有価証券報告書-第59期(平成25年1月1日-平成25年12月31日)

【提出】
2014/03/31 10:32
【資料】
PDFをみる
【項目】
142項目

対処すべき課題

マスメディアを中心とした広告市場が成熟した国内では、デジタルテクノロジーの進化やデジタルデバイスの高機能化による生活者のメディア接触行動、消費行動の変化に伴い、広告主はROI重視の高度なコミュニケーション・プログラムの提案を求めています。
また、経済の成熟化、進展する少子高齢化を背景に、大きな伸長が望めない国内広告市場に対して、中国経済の内需の弱さやASEAN諸国のインフレ懸念等、足元では懸念材料があるものの、堅調な成長が期待される東南アジア諸国に進出を目指す広告主からの海外市場における広告対応ニーズが増加傾向にあります。
当社グループは、このように変化する環境の中、平成25年8月に公表しました中期経営計画において、消費者の行動を喚起するマーケティング施策の開発、提供により広告主の業績に貢献する「コンシューマー・アクティベーション・カンパニー」への進化を成長戦略の中核とし、以下のテーマに注力することで、この厳しい環境に対応してまいります。
(1) ソリューションビジネス/デジタルビジネス
広告主のますます多様化・高度化するニーズや課題に対応するために、専門性と統合力の強化とコンシューマー・アクティベーション・ビジネスの開発をテーマに平成26年1月に体制を整備いたしました。
消費者のアクションに直結するKPIを設定し、広告予算の最適化、KPIを最大化するチャネル&キャンペーンプランを策定するデジタル&データインサイトセンターを新設しました。さらにデジタルテクノロジーを組み込む「オンライン・オフライン統合型」キャンペーンの提案・実施力の更なる強化を目指し、統合ソリューションセンターの改編も行っています。また、業界・業種の知見やノウハウを集約した「カテゴリーチーム」を拡充・強化し、広告主への高度で専門性の高いソリューション提供やショーケースづくりに努めてまいります。
当社と㈱電通デジタル・ホールディングスが共同出資しているメディアレップ㈱ADKデジタル・コミュニケーションズによってデジタルビジネス領域における業務の高度化と効率化が促進され、平成25年は当領域の総利益を前年比で大きく伸長させました。メディア・オペレーション業務の更なる効率化により収益性向上を目指してまいります。
平成25年6月にはデジタル領域のサービス拡充を目指して、米国Stipple社と、日本を含むアジア地域での戦略的なパートナーシップ契約を締結しました。また同年12月には、マーケティング・コンサルティング領域における新サービスの開発に向けて株式会社インテージ社との業務提携協議を開始しました。今後もソリューション力の強化、デジタル領域のサービス拡充のため、業務提携・資本提携を進めていく予定です。
(2) コンテンツビジネス
当社グループの伝統的な強みであるアニメコンテンツビジネスにおいては、新規案件の開発も進め、積極的、多面的な事業展開を行っております。テレビ番組や映画の製作・出資、イベントやミュージカル等興業の運営およびセールスプロモーションへの活用等によって当社収益に大きく貢献しています。平成25年5月にはアニメコンテンツの海外向け動画配信・ECプラットフォーム「DAISUKI」のサービスを開始しました(当社を含む7社が出資)。政府が推進しているクールジャパン戦略にも参画して海外における事業展開をより積極的に取り組んでまいります。
国内外における放送、配信、マーチャンダイジングなどの分野を一層強化し、ADKコンテンツビジネスのプレゼンスをさらに高めてまいります。
(3) グローバル
当社グループは、広告主の海外展開に対応するため、海外におけるネットワーク構築に努めてまいりました。特に中国やアジアに成長を求める日系広告主はさらに増える見込みで、そうした動きに対応できる体制を一層強化しています。平成25年1月よりWPP傘下のメディアエージェンシーグループ「Group M(グループ・エム)」に属するmaxus(マクサス)社との包括的な協業を開始しました。中国においてはWPPグループのオールウェイズ社と合弁で、中国全土でのプロモーション業務に対応する新会社を設立し、平成25年8月より営業を開始しました。また、ミャンマーのヤンゴン市にHINTER MEDIA社との合弁で新会社を設立予定であり、日系企業の進出ニーズに対する包括的なサービス提供を目指します。こうしたネットワーク拠点の整備とともに本社からのグローバル対応人材の投入や現地プランナーの新規採用・育成など人材面での強化も図ってまいります。
事業面においては、広告主の商品やサービスの販売に直接貢献するアクティベーション領域でのソリューションの開発や高効率で結果を重視したプランニングやメディア戦略の提供によって、中国、タイ、シンガポール他に加え、市場規模の大きなインドネシアやインドなどにおいてビジネスパートナーとしての地位を確固たるものにしてまいります。
(4) 人材育成
当社グループの競争力の源泉は人材であるため、今後もビジネス構造の変化に対応できる人材の育成を推進してまいります。具体的には、階層別教育を徹底し、特にミドルマネジメント層のマネジメント力向上に努めてまいります。また、今後も成長が見込まれるデジタルソリューション領域において、デジタルスキルアップを目的とした人材教育に取り組んでまいります。さらに、国内企業の海外進出、そして海外企業の日本進出に対応するため、グローバル対応人材の育成に注力してまいります。
(5) コストコントロール
当社グループは、経営環境の変動にも対応すべく、コストコントロールの強化に努めております。特に当社においては、平成24年には購買マネジメント本部を設立し、コスト改善や業務プロセスの適正化を進めるとともに、平成25年には中長期的な視点に立った構造改革の一環として、特別転進支援措置を実施し人件費の適正化を図りました。平成26年には、本社移転とグループの集約による賃料削減、業務効率化の実現およびグループ内リソースの積極活用による内製化率向上を推し進め、また購買マネジメント本部をプロセスマネジメント本部に改称し、ビジネスプロセスや購買プロセスに係る機能の集約や効率化による収益管理を強化するなど、引き続きコストコントロールを通じた収益性の向上に努めてまいります。
(6) グループ経営の強化
当社グループは各社間の連携をさらに強化し、業務の内製化を一層推進することにより、グループ全体の競争力を高め、収益力の向上をはかります。また、新たな業務提携、M&Aを含めた事業の拡大も併せて検討してまいります。
以上の取り組みに加えて、当社グループは安定した成長を担保するため、リスクマネジメントの強化に注力してまいります。その一環として、情報セキュリティ、コンプライアンスに関する社内体制および財務報告に係る内部統制の整備を進めてまいります。また、環境保護など企業の社会的責任を意識した経営を推進してまいります。
なお、当社は「株式会社の支配に関する基本方針」を定めており、それは次のとおりであります。
当社は、当社の財務および事業の方針の決定を支配する者の在り方は、究極的には株主の皆様のご判断に委ねられるものと考えております。
当社は、資本効率の改善や株主の皆様への種々の利益還元施策の実施に加え、「全員経営」の理念のもとに全社をあげて広告業としての競争力を高めることにより、企業価値・株主共同の利益の最大化に取り組んでまいりました。また「ピープルビジネス」といわれる広告業では役員と従業員の一体感・運命共同体的意識こそが競争力の源泉であり、不適切な買収によりこれが損なわれるときは、企業価値・株主共同の利益が毀損されるとともに、買収者の目的は達成されないことになると認識しております。
このように企業価値を高め株主に報いることによって株主のサポートを得ることが、不適切な買収に対抗する最大の防衛策であると考え、当社は現在のところ、具体的な買収防衛策を導入しておりません。
他方、当社株式の大量買付行為や買収提案があった場合には、取締役会は、株主の皆様から経営の負託を受けている者の責務として、社外専門家の意見を尊重しながら、当該買付が企業価値・株主共同の利益に及ぼす影響について評価し、自らの見解を表明するほか、当該買付者と交渉を行い、株主の皆様が当該買付に応じるか否かを適切に判断するために必要な情報の提供と時間の確保に全力を尽くす所存です。
更に、当該買付者が必要な情報を提供しない場合やその提案内容が企業価値・株主共同の利益を毀損するおそれがあると判断した場合には、その時点において採り得る実効的で、かつ株主の皆様に受け入れられる合理的対抗措置を講じる予定です。
なお、具体的な買収防衛策を予め導入しておくことについては、今後の経済環境、資本市場、法令の動向等を鑑みて、慎重に検討を進めることといたします。