有価証券報告書-第64期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(以下、本項目において「当社」という。)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、本項目において「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、中国を中心にアジア向けの輸出の伸び悩みにより生産活動の停滞が懸念される中で、日本銀行による金融緩和政策の継続を背景に国内需要において設備投資の増加傾向が続いているほか、個人消費も所得環境の改善を背景に緩やかに増加するなど底堅さを見せておりましたが、新型コロナウイルスの感染拡大により、3月の日銀短観にて発表された業況判断指数(DI)は、大企業及び製造業において5四半期連続で低下するなど製造業の生産活動は低迷し、特に中国向けの輸出が大幅に減少する他、非製造業においてもインバウンド消費が急減するなど内外需ともに大きく下振れしております。先行きの経済は、新型コロナウイルスの流行が収束後、回復基調に向かう見通しでありますが、流行が長期化すれば深刻な雇用調整が生じるリスクも含んでおります。
一方、世界経済は、米国では個人消費が堅調に推移する一方で企業設備投資と輸出が弱含む中、米中閣僚級通商協議における交渉の進展により通商政策の不透明感が低下したものの、新型コロナウイルスの感染拡大により内外需要が大幅に減速しており、3月の米国供給管理協会(ISM)製造業景況感指数は49.1と低水準となり、3月の消費者マインドも低下していることから企業部門及び家計部門の景況感はともに悪化しております。中国では米国との関税を巡る応酬が一服した後、新型コロナウイルスの感染拡大による政府の封じ込め政策で、工場の操業を停止したことにより輸出は大幅に減少し、市民の移動制限や店舗の営業抑制により個人消費も大幅に減少していることから景気は大きく下振れしております。米国においては新型コロナウイルスの流行が収束後、回復基調に向かうものの流行前の水準に戻るには時間を要すると予想され、中国においては既に経済活動を再開しており個人消費は底入れの兆しを見せておりますが、新型コロナウイルスの世界的感染拡大による世界経済全体の大幅な下振れリスクにより輸出が重石となり、急激な回復は見込めない見通しであります。
証券市場においては、取引所株価指数証拠金取引(くりっく株365)の主要銘柄である日経225は、米国の良好な経済指標を背景としてNYダウが上昇したことが支援要因となり、年初来高値を更新して始まりました。5月に入ると円高・ドル安が圧迫要因となり下落し、同月末には米国がメキシコに対し追加関税の措置を発表したことからリスク回避の動きが強まり下げ幅を拡大しましたが、後に追加関税延期を表明したことによりNYダウが急伸し、国内市場も追随する動きとなりました。その後は21,000円から21,900円のレンジで推移していましたが、8月に入り米国が新たな対中制裁関税の発動を表明したことを受けて、米中貿易摩擦の激化による世界的な景気後退懸念が強まり、20,000円の大台を探る動きとなりました。しかしその後は米連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げが決定されたことからNYダウが上昇し、国内市場も追随する動きとなり、22,000円台まで回復しました。10月に入ると、米中閣僚級通商協議で第一段階の合意に向けて進展が見られたことにより上昇、その後も好調な米経済指標を背景にNYダウが堅調に推移、国内市場も歩調を合わせて12月には、1年2か月ぶりとなる24,000円台を示現しました。1月に入っても高値圏での推移となりましたが、2月に入ると新型コロナウイルスの世界的感染拡大により、NYダウをはじめとした各国の株価急落を背景に、一時16,000円台前半まで下落しました。その後は急落に対する修正から19,000円手前まで反発するなど、乱高下する展開となりました。
商品市場においては、原油は米国による経済制裁でイラン産とベネズエラ産の原油供給が一段と減少するとの見通しや、リビアの情勢不安などを背景とした供給懸念から堅調なスタートとなりました。しかし、5月に入ると欧米経済指標の鈍化を受けて世界的な景気後退懸念が強まり、エネルギー需要の先行きに悪影響をもたらすとの思惑から急落、各国の株式市場が下落したことも圧迫要因となりました。その後はホルムズ海峡近くのオマーン湾で日本の船舶を含む2隻の石油タンカーが攻撃を受けたことや、米国の無人偵察機が撃墜されるなど、地政学的リスクの高まりから反発場面となりました。その後は中東を中心とした産油国の情勢と、米中貿易摩擦を背景とした需要減少見通しの強弱材料の綱引きの後、米国原油在庫の増加が圧迫要因となり、下値を切り下げる動きとなりました。9月に入ると、サウジアラビアの石油施設が無人機による攻撃を受けたことによる供給逼迫懸念を背景に急騰しましたが、復旧作業が順調に進んだことや、米中両国の経済指標の悪化による世界的な景気後退懸念から37,500円を中心とした8月のレンジに価格が戻りました。10月以降は中東の地政学的リスクや、堅調なNYダウに追随して上昇、12月には石油輸出国機構(OPEC)総会とロシアなど非加盟国を含めたOPECプラス会合において、減産幅を拡大したことから上値を追う展開となりました。1月には米国とイランの関係悪化を受けた軍事的緊張の高まりから続伸しましたが、双方が軍事行動に慎重な姿勢を示したことによる地政学的リスクの緩和や、米国石油製品在庫の大幅な増加が圧迫要因となり反落し、その後も新型コロナウイルスの世界的感染拡大による世界経済停滞懸念を背景に続落となりました。3月のOPECプラスの会合では、協調減産強化に向けた協議が決裂し、サウジアラビアやロシアが増産する方針を示したことから、NY原油は一時20ドルを割込み、国内市場も急落場面となりました。
金は米国や中国の良好な経済指標を背景に、世界経済の先行き見通しに対して悲観的な見方が後退したことや、5月のFOMCで金利の据置きが決定し、利下げ観測が後退したことから軟調な推移となりました。しかし、6月に入ると米中貿易摩擦長期化懸念や米国の雇用統計が市場予想の下限を下回るなど、鈍化傾向を見せたことから急伸場面となりました。その後、米連邦準備制度理事会(FRB)が年内の利下げを視野に入れる方針を示唆したことから続伸場面となり、8月には5,000円の大台を突破し、また新興国を中心に複数の中央銀行が利下げを発表したことや、米国の利下げ継続見通しが支援要因となり、9月には5,300円台となりました。その後は米国の良好な経済指標により上値を抑えられ5,000円前半から5,200円後半のレンジで推移しましたが、FRBが12月のFOMCで今後の金融政策について利上げに消極的な姿勢を示したことから5,300円台を回復しました。その後も中東の地政学的リスクを背景に続伸し5,500円台で推移し、2月に入り新型コロナウイルスの世界的感染拡大に歯止めがかからず、リスク回避の動きから5,913円の上場来高値を更新しましたが、3月には世界同時株安を受けて手元の資金を調達する動きから金市場でも売りが殺到し、一時5,000円割れまで下落した後に、FRBによる緊急利下げが市場流動性を提供したことから、5,700円台まで回復するなど乱高下する展開となりました。
トウモロコシは3月末に米国農務省が発表した作付意向面積が、事前予想を大幅に上回る内容であったことから急落して始まりました。その後24,000円を中心としたもみ合いの後、作付けの進展を背景にシカゴ市場が下落、国内市場も追随し急落場面となりました。しかし、5月に入ると米国産地において長雨による洪水の影響により作付けが大幅に遅れたことから急反発場面になるなど天候相場特有の動きとなり、6月半ばには26,500円の年初来高値を更新しました。その後、受粉期は天候に恵まれて軟調に推移し、8月の米国農務省需給報告では、作付遅延による面積減少見通しが予想されていましたが、減少幅が限定的だったことからシカゴ市場はストップ安を伴う急落場面となりましたが、9月に入ると需要が喚起されたことや円安を背景に反発し、24,000円半ばまで回復しました。その後は中国におけるアフリカ豚コレラ問題を背景に、飼料需要低下見通しが圧迫要因となり、急落場面となりましたが、12月には米中閣僚級通商協議において、第一段階の合意で妥結したとの報道が支援要因となり反発し、25,000円台まで上昇しました。その後は新型コロナウイルスの世界的感染拡大や原油市場の急落による飼料やエタノールの需要の鈍化が圧迫要因となり22,000円台まで反落しました。
為替市場においては、ドル円相場は110円から112円のレンジで推移していましたが、5月に入ると米国が中国に対して制裁関税を引き上げることを表明したことから、リスク回避の動きが強まり、急落場面となりました。その後メキシコに対しても追加関税を賦課することを発表して下落に拍車をかけました。108円台の保ち合いの後、FRBが年内の利下げを視野に入れる方針を示唆したことから再度急落し、6月後半には106.75円まで円安・ドル高が進行しました。8月に入ると、米国が新たな対中制裁関税の発動を表明したことを受けて、米中貿易摩擦の激化による世界的な景気後退懸念が強まり、レンジを大きく切り下げて、一時104.40円を示現しました。その後は米中閣僚級通商協議を10月に開催することで合意したことを受け、貿易協議の進展期待に支えられ、9月末には108円台を回復しました。その後は108円前半から109円後半と狭いレンジで推移しましたが、12月に米国がイラクとシリアで、イスラム教シーア派組織の拠点を5か所空爆したと発表したことから下落し、109円台を割り込みました。1月に入り108円後半から110円前半で推移した後、2月にレンジの上限を抜けて瞬間的に112円台まで上昇しましたが、新型コロナウイルスの感染拡大懸念が強まり、世界的な株安とともにリスク回避の動きが強まったことから円が急伸し、3月には101.16円を示現しました。しかし、市場で信用不安が高まる中、ドル資金に対する需要の高まりからドル買いが進み、107円台で年度内の取引を終えました。
このような環境のもとで、当社の当連結会計年度の商品先物取引の総売買高1,837千枚(前年同期比4.8%減)及び金融商品取引の総売買高1,376千枚(前年同期比10.7%減)となり、受取手数料6,644百万円(前年同期比15.9%増)、売買損益393百万円の利益(前年同期比125.5%増)となりました。
当連結会計年度の業績は営業収益7,041百万円(前年同期比19.1%増)、経常利益1,488百万円(前年同期比94.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益815百万円(前年同期比40.8%増)となりました。
当社の経営成績の概要は次のとおりであります。
1. 営業収益
当連結会計年度の営業収益は7,041百万円(前年同期比19.1%増・1,129百万円増加)となりました。受取手数料は6,644百万円(前年同期比15.9%増・910百万円増加)、売買損益は393百万円の利益(前年同期比125.5%増・218百万円増加)となりました。
その他の営業収益は3百万円(前年同期比2.0%増・0百万円増加)となりました。
2. 販売費及び一般管理費
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は5,542百万円(前年同期比7.4%増・382百万円増加)となりました。この主な内訳は、人件費が3,290百万円(前年同期比9.9%増・295百万円増加)、地代家賃が291百万円(前年同期比0.8%増・2百万円増加)、減価償却費が356百万円(前年同期比1.9%減・6百万円減少)、その他(電算機費等)が964百万円(前年同期比4.1%増・37百万円増加)となっております。
3. 営業損益
前連結会計年度に比べて営業収益は1,129百万円増加し、販売費及び一般管理費は382百万円増加した結果、当連結会計年度の営業利益は1,498百万円の利益(前年同期比99.5%増・747百万円増加)となりました。
4. 営業外収益
当連結会計年度の営業外収益は67百万円(前年同期比8.8%増・5百万円増加)となりました。この主な内訳は、受取利息が10百万円(前年同期比1,760.5%増・10百万円増加)、受取配当金が26百万円(前年同期比2.4%増・0百万円増加)、受取奨励金が4百万円(前年同期比45.4%増・1百万円増加)、貸倒引当金戻入額が1百万円(前年同期比6,036.0%増・1百万円増加)、その他(雑収入等)が24百万円(前年同期比31.7%増・5百万円増加)となっております。
5. 営業外費用
当連結会計年度の営業外費用は77百万円(前年同期比67.2%増・30百万円増加)となりました。この主な内訳は、支払利息が27百万円(前年同期比14.0%減・4百万円減少)、自己株式取得費用48百万円(前年同期比48百万円増)となっております。
6. 経常損益
前連結会計年度に比べて営業外収益は5百万円増加し、営業外費用は30百万円増加した結果、当連結会計年度の経常利益は1,488百万円の利益(前年同期比94.2%増・721百万円増加)となりました。
7. 特別利益
当連結会計年度の特別利益は126百万円(前年同期比126百万円増)となりました。この主な内訳は投資有価証券売却益74百万円(前年同期比74百万円増)、保険解約返戻金52百万円(前年同期比52百万円増)となっております。
8. 特別損失
当連結会計年度の特別損失は355百万円(前年同期比690.2%増・310百万円増加)となりました。この主な内訳は、固定資産売却損が3百万円(前年同期比120.9%増・1百万円増加)、投資有価証券評価損が56百万円(前年同期比56百万円増)、訴訟関連損失が1百万円(前年同期比52.2%増・0百万円増加)、訴訟損失引当金繰入額が237百万円(前年同期比489.1%増・197百万円増加)、商品取引責任準備金繰入額が55百万円(前年同期比55百万円増)、となっております。
9. 税金等調整前当期純損益
前連結会計年度に比べて特別利益は126百万円増加し、特別損失は310百万円増加した結果、当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は1,259百万円の利益(前年同期比74.6%増・538百万円増加)となりました
10. 法人税等
当連結会計年度の法人税等は444百万円(前年同期比211.7%増・301百万円増加)となりました。この主な内訳は、法人税、住民税及び事業税が402百万円(前年同期比144.1%増・237百万円増加))、法人税等調整額が41百万円(前年同期は△22百万円)となっております。
11. 親会社株主に帰属する当期純損益
当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損益は815百万円の利益(前年同期比40.8%増・236百万円増加)となりました。営業収益に対する比率は11.6%(前連結会計年度は9.8%)となっております。自己資本利益率は8.8%(前連結会計年度は6.1%)となりました。また、1株当たり当期純損益は107.3円の利益(前連結会計年度は72.2円の利益)となりました。
以上の結果、当社の財政状態の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度末の資産総額は55,030百万円、負債総額は46,173百万円、純資産は8,856百万円となっております。
当連結会計年度末の資産総額55,030百万円は、前連結会計年度末51,124百万円に比べて3,906百万円増加しております。この内訳は、流動資産が4,888百万円増加し、固定資産が982百万円減少したものであり、主に「保管有価証券」が3,407百万円、及び投資その他の資産の「その他」が688百万円減少した一方、「差入保証金」が7,050百万円、及び「現金及び預金」が1,042百万円増加したことによるものであります。なお、投資その他の資産の「その他」の減少の主な内訳は長期未収債権172百万円、及び保険料積立金515百万円となっております。
当連結会計年度末の負債総額46,173百万円は、前連結会計年度末41,455百万円に比べて4,717百万円増加しております。この内訳は、流動負債が4,753百万円増加し、固定負債が91百万円減少したものであり、主に「預り証拠金代用有価証券」が3,407百万円、及び「金融商品取引保証金」が1,378百万円減少した一方、「預り証拠金」が9,292百万円増加したことによるものであります。
当連結会計年度末の純資産8,856百万円は、前連結会計年度末9,668百万円に比べて811百万円減少しております。この内訳は、主に株主資本が750百万円、及びその他の包括利益累計額が61百万円減少したことによるものであります。
当連結会計年度末の自己資本比率は16.1%(前連結会計年度末は18.9%)となっております。
なお、後記「第5「経理の状況」1「連結財務諸表等」「注記事項」の(セグメント情報等)」に掲記したとおり、当社グループの事業セグメントは、主として商品先物取引の受託及び自己売買、並びに金融商品取引の受託及び自己売買の商品先物取引業等の単一セグメントであり重要性が乏しいため、セグメント情報の記載を省略しております
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて1,042百万円の増加となり、6,392百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金の取得は、2,250百万円(前年同期は972百万円の取得)となりました。これは、「差入保証金」の増加及び「金融商品取引保証金」の減少による資金の支出等があったものの、「預り証拠金」及び「税金等調整前当期純利益」が増加したことによる資金の収入等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金の取得は、838百万円(前年同期は554百万円の使用)となりました。これは、投資有価証券の取得による支出等があったものの、投資有価証券の売却及び保険積立金の解約による収入等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金の使用は、2,024百万円(前年同期は12百万円の取得)となりました。これは、長期借入金の返済及び自己株式の取得による支出等によるものであります。
③ 商品先物取引業等
1. 当連結会計年度における商品先物取引業等の営業収益は次のとおりであります。
(受取手数料)
(単位:千円)
(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(売買損益)
(単位:千円)
(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2. 当社及び当社の関係会社の商品先物取引等の売買高に関して当連結会計年度中の状況は次のとおりであります。
(売買高の状況)
(単位:枚)
(注)1. 商品先物取引の主な商品別の委託売買高とその総委託売買高に対する割合は、次のとおりであります。
(単位:枚)
2. 商品先物取引における取引の最低単位を枚と呼び、例えば金限日1枚は100グラム、金(標準取引)1枚は1,000グラムというように1枚当たりの数量は商品ごとに異なります。
3. 当社及び当社の関係会社の商品先物取引業等に関する売買高のうち当連結会計年度末において反対売買等により決済されていない建玉の状況は次のとおりであります。
(未決済建玉の状況)
(単位:枚)
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループ(以下、本項目において「当社」という。)の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
本項目においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末(2020年3月31日)現在において当社が判断したものであります。
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社は商品市場、証券市場及び為替市場等において多角的に商品先物取引業及び金融商品取引業を展開しており、また当該市場には経済情勢、相場環境等に起因するさまざまな不確実性が存在しております。
当連結会計年度における当社の状況は、商品先物取引部門の主力商品である金が米連邦準備制度理事会(FRB)が年内の利下げを視野に入れる方針を示唆したことから続伸場面となり、また新興国を中心に複数の中央銀行が利下げを発表したことや、米国の利下げ継続見通しが支援要因となり、9月には5,300円台となりました。2月に入り新型コロナウイルスの世界的感染拡大に歯止めがかからず、リスク回避の動きから5,913円の上場来高値を更新したことにより収益の増加に大きく貢献しました。
一方、証券市場は、米中閣僚級通商協議で第一段階の合意に向けて進展が見られたことや好調な米経済指標を背景にNYダウが堅調に推移、国内市場も1年2か月ぶりとなる24,000円台を示現しました。2月に入ると新型コロナウイルスの世界的感染拡大により、NYダウをはじめとした各国の株価急落を背景に、一時16,000円台前半まで下落し、その後は急落に対する修正から19,000円手前まで反発するなど、乱高下する展開となったものの、取引所株価指数証拠金取引(くりっく株365)の手数料収入が前年同期比12.0%減少したことにより、収益の増加に貢献することができませんでした。
当社の収益の柱は、主要な事業である商品先物取引業及び金融商品取引業の2つに分けられます。前年同期の収益比率では、商品先物取引業が金を中心とした商品市場の変動により手数料収入が増加しましたが、金融取引業は株価が乱高下した値動きとなり前年同期比で実績を下回りました。結果として手数料収益ベースで、商品先物取引業が73%、金融取引業が27%となりました。
また、当社の海外部門においては、マレーシア・クアラルンプールにパームオイル・ブローカーとして設立した現地法人豊商事マレーシアに海外部門を集約し、現地マレーシア市場及び東京市場並びにシンガポール市場での商品を扱える準備が整い、営業を開始したばかりではありますが海外部門において収益を計上できるよう営業活動に努めてまいります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社の当連結会計年度末における連結ベースのキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載しております。また、株主還元につきましては、「第2「事業の状況」3「配当政策」」に記載しております。
当社の資本の財源及び資金の流動性につきましては、㈱東京商品取引所から㈱大阪取引所への上場商品移管及び㈱東京金融商品取引所における新規上場商品に関連するシステム構築費用を、今後の資金需要として想定しており資金の流動性に対する影響は軽微であります。その資金の調達源として営業活動におけるキャッシュフロー及び手元資金を財源とします。新たな銀行借入や株式の新規発行等の資本取引の予定はありません。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度末における資産、負債の報告金額及び収益、費用の報告金額に影響を与える見積り、判断及び仮定を使用することが必要となります。当社の経営陣は連結財務諸表作成の基礎となる見積り、判断及び仮定を過去の経験や状況に応じ合理的と判断される入手可能な情報により継続的に検証し、意思決定を行っております。しかしながら、これらの見積り、判断及び仮定は不確実性を伴うため、実際の結果と異なる場合があります。
(訴訟損失引当金)
当社は、訴訟損失引当金について、商品取引事故及び金融商品取引事故等による損失に備えるため、損害賠償請求等に伴う損失の見込額のうち、商品取引責任準備金及び金融商品取引責任準備金の期末残高を勘案して訴訟損失引当金を計上しておりますが、当社に対する新たな訴訟の提起や判決等により、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、訴訟損失引当金が増額され訴訟損失引当金繰入額が計上される可能性があります。
(繰延税金資産)
当社は、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減産一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積もりの前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
なお、連結財務諸表の作成のための重要な会計基準等は「第5「経理の状況」1「連結財務諸表等」「注記事項」の(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりであります。
当連結会計年度における当社グループ(以下、本項目において「当社」という。)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、本項目において「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、中国を中心にアジア向けの輸出の伸び悩みにより生産活動の停滞が懸念される中で、日本銀行による金融緩和政策の継続を背景に国内需要において設備投資の増加傾向が続いているほか、個人消費も所得環境の改善を背景に緩やかに増加するなど底堅さを見せておりましたが、新型コロナウイルスの感染拡大により、3月の日銀短観にて発表された業況判断指数(DI)は、大企業及び製造業において5四半期連続で低下するなど製造業の生産活動は低迷し、特に中国向けの輸出が大幅に減少する他、非製造業においてもインバウンド消費が急減するなど内外需ともに大きく下振れしております。先行きの経済は、新型コロナウイルスの流行が収束後、回復基調に向かう見通しでありますが、流行が長期化すれば深刻な雇用調整が生じるリスクも含んでおります。
一方、世界経済は、米国では個人消費が堅調に推移する一方で企業設備投資と輸出が弱含む中、米中閣僚級通商協議における交渉の進展により通商政策の不透明感が低下したものの、新型コロナウイルスの感染拡大により内外需要が大幅に減速しており、3月の米国供給管理協会(ISM)製造業景況感指数は49.1と低水準となり、3月の消費者マインドも低下していることから企業部門及び家計部門の景況感はともに悪化しております。中国では米国との関税を巡る応酬が一服した後、新型コロナウイルスの感染拡大による政府の封じ込め政策で、工場の操業を停止したことにより輸出は大幅に減少し、市民の移動制限や店舗の営業抑制により個人消費も大幅に減少していることから景気は大きく下振れしております。米国においては新型コロナウイルスの流行が収束後、回復基調に向かうものの流行前の水準に戻るには時間を要すると予想され、中国においては既に経済活動を再開しており個人消費は底入れの兆しを見せておりますが、新型コロナウイルスの世界的感染拡大による世界経済全体の大幅な下振れリスクにより輸出が重石となり、急激な回復は見込めない見通しであります。
証券市場においては、取引所株価指数証拠金取引(くりっく株365)の主要銘柄である日経225は、米国の良好な経済指標を背景としてNYダウが上昇したことが支援要因となり、年初来高値を更新して始まりました。5月に入ると円高・ドル安が圧迫要因となり下落し、同月末には米国がメキシコに対し追加関税の措置を発表したことからリスク回避の動きが強まり下げ幅を拡大しましたが、後に追加関税延期を表明したことによりNYダウが急伸し、国内市場も追随する動きとなりました。その後は21,000円から21,900円のレンジで推移していましたが、8月に入り米国が新たな対中制裁関税の発動を表明したことを受けて、米中貿易摩擦の激化による世界的な景気後退懸念が強まり、20,000円の大台を探る動きとなりました。しかしその後は米連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げが決定されたことからNYダウが上昇し、国内市場も追随する動きとなり、22,000円台まで回復しました。10月に入ると、米中閣僚級通商協議で第一段階の合意に向けて進展が見られたことにより上昇、その後も好調な米経済指標を背景にNYダウが堅調に推移、国内市場も歩調を合わせて12月には、1年2か月ぶりとなる24,000円台を示現しました。1月に入っても高値圏での推移となりましたが、2月に入ると新型コロナウイルスの世界的感染拡大により、NYダウをはじめとした各国の株価急落を背景に、一時16,000円台前半まで下落しました。その後は急落に対する修正から19,000円手前まで反発するなど、乱高下する展開となりました。
商品市場においては、原油は米国による経済制裁でイラン産とベネズエラ産の原油供給が一段と減少するとの見通しや、リビアの情勢不安などを背景とした供給懸念から堅調なスタートとなりました。しかし、5月に入ると欧米経済指標の鈍化を受けて世界的な景気後退懸念が強まり、エネルギー需要の先行きに悪影響をもたらすとの思惑から急落、各国の株式市場が下落したことも圧迫要因となりました。その後はホルムズ海峡近くのオマーン湾で日本の船舶を含む2隻の石油タンカーが攻撃を受けたことや、米国の無人偵察機が撃墜されるなど、地政学的リスクの高まりから反発場面となりました。その後は中東を中心とした産油国の情勢と、米中貿易摩擦を背景とした需要減少見通しの強弱材料の綱引きの後、米国原油在庫の増加が圧迫要因となり、下値を切り下げる動きとなりました。9月に入ると、サウジアラビアの石油施設が無人機による攻撃を受けたことによる供給逼迫懸念を背景に急騰しましたが、復旧作業が順調に進んだことや、米中両国の経済指標の悪化による世界的な景気後退懸念から37,500円を中心とした8月のレンジに価格が戻りました。10月以降は中東の地政学的リスクや、堅調なNYダウに追随して上昇、12月には石油輸出国機構(OPEC)総会とロシアなど非加盟国を含めたOPECプラス会合において、減産幅を拡大したことから上値を追う展開となりました。1月には米国とイランの関係悪化を受けた軍事的緊張の高まりから続伸しましたが、双方が軍事行動に慎重な姿勢を示したことによる地政学的リスクの緩和や、米国石油製品在庫の大幅な増加が圧迫要因となり反落し、その後も新型コロナウイルスの世界的感染拡大による世界経済停滞懸念を背景に続落となりました。3月のOPECプラスの会合では、協調減産強化に向けた協議が決裂し、サウジアラビアやロシアが増産する方針を示したことから、NY原油は一時20ドルを割込み、国内市場も急落場面となりました。
金は米国や中国の良好な経済指標を背景に、世界経済の先行き見通しに対して悲観的な見方が後退したことや、5月のFOMCで金利の据置きが決定し、利下げ観測が後退したことから軟調な推移となりました。しかし、6月に入ると米中貿易摩擦長期化懸念や米国の雇用統計が市場予想の下限を下回るなど、鈍化傾向を見せたことから急伸場面となりました。その後、米連邦準備制度理事会(FRB)が年内の利下げを視野に入れる方針を示唆したことから続伸場面となり、8月には5,000円の大台を突破し、また新興国を中心に複数の中央銀行が利下げを発表したことや、米国の利下げ継続見通しが支援要因となり、9月には5,300円台となりました。その後は米国の良好な経済指標により上値を抑えられ5,000円前半から5,200円後半のレンジで推移しましたが、FRBが12月のFOMCで今後の金融政策について利上げに消極的な姿勢を示したことから5,300円台を回復しました。その後も中東の地政学的リスクを背景に続伸し5,500円台で推移し、2月に入り新型コロナウイルスの世界的感染拡大に歯止めがかからず、リスク回避の動きから5,913円の上場来高値を更新しましたが、3月には世界同時株安を受けて手元の資金を調達する動きから金市場でも売りが殺到し、一時5,000円割れまで下落した後に、FRBによる緊急利下げが市場流動性を提供したことから、5,700円台まで回復するなど乱高下する展開となりました。
トウモロコシは3月末に米国農務省が発表した作付意向面積が、事前予想を大幅に上回る内容であったことから急落して始まりました。その後24,000円を中心としたもみ合いの後、作付けの進展を背景にシカゴ市場が下落、国内市場も追随し急落場面となりました。しかし、5月に入ると米国産地において長雨による洪水の影響により作付けが大幅に遅れたことから急反発場面になるなど天候相場特有の動きとなり、6月半ばには26,500円の年初来高値を更新しました。その後、受粉期は天候に恵まれて軟調に推移し、8月の米国農務省需給報告では、作付遅延による面積減少見通しが予想されていましたが、減少幅が限定的だったことからシカゴ市場はストップ安を伴う急落場面となりましたが、9月に入ると需要が喚起されたことや円安を背景に反発し、24,000円半ばまで回復しました。その後は中国におけるアフリカ豚コレラ問題を背景に、飼料需要低下見通しが圧迫要因となり、急落場面となりましたが、12月には米中閣僚級通商協議において、第一段階の合意で妥結したとの報道が支援要因となり反発し、25,000円台まで上昇しました。その後は新型コロナウイルスの世界的感染拡大や原油市場の急落による飼料やエタノールの需要の鈍化が圧迫要因となり22,000円台まで反落しました。
為替市場においては、ドル円相場は110円から112円のレンジで推移していましたが、5月に入ると米国が中国に対して制裁関税を引き上げることを表明したことから、リスク回避の動きが強まり、急落場面となりました。その後メキシコに対しても追加関税を賦課することを発表して下落に拍車をかけました。108円台の保ち合いの後、FRBが年内の利下げを視野に入れる方針を示唆したことから再度急落し、6月後半には106.75円まで円安・ドル高が進行しました。8月に入ると、米国が新たな対中制裁関税の発動を表明したことを受けて、米中貿易摩擦の激化による世界的な景気後退懸念が強まり、レンジを大きく切り下げて、一時104.40円を示現しました。その後は米中閣僚級通商協議を10月に開催することで合意したことを受け、貿易協議の進展期待に支えられ、9月末には108円台を回復しました。その後は108円前半から109円後半と狭いレンジで推移しましたが、12月に米国がイラクとシリアで、イスラム教シーア派組織の拠点を5か所空爆したと発表したことから下落し、109円台を割り込みました。1月に入り108円後半から110円前半で推移した後、2月にレンジの上限を抜けて瞬間的に112円台まで上昇しましたが、新型コロナウイルスの感染拡大懸念が強まり、世界的な株安とともにリスク回避の動きが強まったことから円が急伸し、3月には101.16円を示現しました。しかし、市場で信用不安が高まる中、ドル資金に対する需要の高まりからドル買いが進み、107円台で年度内の取引を終えました。
このような環境のもとで、当社の当連結会計年度の商品先物取引の総売買高1,837千枚(前年同期比4.8%減)及び金融商品取引の総売買高1,376千枚(前年同期比10.7%減)となり、受取手数料6,644百万円(前年同期比15.9%増)、売買損益393百万円の利益(前年同期比125.5%増)となりました。
当連結会計年度の業績は営業収益7,041百万円(前年同期比19.1%増)、経常利益1,488百万円(前年同期比94.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益815百万円(前年同期比40.8%増)となりました。
当社の経営成績の概要は次のとおりであります。
1. 営業収益
当連結会計年度の営業収益は7,041百万円(前年同期比19.1%増・1,129百万円増加)となりました。受取手数料は6,644百万円(前年同期比15.9%増・910百万円増加)、売買損益は393百万円の利益(前年同期比125.5%増・218百万円増加)となりました。
その他の営業収益は3百万円(前年同期比2.0%増・0百万円増加)となりました。
2. 販売費及び一般管理費
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は5,542百万円(前年同期比7.4%増・382百万円増加)となりました。この主な内訳は、人件費が3,290百万円(前年同期比9.9%増・295百万円増加)、地代家賃が291百万円(前年同期比0.8%増・2百万円増加)、減価償却費が356百万円(前年同期比1.9%減・6百万円減少)、その他(電算機費等)が964百万円(前年同期比4.1%増・37百万円増加)となっております。
3. 営業損益
前連結会計年度に比べて営業収益は1,129百万円増加し、販売費及び一般管理費は382百万円増加した結果、当連結会計年度の営業利益は1,498百万円の利益(前年同期比99.5%増・747百万円増加)となりました。
4. 営業外収益
当連結会計年度の営業外収益は67百万円(前年同期比8.8%増・5百万円増加)となりました。この主な内訳は、受取利息が10百万円(前年同期比1,760.5%増・10百万円増加)、受取配当金が26百万円(前年同期比2.4%増・0百万円増加)、受取奨励金が4百万円(前年同期比45.4%増・1百万円増加)、貸倒引当金戻入額が1百万円(前年同期比6,036.0%増・1百万円増加)、その他(雑収入等)が24百万円(前年同期比31.7%増・5百万円増加)となっております。
5. 営業外費用
当連結会計年度の営業外費用は77百万円(前年同期比67.2%増・30百万円増加)となりました。この主な内訳は、支払利息が27百万円(前年同期比14.0%減・4百万円減少)、自己株式取得費用48百万円(前年同期比48百万円増)となっております。
6. 経常損益
前連結会計年度に比べて営業外収益は5百万円増加し、営業外費用は30百万円増加した結果、当連結会計年度の経常利益は1,488百万円の利益(前年同期比94.2%増・721百万円増加)となりました。
7. 特別利益
当連結会計年度の特別利益は126百万円(前年同期比126百万円増)となりました。この主な内訳は投資有価証券売却益74百万円(前年同期比74百万円増)、保険解約返戻金52百万円(前年同期比52百万円増)となっております。
8. 特別損失
当連結会計年度の特別損失は355百万円(前年同期比690.2%増・310百万円増加)となりました。この主な内訳は、固定資産売却損が3百万円(前年同期比120.9%増・1百万円増加)、投資有価証券評価損が56百万円(前年同期比56百万円増)、訴訟関連損失が1百万円(前年同期比52.2%増・0百万円増加)、訴訟損失引当金繰入額が237百万円(前年同期比489.1%増・197百万円増加)、商品取引責任準備金繰入額が55百万円(前年同期比55百万円増)、となっております。
9. 税金等調整前当期純損益
前連結会計年度に比べて特別利益は126百万円増加し、特別損失は310百万円増加した結果、当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は1,259百万円の利益(前年同期比74.6%増・538百万円増加)となりました
10. 法人税等
当連結会計年度の法人税等は444百万円(前年同期比211.7%増・301百万円増加)となりました。この主な内訳は、法人税、住民税及び事業税が402百万円(前年同期比144.1%増・237百万円増加))、法人税等調整額が41百万円(前年同期は△22百万円)となっております。
11. 親会社株主に帰属する当期純損益
当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損益は815百万円の利益(前年同期比40.8%増・236百万円増加)となりました。営業収益に対する比率は11.6%(前連結会計年度は9.8%)となっております。自己資本利益率は8.8%(前連結会計年度は6.1%)となりました。また、1株当たり当期純損益は107.3円の利益(前連結会計年度は72.2円の利益)となりました。
以上の結果、当社の財政状態の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度末の資産総額は55,030百万円、負債総額は46,173百万円、純資産は8,856百万円となっております。
当連結会計年度末の資産総額55,030百万円は、前連結会計年度末51,124百万円に比べて3,906百万円増加しております。この内訳は、流動資産が4,888百万円増加し、固定資産が982百万円減少したものであり、主に「保管有価証券」が3,407百万円、及び投資その他の資産の「その他」が688百万円減少した一方、「差入保証金」が7,050百万円、及び「現金及び預金」が1,042百万円増加したことによるものであります。なお、投資その他の資産の「その他」の減少の主な内訳は長期未収債権172百万円、及び保険料積立金515百万円となっております。
当連結会計年度末の負債総額46,173百万円は、前連結会計年度末41,455百万円に比べて4,717百万円増加しております。この内訳は、流動負債が4,753百万円増加し、固定負債が91百万円減少したものであり、主に「預り証拠金代用有価証券」が3,407百万円、及び「金融商品取引保証金」が1,378百万円減少した一方、「預り証拠金」が9,292百万円増加したことによるものであります。
当連結会計年度末の純資産8,856百万円は、前連結会計年度末9,668百万円に比べて811百万円減少しております。この内訳は、主に株主資本が750百万円、及びその他の包括利益累計額が61百万円減少したことによるものであります。
当連結会計年度末の自己資本比率は16.1%(前連結会計年度末は18.9%)となっております。
なお、後記「第5「経理の状況」1「連結財務諸表等」「注記事項」の(セグメント情報等)」に掲記したとおり、当社グループの事業セグメントは、主として商品先物取引の受託及び自己売買、並びに金融商品取引の受託及び自己売買の商品先物取引業等の単一セグメントであり重要性が乏しいため、セグメント情報の記載を省略しております
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて1,042百万円の増加となり、6,392百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金の取得は、2,250百万円(前年同期は972百万円の取得)となりました。これは、「差入保証金」の増加及び「金融商品取引保証金」の減少による資金の支出等があったものの、「預り証拠金」及び「税金等調整前当期純利益」が増加したことによる資金の収入等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金の取得は、838百万円(前年同期は554百万円の使用)となりました。これは、投資有価証券の取得による支出等があったものの、投資有価証券の売却及び保険積立金の解約による収入等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金の使用は、2,024百万円(前年同期は12百万円の取得)となりました。これは、長期借入金の返済及び自己株式の取得による支出等によるものであります。
③ 商品先物取引業等
1. 当連結会計年度における商品先物取引業等の営業収益は次のとおりであります。
(受取手数料)
(単位:千円)
区分 | 金額 | 前年同期増減比(%) | |
取引名及び市場名 | |||
商品先物取引 | |||
現物先物取引 | |||
農産物市場 | 20,064 | △47.2 | |
貴金属市場 | 4,610,548 | 59.4 | |
ゴム市場 | 38,004 | △42.6 | |
エネルギー市場 | 7,640 | △66.4 | |
中京石油市場 | 652 | △42.8 | |
小計 | 4,676,910 | 54.8 | |
現金決済先物取引 | |||
貴金属市場 | 559,705 | △30.1 | |
エネルギー市場 | 68,026 | △78.0 | |
小計 | 627,732 | △43.5 | |
国内市場計 | 5,304,642 | 28.4 | |
海外市場計 | 20,668 | △55.6 | |
商品先物取引計 | 5,325,310 | 27.5 | |
金融商品取引 | |||
取引所株価指数証拠金取引 | 1,162,111 | △11.9 | |
取引所為替証拠金取引 | 153,832 | △34.6 | |
証券取引 | 1,364 | △20.0 | |
国内市場計 | 1,317,308 | △15.3 | |
海外市場計 | 1,401 | ― | |
金融商品取引計 | 1,318,710 | △15.2 | |
合計 | 6,644,021 | 15.9 |
(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(売買損益)
(単位:千円)
区分 | 金額 | 前年同期増減比(%) | |
取引名及び市場名 | |||
商品先物取引 | |||
現物先物取引 | |||
農産物市場 | △3,071 | ― | |
貴金属市場 | 418,795 | 576.9 | |
ゴム市場 | △1,384 | ― | |
小計 | 414,339 | 873.2 | |
現金決済先物取引 | |||
貴金属市場 | △44,420 | ― | |
エネルギー市場 | 778 | △98.7 | |
小計 | △43,642 | ― | |
国内市場計 | 370,697 | 101.3 | |
海外市場計 | △5 | ― | |
商品先物取引計 | 370,691 | 101.3 | |
金融商品取引 | |||
CFD取引 | |||
取引所株価指数証拠金取引 | △14,104 | ― | |
小計 | △14,104 | ― | |
FX取引 | |||
取引所為替証拠金取引 | 32,371 | 113.1 | |
小計 | 32,371 | 571.6 | |
国内市場計 | 18,266 | ― | |
海外市場計 | 404 | ― | |
金融商品取引計 | 18,671 | ― | |
商品売買損益 | |||
現物売買取引 | 4,089 | △36.2 | |
商品売買損益計 | 4,089 | △36.2 | |
合計 | 393,452 | 125.5 |
(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2. 当社及び当社の関係会社の商品先物取引等の売買高に関して当連結会計年度中の状況は次のとおりであります。
(売買高の状況)
(単位:枚)
区分 | 委託 | 自己 | 合計 | ||||
取引名及び市場名 | 前年同期 増減比 (%) | 前年同期 増減比 (%) | 前年同期 増減比 (%) | ||||
商品先物取引 | |||||||
現物先物取引 | |||||||
農産物市場 | 148,632 | 72.2 | 286 | △84.8 | 148,918 | 68.9 | |
貴金属市場 | 656,409 | 41.0 | 101,792 | 68.4 | 758,201 | 44.1 | |
ゴム市場 | 50,558 | △31.2 | 2,841 | △45.3 | 53,399 | △32.1 | |
エネルギー市場 | 20,156 | △26.3 | ― | △100.0 | 20,156 | △27.6 | |
中京石油市場 | 1,912 | △44.0 | ― | ― | 1,912 | △44.0 | |
小計 | 877,667 | 33.7 | 104,919 | 54.2 | 982,586 | 35.7 | |
現金決済先物取引 | |||||||
貴金属市場 | 587,110 | △31.3 | 21,666 | △78.6 | 608,776 | △36.3 | |
エネルギー市場 | 194,881 | △13.4 | 12,589 | △51.6 | 207,470 | △17.4 | |
小計 | 781,991 | △27.6 | 34,255 | △73.1 | 816,246 | △32.4 | |
国内市場計 | 1,659,658 | △4.4 | 139,174 | △28.8 | 1,798,832 | △6.8 | |
海外市場計 | 38,857 | ― | 8 | ― | 38,865 | ― | |
商品先物取引計 | 1,698,515 | △2.1 | 139,182 | △28.8 | 1,837,697 | △4.8 | |
金融商品取引 | |||||||
取引所株価指数証拠金取引 | 1,157,601 | △7.7 | 12,021 | 130.2 | 1,169,622 | △7.1 | |
取引所為替証拠金取引 | 186,019 | △33.4 | 12,710 | 390.0 | 198,729 | △29.5 | |
国内市場計 | 1,343,620 | △12.4 | 24,731 | 216.4 | 1,368,351 | △11.2 | |
海外市場計 | 8,388 | ― | 80 | △81.3 | 8,468 | 1,878.5 | |
金融商品取引計 | 1,352,008 | △11.8 | 24,811 | 201.0 | 1,376,819 | △10.7 | |
合計 | 3,050,523 | △6.7 | 163,993 | △19.5 | 3,214,516 | △7.4 |
(注)1. 商品先物取引の主な商品別の委託売買高とその総委託売買高に対する割合は、次のとおりであります。
(単位:枚)
取引所名 銘柄名 | 前連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 取引所名 銘柄名 | 当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | ||
委託売買高 | 割合(%) | 委託売買高 | 割合(%) | ||
東京商品取引所 金限日 | 643,652 | 37.1 | 東京商品取引所 金限日 | 452,795 | 27.3 |
東京商品取引所 金(標準取引) | 265,466 | 15.3 | 東京商品取引所 金(標準取引) | 380,914 | 23.0 |
東京商品取引所 東京原油 | 225,026 | 13.0 | 東京商品取引所 白金(標準取引) | 273,777 | 16.5 |
東京商品取引所 白金(標準取引) | 198,295 | 11.4 | 東京商品取引所 東京原油 | 194,422 | 11.7 |
2. 商品先物取引における取引の最低単位を枚と呼び、例えば金限日1枚は100グラム、金(標準取引)1枚は1,000グラムというように1枚当たりの数量は商品ごとに異なります。
3. 当社及び当社の関係会社の商品先物取引業等に関する売買高のうち当連結会計年度末において反対売買等により決済されていない建玉の状況は次のとおりであります。
(未決済建玉の状況)
(単位:枚)
区分 | 委託 | 自己 | 合計 | ||||
取引名及び市場名 | 前年同期 増減比 (%) | 前年同期 増減比 (%) | 前年同期 増減比 (%) | ||||
商品先物取引 | |||||||
現物先物取引 | |||||||
農産物市場 | 1,973 | △37.7 | ― | ― | 1,973 | △37.7 | |
貴金属市場 | 16,134 | △28.6 | 170 | △66.9 | 16,304 | △29.4 | |
ゴム市場 | 1,530 | △39.8 | ― | △100.0 | 1,530 | △41.5 | |
エネルギー市場 | 732 | 0.8 | ― | ― | 732 | 0.8 | |
中京石油市場 | 6 | △80.0 | ― | ― | 6 | △80.0 | |
小計 | 20,375 | △29.9 | 170 | △71.1 | 20,545 | △30.7 | |
現金決済先物取引 | |||||||
貴金属市場 | 31,417 | △57.2 | ― | △100.0 | 31,417 | △57.5 | |
エネルギー市場 | 10,788 | 40.6 | 30 | 100.0 | 10,818 | 40.7 | |
小計 | 42,205 | △47.9 | 30 | △94.2 | 42,235 | △48.2 | |
国内市場計 | 62,580 | △43.2 | 200 | △81.9 | 62,780 | △43.6 | |
海外市場計 | 1,129 | ― | ― | ― | 1,129 | ― | |
商品先物取引計 | 63,709 | △42.1 | 200 | △81.9 | 63,909 | △42.5 | |
金融商品取引 | |||||||
取引所株価指数証拠金取引 | 185,620 | △20.4 | 1,025 | 0.5 | 186,645 | △20.3 | |
取引所為替証拠金取引 | 28,864 | △12.7 | ― | ― | 28,864 | △12.7 | |
国内市場計 | 214,484 | △19.4 | 1,025 | 0.5 | 215,509 | △19.3 | |
海外市場計 | 2 | ― | ― | ― | 2 | ― | |
金融商品取引計 | 214,486 | △19.4 | 1,025 | 0.5 | 215,511 | △19.3 | |
合計 | 278,195 | △26.1 | 1,225 | △42.3 | 279,420 | △26.2 |
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループ(以下、本項目において「当社」という。)の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
本項目においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末(2020年3月31日)現在において当社が判断したものであります。
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社は商品市場、証券市場及び為替市場等において多角的に商品先物取引業及び金融商品取引業を展開しており、また当該市場には経済情勢、相場環境等に起因するさまざまな不確実性が存在しております。
当連結会計年度における当社の状況は、商品先物取引部門の主力商品である金が米連邦準備制度理事会(FRB)が年内の利下げを視野に入れる方針を示唆したことから続伸場面となり、また新興国を中心に複数の中央銀行が利下げを発表したことや、米国の利下げ継続見通しが支援要因となり、9月には5,300円台となりました。2月に入り新型コロナウイルスの世界的感染拡大に歯止めがかからず、リスク回避の動きから5,913円の上場来高値を更新したことにより収益の増加に大きく貢献しました。
一方、証券市場は、米中閣僚級通商協議で第一段階の合意に向けて進展が見られたことや好調な米経済指標を背景にNYダウが堅調に推移、国内市場も1年2か月ぶりとなる24,000円台を示現しました。2月に入ると新型コロナウイルスの世界的感染拡大により、NYダウをはじめとした各国の株価急落を背景に、一時16,000円台前半まで下落し、その後は急落に対する修正から19,000円手前まで反発するなど、乱高下する展開となったものの、取引所株価指数証拠金取引(くりっく株365)の手数料収入が前年同期比12.0%減少したことにより、収益の増加に貢献することができませんでした。
当社の収益の柱は、主要な事業である商品先物取引業及び金融商品取引業の2つに分けられます。前年同期の収益比率では、商品先物取引業が金を中心とした商品市場の変動により手数料収入が増加しましたが、金融取引業は株価が乱高下した値動きとなり前年同期比で実績を下回りました。結果として手数料収益ベースで、商品先物取引業が73%、金融取引業が27%となりました。
また、当社の海外部門においては、マレーシア・クアラルンプールにパームオイル・ブローカーとして設立した現地法人豊商事マレーシアに海外部門を集約し、現地マレーシア市場及び東京市場並びにシンガポール市場での商品を扱える準備が整い、営業を開始したばかりではありますが海外部門において収益を計上できるよう営業活動に努めてまいります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社の当連結会計年度末における連結ベースのキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載しております。また、株主還元につきましては、「第2「事業の状況」3「配当政策」」に記載しております。
当社の資本の財源及び資金の流動性につきましては、㈱東京商品取引所から㈱大阪取引所への上場商品移管及び㈱東京金融商品取引所における新規上場商品に関連するシステム構築費用を、今後の資金需要として想定しており資金の流動性に対する影響は軽微であります。その資金の調達源として営業活動におけるキャッシュフロー及び手元資金を財源とします。新たな銀行借入や株式の新規発行等の資本取引の予定はありません。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度末における資産、負債の報告金額及び収益、費用の報告金額に影響を与える見積り、判断及び仮定を使用することが必要となります。当社の経営陣は連結財務諸表作成の基礎となる見積り、判断及び仮定を過去の経験や状況に応じ合理的と判断される入手可能な情報により継続的に検証し、意思決定を行っております。しかしながら、これらの見積り、判断及び仮定は不確実性を伴うため、実際の結果と異なる場合があります。
(訴訟損失引当金)
当社は、訴訟損失引当金について、商品取引事故及び金融商品取引事故等による損失に備えるため、損害賠償請求等に伴う損失の見込額のうち、商品取引責任準備金及び金融商品取引責任準備金の期末残高を勘案して訴訟損失引当金を計上しておりますが、当社に対する新たな訴訟の提起や判決等により、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、訴訟損失引当金が増額され訴訟損失引当金繰入額が計上される可能性があります。
(繰延税金資産)
当社は、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減産一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積もりの前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
なお、連結財務諸表の作成のための重要な会計基準等は「第5「経理の状況」1「連結財務諸表等」「注記事項」の(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりであります。