職給付費用及び債務は、割引率、退職率及び死亡率などの年金数理計算上の基礎率及び年金資産の長期期待運用収益率に基づき算出されている。ただし、国際財務報告基準(IFRS)を適用している在外関係会社においては、年金資産の期待運用収益率ではなく、利息純額として年金数理計算上の割引率と同じ指標が用いられている。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来期間において認識される費用及び債務に影響を与える可能性がある。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度における経営成績及び財政状態の状況に関する認識及び分析・検討結果は、次のとおりである。
(業績)
a.売上高
連結売上高は前連結会計年度に対し5,620億円(7.1%)増加し、8兆4,246億円となった。主な増収要因は、販売台数の減少はあったものの、販売の質の向上や為替変動によるものである。
b.営業利益
連結営業利益は2,473億円となり、売上高営業利益率は2.9%となった。前連結会計年度の1,507億円の損失に対し3,980億円の改善となった。主な改善要因は、原材料価格の高騰があったものの、販売の質の向上、徹底した費用管理及び為替変動により改善したことによるものである。
c.営業外損益
連結営業外損益は588億円の利益となり、前連結会計年度の705億円の損失に対し、1,293億円の改善となった。これは主に、持分法による投資利益の改善によるものである。
d.特別損益
連結特別損益は781億円の利益となり、前連結会計年度の1,181億円の損失に対し、1,962億円改善した。これは主に、第1四半期連結会計期間において、当社が保有するダイムラーAG株式の売却による投資有価証券売却益761億円を計上したことによるものである。
e.法人税等
法人税等は1,454億円となり、528億円(57.1%)の増加となった。
f.親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は2,155億円となり、前連結会計年度に比べ6,642億円改善した。
(事業セグメント)
a.自動車事業
当社グループの全世界における自動車販売台数(小売り)は、387万6千台と前連結会計年度に比べ17万6千台(4.3%)の減少となった。これは主に、半導体の供給不足等によるものである。日本国内では前年度比10.3%減の42万8千台、中国では前年度比5.2%減の138万1千台となった。メキシコとカナダを含む北米では前年度比2.4%減の118万3千台、欧州では前年度比13.3%減の34万台、その他地域は前年度比5.9%増の54万3千台となった。
自動車事業の売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は、7兆4,757億円と前連結会計年度に比べ4,866億円(7.0%)の増収となった。
営業損失は、1,550億円と前連結会計年度に比べ2,820億円の改善となった。これは主に、原材料価格の高騰があったものの、継続的に取り組んでいる販売の質の向上による収益力の強化に加え、半導体の供給不足による需給バランスの寄与や為替変動により改善したことによるものである。
b.販売金融事業
販売金融事業の売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は、1兆317億円と前連結会計年度に比べ117億円(1.1%)の増収となった。営業利益は3,748億円と前連結会計年度に比べ1,069億円(39.9%)の増益となった。これは主に、クレジットロスに係る引当金の戻入れ、中古車価格の上昇及びポートフォリオの質の向上による米国の販売金融会社の増益によるものである。
(地域セグメント)
a.日本
日本国内市場の全体需要は、前年度比9.5%減の422万台となった。当社グループの販売台数(小売り)は、半導体の供給不足のほか「ルークス」の出荷停止などが影響し、前年比10.3%減の42万8千台に縮小し、市場占有率は前年度比0.1ポイント減の10.2%へと縮小した。この結果、日本地域におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は、3兆1,221億円と前連結会計年度に比べ859億円(2.7%)の減収となった。営業損失は2,298億円となり、前連結会計年度に比べ267億円の悪化となった。主な悪化要因は、原材料価格の高騰及び販売台数(輸出含む)の減少である。
b.北米
メキシコとカナダを含む北米市場の全体需要は、前年度比2.4%減の1,707万台となった。当社グループの販売台数(小売り)は前年度比2.4%減の118万3千台となり、北米地域におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は、4兆3,452億円と前連結会計年度に比べ3,700億円(9.3%)の増収となった。営業利益は3,307億円となり、前連結会計年度に比べ2,844億円(613.7%)の増益となった。主な増益要因は、原材料価格の高騰及び販売台数の減少はあったものの、魅力的な商品ラインナップの刷新等によるブランド力の向上及び徹底した販売奨励金管理による台当たり正味売上高の増加、並びに販売金融事業における増益である。
米国市場の全体需要は、前年度比3.4%減の1,447万台となった。新型「ローグ」や新型「フロンティア」等の販売が堅調に推移したものの、半導体の供給不足等があり、当社グループの販売台数(小売り)は前年度比3.7%減の89万3千台となり、市場占有率は前年同水準の6.2%となった。
c.欧州
欧州市場の全体需要は、前年度比3.3%減の1,550万台となった。ロシアを除く欧州市場の当社グループの販売台数(小売り)は前年度比11.9%減の28万9千台となり、市場占有率は前年度比0.2ポイント減の2.1%となった。また、ロシア市場における当社グループの販売台数(小売り)は、前年度比20.1%減の5万1千台となった。欧州地域におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は、1兆1,072億円と前連結会計年度に比べ121億円(1.1%)の増収となった。営業損失は284億円となり、前連結会計年度に比べ23億円の改善となった。主な改善要因は、好調な新型「キャシュカイ」の投入及び徹底した販売奨励金と価格管理による台当たり正味売上高の増加である。
d.アジア
中国を除くアジア市場の販売台数は、前年度比0.8%減の14万5千台となり、アジア地域におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は、1兆2,798億円と前連結会計年度に比べ1,231億円(10.7%)の増収となった。営業利益は944億円となり、前連結会計年度に比べ712億円(307.4%)の増益となった。
中国市場の全体需要は、前年度比5.0%増の2,461万台となった。「シルフィ」や「アルティマ」等の販売が堅調に推移したものの、半導体の供給不足等があり、当社グループの販売台数(小売り)は前年度比5.2%減の138万1千台となり、市場占有率は前年度比0.6ポイント減の5.6%となった。なお、合弁会社である東風汽車有限公司の業績は、持分法による投資損益として営業外損益に計上している。
e.その他
大洋州、中近東、南アフリカ、メキシコを除く中南米等における当社グループの販売台数(小売り)は、前年度比8.5%増の39万8千台となった。中南米市場の販売台数(小売り)は前年比19.7%増の16万9千台、中東市場の販売台数(小売り)は前年比0.9%減の11万6千台、南アフリカ等のアフリカ市場の販売台数(小売り)は、前年比10.0%増の6万8千台となった。大洋州、中近東、南アフリカ、メキシコを除く中南米等におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は、8,666億円と前連結会計年度に比べ2,427億円(38.9%)の増収となった。営業利益は557億円となり、前連結会計年度に比べ542億円の増益となった。
(資本の財源及び資金の流動性についての分析)
a.キャッシュ・フローの状況
営業活動
営業活動による収入は8,472億円となり、前連結会計年度の1兆3,228億円の収入に比べて4,756億円減少した。これは、収益性は改善したものの、主として半導体の供給不足による運転資本の悪化、販売金融のポートフォリオの減少幅の縮小によるものである。
投資活動
投資活動による支出は1,468億円となり、前連結会計年度の3,691億円の支出に比べて2,223億円減少した。これは主として、ダイムラーAG株式の売却による収入の増加による。
財務活動
財務活動による支出は1兆926億円となり、前連結会計年度の6,397億円の支出に比べて4,529億円増加した。これは主として、新規資金調達の減少によるものである。
なお、当連結会計年度末における自動車事業の手元資金は有利子負債額を上回り、7,280億円のキャッシュ・ポジションとなり、当連結会計年度における自動車事業のフリーキャッシュフローは2,947億円のマイナスとなった。
セグメント別の内訳は以下のとおりである。
前連結会計年度(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)
(百万円)
自動車事業及び消去 | 販売金融事業 | 連結計 | |
営業活動によるキャッシュ・フロー | △76,490 | 1,399,279 | 1,322,789 |
投資活動によるキャッシュ・フロー | △314,530 | △54,591 | △369,121 |
小計:フリーキャッシュフロー | △391,020 | 1,344,688 | 953,668 |
財務活動によるキャッシュ・フロー | 733,152 | △1,372,844 | △639,692 |
当連結会計年度(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)
(百万円)
自動車事業及び消去 | 販売金融事業 | 連結計 | |
営業活動によるキャッシュ・フロー | △182,183 | 1,029,370 | 847,187 |
投資活動によるキャッシュ・フロー | △112,560 | △34,275 | △146,835 |
小計:フリーキャッシュフロー | △294,743 | 995,095 | 700,352 |
財務活動によるキャッシュ・フロー | △40,069 | △1,052,576 | △1,092,645 |
対前年度増減
(百万円)
自動車事業及び消去 | 販売金融事業 | 連結計 | |
営業活動によるキャッシュ・フロー | △105,693 | △369,909 | △475,602 |
投資活動によるキャッシュ・フロー | 201,970 | 20,316 | 222,286 |
小計:フリーキャッシュフロー | 96,277 | △349,593 | △253,316 |
財務活動によるキャッシュ・フロー | △773,221 | 320,268 | △452,953 |
b.財務政策
当社グループは、グループ会社の財務活動を財務・経理部門にて一括して管理している。またグローバル・キャッシュ・マネジメントにより資金効率を最大限に高める活動を行っている。
当社グループは、研究開発活動、設備投資及び金融事業に投資するために、適切な資金確保を行い、最適な流動性を保持し、健全なバランスシートを維持することを財務方針としている。
研究開発費及び設備投資については、売上高に対し概ね一定の割合となるよう管理している。今後、経営資源はコアマーケット、コアモデル、コアテクノロジーに集中して投入する計画である。金融資産は資産の質を重要視し、投資を行っている。株主への配当については、収益、キャッシュ・フロー等の状況を総合的に勘案し決定している。
2022年3月末で自動車事業の手元資金は1兆7,010億円、販売金融事業も合わせた会社全体での未使用のコミットメントラインが約1兆9,103億円である。また、通常の資金調達に加えて、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う資金需要に対応するため、当社及び当社グループは、2020年4月以降複数の金融機関や資本市場から、ドル建て及びユーロ建て普通社債を含む総額2兆3,851億円の資金調達を実行したが、このうち7,044億円は当有価証券報告書提出日現在において返済している。世界的な半導体供給のひっ迫や新型コロナウイルス感染症の影響等を勘案すると、資金の流動性には注視が必要であるが、当社グループは、現金及び現金同等物に加え、世界の主要銀行とコミットメントライン契約を締結しており、必要とされる十分な流動性を確保していると考えている。
当社グループによる無担保資金調達に係わるコスト及びその発行の可否は、一般に当社グループに関する信用格付けによっている。現在、当社グループの信用格付けは投資適格のレベルとなっているが、これらの格付けは当社グループの債券の売買・保有を推奨するものではない。