有価証券報告書-第99期(2022/04/01-2023/03/31)

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2023/06/23 15:51
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(1)経営成績等の状況の概要
① 当連結会計年度における経済環境及びオペレーティング・セグメント別の事業の状況
経済環境
世界経済は、ロシア・ウクライナ情勢の先行き不透明感が続くなか、世界的な物価上昇や中国で長期間続いた新型コロナウイルス感染症に対する厳格な防疫措置に伴い、景気の減速感が強まりました。先進国では、日本は内需主導の景気回復が続いた一方、前年度まで比較的堅調に拡大してきた米国の内需は減速し、欧州も景気停滞が鮮明となりました。新興国では、中国のほか、欧米等による制裁が強化されたロシアを中心に景気が大きく減速しました。
一次産品価格は、エネルギーと食料を中心に多くの商品が高値圏で推移しました。原油価格は6月頃まで上昇を続け、その後は世界経済の減速懸念に伴う需要鈍化が意識されて下落しました。中国が世界最大の輸入国である銅や鉄鉱石の価格は、同国の景気減速懸念を受けて軟調に推移した後、11月から上昇基調となりました。
世界の多くの中央銀行が高インフレに対処すべく金融引締めの動きを進めるなか、欧米の債券市場では金利上昇が顕著となりましたが、11月以降は上昇に一服感も見られました。また、為替市場では世界的なドル高が急速に進んだ後、米金利の上昇一服に伴いドル安方向に転換しました。
オペレーティング・セグメント別の事業の状況
当連結会計年度におけるオペレーティング・セグメント別の事業の状況は、以下のとおりであります。
・ライフスタイル
タイヤ・ゴム資材事業では、タイ・インドネシアを中心としたタイヤ小売店舗の拡大に加え、エアレスタイヤを開発するガリレオ社に出資する等、新たな取組みを開始しています。消費者直販事業では、子ども靴を展開する当社グループブランド「イフミー」より、“子どもたちの素肌を健やかに育む”をコンセプトとした幼児向けスキンケア用品の販売を開始しました。フェムテック事業では、働く女性の健康課題を改善し、誰もが働きやすい社会の実現を目指すべくLIFEMの設立に参画、環境配慮型事業では、繊維リサイクル技術を有するサーク社とグローバルな循環型サプライチェーンの構築に向けて取組む等、社会課題の解決にも注力しています。
・情報・物流
世界的にDX化が加速するなか、総合商社のIT・物流ビジネスで培ったデジタル領域のノウハウ・知見を活かし、顧客や社会の課題解決に資するソリューションを提供しています。システムソリューション分野では、従来からの取組領域に加え、顧客のDXへの取組みを支援するDXコンサルティング事業を推進したほか、企業のサステナビリティ向上を支援するコンサルティングサービスの提供を開始しました。また、クラウドシフトの進展でニーズが高まるクラウド事業を国内外で強化・拡大しました。物流分野では、国内ペットフード業界の共同配送事業が順調に伸長したほか、出版界にAIやIoTを活用したソリューションを提供するPubteXにおいて出版流通改革事業を推進しました。
・食料第一
多様化する食のニーズに応えるべく、スペシャリティ商品のマーケティングと生産製造機能の強化に注力しています。菓子分野では、高度な工場管理水準・製造技術を有する明治産業株式会社の全株式及び関連する商標権を取得しました。本株式取得に伴い新会社名をアトリオン製菓とし、多様化するマーケットニーズに応え、更なる成長を図ります。また、ノルウェーのプロキシマーシーフード社が静岡県小山町で生産する陸上養殖サーモンにつき、初出荷(2024年予定)以降10年間の独占販売契約を締結しました。サステナブルコーヒーや植物タンパクをはじめとした「持続可能な開発目標(SDGs)」達成に貢献するビジネスも引き続き推進し、環境配慮型食料ビジネスを拡大していきます。
・食料第二
食の中心となる穀物、搾油原料、動物性タンパク質及び家畜の肥育に必要な飼料の安定供給を通じて、持続可能な農業・飼料製造販売業・畜産業への貢献及びこれらへのトータルソリューション提供に取り組んでいます。穀物分野では、穀物集荷・輸出事業に最新のデジタルプラットフォームを活用することで、生産地から消費地まで一貫したサプライチェーンの管理や効率化の実現を目指します。また、環境負荷に配慮した飼料開発等の取組みにより、新たな価値の創出を目指していきます。畜産分野では、高品質なプレミアム牛肉処理加工販売を行うCreekstone Holdingを中心として、食に不可欠な動物性タンパク質の安定供給と事業基盤の拡大に努めていきます。
・アグリ事業
アグリインプット事業では、ITを駆使した精密農業による顧客向けソリューション能力のさらなる向上と、Helena Agri-Enterprisesをはじめとしたグループ会社にて蓄積してきたノウハウの活用を通じ、米国・ブラジル・欧州・アジアにおける農業の発展に貢献すべく更なるリテール事業拡大を目指しています。また、2021年度にGavilon Agriculture Investmentから分社したMacroSourceは、北米を中心に南米・アフリカその他の地域にわたり肥料ホールセール事業を運営しており、当社グループの肥料供給能力の強化を図っています。一方、環境負荷に配慮した農業資材を取り扱う等、アグリインプット事業を通じて環境保全型農業の発展に寄与する取組みも推進していきます。
・フォレストプロダクツ
インドネシアにおける植林・パルプ製造販売事業は、順調なオペレーションによって競争力を強化、国内の板紙製造販売事業は、原燃料コストの高止まりを受けて、収益改善に向けた施策を進めています。また、木質資源活用の一環として、ペレットの自社ソース開発等バイオマス燃料の取組みやセルロースナノファイバー等新素材分野への展開も進めています。ベトナム段ボール原紙製造工場は、同国内市場の成長は鈍化したものの、着実に販売数量が拡大しています。衛生紙分野では、消費大国ブラジルにてSanther - Fabrica de Papel Santa Therezinhaを通じ衛生紙の製造販売事業を行っており、プレミアム商品の販売推進及び販売チャネルの拡充によって、消費者の安心・快適な生活の実現に寄与していきます。
・化学品
業界トップクラスのシェアを持つ石油化学品トレードでの需給調整機能の高度化、蓄電池・ディスプレイ・太陽光発電機器に代表されるエレクトロニクス等のスペシャリティ分野でのソリューション提供型ビジネスの深化、食品機能材・飼料添加剤等のライフサイエンス分野のビジネス拡大を国内外で推し進めています。これらに加え、AIを活用した画像診断をはじめとするデジタルヘルス分野での事業を拡大するとともに、環境に配慮した素材、バイオ燃料を使用した化学品運搬船の運航をはじめとしたサステナブルな社会に向けた新しい顧客ニーズへの対応等、これまでの化学品の枠を超えた新しい商品や仕組み作りにも取り組んでいます。
・金属
チリ・センチネラ等の銅鉱山、豪州・ロイヒル鉄鉱山、ジェリンバイースト等の原料炭炭鉱等の中核鉱山権益において、生産の最適化や厳格なコスト管理、再生可能エネルギーの利用、先進技術の導入による操業の安定性や収益力の向上とグリーン化を推進し、既存事業の拡張や新規鉱区の開発にも取り組んでいます。また、EV(*)用廃電池リサイクル等の環境・循環型ビジネスにも積極的に取り組み、2023年1月に米国サーバ社への出資を実現しました。カナダでの100%水力発電由来電力を利用したアルミニウム生産事業及びグリーンな素材の供給等を通じ、責任ある生産に取り組み脱炭素社会の実現に貢献していきます。
(*) Electric Vehicle(電気自動車)
・エネルギー
相対的に低炭素でエネルギー転換期においてその重要性を増す天然ガス・LNG事業分野において、赤道ギニアでのLNGプロジェクト等の既存案件の安定操業や資産価値向上に資する取組みを着実に進めています。また、当社が強みを持つ石油、天然ガス・LNG、ウラン等でのトレード&マーケティング分野においても、着実に収益拡大に向けた取組みを推進しています。エネルギーや原料の安定供給への貢献と、バイオ燃料取引の拡充や環境価値取引の強化等の脱炭素化への取組みを両立しながら、様々な事業分野で社会や顧客の課題・ニーズを捉え、当社独自の機能を発揮しながら事業基盤の強化・発展に注力しています。
・電力
発電事業分野では、秋田県秋田港及び能代港における洋上風力発電事業の商業運転開始、カタールにおけるアル・カルサ太陽光発電所の電力供給開始、インドネシアにおけるチレボン1石炭火力発電所の事業期間短縮に向けた覚書締結等、脱炭素社会の実現に向けた取組みを強化しています。電力サービス事業分野では、英国・日本における再エネアグリゲーション事業(*)の拡充、送電線の監視・解析技術を提供する米国ラインビジョン社への出資、奄美大島における蓄電池併設型屋根置き太陽光発電の長期売電事業の実証等、電力産業における社会・環境課題の解決と持続可能な成長に寄与する取組みを推進しています。
(*) 再エネ電源を取り集め供給する事業
・インフラプロジェクト
社会インフラ分野では、川崎市が公募した等々力緑地再編整備・運営等事業に参画し、国内PFI(*)市場に進出しました。水分野では、チリ国営銅公社コデルコが保有する銅鉱山向け造水・送水事業案件において、ファイナンス・クローズを達成しました。交通インフラ分野では、豪州における路面電車システムの延伸に関わる官民連携事業に参画し、建設を進めています。循環型エコノミー分野では、英国で穀物・農業残渣等を原料とするバイオメタン製造・販売事業に進出しました。インフラファンド分野では、優良資産を積み上げるとともに、投資先のアセットマネジメントを着実に行っています。
(*) Private Finance Initiative(民間資金・ノウハウを活用した公共事業推進)
・航空・船舶
航空分野では、旅客需要の回復を見込み、航空機・エンジンの部品トレードや空港グランドハンドリング等、既存事業の基盤強化に注力しました。また、成田空港でのラウンジ事業や中部国際空港での貨物上屋事業を開始、大阪・関西万博において空飛ぶクルマの運航事業者に選定される等、新規事業分野への取組みも着々と進めました。船舶分野では、保有船事業が昨年度に続き堅調に推移しました。また、スペインのバウンド・フォー・ブルー社と共同で風力推進装置搭載プロジェクトを開始したほか、自律運航船や船員向け給与支給を電子通貨で行うことを可能にする電子通貨プラットフォームサービス事業等の新機軸ビジネスの創出・拡充にも積極的に取り組んでいます。
・金融・リース・不動産
自動車販売金融事業では、北米での提携先拡大等により業容が拡張しました。自動車フリートマネジメント事業では、将来的なEV普及も見据えた新規事業開発について、北米の有力企業と戦略的提携を行いました。次世代金融事業では、ブロックチェーン技術を用いて現物不動産を「電子記録移転権利」化して売買可能となるSTO(*)事業へ参画しました。国内中堅・中小企業を投資対象としたファンド運営事業では、アイ・シグマ事業支援ファンド4号を設立しました。不動産分野では、東京都でグランスイート世田谷仙川(分譲マンション)を販売、インドのプネ市での住宅開発・分譲事業へ参画しました。
(*) Security Token Offering(セキュリティー・トークン・オファリング)
・建機・産機・モビリティ
建設機械分野では、代理店事業の収益基盤強化・拡大に加え、デジタル技術を用いた情報化施工サービス等、機器販売に留まらない新たなサービス提供に取り組んでいます。産業システム・モビリティ分野では、米国における自動車アフターマーケット事業及び英国における自動車ディーラー事業の拡大に取り組むとともに、商用EVメーカーのフォロフライ株式会社との資本業務提携を通じた商用EV関連ビジネスへの参入や、モビリティ関連ビジネスの新規創出としてのオンデマンド交通・ラストマイル配送サービスの提供等、多角的な取組みを行っています。産業機械分野では、従来の産業機械・工作機械の販売のみならず、電子部品等の新たな取扱商品・機能・顧客基盤の拡充を進めています。
・次世代事業開発
2030年に向けて飛躍的な成長が見込める分野において、事業開発や事業投資を推進しています。スマートシティ・インフラ、新技術、医薬品、医療サービス、ウェルネス・ビューティー、教育、メタバース等の領域において世界の革新的なビジネスモデルを取り込むとともに、次世代消費者(Gen Z、ミレニアルズ)に嗜好されるプロダクトやサービスの開発にも注力しています。世の中の健康志向やウェルネスへの意識の高まりを背景に、中東での医薬品販売事業者Lunatus Marketing & Consultingに出資参画したほか、マレーシアにドラッグ&コスメティックストア「アインズ&トルぺ」を展開しています。また、東南アジアでのスマートシティ、次世代型工業団地開発等も積極的に推進しています。
・次世代コーポレートディベロップメント
コーポレートディベロップメント事業では、成長ポテンシャルの高い次世代消費者向けビジネスの取込みを目的とした投資活動を推進しています。シンガポールに設立した拠点を中心に活動を開始し、初号案件としてカナダ発大手コーヒーチェーンであるティムホートンズ社のフランチャイズ権を獲得、シンガポール、マレーシア、インドネシアで事業展開を進めていきます。今後は米国にも拠点を設立し、アジアと米国から次世代消費者向けビジネスの事業機会獲得に取り組みます。スタートアップ投資では、コーポレートベンチャーキャピタルをとおして、世界の革新的なビジネスモデルの取込みを推進しています。
② 当連結会計年度の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況
「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討」に記載のとおりであります。
③ 仕入、成約及び販売の実績
(a)仕入の実績
仕入と販売との差異は僅少であるため、仕入高の記載は省略しております。
(b)成約の実績
成約と販売との差異は僅少であるため、成約高の記載は省略しております。
(c)販売の実績
「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討」及び「第5 経理の状況」における「1 連結財務諸表等 連結財務諸表に対する注記4 セグメント情報」に記載のとおりであります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 当連結会計年度の経営成績の分析
(単位:百万円)
前連結会計年度当連結会計年度増減
収益8,508,5919,190,472681,881
売上総利益895,3311,051,295155,964
営業利益284,490340,81456,324
持分法による投資損益236,555286,76750,212
親会社の所有者に帰属する
当期利益
424,320543,001118,681

(注)「営業利益」は、投資家の便宜を考慮し、日本の会計慣行に従った自主的な表示であり、IFRSで求められている表示ではありません。「営業利益」は、連結包括利益計算書における「売上総利益」、「販売費及び一般管理費」及び「貸倒引当金繰入額」の合計額として表示しております。
収益は前連結会計年度比(以下「前年度比」という。)6,819億円(8.0%)増収の9兆1,905億円となりました。オペレーティング・セグメント別には主に、食料第二でGavilon穀物事業の売却に伴い減収となったものの、アグリ事業、エネルギー、食料第一で増収となりました。
売上総利益は前年度比1,560億円(17.4%)増益の1兆513億円となりました。オペレーティング・セグメント別の主な増減は以下のとおりであります。
電力705億円増益海外電力卸売・小売事業の増益及び台湾発電所EPC(建設請負)案件における工事遅延等に伴う追加コスト引当の前年度比減少
エネルギー298億円増益石油・LNGトレーディングにおける増益
食料第二317億円減益Gavilon穀物事業の売却に伴う連結除外による減益

営業利益は前年度比563億円(19.8%)増益の3,408億円となりました。
持分法による投資損益は前年度比502億円(21.2%)増益の2,868億円となりました。オペレーティング・セグメント別の主な増減は以下のとおりであります。
金融・リース・不動産257億円増益米国航空機リース事業の業績改善及び米国中古車販売金融事業の増益
電力252億円増益前年度に計上した電力IPP事業における一過性損失及びガス火力関連事業投資の減損損失の反動等
フォレストプロダクツ120億円減益国内洋紙製造・販売事業投資の減損損失等

上記に加えて、Gavilon穀物事業の売却が2022年10月3日に完了したことにより、当連結会計年度において売却益539億円を認識しております。なお、本株式譲渡に係る連結財務諸表への影響については、「第5 経理の状況」における「1 連結財務諸表等 連結財務諸表に対する注記28 Gavilon Agriculture Investmentの再編及び株式譲渡について」に記載のとおりであります。
以上の結果、親会社の所有者に帰属する当期利益は前年度比1,187億円(28.0%)増益の5,430億円となりました。
当連結会計年度のオペレーティング・セグメント別の業績(親会社の所有者に帰属する当期利益)は以下のとおりであります。
(単位:百万円)
前連結会計年度当連結会計年度増減
ライフスタイル5,4544,466△988
情報・物流9,1509,541391
食料第一14,50911,553△2,956
食料第二46,43876,93430,496
アグリ事業59,80542,732△17,073
フォレストプロダクツ7,625△9,382△17,007
化学品17,20314,264△2,939
金属190,660199,3598,699
エネルギー37,71138,252541
電力△27,71640,25267,968
インフラプロジェクト7,3098,9771,668
航空・船舶26,64228,1981,556
金融・リース・不動産7,01943,77536,756
建機・産機・モビリティ22,54623,8461,300
次世代事業開発△1,548△2,809△1,261
次世代コーポレートディベロップメント865△1,979△2,844
その他64815,02214,374
全社合計424,320543,001118,681

(注)1. 当連結会計年度より、「情報・不動産」を「情報・物流」に、「金融・リース事業」を「金融・リース・不動産」に名称変更するとともに、「情報・不動産」の一部を「金融・リース・不動産」に、「アグリ事業」の一部を「食料第二」に、「電力」の一部を「建機・産機・モビリティ」に、「建機・産機・モビリティ」の一部を「ライフスタイル」に編入しております。また、「次世代コーポレートディベロップメント」を新設し、「次世代事業開発」の一部を「次世代コーポレートディベロップメント」に編入しております。これらに伴い、前連結会計年度のオペレーティング・セグメント情報を組み替えて表示しております。
2. セグメント間取引は、通常の市場価格により行われております。
3. 「その他」には、特定のオペレーティング・セグメントに配賦されない本部経費等の損益、セグメント間の内部取引消去等が含まれております。
ライフスタイル
親会社の所有者に帰属する当期利益(以下「当期利益」という。)は前年度比10億円減益の45億円となりました。これは、タイヤ・ゴム資材関連事業の増益があったものの、衣料品等の取引における貸倒費用及び衣料品等の企画・製造・販売事業に関連する一過性損失により減益となったものです。
情報・物流
当期利益は前年度比4億円増益の95億円となりました。
食料第一
当期利益は、前年度に計上した北米天然鮭鱒事業の売却益の反動等により、前年度比30億円減益の116億円となりました。
食料第二
当期利益は、肉牛処理加工・販売事業の減益があったものの、Gavilon穀物事業の売却益により、前年度比305億円増益の769億円となりました。
アグリ事業
当期利益は、旺盛な農業資材需要を背景としたHelena社の増益があったものの、肥料価格の下落に伴うMacroSource社の業績悪化により、前年度比171億円減益の427億円となりました。
フォレストプロダクツ
当期利益(損失)は前年度比170億円悪化の94億円の損失となりました。これは、パルプ市況の改善等に伴うムシパルプ事業の増益があったものの、ベトナム段ボール原紙製造・販売事業における需要低迷に伴う固定資産の減損損失及び国内洋紙製造・販売事業投資の減損損失等により悪化となったものです。
化学品
当期利益は、市況悪化に伴う石油化学品取引における減益及び飼料添加剤事業の業績悪化により、前年度比29億円減益の143億円となりました。
金属
当期利益は前年度比87億円増益の1,994億円となりました。これは、商品価格の下落に伴うチリ銅事業及び豪州鉄鉱石事業の減益があったものの、商品価格の上昇に伴う豪州原料炭事業の増益及び鉄鋼製品事業の増益により増益となったものです。
エネルギー
当期利益は前年度比5億円増益の383億円となりました。これは、受取配当金の減少及び金利収支の悪化があったものの、石油・LNGトレーディングにおける増益により増益となったものです。
電力
当期利益(損失)は、海外電力卸売・小売事業の増益及び台湾発電所EPC(建設請負)案件における工事遅延等に伴う追加コスト引当の前年度比減少等により、前年度比680億円改善の403億円の利益となりました。
インフラプロジェクト
当期利益は、FPSO(※)事業の増益等により、前年度比17億円増益の90億円となりました。
(※)Floating Production, Storage & Offloading system:浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備
航空・船舶
当期利益は、航空関連事業における需要回復に伴う増益により、前年度比16億円増益の282億円となりました。
金融・リース・不動産
当期利益は、米国航空機リース事業の業績改善及び米国中古車販売金融事業の増益により、前年度比368億円増益の438億円となりました。
建機・産機・モビリティ
当期利益は、前年度に計上した国内太陽光発電事業関連益の反動があったものの、建設機械事業の増益により、前年度比13億円増益の238億円となりました。
次世代事業開発
当期損失は前年度比13億円悪化の28億円となりました。
次世代コーポレートディベロップメント
当期利益(損失)は、ファンド投資の評価損益の減少等により、前年度比28億円悪化の20億円の損失となりました。
② 当連結会計年度のキャッシュ・フロー及び財政状態の状況の分析、並びに資本の財源及び資金の流動性
(a)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における「現金及び現金同等物」の残高は、前連結会計年度末比(以下「前年度末比」という。)303億円(5.2%)増加の6,089億円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業収入及び配当収入並びに営業資金負担の改善等により、6,063億円の収入となりました。前年度比では2,944億円の収入の増加であります。
基礎営業キャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローから、営業資金の増減等を控除した「基礎営業キャッシュ・フロー」は、5,842億円となりました。その内訳は以下のとおりであります。
(収入:+、支出:△)
調整後営業利益
(売上総利益+販売費及び一般管理費)
+3,468億円
減価償却費等+1,565億円
利息の受取額及び支払額△320億円
配当金の受取額+1,950億円
法人所得税の支払額△821億円
基礎営業キャッシュ・フロー+5,842億円

(投資活動によるキャッシュ・フロー)
海外事業における資本的支出や持分法適用会社の株式取得等があったものの、Gavilon穀物事業の売却収入を主な要因として、1,568億円の収入となりました。前年度比では2,365億円の収入の増加であります。
回収
当連結会計年度における投資の回収等(*1)による収入は、4,045億円となりました。
(*1)投資活動によるキャッシュ・フローのうち、「有形固定資産の売却による収入」、「貸付金の回収による収入」、「子会社の売却による収入(処分した現金及び現金同等物控除後)」及び「持分法で会計処理される投資及びその他の投資等の売却による収入」の合計額
主な回収案件は以下のとおりであります。
・Gavilon穀物事業(約3,300億円)
・石油・ガス開発事業(米国 メキシコ湾)
・銅事業株主融資(チリ)
・政策保有株式
新規投資・CAPEX(資本的支出)
当連結会計年度における新規投資・CAPEX(資本的支出)等(*2)による支出は、2,477億円となりました。
(*2)投資活動によるキャッシュ・フローのうち、「有形固定資産の取得による支出」、「貸付による支出」、「子会社の取得による支出(取得した現金及び現金同等物控除後)」、「持分法で会計処理される投資及びその他の投資等の取得による支出」及び「定期預金の純増減額」の合計額
ビジネスモデル別の主な新規投資は以下のとおりであります。
セールス&マーケティング事業
・香辛料・調味料の製造・販売事業(オランダ Euroma)
・医薬品・医療機器販売事業(UAE Lunatus Marketing & Consulting)
・廃電池リサイクル事業(米国 Cirba)
・農業資材関連事業(米国 Helena Agri-Enterprises)
・農業資材関連事業(ブラジル Adubos Real)
・インスタントコーヒー製造・販売事業(ベトナム Iguacu Vietnam)
・肉牛の処理加工・販売事業(米国 Creekstone Farms Premium Beef)
・自動車販売事業(英国 Marubeni Auto Investment (UK))
安定収益型事業
・再生可能エネルギー等発電事業
・FPSO事業(ブラジル)
以上により、当連結会計年度のフリーキャッシュ・フローは、7,631億円の収入となりました。前年度比では5,309億円の収入の増加であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
社債及び借入金等の返済、配当金の支払及び自己株式の取得を行った結果、7,666億円の支出となりました。前年同期比では3,470億円の支出の増加であります。
(b)財政状態の状況
(単位:百万円)
前連結
会計年度末
当連結
会計年度末
増減
総資産8,255,5837,953,604△301,979
ネット有利子負債1,859,9611,483,085△376,876
親会社の所有者に帰属する持分合計2,242,1802,877,747635,567
ネットDEレシオ0.830.52△0.31ポイント

(注)1.ネット有利子負債は、社債及び借入金(流動・非流動)の合計額から現金及び現金同等物、定期預金を差し引いて算出しております。
2.当連結会計年度よりネットDEレシオの算出式における分母を「資本合計」から「親会社の所有者に帰属する持分合計」に変更しております。これに伴い、前連結会計年度末のネットDEレシオを変更後の算出式に基づき算出しております。
当連結会計年度末における総資産は、円安の影響等による増加があったものの、Gavilon穀物事業の売却による減少により、前年度末比3,020億円減少の7兆9,536億円となりました。ネット有利子負債は、円安の影響や支払配当等があったものの、フリーキャッシュ・フローでの収入により、前年度末比3,769億円減少の1兆4,831億円となりました。親会社の所有者に帰属する持分合計は、純利益の積上げによる利益剰余金の増加に加えて、円安による在外営業活動体の換算差額の増加及び米ドル金利上昇によるキャッシュ・フロー・ヘッジの評価差額の改善があったこともあり、前年度末比6,356億円増加の2兆8,777億円となりました。この結果、ネットDEレシオは0.52倍となりました。
(c)資本政策及び資本コストに関する考え方
当社は、中長期的な企業価値の向上を追求するため、稼ぐ力の継続強化、ROEの維持・向上、株主資本コストの低減を目指しております。新中期経営戦略「GC2024」では、ROIC、CROIC、RORAにより資本効率・リスクリターン効率を定期的にモニタリングすることで資産の優良化を図るとともに、事業指針SPPに則った戦略的資本配分により基礎営業キャッシュ・フローの最大化を目指し、ROEの維持・向上に取り組んでいきます。また、株主資本コストを十分に意識した経営を実施すべく、財務レバレッジの適正化のみならず、投資規律の徹底や投資の精度向上といった業績変動の改善に向けた取組みを行っています。加えて、コーポレート・ガバナンスや気候変動対策を含むサステナビリティへの取組み、人財戦略等、非財務面での施策も推進することで、中長期的な企業価値向上に向けた株主資本コストの低減に取り組んでいます。
当連結会計年度における資本配分の状況は以下のとおりであります。
当連結会計年度における基礎営業キャッシュ・フローは5,842億円の収入となり、子会社や持分法で会計処理される投資の売却等の投資活動による収入(Gavilon穀物事業売却に伴う回収資金を含む)と合わせた収入合計額は9,887億円となりました。一方で、新規投資・CAPEX等の投資活動による支出は2,477億円となり、更に親会社の株主に対する配当金と自己株式の取得資金を合わせた1,682億円を控除した株主還元後フリーキャッシュ・フロー(営業資金増減等を除く)(※)は、5,728億円の収入となっております。なお、Gavilon穀物事業売却に伴う回収資金に相当する約3,300億円については債務返済に充当しております。また、当社の資本配分方針、株主還元方針は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
(※)基礎営業キャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計額から、親会社の株主に対する配当金及び自己株式の取得資金を控除したもの。
(d)資金調達の方針及び手段
当社及び連結子会社の資金調達に関しては、資産構成に合わせた最適資金調達を基本方針としております。
銀行、生保等の国内金融機関を中心とした間接調達、及び社債(国内社債発行登録枠2,000億円を設定)、コマーシャル・ペーパーの発行を通じた直接調達をバランスよく組み合わせることにより、必要資金を確保するとともに、長年にわたり金融機関・市場関係者と培った関係性を活かしながら、安定的な資金調達と金融費用の削減を目指しております。
また、財務基盤の強化に資する調達として、当連結会計年度末において永久劣後特約付ローン1,500億円、ハイブリッド社債(劣後特約付)750億円、ハイブリッドローン(コミット型劣後特約付)250億円を有しております。
連結子会社を含む当社グループの資金管理については、原則として、当社及び国内外の金融子会社、海外現地法人等の調達拠点を通じて、資金余剰のあるグループ会社の余資を、他のグループ会社の資金需要に機動的に活用することで、グループ全体における効率的な調達体制を維持しております。
格付について、当社はムーディーズ・ジャパン株式会社(Moody's)、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン株式会社(S&P)、株式会社格付投資情報センター(R&I)、株式会社日本格付研究所(JCR)の4社から格付を取得しております。
当連結会計年度末現在の長期格付は、Moody'sがBaa2(見通し「ポジティブ」)、S&PがBBB+(見通し「安定的」)、R&IがA+(見通し「安定的」)、JCRがAA-(見通し「安定的」)となっております。
(e)流動性の状況
当社及び連結子会社では、基礎営業キャッシュ・フロー等の収入や手元流動性(現金及び現金同等物並びに定期預金の保有)の確保に加え、コミットメントラインの設定により、営業資金や新規投資・CAPEX(資本的支出)といった資金需要、並びに1年以内に返済予定の長期債務を含む短期債務に対する流動性を準備しております。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物並びに定期預金の残高は6,103億円となっております。
設定しているコミットメントラインは以下のとおりであります。
・大手邦銀を主としたシンジケート団による3,000億円(長期)
・欧米主要銀行を主としたシンジケート団による555百万米ドル(長期)
③ 重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、国際会計基準審議会によって公表されたIFRSに準拠して作成しており、連結財務諸表の作成にあたっては、報告期間の期末日における資産・負債の計上、偶発資産・偶発負債の開示及び期中の収益・費用の計上を行うため、必要に応じて会計上の見積り及び仮定を用いております。この会計上の見積り及び仮定は、その性質上不確実であり、実際の結果と異なる可能性があります。連結財務諸表に特に重要な影響を与える会計上の見積り及び仮定は以下のとおりであります。
有形固定資産及び無形資産の減損
当社及び連結子会社は、各報告期間の期末日に資産が減損している可能性を示す兆候の有無を判定しております。資産が減損している可能性を示す兆候の内容は、主に、事業環境の悪化に伴う収益性の低下、事業内容の見直し等によるものです。
有形固定資産及び耐用年数を確定できる無形資産については、資産が減損している可能性を示す兆候が存在する場合には、当該資産の回収可能価額の見積りを行っております。耐用年数を確定できない無形資産及びのれんについては、減損の兆候があるか否かを問わず、最低限年1回定期的に資産の帳簿価額が回収可能価額を超過しているか否かを確認しております。
資産の回収可能価額は資産又は資金生成単位の売却費用控除後の公正価値と使用価値のいずれか高い方の金額としており、資産が他の資産又は資産グループから概ね独立したキャッシュ・インフローを生成しない場合を除き、個別の資産ごとに決定しております。公正価値は独立の第三者による評価結果を使用する等市場参加者間の秩序ある取引において成立し得る価格を合理的に見積り算定しております。資産又は資金生成単位の回収可能価額が帳簿価額を下回っている場合は、当該資産の帳簿価額をその回収可能価額まで減額し、減損損失として認識しております。使用価値の算定に当たって使用される将来キャッシュ・フローは、経営者により承認された事業計画や、それが入手できない場合は、直近の資産状況を反映した事業計画によって見積っております。石油・原油等の資源事業に係る開発設備及び鉱業権においては、将来油価・ガス価、鉱区ごとの開発コスト及び埋蔵量等を主要な仮定としております。使用価値の評価にあたり、見積られた将来キャッシュ・フローは、貨幣の時間価値及び当該資産に固有のリスクに関する現在の市場評価を反映した割引率を用いて現在価値まで割り引いております。これらの主要な仮定について、事業戦略の変更や市場環境の変化等により見直しが必要となった場合並びに割引率の見直しが必要となった場合に減損損失が発生する可能性があります。
減損損失認識後は、各報告期間の期末日において、過去に認識した減損損失がもはや存在しないか、又は減少している可能性を示す兆候があるか否かを判定しております。このような兆候が存在する場合は、資産の回収可能価額の見積りを行っております。見積られた回収可能価額が資産の帳簿価額を超える場合は、減損損失を戻入れております。戻入れ後の帳簿価額は、過去において当該資産について認識した減損損失がなかったとした場合の帳簿価額(減価償却累計額控除後又は償却累計額控除後)を超えない範囲で認識しております。減損損失の戻入額は純損益として認識しております。
なお、のれんについて認識した減損損失を戻入れることはしておりません。
関連会社及びジョイント・ベンチャーに対する投資の減損
当社及び連結子会社が保有している関連会社及びジョイント・ベンチャーに対する投資に関して、総合的に判断を行い、減損の客観的証拠がある場合には、関連会社及びジョイント・ベンチャーに対する投資の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減額は減損損失として純損益で認識しております。減損の客観的証拠の内容は、主に、市場性のある投資の市場価格の下落、事業環境の悪化に伴う収益性の低下、事業内容の見直し等によるものです。また、回収可能価額は売却費用控除後の公正価値と使用価値のいずれか高い方の金額としております。公正価値は主に、売却予定価格等に基づき算定しており、使用価値は主に、経営者により承認された事業計画等に基づき算定しております。これらの主要な仮定について、事業戦略の変更や市場環境の変化等により見直しが必要となった場合並びに割引率の見直しが必要となった場合に減損損失が発生する可能性があります。
減損損失認識後は、認識した減損損失がもはや存在しない、又は減少している可能性を示す兆候の有無に関して、各報告期間の期末日に判定しております。このような兆候が存在する場合は、関連会社及びジョイント・ベンチャーに対する投資の回収可能価額の見積りを行っております。見積られた回収可能価額がその投資の帳簿価額を超える場合は、減損損失を戻入れております。減損損失の戻入額は、その投資の回収可能価額が減損損失認識後に増加した範囲で認識しており、過去に認識した減損損失の金額を上限として純損益として認識しております。
偶発負債及び引当金
引当金は、当社及び連結子会社が過去の事象の結果として、現在の法的又は推定的債務を有しており、当該債務を決済するために経済的便益を有する資源の流出が生じる可能性が高く、かつ当該債務の金額について信頼性をもって見積ることができる場合に認識しております。貨幣の時間価値の影響が重要である場合、引当金は当該負債に特有のリスクを反映させた割引率を用いた現在価値により測定しております。
訴訟案件に関する重要な引当金や偶発負債の見積りにあたっては、見積時点における訴訟プロセスの状況、訴訟戦略上の様々な選択肢や想定される将来の訴訟の趨勢も考慮のうえ、関連する事実関係や法律関係について、社外専門家を起用のうえ、当社の主張する法的立場の客観的な分析及び評価を実施しております。訴訟において当社が最終的に損失を被る可能性が高い状況であると考えられる場合に、信頼性をもって見積ることができる金額の引当金を計上しております。
当社の経営陣は、これらの見積り及び仮定は合理的であると考えておりますが、想定を超えた変化等が生じた場合、当社の連結財務諸表に大きな影響を及ぼすことがあります。
その他、重要な会計方針についての詳細は、「第5 経理の状況」における「1 連結財務諸表等 連結財務諸表に対する注記3 重要な会計方針」に記載のとおりであります。
④ 経営戦略の現状と今後の見通し
当社は、前中期経営戦略「GC2021」において定めた、2030年に向けた当社グループが目指す長期的な方向性を継続し、社会・顧客の課題と向き合い、新たな価値を創出すべく、中期経営戦略「GC2024」を策定し、2022年度よりスタートしております。また、収益基盤と財務基盤の充実・強化が進展したことを踏まえ、新たな株主還元方針(配当の基本方針及び中期経営戦略「GC2024」期間の株主還元)を2023年2月3日に公表しております。
詳細については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の「(2)会社の経営の基本方針」に記載のとおりであります。