有価証券報告書-第33期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
(業績の概要)
当社グループは、事業の中核である鉄道事業における安全・安定輸送の確保を最優先に、サービスの一層の充実を図るとともに、社員の業務遂行能力の向上、設備の強化、設備投資を含めた業務執行全般にわたる効率化・低コスト化等の取組みを続け、収益力の強化に努めました。2月以降は、新型コロナウイルス感染症の発生を受けた外出自粛等の影響により、経営環境が厳しくなりましたが、感染防止に取り組むとともに、各種施策を着実に進めました。
東海道新幹線については、大規模改修工事や脱線・逸脱防止対策をはじめとする地震対策を引き続き推進したほか、「のぞみ10本ダイヤ」を活用して、需要にあわせたより弾力的な列車設定に取り組みました。また、N700A(3次車)の投入を完了し、車種統一に伴う全列車の最高速度285km/h化等により3月に「のぞみ12本ダイヤ」を実現しました。さらに、N700S確認試験車による走行試験を引き続き実施しました。
在来線については、名古屋工場の耐震化等の地震対策、降雨対策、落石対策、踏切保安設備改良等を計画的に推進しました。
営業施策については、東海道・山陽新幹線のネット予約・チケットレス乗車サービスである「エクスプレス予約」及び「スマートEX」をより多くのお客様にご利用いただくための取組みを実施し、昨年9月には「スマートEX」の登録者数が300万人を超えました。また、沿線の観光資源の魅力を活かした営業施策を推進するなど、ご利用拡大に向けた取組みを積極的に展開しました。
超電導リニアによる中央新幹線については、工事実施計画の認可を受けた品川・名古屋間について、地域との連携を密にしながら、測量、設計、用地取得を進めるとともに、名古屋駅東山線工区や岐阜県駅(仮称)、中部総合車両基地等で工事契約を締結しました。また、都市部非常口の工事契約については、品川・名古屋間に設置する13箇所全てにおいて締結しました。さらに、これまでに工事契約を締結した工区において、地域にお住まいの方々へ工事概要や安全対策等についてご説明するための工事説明会を開催したほか、南アルプストンネル静岡工区については、引き続き工事作業員等の宿舎施設の建設を進めるとともに、静岡市と協定書を締結した中央新幹線の建設に伴う林道東俣線の整備を進めるなど、今後の工事着手に向けて取り組みました。工事については、新たに神奈川県の犬蔵非常口、愛知県の第一中京圏トンネル西尾工区及び中間駅として初めてとなる神奈川県駅(仮称)で本格的な工事に着手しました。既に工事に着手している南アルプストンネル山梨工区では斜坑、先進坑及び本坑の掘削、長野工区では斜坑及び先進坑の掘削を進めるとともに、品川駅及び名古屋駅では工事桁等を施工したほか、山岳トンネル、都市部非常口等で工事を着実に進めました。このうち北品川非常口では、都市部非常口として初めて立坑本体が完成するとともに、同非常口からトンネルを掘削するシールドマシンが完成し、搬入する準備を進めました。引き続き、工事の安全、環境の保全、地域との連携を重視して着実に取り組みます。
一方、山梨リニア実験線においては、営業線仕様の車両及び設備により、2編成を交互に運用して、引き続き長距離走行試験を実施することなどにより、営業運転に対応した保守体系の確立に向けた実証等を進めるとともに、超電導リニア技術のブラッシュアップ及び営業線の建設・運営・保守のコストダウンに取り組みました。また、走行試験を着実に行う中で、「超電導リニア体験乗車」を実施し、多くの方々に速度500km/h走行を体験していただきました。さらに、営業車両の仕様策定に向け、L0系をさらにブラッシュアップさせた改良型試験車が3月に完成しました。
海外における高速鉄道プロジェクトへの取組みについては、米国テキサスプロジェクトの事業開発主体に対して、現地子会社「High-Speed-Railway Technology Consulting Corporation」により技術支援を進めるとともに、現地子会社「High-Speed-Railway Integration Corporation」により日本側企業とともにプロジェクトのコアシステムの受注契約に向け、事業開発主体との協議等を行いました。また、引き続き超電導リニアシステムを用いた米国北東回廊プロジェクトのプロモーション活動を推進しました。さらに、台湾高速鉄道において技術コンサルティングを進めました。加えて、日本型高速鉄道システムを国際的な標準とする取組みを推進しました。
鉄道以外の事業については、JRセントラルタワーズとJRゲートタワーを一体的に運営し、積極的な営業・宣伝活動を行うことで、収益の拡大を図ったほか、JRセントラルタワーズでは、開業20周年の取組みを行いました。また、流通事業の活性化や駅商業施設のリニューアルを行い、競争力、販売力の強化に努めました。
さらに、経営体力の一層の充実を図るため、安全を確保した上で設備投資を含めた業務執行全般にわたる効率化・低コスト化の徹底に取り組みました。
しかしながら、これらの諸施策を進めた一方で、前述のとおり、2月以降、新型コロナウイルス感染症の発生を受けた外出自粛等の影響により、ビジネス、観光ともにご利用が大幅に減少したことから、当期における全体の輸送実績(輸送人キロ)は、前期比3.5%減の634億2千7百万人キロとなりました。また、営業収益は前期比1.8%減の1兆8,446億円、経常利益は前期比9.2%減の5,742億円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比9.3%減の3,978億円となりました。
これをセグメントごとに示すと次のとおりです。
運輸業
東海道新幹線については、土木構造物の健全性の維持・向上を図るため、不断のコストダウンを重ねながら大規模改修工事を着実に進めました。地震対策については、脱線防止ガードの敷設を進めるなど、東海道新幹線全線を対象にした脱線・逸脱防止対策に取り組みました。また、「のぞみ10本ダイヤ」を活用して、お客様のご利用の多い時期や時間帯に、需要にあわせたより弾力的な列車設定に努めるとともに、N700A(3次車)の投入を完了し、車種統一に伴う全列車の最高速度285km/h化等により3月に「のぞみ12本ダイヤ」を実現しました。さらに、既存車両に地震ブレーキの停止距離短縮等の3次車の特長を反映させる改造工事を昨年9月に完了しました。令和2年7月に営業運転開始を予定しているN700Sについては、投入に向けた準備を進めるとともに、N700S確認試験車により、360km/hでの速度向上試験、バッテリ自走システム走行試験及び長期耐久試験を行いました。加えて、可動柵について、新大阪駅20~26番線ホームへの設置工事を進め、25、26番線ホームでの使用を開始するなど、安全・安定輸送の確保と輸送サービスの一層の充実に取り組みました。
在来線については、名古屋工場の耐震化等に加え、高架橋柱の耐震化に着手するなど地震対策を引き続き進めるとともに、降雨対策、落石対策、踏切保安設備改良等を計画的に推進しました。また、「しなの」、「ひだ」等の特急列車について、需要にあわせ弾力的に増発や増結を行いました。さらに、可動柵について、金山駅東海道本線ホームへの設置工事を進めるとともに、内方線付き点状ブロックの整備対象を乗降1千人以上の駅に拡大して取替を進めるなど、安全・安定輸送の確保と輸送サービスの一層の充実に取り組みました。加えて、ハイブリッド方式の次期特急車両HC85系の試験走行車を新製し、基本性能試験を開始したほか、3月には、東海道本線御厨駅を開業しました。
新幹線・在来線共通の取組みとしては、自然災害や不測の事態等の異常時に想定される様々な状況に対応すべく実践的な訓練等を実施するとともに、G20大阪サミットの開催にあたり、関係機関と連携し、駅や車内等における安全の確保に努めました。また、ラグビーワールドカップ2019の開催にあたり、臨時列車を運転するなど、利便性の確保に努めました。さらに、地震対策として、駅の吊り天井の脱落防止対策を進めました。
営業施策については、東海道・山陽新幹線のネット予約・チケットレス乗車サービスである「エクスプレス予約」及び「スマートEX」をより多くのお客様にご利用いただくために積極的な宣伝活動を行うとともに、「EXのぞみファミリー早特」をはじめとした観光型商品等の販売促進に取り組み、幅広く需要の喚起を図りました。また、京都、奈良、東京、飛騨等の観光資源を活用した各種キャンペーンを展開し、これと連動した旅行商品を設定しました。さらに、JR6社で行う「静岡デスティネーションキャンペーン」を通じて、自治体や旅行会社等と連携し、魅力ある観光素材・商品の開発や観光列車の運行等に取り組むとともに、「Japan Highlights Travel」、「Shupo」等を通じて地域との連携を強化し、お客様のご利用拡大に努めました。加えて、訪日外国人の利便性向上を図るため、東海道新幹線における車内の無料Wi-Fiサービスの整備を完了するとともに、「スマートEX」の英語版予約サイトでのサービスを開始したほか、在来線駅のトイレの洋式化を進めました。そのほか、ラグビーワールドカップ2019の観戦を目的とした訪日外国人に向けた商品の拡大及び販売促進等に取り組みました。
しかしながら、新型コロナウイルス感染症の発生を受けた外出自粛等の影響により、ビジネス、観光ともにご利用が大幅に減少したことから、当期における輸送実績(輸送人キロ)は、東海道新幹線は前期比4.0%減の540億9百万人キロ、在来線は前期比0.4%減の94億1千8百万人キロとなりました。
バス事業においては、安全の確保を最優先として顧客ニーズを踏まえた商品設定を行い、収益の確保に努めました。
上記の結果、当期における営業収益は前期比2.1%減の1兆4,312億円、営業利益は前期比7.1%減の6,176億円となりました。
また、運輸業の大部分を占める当社の鉄道事業の営業成績は次のとおりです。
(注) 1 旅客運輸収入の新幹線及び在来線区分は、旅客輸送計数により区分しています。また、旅客輸送人員の合計については、新幹線、在来線の重複人員を除いて計上しています。
2 輸送効率の算出方法は次のとおりです。
3 旅客運輸収入のうち主要なJR他社(当該会社の旅行代理店等を含む。)による発売額の構成比は、次のとおりです。
流通業
流通業においては、「ジェイアール名古屋タカシマヤ」と「タカシマヤ ゲートタワーモール」が連携して、顧客ニーズを捉えた営業施策を展開することで、収益力の強化に努めました。「ジェイアール名古屋タカシマヤ」においては、化粧品売場のリニューアルを実施しました。また、駅構内の店舗においてもリニューアルを実施したほか、品揃えの拡充等を通じて競争力を高めました。
しかしながら、新型コロナウイルス感染症の発生を受けた外出自粛等の影響により、当期における営業収益は前期比0.6%減の2,632億円、営業利益は前期比23.2%減の74億円となりました。
不動産業
不動産業においては、「アスティ大垣」や「アスティ静岡東館」でリニューアルを実施するなど、競争力、販売力の強化に取り組みました。
しかしながら、新型コロナウイルス感染症の発生を受けた外出自粛等の影響により、当期における営業収益は前期比2.6%減の799億円、営業利益は前期比6.3%減の190億円となりました。
その他
ホテル業においては、魅力ある商品の設定や販売力強化に取り組むとともに、「名古屋マリオットアソシアホテル」において、「コンシェルジュラウンジ」の改装を実施するなど、海外からのお客様のニーズも踏まえたより高品質なサービスの提供に努めました。
旅行業においては、京都、奈良、東京、飛騨等の各方面へ向けた観光キャンペーン等と連動した魅力ある旅行商品を積極的に販売しました。
鉄道車両等製造業においては、鉄道車両や建設機械等の受注・製造に努めました。
上記の結果、当期における営業収益は前期比4.3%増の2,722億円、営業利益は前期比16.1%減の135億円となりました。
(財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析)
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営成績
① 営業収益
営業収益は、前期比334億円(1.8%)減の1兆8,446億円となりました。
運輸業においては、当社の運輸収入は前期比310億円(2.2%)減の1兆3,656億円となりました。東海道新幹線では、輸送実績が前期比4.0%減少した結果、運輸収入は前期比2.4%減の1兆2,613億円となりました。また、在来線では、輸送実績が前期比0.4%減少した結果、運輸収入は前期比0.5%減の1,042億円となりました。
運輸業以外の事業においては、流通業、不動産業ではそれぞれ前期比0.6%、2.6%の減収、その他では前期比4.3%の増収となりました。
② 営業費
営業費は、前期比201億円(1.7%)増の1兆1,884億円となりました。
③ 営業利益
営業利益は、前期比536億円(7.6%)減の6,561億円となりました。
④ 営業外損益
営業外損益は、前期と比べて47億円悪化しました。
⑤ 経常利益
経常利益は、前期比583億円(9.2%)減の5,742億円となりました。
⑥ 親会社株主に帰属する当期純利益
上記に法人税等などを加減した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比408億円(9.3%)減の3,978億円となりました。
(2) 財政状態
当期末の資産残高は、前期末から3,073億円増加し9兆6,031億円となりました。また、セグメント別の資産残高について、運輸業は前期末から1,222億円増加し8兆8,334億円、流通業は前期末から10億円減少し1,265億円、不動産業は前期末から52億円減少し3,649億円、その他は前期末から41億円増加し4,122億円となりました。
当期末の負債残高は、前期末から566億円減少し5兆7,310億円となりました。なお、長期債務の当期末残高は、4兆8,460億円となりました。そのうち、中央新幹線建設長期借入金を除いた長期債務残高は1兆8,460億円となり、前期末と比べ50億円減少しました。
当期末の純資産残高は、前期末から3,640億円増加して3兆8,721億円となり、自己資本比率も前期末の37.3%から当期末は39.9%に上昇しています。
(3) 資本の財源及び資金の流動性
① キャッシュ・フローの状況
当期末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前期末と比べ97億円増の7,613億円となり、資金の流動性を確保していると判断しています。
2月以降の新型コロナウイルス感染症の発生を受けた外出自粛等の影響により、当社の運輸収入、グループ会社ともに減収となったことなどから、営業活動の結果得られた資金は前期比50億円減少し、5,952億円となりました。
中央新幹線建設に伴う固定資産の取得等による支出は増加したものの、中央新幹線建設資金管理信託の取崩しによる収入により相殺された一方で、資金運用による支出が減少したことから、投資活動の結果支出した資金は前期比450億円減少し、5,524億円となりました。
長期債務の返済による支出が増加した一方で、社債の発行による収入が増加したことにより相殺され、財務活動の結果支出した資金は前年並みの329億円となりました。
② 重要な資本的支出の予定及びその資金の源泉
「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1) 重要な設備の新設等」に記載のとおりです。
③ 株主還元
「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載のとおりです。
④ 資金調達
資金調達については、中央新幹線などの設備投資計画や債務償還計画等を考慮し、経済情勢、金融市場動向を踏まえた上で、必要な資金を安定的、機動的かつ低利に確保することを基本としています。
中央新幹線の建設については、財政投融資を活用した長期借入を行い、当面必要となる資金を確保しています。
その他の設備投資や債務償還等の資金については、自己資金のほか、社債の発行や金融機関からの借入金により調達しており、当期は、米ドル建普通社債750百万ドルを発行し、長期借入金により362億円を調達しました。
なお、当社では、円滑な資金調達を行うため、当期末時点でムーディーズ・ジャパン株式会社よりA1、株式会社格付投資情報センターよりAA、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン株式会社よりAA-、株式会社日本格付研究所よりAAAの格付けを取得しています。
また、短期的な流動性確保のため、当期末現在1,000億円のコミットメントラインを設定しています。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて作成しています。この連結財務諸表の作成にあたって、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行っていますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるために、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループにおける見積りのうち、退職給付に係る負債及び退職給付費用については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(退職給付関係)」において割引率、長期期待運用収益率等を記載しています。なお、割引率、長期期待運用収益率等に変動が生じた場合には、退職給付債務が増減することに伴い、退職給付に係る負債及び退職給付費用に増減が生じます。

当社グループは、事業の中核である鉄道事業における安全・安定輸送の確保を最優先に、サービスの一層の充実を図るとともに、社員の業務遂行能力の向上、設備の強化、設備投資を含めた業務執行全般にわたる効率化・低コスト化等の取組みを続け、収益力の強化に努めました。2月以降は、新型コロナウイルス感染症の発生を受けた外出自粛等の影響により、経営環境が厳しくなりましたが、感染防止に取り組むとともに、各種施策を着実に進めました。
東海道新幹線については、大規模改修工事や脱線・逸脱防止対策をはじめとする地震対策を引き続き推進したほか、「のぞみ10本ダイヤ」を活用して、需要にあわせたより弾力的な列車設定に取り組みました。また、N700A(3次車)の投入を完了し、車種統一に伴う全列車の最高速度285km/h化等により3月に「のぞみ12本ダイヤ」を実現しました。さらに、N700S確認試験車による走行試験を引き続き実施しました。
在来線については、名古屋工場の耐震化等の地震対策、降雨対策、落石対策、踏切保安設備改良等を計画的に推進しました。
営業施策については、東海道・山陽新幹線のネット予約・チケットレス乗車サービスである「エクスプレス予約」及び「スマートEX」をより多くのお客様にご利用いただくための取組みを実施し、昨年9月には「スマートEX」の登録者数が300万人を超えました。また、沿線の観光資源の魅力を活かした営業施策を推進するなど、ご利用拡大に向けた取組みを積極的に展開しました。
超電導リニアによる中央新幹線については、工事実施計画の認可を受けた品川・名古屋間について、地域との連携を密にしながら、測量、設計、用地取得を進めるとともに、名古屋駅東山線工区や岐阜県駅(仮称)、中部総合車両基地等で工事契約を締結しました。また、都市部非常口の工事契約については、品川・名古屋間に設置する13箇所全てにおいて締結しました。さらに、これまでに工事契約を締結した工区において、地域にお住まいの方々へ工事概要や安全対策等についてご説明するための工事説明会を開催したほか、南アルプストンネル静岡工区については、引き続き工事作業員等の宿舎施設の建設を進めるとともに、静岡市と協定書を締結した中央新幹線の建設に伴う林道東俣線の整備を進めるなど、今後の工事着手に向けて取り組みました。工事については、新たに神奈川県の犬蔵非常口、愛知県の第一中京圏トンネル西尾工区及び中間駅として初めてとなる神奈川県駅(仮称)で本格的な工事に着手しました。既に工事に着手している南アルプストンネル山梨工区では斜坑、先進坑及び本坑の掘削、長野工区では斜坑及び先進坑の掘削を進めるとともに、品川駅及び名古屋駅では工事桁等を施工したほか、山岳トンネル、都市部非常口等で工事を着実に進めました。このうち北品川非常口では、都市部非常口として初めて立坑本体が完成するとともに、同非常口からトンネルを掘削するシールドマシンが完成し、搬入する準備を進めました。引き続き、工事の安全、環境の保全、地域との連携を重視して着実に取り組みます。
一方、山梨リニア実験線においては、営業線仕様の車両及び設備により、2編成を交互に運用して、引き続き長距離走行試験を実施することなどにより、営業運転に対応した保守体系の確立に向けた実証等を進めるとともに、超電導リニア技術のブラッシュアップ及び営業線の建設・運営・保守のコストダウンに取り組みました。また、走行試験を着実に行う中で、「超電導リニア体験乗車」を実施し、多くの方々に速度500km/h走行を体験していただきました。さらに、営業車両の仕様策定に向け、L0系をさらにブラッシュアップさせた改良型試験車が3月に完成しました。
海外における高速鉄道プロジェクトへの取組みについては、米国テキサスプロジェクトの事業開発主体に対して、現地子会社「High-Speed-Railway Technology Consulting Corporation」により技術支援を進めるとともに、現地子会社「High-Speed-Railway Integration Corporation」により日本側企業とともにプロジェクトのコアシステムの受注契約に向け、事業開発主体との協議等を行いました。また、引き続き超電導リニアシステムを用いた米国北東回廊プロジェクトのプロモーション活動を推進しました。さらに、台湾高速鉄道において技術コンサルティングを進めました。加えて、日本型高速鉄道システムを国際的な標準とする取組みを推進しました。
鉄道以外の事業については、JRセントラルタワーズとJRゲートタワーを一体的に運営し、積極的な営業・宣伝活動を行うことで、収益の拡大を図ったほか、JRセントラルタワーズでは、開業20周年の取組みを行いました。また、流通事業の活性化や駅商業施設のリニューアルを行い、競争力、販売力の強化に努めました。
さらに、経営体力の一層の充実を図るため、安全を確保した上で設備投資を含めた業務執行全般にわたる効率化・低コスト化の徹底に取り組みました。
しかしながら、これらの諸施策を進めた一方で、前述のとおり、2月以降、新型コロナウイルス感染症の発生を受けた外出自粛等の影響により、ビジネス、観光ともにご利用が大幅に減少したことから、当期における全体の輸送実績(輸送人キロ)は、前期比3.5%減の634億2千7百万人キロとなりました。また、営業収益は前期比1.8%減の1兆8,446億円、経常利益は前期比9.2%減の5,742億円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比9.3%減の3,978億円となりました。
これをセグメントごとに示すと次のとおりです。
運輸業
東海道新幹線については、土木構造物の健全性の維持・向上を図るため、不断のコストダウンを重ねながら大規模改修工事を着実に進めました。地震対策については、脱線防止ガードの敷設を進めるなど、東海道新幹線全線を対象にした脱線・逸脱防止対策に取り組みました。また、「のぞみ10本ダイヤ」を活用して、お客様のご利用の多い時期や時間帯に、需要にあわせたより弾力的な列車設定に努めるとともに、N700A(3次車)の投入を完了し、車種統一に伴う全列車の最高速度285km/h化等により3月に「のぞみ12本ダイヤ」を実現しました。さらに、既存車両に地震ブレーキの停止距離短縮等の3次車の特長を反映させる改造工事を昨年9月に完了しました。令和2年7月に営業運転開始を予定しているN700Sについては、投入に向けた準備を進めるとともに、N700S確認試験車により、360km/hでの速度向上試験、バッテリ自走システム走行試験及び長期耐久試験を行いました。加えて、可動柵について、新大阪駅20~26番線ホームへの設置工事を進め、25、26番線ホームでの使用を開始するなど、安全・安定輸送の確保と輸送サービスの一層の充実に取り組みました。
在来線については、名古屋工場の耐震化等に加え、高架橋柱の耐震化に着手するなど地震対策を引き続き進めるとともに、降雨対策、落石対策、踏切保安設備改良等を計画的に推進しました。また、「しなの」、「ひだ」等の特急列車について、需要にあわせ弾力的に増発や増結を行いました。さらに、可動柵について、金山駅東海道本線ホームへの設置工事を進めるとともに、内方線付き点状ブロックの整備対象を乗降1千人以上の駅に拡大して取替を進めるなど、安全・安定輸送の確保と輸送サービスの一層の充実に取り組みました。加えて、ハイブリッド方式の次期特急車両HC85系の試験走行車を新製し、基本性能試験を開始したほか、3月には、東海道本線御厨駅を開業しました。
新幹線・在来線共通の取組みとしては、自然災害や不測の事態等の異常時に想定される様々な状況に対応すべく実践的な訓練等を実施するとともに、G20大阪サミットの開催にあたり、関係機関と連携し、駅や車内等における安全の確保に努めました。また、ラグビーワールドカップ2019の開催にあたり、臨時列車を運転するなど、利便性の確保に努めました。さらに、地震対策として、駅の吊り天井の脱落防止対策を進めました。
営業施策については、東海道・山陽新幹線のネット予約・チケットレス乗車サービスである「エクスプレス予約」及び「スマートEX」をより多くのお客様にご利用いただくために積極的な宣伝活動を行うとともに、「EXのぞみファミリー早特」をはじめとした観光型商品等の販売促進に取り組み、幅広く需要の喚起を図りました。また、京都、奈良、東京、飛騨等の観光資源を活用した各種キャンペーンを展開し、これと連動した旅行商品を設定しました。さらに、JR6社で行う「静岡デスティネーションキャンペーン」を通じて、自治体や旅行会社等と連携し、魅力ある観光素材・商品の開発や観光列車の運行等に取り組むとともに、「Japan Highlights Travel」、「Shupo」等を通じて地域との連携を強化し、お客様のご利用拡大に努めました。加えて、訪日外国人の利便性向上を図るため、東海道新幹線における車内の無料Wi-Fiサービスの整備を完了するとともに、「スマートEX」の英語版予約サイトでのサービスを開始したほか、在来線駅のトイレの洋式化を進めました。そのほか、ラグビーワールドカップ2019の観戦を目的とした訪日外国人に向けた商品の拡大及び販売促進等に取り組みました。
しかしながら、新型コロナウイルス感染症の発生を受けた外出自粛等の影響により、ビジネス、観光ともにご利用が大幅に減少したことから、当期における輸送実績(輸送人キロ)は、東海道新幹線は前期比4.0%減の540億9百万人キロ、在来線は前期比0.4%減の94億1千8百万人キロとなりました。
バス事業においては、安全の確保を最優先として顧客ニーズを踏まえた商品設定を行い、収益の確保に努めました。
上記の結果、当期における営業収益は前期比2.1%減の1兆4,312億円、営業利益は前期比7.1%減の6,176億円となりました。
また、運輸業の大部分を占める当社の鉄道事業の営業成績は次のとおりです。
| 区分 | 単位 | 前事業年度 (自 平成30年4月1日 至 平成31年3月31日) | 当事業年度 (自 平成31年4月1日 至 令和2年3月31日) | ||||||
| 新幹線 | 在来線 | 合計 | 新幹線 | 在来線 | 合計 | ||||
| 営業日数 | 日 | 365 | 365 | 365 | 366 | 366 | 366 | ||
| 営業キロ | キロ | 552.6 | 1,418.2 | 1,970.8 | 552.6 | 1,418.2 | 1,970.8 | ||
| 客車走行キロ | 千キロ | 1,024,862 | 224,289 | 1,249,151 | 1,041,919 | 226,328 | 1,268,246 | ||
| 旅 客 輸 送 人 員 | 定期 | 千人 | 15,327 | 270,574 | 283,514 | 15,569 | 274,069 | 287,174 | |
| 定期外 | 千人 | 158,844 | 142,988 | 290,599 | 152,190 | 139,231 | 280,676 | ||
| 計 | 千人 | 174,170 | 413,562 | 574,113 | 167,759 | 413,299 | 567,850 | ||
| 旅客輸送人キロ | 百万人キロ | 56,277 | 9,459 | 65,736 | 54,009 | 9,418 | 63,427 | ||
| 旅 客 運 輸 収 入 | 旅 客 運 賃 ・ 料 金 | 定期 | 百万円 | 18,184 | 35,263 | 53,447 | 18,447 | 35,405 | 53,853 |
| 定期外 | 百万円 | 1,273,662 | 69,560 | 1,343,222 | 1,242,923 | 68,864 | 1,311,787 | ||
| 計 | 百万円 | 1,291,846 | 104,824 | 1,396,670 | 1,261,370 | 104,269 | 1,365,640 | ||
| 小荷物運賃・ 料金 | 百万円 | - | 7 | 7 | - | 5 | 5 | ||
| 合計 | 百万円 | 1,291,846 | 104,831 | 1,396,678 | 1,261,370 | 104,275 | 1,365,646 | ||
| 鉄道線路使用料収入 | 百万円 | - | - | 3,955 | - | - | 4,272 | ||
| 運輸雑収 | 百万円 | - | - | 51,371 | - | - | 52,289 | ||
| 収入合計 | 百万円 | - | - | 1,452,005 | - | - | 1,422,208 | ||
| 輸送効率 | % | 座席利用率 66.4 | 乗車効率 32.5 | - | 座席利用率 62.7 | 乗車効率 32.2 | - | ||
(注) 1 旅客運輸収入の新幹線及び在来線区分は、旅客輸送計数により区分しています。また、旅客輸送人員の合計については、新幹線、在来線の重複人員を除いて計上しています。
2 輸送効率の算出方法は次のとおりです。
| 新幹線座席利用率= | 旅客輸送人キロ | ×100 | |
| 座席キロ(編成別列車キロ×座席数) |
| 在来線乗車効率 = | 旅客輸送人キロ | ×100 | |
| 客車走行キロ×平均定員 |
3 旅客運輸収入のうち主要なJR他社(当該会社の旅行代理店等を含む。)による発売額の構成比は、次のとおりです。
| 会社名 | 前事業年度(%) | 当事業年度(%) | |
| 東日本旅客鉄道株式会社 | 23.7 | 22.3 | |
| 西日本旅客鉄道株式会社 | 18.5 | 17.4 |
流通業
流通業においては、「ジェイアール名古屋タカシマヤ」と「タカシマヤ ゲートタワーモール」が連携して、顧客ニーズを捉えた営業施策を展開することで、収益力の強化に努めました。「ジェイアール名古屋タカシマヤ」においては、化粧品売場のリニューアルを実施しました。また、駅構内の店舗においてもリニューアルを実施したほか、品揃えの拡充等を通じて競争力を高めました。
しかしながら、新型コロナウイルス感染症の発生を受けた外出自粛等の影響により、当期における営業収益は前期比0.6%減の2,632億円、営業利益は前期比23.2%減の74億円となりました。
不動産業
不動産業においては、「アスティ大垣」や「アスティ静岡東館」でリニューアルを実施するなど、競争力、販売力の強化に取り組みました。
しかしながら、新型コロナウイルス感染症の発生を受けた外出自粛等の影響により、当期における営業収益は前期比2.6%減の799億円、営業利益は前期比6.3%減の190億円となりました。
その他
ホテル業においては、魅力ある商品の設定や販売力強化に取り組むとともに、「名古屋マリオットアソシアホテル」において、「コンシェルジュラウンジ」の改装を実施するなど、海外からのお客様のニーズも踏まえたより高品質なサービスの提供に努めました。
旅行業においては、京都、奈良、東京、飛騨等の各方面へ向けた観光キャンペーン等と連動した魅力ある旅行商品を積極的に販売しました。
鉄道車両等製造業においては、鉄道車両や建設機械等の受注・製造に努めました。
上記の結果、当期における営業収益は前期比4.3%増の2,722億円、営業利益は前期比16.1%減の135億円となりました。
(財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析)
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営成績
① 営業収益
営業収益は、前期比334億円(1.8%)減の1兆8,446億円となりました。
運輸業においては、当社の運輸収入は前期比310億円(2.2%)減の1兆3,656億円となりました。東海道新幹線では、輸送実績が前期比4.0%減少した結果、運輸収入は前期比2.4%減の1兆2,613億円となりました。また、在来線では、輸送実績が前期比0.4%減少した結果、運輸収入は前期比0.5%減の1,042億円となりました。
運輸業以外の事業においては、流通業、不動産業ではそれぞれ前期比0.6%、2.6%の減収、その他では前期比4.3%の増収となりました。
② 営業費
営業費は、前期比201億円(1.7%)増の1兆1,884億円となりました。
③ 営業利益
営業利益は、前期比536億円(7.6%)減の6,561億円となりました。
④ 営業外損益
営業外損益は、前期と比べて47億円悪化しました。
⑤ 経常利益
経常利益は、前期比583億円(9.2%)減の5,742億円となりました。
⑥ 親会社株主に帰属する当期純利益
上記に法人税等などを加減した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比408億円(9.3%)減の3,978億円となりました。
(2) 財政状態
当期末の資産残高は、前期末から3,073億円増加し9兆6,031億円となりました。また、セグメント別の資産残高について、運輸業は前期末から1,222億円増加し8兆8,334億円、流通業は前期末から10億円減少し1,265億円、不動産業は前期末から52億円減少し3,649億円、その他は前期末から41億円増加し4,122億円となりました。
当期末の負債残高は、前期末から566億円減少し5兆7,310億円となりました。なお、長期債務の当期末残高は、4兆8,460億円となりました。そのうち、中央新幹線建設長期借入金を除いた長期債務残高は1兆8,460億円となり、前期末と比べ50億円減少しました。
当期末の純資産残高は、前期末から3,640億円増加して3兆8,721億円となり、自己資本比率も前期末の37.3%から当期末は39.9%に上昇しています。
(3) 資本の財源及び資金の流動性
① キャッシュ・フローの状況
当期末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前期末と比べ97億円増の7,613億円となり、資金の流動性を確保していると判断しています。
2月以降の新型コロナウイルス感染症の発生を受けた外出自粛等の影響により、当社の運輸収入、グループ会社ともに減収となったことなどから、営業活動の結果得られた資金は前期比50億円減少し、5,952億円となりました。
中央新幹線建設に伴う固定資産の取得等による支出は増加したものの、中央新幹線建設資金管理信託の取崩しによる収入により相殺された一方で、資金運用による支出が減少したことから、投資活動の結果支出した資金は前期比450億円減少し、5,524億円となりました。
長期債務の返済による支出が増加した一方で、社債の発行による収入が増加したことにより相殺され、財務活動の結果支出した資金は前年並みの329億円となりました。
② 重要な資本的支出の予定及びその資金の源泉
「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1) 重要な設備の新設等」に記載のとおりです。
③ 株主還元
「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載のとおりです。
④ 資金調達
資金調達については、中央新幹線などの設備投資計画や債務償還計画等を考慮し、経済情勢、金融市場動向を踏まえた上で、必要な資金を安定的、機動的かつ低利に確保することを基本としています。
中央新幹線の建設については、財政投融資を活用した長期借入を行い、当面必要となる資金を確保しています。
その他の設備投資や債務償還等の資金については、自己資金のほか、社債の発行や金融機関からの借入金により調達しており、当期は、米ドル建普通社債750百万ドルを発行し、長期借入金により362億円を調達しました。
なお、当社では、円滑な資金調達を行うため、当期末時点でムーディーズ・ジャパン株式会社よりA1、株式会社格付投資情報センターよりAA、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン株式会社よりAA-、株式会社日本格付研究所よりAAAの格付けを取得しています。
また、短期的な流動性確保のため、当期末現在1,000億円のコミットメントラインを設定しています。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて作成しています。この連結財務諸表の作成にあたって、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行っていますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるために、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループにおける見積りのうち、退職給付に係る負債及び退職給付費用については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(退職給付関係)」において割引率、長期期待運用収益率等を記載しています。なお、割引率、長期期待運用収益率等に変動が生じた場合には、退職給付債務が増減することに伴い、退職給付に係る負債及び退職給付費用に増減が生じます。
