有価証券報告書-第31期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)
(業績等の概要)
(1) 業績
当社は、「日本の大動脈と社会基盤の発展に貢献する」という経営理念のもと、引き続きグループ全体で、事業の中核である鉄道事業における安全・安定輸送の確保を最優先に、サービスの一層の充実を図るとともに、社員の業務遂行能力の向上、設備の強化、設備投資を含めた業務執行全般にわたる効率化・低コスト化等の取組みを続け、収益力の強化に努めました。
東海道新幹線については、大規模改修工事や脱線・逸脱防止対策をはじめとする地震対策を引き続き推進したほか、「のぞみ10本ダイヤ」を活用して、需要にあわせたより弾力的な列車設定を実施するとともに、N700A(3次車)の投入を進めました。
在来線については、高架橋柱の耐震補強等の地震対策、降雨対策、落石対策、踏切保安設備改良等を計画的に推進しました。
営業施策については、「エクスプレス予約」の会員以外のお客様にもご利用いただける東海道・山陽新幹線の新しいネット予約・チケットレス乗車サービス「スマートEX」を開始し、「エクスプレス予約」とあわせて、ご利用拡大に向けた取組みを推進するなど積極的な展開に取り組みました。
超電導リニアによる中央新幹線については、工事実施計画の認可を受けた品川・名古屋間について、地域との連携を密にしながら、測量、設計、用地取得を進めるとともに、南アルプストンネル(静岡工区)等で工事契約を締結しました。また、これまでに工事契約を締結した工区において、地域にお住まいの方々へ工事概要や安全対策等についてご説明するための工事説明会を開催するなど、今後の工事着手に向けた準備に取り組みました。既に工事に着手している南アルプストンネル(山梨工区)では斜坑、先進坑に続き、3月に本坑の掘削を開始するとともに、南アルプストンネル(長野工区)では斜坑の掘削、品川駅(北工区・南工区)では地中連続壁の工事を行ったほか、名古屋駅、山岳トンネル、都市部非常口等で工事を着実に進めました。さらに、品川駅(非開削工区)、愛知県の坂下非常口、山梨県の第四南巨摩トンネル等で本格的な土木工事に着手しました。加えて昨年9月に、全幹法第9条に基づき、電気設備を中心とした中央新幹線品川・名古屋間工事実施計画(その2)の認可申請を行い、3月に認可を受けました。そのほか、3月に、大深度地下の公共的使用に関する特別措置法第14条に基づき、中央新幹線品川・名古屋間の大深度地下使用の認可申請を行いました。資金面では、中央新幹線の建設の推進のため、財政投融資を活用した長期借入を進め、鉄道・運輸機構より、1兆5,000億円の借入を行い、平成28年度の1兆5,000億円の借入とあわせて、総額3兆円の借入を完了しました。なお、工事契約において、契約の公正が損なわれた疑いがあるとの報道を踏まえ、社内に「公正契約等調査委員会」を設置しました。引き続き、工事の安全、環境の保全、地域との連携を重視して着実に取り組みます。
一方、山梨リニア実験線においては、営業線仕様の車両及び設備により、2編成を交互に運用して、引き続き長距離走行試験を実施することなどにより、営業運転に対応した保守体系の確立に向けた実証等を進めるとともに、超電導リニア技術のブラッシュアップ及び営業線の建設・運営・保守のコストダウンに取り組みました。また、「超電導リニア体験乗車」については、座席数を拡大して実施するとともに、会社発足30周年記念イベントとして「超電導リニアこども学習教室」を開催し、多くの方々に速度500km/h走行を体験していただきました。
海外における高速鉄道プロジェクトへの取組みについては、米国テキサスプロジェクトの事業開発主体に対し、現地子会社「High-Speed-Railway Technology Consulting Corporation」による技術支援を進めました。また、引き続き超電導リニアシステムの米国北東回廊プロジェクトへのプロモーション活動を推進しました。加えて、台湾高速鉄道において技術コンサルティングを進めました。さらに、日本型高速鉄道システムを国際的な標準とする取組みを推進しました。
鉄道以外の事業については、JRゲートタワーにおいて、昨年4月に商業施設、ホテル、レストラン街等の営業を開始し、全面開業を迎えました。これらの事業を円滑に立ち上げるとともに、JRセントラルタワーズと一体的に運営し、積極的な営業・宣伝活動を行うことで、収益の拡大を図りました。また、名古屋地区以外においても駅商業施設のリニューアルを行うなど既存事業の強化に努めました。
さらに、経営体力の一層の充実を図るため、安全を確保した上で設備投資を含めた業務執行全般にわたる効率化・低コスト化の徹底に取り組みました。
上記の結果、当期における全体の輸送実績(輸送人キロ)は、ビジネス、観光ともにご利用が順調に推移したことから、前期比3.1%増の642億1千2百万人キロとなりました。また、営業収益は前期比3.7%増の1兆8,220億円、経常利益は前期比3.5%増の5,835億円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比0.7%増の3,955億円となりました。
これをセグメントごとに示すと次のとおりです。
運輸業
東海道新幹線については、土木構造物の健全性の維持・向上を図るため、不断のコストダウンを重ねながら大規模改修工事を着実に進めました。地震対策については、脱線防止ガードについてより安全性の高い方式に改め、施工に着手するとともに、対象を全線に拡大した脱線・逸脱防止対策に取り組みました。また、「のぞみ10本ダイヤ」を活用して、お客様のご利用の多い時期や時間帯に、需要にあわせたより弾力的な列車設定に努め、多くのお客様にご利用いただきました。さらに、N700A(3次車)の投入、既存車両に地震ブレーキの停止距離短縮等の3次車の特長を反映させる改造工事を進めるとともに、客室内等への防犯カメラ増設工事を完了しました。加えて、可動柵について品川駅23番線ホーム及び新横浜駅1番線ホームへの追加設置を完了したほか、N700S確認試験車を新製し、走行試験を開始しました。そのほか、新型車掌携帯端末を導入し車内業務の見直しを行うなど、安全・安定輸送の確保と輸送サービスの一層の充実に取り組みました。
在来線については、高架橋柱の耐震補強等に加え、在来線車両の全般検査等を担う名古屋工場の耐震化工事等の地震対策を引き続き進めるとともに、降雨対策、落石対策、踏切保安設備改良等を計画的に推進しました。高架橋柱の耐震補強については、これまで進めてきた「東海地震において強く長い地震動を受けると想定される区間」の耐震化を完了しました。また、「しなの」、「ひだ」等の特急列車について、需要にあわせ弾力的に増発や増結を行いました。さらに、車種や両数が様々であるという当社の実情に適合した可動柵の開発を進め、金山駅での実証試験を開始するとともに、内方線付き点状ブロックへの取替については、乗降5千人以上の駅で当初計画から3年前倒して完了しました。加えて、東海道本線において、岡崎駅~豊橋駅間で集中旅客サービスシステムの使用を開始するとともに、静岡地区の運行管理システムの取替を完了しました。そのほか、運転士用タブレット端末の使用を全線区で開始するなど、安全・安定輸送の確保と輸送サービスの一層の充実に取り組みました。
新幹線・在来線共通の取組みとしては、駅の吊り天井の脱落防止対策を進めるとともに、自然災害等の異常時に想定される様々な状況に対応すべく実践的な訓練等を実施しました。また、無料Wi-Fiサービスを東海道新幹線全駅及び一部の在来線駅に拡大しました。さらに、会社発足30周年を機に、車両基地や研修施設の見学や駅での業務体験等の記念イベントを開催したほか、接客制服を刷新しました。
営業施策については、「エクスプレス予約」の会員以外のお客様にもご利用いただける東海道・山陽新幹線の新しいネット予約・チケットレス乗車サービス「スマートEX」を昨年9月に国内向けに、10月からは訪日外国人旅行者向けに開始し、ご利用拡大に取り組みました。「エクスプレス予約」では、往復割引商品の新設や早特商品のご利用条件見直し等によりサービスの充実を図りました。引き続き、観光型商品の販売促進にも取り組み、ご家族やグループでのご利用も含めた需要喚起を図るとともに、会社発足30周年にあわせ、「IC早特タイプ21」の記念価格での発売等を行いました。また、京都、奈良、東京、飛騨、伊勢志摩等の観光資源を活用した各種キャンペーンやこれと連動した旅行商品を強化しました。さらに、長野県等と連携した「信州デスティネーションキャンペーン」、井伊直虎ゆかりの地である浜松市、静岡県と連携したキャンペーン等を行った「Japan Highlights Travel」、「Shupo」等を通じて地域との連携を強化し、お客様のご利用拡大に努めました。加えて、TOICAについて、電子マネー加盟店舗の拡大等に取り組みました。
当期における輸送実績(輸送人キロ)は、ビジネス、観光ともにご利用が順調に推移したことから、東海道新幹線は前期比3.5%増の547億5千6百万人キロ、在来線は前期比1.0%増の94億5千6百万人キロとなりました。
バス事業においては、安全の確保を最優先として顧客ニーズを踏まえた商品設定を行い、収益の確保に努めました。
上記の結果、当期における営業収益は前期比3.2%増の1兆4,240億円、営業利益は前期比5.0%増の6,230億円となりました。
また、運輸業の大部分を占める当社の鉄道事業の営業成績は次のとおりです。
(注) 1 旅客運輸収入の新幹線及び在来線区分は、旅客輸送計数により区分しています。また、旅客輸送人員の合計については、新幹線、在来線の重複人員を除いて計上しています。
2 輸送効率の算出方法は次のとおりです。
3 旅客運輸収入のうち主要なJR他社(当該会社の旅行代理店等を含む。)による発売額の構成比は、次のとおりです。
流通業
流通業においては、昨年4月に「タカシマヤ ゲートタワーモール」を開業し、東海地区初登場を含め多彩な店舗を取りそろえ新たな顧客を獲得するとともに、「ジェイアール名古屋タカシマヤ」と「タカシマヤ ゲートタワーモール」が連携して、顧客ニーズを捉えた営業施策を展開することで、収益力の強化に努めました。
上記の結果、当期における営業収益は前期比7.7%増の2,553億円、営業利益は前期比9.6%増の82億円となりました。
不動産業
不動産業においては、昨年4月にJRゲートタワーを全面開業し、「ゲートタワープラザ レストラン街」やビックカメラ、ユニクロ、ジーユー等の営業を開始しました。また、駅の商業施設においては、静岡駅ビル「パルシェ」や浜松駅ビル「メイワン」に加え、名古屋駅のレストランゾーンの一部でリニューアルを行うなど、競争力、販売力の強化に取り組みました。さらに、岐阜市内の社宅跡地の開発において、分譲宅地を販売するとともに、分譲マンション「セントラルガーデン・レジデンス岐阜加納」についても販売を開始しました。
上記の結果、当期における営業収益は前期比13.7%増の780億円、営業利益は前期比2.1%増の185億円となりました。
その他
ホテル業においては、昨年4月に「名古屋JRゲートタワーホテル」の営業を開始しました。また、「名古屋マリオットアソシアホテル」をはじめとした既存のホテルでも、魅力ある商品の設定や販売力強化に取り組むとともに、海外からのお客様のニーズも踏まえたより高品質なサービスの提供に努めました。
旅行業においては、京都、奈良、東京、飛騨、伊勢志摩等の各方面へ向けた観光キャンペーン等と連動した魅力ある旅行商品を積極的に販売しました。
鉄道車両等製造業においては、鉄道車両や建設機械等の受注・製造に努めました。また、日本車輌製造株式会社が平成24年11月に受注した米国向け大型鉄道車両案件について、技術的な課題により予定どおり遂行することが困難となったことから、別の車両メーカーが製造を行うこととなり、昨年11月に本案件の直接の受注者である住友商事株式会社等との間で終局的に解決する旨の和解契約を締結しました。
上記の結果、当期における営業収益は前期比3.0%増の2,616億円、営業利益は前期比684.3%増の132億円となりました。
(財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析)
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営成績
① 営業収益
営業収益は、前期比650億円(3.7%)増の1兆8,220億円となりました。
運輸業においては、当社の運輸収入は前期比424億円(3.2%)増の1兆3,583億円となりました。東海道新幹線では、輸送実績が前期比3.5%増加した結果、運輸収入は前期比3.4%増の1兆2,532億円となりました。また、在来線においては、輸送実績が前期比1.0%増加した結果、運輸収入は前期比1.1%増の1,051億円となりました。
運輸業以外の事業においても、流通業、不動産業、その他において営業収益がそれぞれ前期比7.7%、13.7%、3.0%増加し、全ての事業区分において増収となりました。
② 営業費
営業費については、山梨リニア実験線の減価償却費が減少したものの、当社の技術開発費やJRゲートタワーの開業に伴う費用が増加したことなどにより、全体では前期比225億円(2.0%)増の1兆1,600億円となりました。
③ 営業利益
営業利益は、前期比424億円(6.9%)増の6,620億円となりました。
④ 営業外損益
営業外損益については、中央新幹線建設長期借入金による支払利息の増加等に伴い、前期と比べて228億円悪化しました。
⑤ 経常利益
経常利益は、前期比195億円(3.5%)増の5,835億円となりました。
⑥ 親会社株主に帰属する当期純利益
上記に法人税等などを加減した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比25億円(0.7%)増の3,955億円となりました。
(2) 財政状態
当期末の資産残高は、前期末から1兆8,560億円増加し8兆9,086億円となりました。また、セグメント別の資産残高について、運輸業は前期末から1兆8,956億円増加し8兆1,914億円、流通業は前期末から85億円増加し1,196億円、不動産業は前期末から43億円減少し3,719億円、その他は前期末から293億円増加し3,988億円となりました。
当期末の負債残高は、前期末から1兆4,979億円増加し5兆8,239億円となりました。なお、長期債務の当期末残高は、中央新幹線建設長期借入金1兆5,000億円の借入を実施したことなどにより、4兆8,562億円となりました。そのうち、中央新幹線建設長期借入金を除いた長期債務残高は1兆8,562億円となり、前期末と比べ392億円減少しました。
当期末の純資産残高は、前期末から3,580億円増加し3兆847億円となった一方、中央新幹線建設長期借入金1兆5,000億円の借入を実施したことなどにより、自己資本比率は前期末の38.2%から当期末は34.3%になりました。
(3) 資本の財源及び資金の流動性
① キャッシュ・フローの状況
当期末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前期末と比べ3,678億円増の7,824億円となりました。
営業活動の結果得られた資金は、ビジネス、観光ともにご利用が順調に推移し、当社の運輸収入が増加したことに加え、法人税等の支払額が減少したことなどにより、前期比290億円増の6,095億円となりました。
投資活動の結果支出した資金は、中央新幹線建設資金管理信託の取崩しによる収入が増加したことに加え、資金運用による支出(純額)が減少したことなどにより、前期比2,330億円減の1兆6,764億円となりました。
財務活動の結果得られた資金は、社債の発行額が減少した一方で、長期債務の返済額が減少したことなどから、前期比95億円増の1兆4,347億円となりました。
営業活動の結果得られた資金から有形・無形固定資産の取得等の結果支出した資金を引いた実質的なフリー・キャッシュ・フローは前期比521億円増の3,025億円となりました。
② 重要な資本的支出の予定及びその資金の源泉
「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1) 重要な設備の新設等」に記載のとおりです。
③ 資金調達
当社では、円滑な資金調達を行うため、当期末時点でムーディーズ・ジャパン株式会社よりAa3、株式会社格付投資情報センターよりAA、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン株式会社よりAA-、株式会社日本格付研究所よりAAAの格付けを取得しています。
また、短期的な流動性確保のため、当期末現在1,000億円のコミットメントラインを設定しています。
(1) 業績
当社は、「日本の大動脈と社会基盤の発展に貢献する」という経営理念のもと、引き続きグループ全体で、事業の中核である鉄道事業における安全・安定輸送の確保を最優先に、サービスの一層の充実を図るとともに、社員の業務遂行能力の向上、設備の強化、設備投資を含めた業務執行全般にわたる効率化・低コスト化等の取組みを続け、収益力の強化に努めました。
東海道新幹線については、大規模改修工事や脱線・逸脱防止対策をはじめとする地震対策を引き続き推進したほか、「のぞみ10本ダイヤ」を活用して、需要にあわせたより弾力的な列車設定を実施するとともに、N700A(3次車)の投入を進めました。
在来線については、高架橋柱の耐震補強等の地震対策、降雨対策、落石対策、踏切保安設備改良等を計画的に推進しました。
営業施策については、「エクスプレス予約」の会員以外のお客様にもご利用いただける東海道・山陽新幹線の新しいネット予約・チケットレス乗車サービス「スマートEX」を開始し、「エクスプレス予約」とあわせて、ご利用拡大に向けた取組みを推進するなど積極的な展開に取り組みました。
超電導リニアによる中央新幹線については、工事実施計画の認可を受けた品川・名古屋間について、地域との連携を密にしながら、測量、設計、用地取得を進めるとともに、南アルプストンネル(静岡工区)等で工事契約を締結しました。また、これまでに工事契約を締結した工区において、地域にお住まいの方々へ工事概要や安全対策等についてご説明するための工事説明会を開催するなど、今後の工事着手に向けた準備に取り組みました。既に工事に着手している南アルプストンネル(山梨工区)では斜坑、先進坑に続き、3月に本坑の掘削を開始するとともに、南アルプストンネル(長野工区)では斜坑の掘削、品川駅(北工区・南工区)では地中連続壁の工事を行ったほか、名古屋駅、山岳トンネル、都市部非常口等で工事を着実に進めました。さらに、品川駅(非開削工区)、愛知県の坂下非常口、山梨県の第四南巨摩トンネル等で本格的な土木工事に着手しました。加えて昨年9月に、全幹法第9条に基づき、電気設備を中心とした中央新幹線品川・名古屋間工事実施計画(その2)の認可申請を行い、3月に認可を受けました。そのほか、3月に、大深度地下の公共的使用に関する特別措置法第14条に基づき、中央新幹線品川・名古屋間の大深度地下使用の認可申請を行いました。資金面では、中央新幹線の建設の推進のため、財政投融資を活用した長期借入を進め、鉄道・運輸機構より、1兆5,000億円の借入を行い、平成28年度の1兆5,000億円の借入とあわせて、総額3兆円の借入を完了しました。なお、工事契約において、契約の公正が損なわれた疑いがあるとの報道を踏まえ、社内に「公正契約等調査委員会」を設置しました。引き続き、工事の安全、環境の保全、地域との連携を重視して着実に取り組みます。
一方、山梨リニア実験線においては、営業線仕様の車両及び設備により、2編成を交互に運用して、引き続き長距離走行試験を実施することなどにより、営業運転に対応した保守体系の確立に向けた実証等を進めるとともに、超電導リニア技術のブラッシュアップ及び営業線の建設・運営・保守のコストダウンに取り組みました。また、「超電導リニア体験乗車」については、座席数を拡大して実施するとともに、会社発足30周年記念イベントとして「超電導リニアこども学習教室」を開催し、多くの方々に速度500km/h走行を体験していただきました。
海外における高速鉄道プロジェクトへの取組みについては、米国テキサスプロジェクトの事業開発主体に対し、現地子会社「High-Speed-Railway Technology Consulting Corporation」による技術支援を進めました。また、引き続き超電導リニアシステムの米国北東回廊プロジェクトへのプロモーション活動を推進しました。加えて、台湾高速鉄道において技術コンサルティングを進めました。さらに、日本型高速鉄道システムを国際的な標準とする取組みを推進しました。
鉄道以外の事業については、JRゲートタワーにおいて、昨年4月に商業施設、ホテル、レストラン街等の営業を開始し、全面開業を迎えました。これらの事業を円滑に立ち上げるとともに、JRセントラルタワーズと一体的に運営し、積極的な営業・宣伝活動を行うことで、収益の拡大を図りました。また、名古屋地区以外においても駅商業施設のリニューアルを行うなど既存事業の強化に努めました。
さらに、経営体力の一層の充実を図るため、安全を確保した上で設備投資を含めた業務執行全般にわたる効率化・低コスト化の徹底に取り組みました。
上記の結果、当期における全体の輸送実績(輸送人キロ)は、ビジネス、観光ともにご利用が順調に推移したことから、前期比3.1%増の642億1千2百万人キロとなりました。また、営業収益は前期比3.7%増の1兆8,220億円、経常利益は前期比3.5%増の5,835億円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比0.7%増の3,955億円となりました。
これをセグメントごとに示すと次のとおりです。
運輸業
東海道新幹線については、土木構造物の健全性の維持・向上を図るため、不断のコストダウンを重ねながら大規模改修工事を着実に進めました。地震対策については、脱線防止ガードについてより安全性の高い方式に改め、施工に着手するとともに、対象を全線に拡大した脱線・逸脱防止対策に取り組みました。また、「のぞみ10本ダイヤ」を活用して、お客様のご利用の多い時期や時間帯に、需要にあわせたより弾力的な列車設定に努め、多くのお客様にご利用いただきました。さらに、N700A(3次車)の投入、既存車両に地震ブレーキの停止距離短縮等の3次車の特長を反映させる改造工事を進めるとともに、客室内等への防犯カメラ増設工事を完了しました。加えて、可動柵について品川駅23番線ホーム及び新横浜駅1番線ホームへの追加設置を完了したほか、N700S確認試験車を新製し、走行試験を開始しました。そのほか、新型車掌携帯端末を導入し車内業務の見直しを行うなど、安全・安定輸送の確保と輸送サービスの一層の充実に取り組みました。
在来線については、高架橋柱の耐震補強等に加え、在来線車両の全般検査等を担う名古屋工場の耐震化工事等の地震対策を引き続き進めるとともに、降雨対策、落石対策、踏切保安設備改良等を計画的に推進しました。高架橋柱の耐震補強については、これまで進めてきた「東海地震において強く長い地震動を受けると想定される区間」の耐震化を完了しました。また、「しなの」、「ひだ」等の特急列車について、需要にあわせ弾力的に増発や増結を行いました。さらに、車種や両数が様々であるという当社の実情に適合した可動柵の開発を進め、金山駅での実証試験を開始するとともに、内方線付き点状ブロックへの取替については、乗降5千人以上の駅で当初計画から3年前倒して完了しました。加えて、東海道本線において、岡崎駅~豊橋駅間で集中旅客サービスシステムの使用を開始するとともに、静岡地区の運行管理システムの取替を完了しました。そのほか、運転士用タブレット端末の使用を全線区で開始するなど、安全・安定輸送の確保と輸送サービスの一層の充実に取り組みました。
新幹線・在来線共通の取組みとしては、駅の吊り天井の脱落防止対策を進めるとともに、自然災害等の異常時に想定される様々な状況に対応すべく実践的な訓練等を実施しました。また、無料Wi-Fiサービスを東海道新幹線全駅及び一部の在来線駅に拡大しました。さらに、会社発足30周年を機に、車両基地や研修施設の見学や駅での業務体験等の記念イベントを開催したほか、接客制服を刷新しました。
営業施策については、「エクスプレス予約」の会員以外のお客様にもご利用いただける東海道・山陽新幹線の新しいネット予約・チケットレス乗車サービス「スマートEX」を昨年9月に国内向けに、10月からは訪日外国人旅行者向けに開始し、ご利用拡大に取り組みました。「エクスプレス予約」では、往復割引商品の新設や早特商品のご利用条件見直し等によりサービスの充実を図りました。引き続き、観光型商品の販売促進にも取り組み、ご家族やグループでのご利用も含めた需要喚起を図るとともに、会社発足30周年にあわせ、「IC早特タイプ21」の記念価格での発売等を行いました。また、京都、奈良、東京、飛騨、伊勢志摩等の観光資源を活用した各種キャンペーンやこれと連動した旅行商品を強化しました。さらに、長野県等と連携した「信州デスティネーションキャンペーン」、井伊直虎ゆかりの地である浜松市、静岡県と連携したキャンペーン等を行った「Japan Highlights Travel」、「Shupo」等を通じて地域との連携を強化し、お客様のご利用拡大に努めました。加えて、TOICAについて、電子マネー加盟店舗の拡大等に取り組みました。
当期における輸送実績(輸送人キロ)は、ビジネス、観光ともにご利用が順調に推移したことから、東海道新幹線は前期比3.5%増の547億5千6百万人キロ、在来線は前期比1.0%増の94億5千6百万人キロとなりました。
バス事業においては、安全の確保を最優先として顧客ニーズを踏まえた商品設定を行い、収益の確保に努めました。
上記の結果、当期における営業収益は前期比3.2%増の1兆4,240億円、営業利益は前期比5.0%増の6,230億円となりました。
また、運輸業の大部分を占める当社の鉄道事業の営業成績は次のとおりです。
| 区分 | 単位 | 前事業年度 (自 平成28年4月1日 至 平成29年3月31日) | 当事業年度 (自 平成29年4月1日 至 平成30年3月31日) | ||||||
| 新幹線 | 在来線 | 合計 | 新幹線 | 在来線 | 合計 | ||||
| 営業日数 | 日 | 365 | 365 | 365 | 365 | 365 | 365 | ||
| 営業キロ | キロ | 552.6 | 1,418.2 | 1,970.8 | 552.6 | 1,418.2 | 1,970.8 | ||
| 客車走行キロ | 千キロ | 1,001,614 | 224,048 | 1,225,662 | 1,010,689 | 223,648 | 1,234,337 | ||
| 旅 客 輸 送 人 員 | 定期 | 千人 | 14,697 | 265,439 | 277,849 | 14,981 | 268,655 | 281,299 | |
| 定期外 | 千人 | 150,221 | 139,745 | 279,319 | 154,991 | 141,823 | 285,819 | ||
| 計 | 千人 | 164,919 | 405,183 | 557,168 | 169,972 | 410,479 | 567,119 | ||
| 旅客輸送人キロ | 百万人キロ | 52,909 | 9,359 | 62,269 | 54,756 | 9,456 | 64,212 | ||
| 旅 客 運 輸 収 入 | 旅 客 運 賃 ・ 料 金 | 定期 | 百万円 | 17,370 | 34,839 | 52,210 | 17,698 | 35,132 | 52,830 |
| 定期外 | 百万円 | 1,194,552 | 69,116 | 1,263,668 | 1,235,549 | 69,968 | 1,305,518 | ||
| 計 | 百万円 | 1,211,923 | 103,955 | 1,315,879 | 1,253,247 | 105,101 | 1,358,349 | ||
| 小荷物運賃・ 料金 | 百万円 | ― | 10 | 10 | ― | 10 | 10 | ||
| 合計 | 百万円 | 1,211,923 | 103,966 | 1,315,890 | 1,253,247 | 105,111 | 1,358,359 | ||
| 鉄道線路使用料収入 | 百万円 | ― | ― | 4,265 | ― | ― | 4,142 | ||
| 運輸雑収 | 百万円 | ― | ― | 51,750 | ― | ― | 52,382 | ||
| 収入合計 | 百万円 | ― | ― | 1,371,906 | ― | ― | 1,414,884 | ||
| 輸送効率 | % | 座席利用率 63.9 | 乗車効率 32.4 | ― | 座席利用率 65.5 | 乗車効率 32.7 | ― | ||
(注) 1 旅客運輸収入の新幹線及び在来線区分は、旅客輸送計数により区分しています。また、旅客輸送人員の合計については、新幹線、在来線の重複人員を除いて計上しています。
2 輸送効率の算出方法は次のとおりです。
| 新幹線座席利用率= | 旅客輸送人キロ | ×100 | |
| 座席キロ(編成別列車キロ×座席数) |
| 在来線乗車効率 = | 旅客輸送人キロ | ×100 | |
| 客車走行キロ×平均定員 |
3 旅客運輸収入のうち主要なJR他社(当該会社の旅行代理店等を含む。)による発売額の構成比は、次のとおりです。
| 会社名 | 前事業年度(%) | 当事業年度(%) | |
| 東日本旅客鉄道株式会社 | 26.3 | 25.5 | |
| 西日本旅客鉄道株式会社 | 19.9 | 19.4 |
流通業
流通業においては、昨年4月に「タカシマヤ ゲートタワーモール」を開業し、東海地区初登場を含め多彩な店舗を取りそろえ新たな顧客を獲得するとともに、「ジェイアール名古屋タカシマヤ」と「タカシマヤ ゲートタワーモール」が連携して、顧客ニーズを捉えた営業施策を展開することで、収益力の強化に努めました。
上記の結果、当期における営業収益は前期比7.7%増の2,553億円、営業利益は前期比9.6%増の82億円となりました。
不動産業
不動産業においては、昨年4月にJRゲートタワーを全面開業し、「ゲートタワープラザ レストラン街」やビックカメラ、ユニクロ、ジーユー等の営業を開始しました。また、駅の商業施設においては、静岡駅ビル「パルシェ」や浜松駅ビル「メイワン」に加え、名古屋駅のレストランゾーンの一部でリニューアルを行うなど、競争力、販売力の強化に取り組みました。さらに、岐阜市内の社宅跡地の開発において、分譲宅地を販売するとともに、分譲マンション「セントラルガーデン・レジデンス岐阜加納」についても販売を開始しました。
上記の結果、当期における営業収益は前期比13.7%増の780億円、営業利益は前期比2.1%増の185億円となりました。
その他
ホテル業においては、昨年4月に「名古屋JRゲートタワーホテル」の営業を開始しました。また、「名古屋マリオットアソシアホテル」をはじめとした既存のホテルでも、魅力ある商品の設定や販売力強化に取り組むとともに、海外からのお客様のニーズも踏まえたより高品質なサービスの提供に努めました。
旅行業においては、京都、奈良、東京、飛騨、伊勢志摩等の各方面へ向けた観光キャンペーン等と連動した魅力ある旅行商品を積極的に販売しました。
鉄道車両等製造業においては、鉄道車両や建設機械等の受注・製造に努めました。また、日本車輌製造株式会社が平成24年11月に受注した米国向け大型鉄道車両案件について、技術的な課題により予定どおり遂行することが困難となったことから、別の車両メーカーが製造を行うこととなり、昨年11月に本案件の直接の受注者である住友商事株式会社等との間で終局的に解決する旨の和解契約を締結しました。
上記の結果、当期における営業収益は前期比3.0%増の2,616億円、営業利益は前期比684.3%増の132億円となりました。
(財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析)
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営成績
① 営業収益
営業収益は、前期比650億円(3.7%)増の1兆8,220億円となりました。
運輸業においては、当社の運輸収入は前期比424億円(3.2%)増の1兆3,583億円となりました。東海道新幹線では、輸送実績が前期比3.5%増加した結果、運輸収入は前期比3.4%増の1兆2,532億円となりました。また、在来線においては、輸送実績が前期比1.0%増加した結果、運輸収入は前期比1.1%増の1,051億円となりました。
運輸業以外の事業においても、流通業、不動産業、その他において営業収益がそれぞれ前期比7.7%、13.7%、3.0%増加し、全ての事業区分において増収となりました。
② 営業費
営業費については、山梨リニア実験線の減価償却費が減少したものの、当社の技術開発費やJRゲートタワーの開業に伴う費用が増加したことなどにより、全体では前期比225億円(2.0%)増の1兆1,600億円となりました。
③ 営業利益
営業利益は、前期比424億円(6.9%)増の6,620億円となりました。
④ 営業外損益
営業外損益については、中央新幹線建設長期借入金による支払利息の増加等に伴い、前期と比べて228億円悪化しました。
⑤ 経常利益
経常利益は、前期比195億円(3.5%)増の5,835億円となりました。
⑥ 親会社株主に帰属する当期純利益
上記に法人税等などを加減した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比25億円(0.7%)増の3,955億円となりました。
(2) 財政状態
当期末の資産残高は、前期末から1兆8,560億円増加し8兆9,086億円となりました。また、セグメント別の資産残高について、運輸業は前期末から1兆8,956億円増加し8兆1,914億円、流通業は前期末から85億円増加し1,196億円、不動産業は前期末から43億円減少し3,719億円、その他は前期末から293億円増加し3,988億円となりました。
当期末の負債残高は、前期末から1兆4,979億円増加し5兆8,239億円となりました。なお、長期債務の当期末残高は、中央新幹線建設長期借入金1兆5,000億円の借入を実施したことなどにより、4兆8,562億円となりました。そのうち、中央新幹線建設長期借入金を除いた長期債務残高は1兆8,562億円となり、前期末と比べ392億円減少しました。
当期末の純資産残高は、前期末から3,580億円増加し3兆847億円となった一方、中央新幹線建設長期借入金1兆5,000億円の借入を実施したことなどにより、自己資本比率は前期末の38.2%から当期末は34.3%になりました。
(3) 資本の財源及び資金の流動性
① キャッシュ・フローの状況
当期末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前期末と比べ3,678億円増の7,824億円となりました。
営業活動の結果得られた資金は、ビジネス、観光ともにご利用が順調に推移し、当社の運輸収入が増加したことに加え、法人税等の支払額が減少したことなどにより、前期比290億円増の6,095億円となりました。
投資活動の結果支出した資金は、中央新幹線建設資金管理信託の取崩しによる収入が増加したことに加え、資金運用による支出(純額)が減少したことなどにより、前期比2,330億円減の1兆6,764億円となりました。
財務活動の結果得られた資金は、社債の発行額が減少した一方で、長期債務の返済額が減少したことなどから、前期比95億円増の1兆4,347億円となりました。
営業活動の結果得られた資金から有形・無形固定資産の取得等の結果支出した資金を引いた実質的なフリー・キャッシュ・フローは前期比521億円増の3,025億円となりました。
② 重要な資本的支出の予定及びその資金の源泉
「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1) 重要な設備の新設等」に記載のとおりです。
③ 資金調達
当社では、円滑な資金調達を行うため、当期末時点でムーディーズ・ジャパン株式会社よりAa3、株式会社格付投資情報センターよりAA、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン株式会社よりAA-、株式会社日本格付研究所よりAAAの格付けを取得しています。
また、短期的な流動性確保のため、当期末現在1,000億円のコミットメントラインを設定しています。