有価証券報告書-第87期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
対処すべき課題
当行グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下の通りです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当行が判断したものであります。その内容にはリスク、不確実性、仮定が含まれており、将来の業績等を保証し又は約束するものではありません。
銀行を取り巻く経営環境の著しい変化に対応するために、あおぞら銀行グループの経営や業務の基本的な考え方となる経営理念を見つめ直すことから始め、存在意義(ミッション)、目指す姿(ビジョン)、行動指針(アクション)を明確にしました。
あおぞら銀行グループは金融のプロフェッショナルとして「新たな金融の付加価値を創造し、社会の発展に貢献する」ことをミッションとし、社会・お客さま・株主・従業員のすべてのステークホルダーに貢献することで、持続的な成長と中長期的な企業価値の創出を目指します。
(1)経営理念
当行グループの経営理念は以下の通りです。
あおぞらミッション
・新たな金融の付加価値を創造し、社会の発展に貢献する
あおぞらビジョン
・時代の変化に機動的に対応し、常に信頼され親しまれるスペシャリティー高い金融グループであり続ける
あおぞらアクション
・ユニークで専門性の高い金融サービスを提供する
・迅速に行動し、粘り強く丁寧に対応する
・チームワークを重視し、みんなで楽しく仕事をする
・仲間の多様な生き方、考え方、働き方を尊重し、仲間の成長を支援する
・過去を理解し未来志向で今日の課題に取り組む
・創意工夫で新規領域にチャレンジする
・社会のサステイナブルな発展に積極的に貢献する
当行グループの存在意義は、金融のプロフェッショナルとして、新たな金融の付加価値を創造することで社会の発展に貢献することにあり、そのためには、お客さまをよく理解し、他社にない新しい商品やサービスの研究と開発を行うことがもっとも重要であると考えます。
メガバンクでも地域金融機関でもない当行グループは、機動的で専門的であると同時に、お客さまに信頼され親しまれることが大切です。グループの将来に向けて、従来の銀行の枠組を超えた金融グループとしての可能性に挑戦してまいります。
(2)経営計画
当行は2020年5月に、2020年度から2022年度までの3年間を計画期間とする中期経営計画「AOZORA2022」を公表しました。本中期経営計画は、あおぞら銀行グループの羅針盤の役割を果たすものであり、他にはない“新たなパートナーバンク”となるための実行プランです。
IT社会の到来を見据えた新産業や新興企業の育成、地域活性化・地方創生に向けた取り組み、個人資産形成や円滑な承継の支援等により、社会のサステイナブルな発展に積極的に貢献していくとともに、6つの柱それぞれの業務分野でのイノベーションを実行し、高い専門性、優れた機動力と柔軟性を武器に、豊富なアイディアから生み出される商品や相対での高品質なサービスを、個人のお客さまや、事業法人・金融法人のお取引先に提供することのできる“新たなパートナーバンク”に成長することを目指します。
現在、世界的な新型コロナウイルス感染症拡大に伴う経済的な影響を受け、多くのお客さまが困難な状況に直面されています。あおぞら銀行グループでは、お客さまのニーズを踏まえたきめ細かな対応を行うとともに、お客さまの新しいビジネスへの取り組みにも、パートナーとして支援してまいります。
そして、機動的で健全なリスクテイクとプロアクティブなリスクコントロールによって持続的な成長を目指し、変化する経営環境を踏まえつつ、業績に応じた還元を行ってまいります。また、この持続的な成長の実現のため、従業員に対してもチームワークとチャレンジを支援する新人事制度を導入し、一体感をもって成長・活躍できる職場を提供していきます。
①AOZORAパートナーバンク宣言
②中期経営計画「AOZORA2022」の全体像
<ビジネスモデル「6つの柱」が3年後に目指す姿>
<あらたな成長イニシアチブ>(*)API:Application Programming Interfaceの略。あるコンピュータプログラム(ソフトウェア)の機能や管理するデータ等を、外部の他のプログラムから呼び出して利用するための手順やデータ形式等を定めた規約のこと。
<健全なリスクテイクを支えるリスクコントロール>リスクアペタイトの明確化と機動的なモニタリングによるリスクコントロールによって、慎重なリスク管理運営を行います。
資金調達手段の多様化のほか、コンプライアンス態勢の高度化やサイバーセキュリティ対応についても積極的に取り組んでまいります。
<新人事制度の導入>チームワークでチャレンジを続ける金融グループであるための新人事制度を導入することにより、キャリアコースや世代間の壁を無くし、一体感をもって成長・活躍できる制度を実現いたします。キャリアコースの統合、若手従業員の成長機会を広げるためのチャレンジプログラムの拡充、専門人材の登用、シニア層の活用等の施策を推進してまいります。
当行グループのSDGs/ESGへの取組状況について情報開示をさらに充実させ、取引先や投資家の皆様のご理解を深めてまいります。
(*)SDGs:2015年9月の国連総会で採択された、2030年までに達成すべき17の「持続可能な開発目標」。
(**)ESG:環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったもの。今日、企業の長期的な成長のためには、ESGが示す3つの観点が必要だという考え方。
③中期財務目標
収益目標
本中期経営計画では、従来からのビジネスモデル「6つの柱」の更なる進化とあらたな成長のためのイニシアチブに取り組み、最終年度の収益水準は2019年度実績を上回る水準を目指します。
具体的な収益目標額については、不透明な経済環境を勘案し、毎年度における業績予想において開示してまいります。
主要業績評価指標(Key Performance Indicators:KPI)目標
中期経営計画期間における主要業績評価指標(KPI)目標は以下の通り定めます。当行グループの強みである効率性を維持しつつ、安定的・持続的な成長を目指してまいります。
主要業績評価指標 (KPI) | 2020年度~2022年度 (中期目標) |
経費率(OHR) | 50%台前半 |
業務純益*ROA | 1%程度 |
ROE | 8%以上 |
*持分法投資損益を含んだ連結実質業務純益
④資本・配当政策
「健全性の維持」を念頭に置きつつ、「安定的な株主還元」、「戦略的な資本活用」ともバランスがとれた資本政策を実施し、持続的な企業価値の向上を図ってまいります。
自己資本
自己資本比率(国内基準)は、Basel3完全適用ベースで最低9%、当面の運営目標としては9.5%程度を目指してまいります。
株主還元
株主還元については配当による還元を原則とします。配当性向を原則50%とし、業績に応じた還元を行ってまいります。また、引き続き四半期ベースの配当を実施いたします。
(3)経営環境及び対処すべき課題等
当連結会計年度における経済環境は、国内では、ゆるやかな景気回復が続いていましたが、消費税の増税以降、景気減速感が出始めていたところ、年明け以降新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、急速に景況感が悪化しました。米国では、堅調な労働市場を背景に好景気が続いていましたが、新型コロナウイルス感染症が急速に世界的な広がりを見せ、欧州に続いて米国においても経済活動が大きく制限されることとなった結果、世界経済の減速懸念が強まりました。
国内では、長期金利(10年国債利回り)は概ね△0.3~0.1%で推移しました。日経平均株価は、12月には24,000円台まで上昇しましたが、2月後半以降には新型コロナウイルス感染症の拡大への懸念から大幅に下落し、一時16,000円台まで下げる場面もありました。その後は各国の積極的な金融政策等から年度末には19,000円台まで回復しました。ドル円相場は、期初からやや円高基調でしたが、秋以降は概ね107~109円台のレンジ内で推移しました。その後新型コロナウイルス感染症拡大への懸念からリスクポジションを減らす動きが強まり、一時101円台まで円高が進行しましたが、3月中旬から後半にかけて市場も落ち着きを取り戻し年度末は108円台で終了しました。
米国では、長期金利(10年米国債利回り)は、米中貿易摩擦の激化やFRB(連邦準備制度理事会)の利下げを受け一時1.5%を割り込みましたが、秋には利下げの打ち止めが示唆され1.9%台まで上昇しました。しかし年明け以降は、新型コロナウイルス感染症の拡大による景気後退懸念からFRBが矢継ぎ早に緊急利下げを行い政策金利を実質ゼロにしたことから、0.3%台前半まで急速に水準を切り下げました。その後もFRBは積極的な資金供給策、市場安定化策等を打ち出し市場機能は徐々に回復を取り戻し、年度末には長期金利は再び0.6~0.8%台になりました。米国株式市場(ダウ工業株30種平均)は、10月から上昇し2月中旬には30,000ドル近くまで上昇し史上最高値を記録しましたが、新型コロナウイルス感染症の世界的な広がりを受け市場参加者の不安心理が売りが売りを呼ぶ展開となり、ダウは18,000ドル台まで急落しました。その後市場は徐々に落ち着きを取り戻し、年度末には22,000ドル台まで回復しました。
金融機関を取り巻くビジネス環境においては、デジタライゼーションの進展、人生100年時代に向けた資産形成ニーズおよび次世代への財産承継・事業承継ニーズの高まり、景気変動や競争激化に伴う企業再編や事業再生ニーズの高まり等への対応が必要となるとともに、各種制度・規制変化への対応が課題となっています。当行といたしましても、こういった課題に適切に対応する必要があると考えています。
現在、世界的な新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、多くのお客さまが困難な状況に直面されており、当行グループでは、お客さまのニーズを踏まえたきめ細かな対応を行うとともに、お客さまの新しいビジネスへの取り組みにも、パートナーとして支援してまいります。
これらの課題を踏まえた各業務における基本方針は以下のとおりです。
①ビジネス部門
<個人営業グループ>「有人店舗」とスマートフォンアプリを軸とした新マネーサービス「BANK」の2つのチャネルを組み合わせることにより、専門的なコンサルティングと総合金融サービスの実現を目指します。「顧客本位の業務運営」のもと、有人店舗では財産承継や事業承継等に関し、税理士、ファイナンシャルプランナー、M&A・法人ビジネス担当者との融合による専門的なコンサルティングを展開するとともに、「BANK」ではBANK支店専用商品の導入等サービスの拡充を進め、現役世代のお客さまとのお取引拡大に努めてまいります。
<法人営業グループ>M&Aやバイアウトファイナンス等事業再構築ビジネスの主要プレイヤーとしての位置づけの確立を目指すとともに、様々なリスクヘッジニーズに応えるビジネスに機動的に取り組んでまいります。また、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けたお取引先に対しては、きめ細かくニーズに対応していくとともに、プライベートエクイティファンドの組成等により、将来の事業再編や企業の成長を支援してまいります。
<金融法人・地域法人営業グループ>地域金融機関のお客さまの経営課題解決のために、これまで蓄積してきた金融ソリューションとサービスを総合的に提供するとともに、地域金融機関を通じた地域経済活性化にも積極的に貢献してまいります。
<スペシャルティファイナンスグループ>不動産・事業再生に関する高い専門性を発揮し、新型コロナウイルス感染症の拡大が経済社会に及ぼす影響に対応した投融資に取り組んでまいります。
<インターナショナルファイナンスグループ>米国ニューヨークにおいて現地法人「Aozora North America, Inc.」の開業準備をしております。これにより、北米、アジア、欧州の各現地拠点と東京が連携したグローバルでシームレスなモニタリング態勢が強化されます。各エリアの現地情報をリアルタイムで収集することによって、グローバルに分散されたポートフォリオの機動的なコントロールに努めてまいります。
<ファイナンシャルマーケッツグループ>ALM・クレジット投資一体となったポートフォリオ運営とトレーディング業務による安定的な収益確保に努めるとともに、各ビジネス部門のリスクヘッジ関連ビジネスを支えるセールス・商品開発能力の向上に努めてまいります。
<信託ビジネスグループ>お客さまの保有する金銭債権・不動産・有価証券等の資産流動化業務を中心に、お客さまの多様なニーズにお応えするため、信託機能の持つ幅広い可能性を活かしたサービスを提供してまいります。
<インターネット銀行事業(GMOあおぞらネット銀行)>多様なAPIを提供し、法人主体のユニークなインターネット銀行を目指します。インターネット取引が増える中、APIによりお客さまのインターネットビジネスの拡大と業務の効率化を実現し、為替や決済の安定した手数料主体のビジネスモデルを確立します。
②健全なリスクテイクを支えるリスクコントロール
リスクアペタイトの明確化と機動的なモニタリングによるリスクコントロールによって、慎重なリスク管理運営を行います。資金調達手段の多様化のほか、コンプライアンス態勢の高度化やサイバーセキュリティ対応についても積極的に取り組んでまいります。
<機動的なモニタリングによるリスクコントロール>コンパクトな組織の利点を発揮した、ビジネス部門・リスク管理部門・マネジメントによる緊密なコミュニケーションをベースとした予兆管理を継続します。高度化したストレステストによって自己資本の活用状況を有効性と健全性の両面からフォローしていきます。今後発生する急激な変動に備え、リスクアセット全体と各アセットクラスとのバランスをコントロールするための機動的なオペレーションを継続し、有事に備えたシミュレーションの強化・向上を図ってまいります。
<資金調達手段の多様化>「BANK」を通じた現役世代のお客さまとの預金取引拡大を図りつつ、資金調達全体の量的バランスとコストをコントロールしてまいります。併せて、外貨調達手段の多様化を進めてまいります。
<コンプライアンス態勢の高度化>法令・制度改正や外部規範・社会的要請の変化への着実・適切な対応を行っていくとともに、コンプライアンス意識の維持・向上を図ってまいります。
<サイバーセキュリティ対応>標準的攻撃等に対する入口・出口対策と不正アクセスモニタリング強化等の内部対策をバランスよく実効的に実施するとともに、サイバーセキュリティ―人材の育成を継続し、必要な水準を維持してまいります。