有価証券報告書-第40期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
(経営成績等の状況の概要)
当会計年度におけるわが国経済は、長期化する米中貿易摩擦問題の影響等から世界経済の減速が鮮明になる中で、先行きが不透明な状況で推移しておりましたが、今年に入り、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界での拡大により、過去に経験したことのない未曽有の状態になっております。当社におきましては、1月末より社内で「新型コロナウイルス感染症対応方針」を定め、完全なテレワーク環境で業務を実施することが可能な体制を構築している中で、顧客及び取引先を含めた従業員の健康と安全確保を第一に考慮し、業務を遂行しております。
建設業界におきましても、発注者側において設備投資に対する慎重な姿勢が強まる状況となりました。一方で、昨今のビルの長寿命化が求められている中で、特にバブル期に建設したビルの基幹設備の老朽化更新や、より省エネでイニシャル・ランニングコストの低減が求められるプロジェクトの引き合いが増加しました。また、企業や団体においてコンプライアンスを重視する広がりから、設計や施工等の事業者選定プロセス及び、建設コストの妥当性確認や意思決定プロセスの可視化、これらに関する説明責任への関心が引続き高まっております。
当会計年度において、公共分野としては、国土交通省から6年連続で支援事業者として指定され、又、経済産業省からは産業経済研究委託事業を受託しました。
また、仙台市(宮城県)、中野区(東京都)、川崎市(神奈川県)、神戸市(兵庫県)等の庁舎や施設建設に関するプロポーザルに当社が応募し、事業者として選定されました。さらに、2019年11月に愛知県の、ジブリを主要テーマとした「愛・地球博記念公園設計技術協力業務に関するコストマネジメント業務」の公募型プロポーザルに当社が応募し選定されました。今後も老朽化した公共施設対策を検討する地方自治体が増加する中で、CM(コンストラクション・マネジメント=発注者支援事業)方式の導入実績が着実に増加し、引続き当社が提案する機会が増えるものと考えております。
民間企業からは、数多い業種をグループ内に持つ大手企業や大学などの教育機関からの、新規引き合いや、リピートオーダーが安定的に推移しており、徹底したコスト削減策のみならず、プロジェクト早期立上げや事業化支援業務といった上流工程からの引き合い案件が増加しています。また、昨年、当社がテレワーク先駆者として総務大臣賞を受賞したことや、『働き方改革』への昨今の関心の高まりから、『働き方改革』を伴う大規模なオフィス移転プロジェクトの引き合いが増加しております。
当会計年度は、ESGの観点から2019年10月に、東京都が発行する「東京グリーンボンド」への投資を行い、微力ながら東京都の環境施策へ貢献しました。そして、コーポレートガバナンスを高い水準で維持し、企業としての社会的な責任と貢献を持続的に行うことを目的として、 ブランド力及び社員の士気向上等も狙い、2019年11月26日をもって、東京証券取引所市場第二部から市場第一部指定となりました。
引続き、当社の独立・中立性を保ち、メーカーや系列に一切とらわれることなく、そして近年になって益々高度な専門性と実践力を求められる顧客ニーズに最適なCM手法を提案し、顧客の期待に一つ一つ確実に応えられるよう、CMサービス品質向上に取り組んでまいります。
当社の人員については、前事業年度末240名に対し、当事業年度末は230名(正社員4名を含む10名減)となりました。退職による補充についても、未曽有の状況を踏まえ、従来以上に慎重に対応した結果となります。当社を取り巻く環境を吟味しながらも、引続き、優秀な人材の確保と、次世代リーダーの育成、そして社員一人ひとりの更なる効率化による生産性向上に取り組んでまいります。
当会計年度の社内で管理する売上粗利益は、社会的にCMが普及する中、CM業界における当社認知度の向上もあり、前期を上回り過去最高を記録しました(粗利益※1参照)。
なお、当期も人材獲得・定着化を目的とした社員の処遇改善や、働きやすい環境へ整備するための設備投資を新たに意思決定したことによって、「賃上げ・生産性向上のための税制」の要件を満たす見込みとなり、税額控除分、当期純利益が増加することになりました。
これらの結果、当会計年度の売上高は4,353百万円(前期5,598百万円)、売上総利益は2,290百万円(前期2,226百万円)、営業利益は902百万円(前期774百万円)、経常利益は906百万円(前期780百万円)、当期純利益は639百万円(前期561百万円)と過去最高を更新しました。売上高が減少している理由は、顧客からピュアCM(工事原価を含まないフィーのみの契約型CM 図1参照)が選択され、アットリスクCM(工事原価を含む請負契約型CM 図2参照)が減少したことによります。
セグメントの業績は次のとおりです。
① オフィス事業
当社のCM手法によるPM(プロジェクト・マネジメント)サービスは、移転の可否やワークスタイルの方向性を検討する構想段階およびビルの選定から引越しまで高度な専門性を有し、ワンストップで支援することが可能であります。当会計年度においても大企業におけるグループ企業の統廃合、地方拠点の集約化、また、大規模な新築ビルの竣工時同時入居プロジェクトなど、難易度の高いオフィス事業に関するサービスを提供しました。
また、当社の自社開発による「ホワイトカラーの生産性定量化システム」を用いたアクティビティの可視化と蓄積されたデータの有効活用について、既に17年のデジタルオフィス運用実績を有する当社に、引続き多くの『働き方改革』に関する構想策定から定着化までの支援依頼が期待されます。ABW(Activity Based Working)の運用実績を有する当社の強みや実績を活かした営業展開を引続き継続いたします。
当会計年度のオフィス事業の売上高は、ピュアCM(工事原価を含まないフィーのみの契約型CM 図1参照)が選択され、アットリスクCM(工事原価を含む請負契約型CM 図2参照)の減少等により、1,144百万円(前期1,544百万円)となりました。
② CM事業
CM事業は、前述の仙台市(宮城県)、中野区(東京都)、川崎市(神奈川県)、神戸市(兵庫県)、愛知県に加え、練馬区(東京都)、葉山町(神奈川県)、大阪市(大阪府)、茨木市(大阪府)、鳴門市(徳島県)等、地方自治体庁舎や学校を始めとする公共施設においても当社のCMサービスが評価されました。また、グローバル企業の国内拠点となる大型研究施設、生産工場、商業施設及び大学施設の再構築や、鉄道会社による駅舎や大規模商業施設等での電気・機械設備更新等の実績を重ね、新規顧客が増加しております。
その中で、大規模テーマパーク「レゴランドジャパン(愛知県名古屋市)」CM業務が、スイス・ローザンヌのオリンピック博物館で行われた国際コンストラクションプロジェクトマネジメント協会(ICPMA:International Construction Project Management Association)が主催する2019年度の年次総会で、最優秀賞である「2019年度 Alliance Full Award 賞」を受賞しました。また、一般社団法人日本コンストラクション・マネジメント協会が主催する「CM選奨2020」に当社がCM業務を行った「市原市立小中学校空調設備導入」「資生堂グローバルイノベーションセンター」「ANA総合トレーニングセンター」「平塚信用金庫店舗競争力強化」の4件で「CM選奨」を受賞いたしました。
当会計年度のCM事業の売上高は、ピュアCM(工事原価を含まないフィーのみの契約型CM 図1参照)が選択され、アットリスクCM(工事原価を含む請負契約型CM 図2参照)の減少により、2,228百万円(前期3,058百万円)となりました。
③ CREM事業
大企業や自治体向けを中心に、当社の「窓口を一本化」して顧客保有資産の最適化をサポートするCREM(コーポレート・リアルエステート・マネジメント)事業については、当社技術者集団による透明なプロセス(CM手法)とデジタル活用による情報の可視化やデータベース活用によって、多拠点施設の新築・改修・移転や基幹設備の維持管理支援を行っております。工事コスト管理や保有資産のデータベース化による資産情報の一元管理、多拠点同時進行プロジェクトの一元管理、そして個々のプロジェクトの進捗状況を効率的に管理するシステム構築内製化の実績をもとに、複数の商業施設や支店等を保有する大企業、金融機関等から継続して依頼を頂いております。
また、公共分野では、当会計年度に選定された葉山町だけでなく、墨田区、練馬区から継続的に当社が選定されており、今後、各地方自治体が保有する多くの施設を建築設備の専門的な目線を含めデジタル活用による一元管理手法が益々拡張するものと期待しています。
当会計年度のCREM事業の売上高は、資産を多拠点に保有する既存顧客側の計画や予算の影響等により980百万円(前期995百万円)となりました。
※1 粗利益は、受注高(または売上高)から社内コスト以外の原価(工事費等)を差し引いたものです。当社の受注高(または売上高)は、顧客との契約形態(ピュアCM方式とアットリスクCM方式 下記図1、2参照)によって金額が大きく変動するため、社内における業績管理は、この粗利益を用いております。
(図1)ピュアCM方式の契約関係(業務委託契約)は次のとおりであります。
当社はマネジメントフィーのみを売上計上します。

(図2) アットリスクCM方式の契約関係(請負契約)は次のとおりであります。
当社は完成工事高(マネジメントフィーを含む)を売上計上します。

・CMの普及への取り組み
CM(発注者支援業務)方式の普及のため、公共団体や民間企業、協会、各種イベント等へ出展や講演を引続き実施しております。
また、2019年6月より、学校法人早稲田大学大学院創造理工学研究科においてCMに関する寄附講座を開設しました。CMr(コンストラクション・マネージャー)の育成だけではなく、発注者と共同作業を行うために必要な知識と交渉能力を有する設計者と施工者の育成を目指しております。
・テレワークとデータ活用について
今年に入り、世界的に広がる新型コロナウイルス感染症の拡大により、過去に経験したことのないような事態が続いておりますが、当社では、クラウド上でプロセスと情報を共有する等のICTを積極的に活用し、全社を挙げて完全なテレワーク環境で業務を実施することが可能な体制を構築しており、その中で、既に通常業務を日々遂行しております。
また、社内研修や、マネジメントスキル等の向上に向けたカリキュラムを充実させるなど、社員教育にも注力し、ICTを積極的に活用した職場環境改善によるサービス品質向上と社員の生産性向上に鋭意邁進しております。社員はそのような職場環境の中で、社内に10数年に亘って整理・蓄積された社員一人ひとりの「行動分析に関するビッグデータや顧客に提出する成果物の進化の度合」を解析し、各人が自らのアクティビティの改善やキャリアビジョン実現に向けた上司との協働などによって、主体的に能力の向上や働き方の改革を図っております。それらの取組みにより、当社の一人当たりの労働生産性は毎年着実に向上し、一方で、残業時間(月平均)は毎年減少しております。
このような当社のICTを活用した生産性向上や顧客満足度向上の双方を目的とした取組みについて、昨年開催された一般社団法人日本テレワーク協会主催の第19回テレワーク推進賞において「奨励賞」を受賞しました。さらに、総務省が実施・選出する「2019年度テレワーク先駆者百選 総務大臣賞」を受賞しました。
・コンプライアンス等について
当社では「明朗経営」と称し、各プロジェクトに関するプロセスや成果等の可視化や、企業業績等に関する情報を可視化し、「隠し事」が出来ない仕組みの構築及び各種法令を遵守するための体制や規程等を整備し、内部統制システムを構築しております。その中で、社内研修や社内教育コンテンツを展開し、「フェアネス・透明性・顧客側に立つプロ」の企業理念を企業風土として定着させ、社員一丸となって行動しております。また、CSR/ESGへの取組みに関する方針を次の通り定めて活動しております。
(CSR/ESGへの取組みの概要)
当社では環境CM方針を定め、建築や設備のプロがオフィスやビルの環境負荷の低減、環境に配慮した技術の導入・運用等に関する支援をお客様に対して行い、発注者支援事業を通じて、お客様の環境目標達成の実現に貢献し、「地球環境への配慮」をともに実現しております。当社は、環境及び近隣地域のCSR団体に加盟し、他の加盟社の活動やボランティア情報を収集し、車椅子の定期的な寄贈等会社として活動する他、社員へ啓蒙を図り、一体となって活動しております。
また、発注者支援事業の透明性に基づく意思決定プロセスの構築を通じて、透明性や信用を基盤とした持続可能な社会の実現に貢献し、ESGを重視した経営に取り組んで参ります。
(生産、受注及び販売の状況)
(1)生産実績
当社における生産状況は、施工管理、施工技術、機械力、資金力及び資材調達力等の総合によるものであり、工事内容が多様化しており、また外注に依存している割合が高いことから具体的に表示することが困難であるため、記載を省略しております。
(2)受注実績
当事業年度の受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(3)販売実績
当事業年度の販売状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
(注)当事業年度の公立大学法人大阪府立大学に対する販売実績は、当該販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満であるため、記載を省略しております。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
文中における将来に関する事項は、当事業年度末(2020年3月31日)現在において当社が判断したものであります。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されており、財政状態及び経営成績に関する以下の分析が行われております。
当社経営陣は、財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の報告数値及び偶発資産・負債の開示、並びに報告期間における収入・費用の報告数値に影響を与える見積り及び仮定設定を行わなければなりません。経営陣は、収益の認識、対応する原価の計上、貸倒債権、法人税等、偶発事象や訴訟等に関する見積り及び判断に対して、継続して評価を行っております。経営陣は、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行い、その結果は、他の方法では判断しにくい資産・負債の簿価及び収入・費用の報告数字についての判断の基礎となります。実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社は、特に以下の重要な会計方針が、当社の財務諸表において使用される当社の重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。
①収益の認識
当社の売上高は、完成工事高については工事完成基準により完成引渡しした時点で、または工事進行基準により工事進捗率で計上、マネジメントサービス料収入についてはサービスの提供が完了した時点で、または工事進行基準によりサービスの進捗率で計上、その他売上高については完成引渡時に顧客から引渡書を受領した時点で計上し、いずれも完了時には顧客から引渡書等の証憑を受領しております。一部顧客側の事情により証憑が発行されないケースがありますが、それに代わる関連する他の書類等を受領し計上しております。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響につきましては、(追加情報)に記載しております。
(2)財政状態の分析
当社の当事業年度の財政状態は、以下の通りであります。
①資産の部
流動資産は、前事業年度末に比べて、6.1%減少し、4,809百万円となりました。これは、現金及び預金が542百万円減少したことなどによります。
固定資産は、前事業年度末に比べて、19.9%増加し、710百万円となりました。
この結果、総資産は、前事業年度末に比べ3.4%減少し、5,519百万円となりました。
②負債の部
流動負債は、前事業年度末に比べて、47.1%減少し、808百万円となりました。これは、工事未払金が591百万円減少したことなどによります。
固定負債は、前事業年度末に比べて、9.8%増加し、584百万円となりました。
この結果、負債合計は、前事業年度末に比べ32.4%減少し、1,392百万円となりました。
③純資産の部
純資産合計は、前事業年度末に比べて、12.9%増加し、4,127百万円となりました。これは、繰越利益剰余金が388百万円増加したことなどによります。
(3)経営成績の分析
当社の売上高は顧客との契約形態によって変動するものであり、契約形態は顧客がプロジェクト毎に選択可能であります。当事業年度の売上高は、前事業年度にも増してピュアCM(工事原価を含まないフィーのみの契約型CM)が顧客から選択されたことにより、4,353百万円(前期5,598百万円)と前期に比べ22.2%減少しました。
区分ごとの主な内容は、以下の通りであります。
①売上高
当事業年度の売上高は4,353百万円となりました。
②売上原価
当事業年度の売上原価は2,062百万円であり、完成工事原価が99百万円、マネジメントサービス料原価が1,961百万円となり、全体では前期に比べ1,309百万円減少しました。
③販売費及び一般管理費
当事業年度の販売費及び一般管理費は1,387百万円であり、前期に比べ64百万円減少しました。これは主として、採用教育費の減少39百万円であります。
④営業利益
当事業年度の営業利益は902百万円であり、前期に比べ128百万円の増加となりました。
⑤営業外収益(費用)
当事業年度の営業外収益は4百万円であり、主として保険返戻金1百万円であります。
⑥経常利益
当事業年度の経常利益は906百万円であり、前期に比べ126百万円増加しました。
当事業年度の経常利益目標790百万円(実績906百万円)を上回りました。
(4)流動性及び資金の源泉
①キャッシュ・フロー
当事業年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は、前事業年度末に比べ542百万円減少し、1,834百万円となりました。
当事業年度末の各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果支出した資金は、146百万円となりました(前事業年度は244百万円の取得)。
支出の主な内訳は、仕入債務の減少592百万円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果支出した資金は、143百万円となりました(前事業年度は114百万円の支出)。
支出の主な内訳は、投資有価証券の取得による支出100百万円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果支出した資金は、252百万円となりました(前事業年度は151百万円の支出)。
支出の主な内訳は、配当金の支払額252百万円であります。
②資金需要
当社の運転資金需要のうち主なものは、顧客の要望に基づきアットリスクCM方式にて対応することになる一時的な資金負担部分であります。当該部分について支払と回収のタイムラグを回避する工夫を行う等、運転資金需要を抑制するようにしております。
当会計年度におけるわが国経済は、長期化する米中貿易摩擦問題の影響等から世界経済の減速が鮮明になる中で、先行きが不透明な状況で推移しておりましたが、今年に入り、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界での拡大により、過去に経験したことのない未曽有の状態になっております。当社におきましては、1月末より社内で「新型コロナウイルス感染症対応方針」を定め、完全なテレワーク環境で業務を実施することが可能な体制を構築している中で、顧客及び取引先を含めた従業員の健康と安全確保を第一に考慮し、業務を遂行しております。
建設業界におきましても、発注者側において設備投資に対する慎重な姿勢が強まる状況となりました。一方で、昨今のビルの長寿命化が求められている中で、特にバブル期に建設したビルの基幹設備の老朽化更新や、より省エネでイニシャル・ランニングコストの低減が求められるプロジェクトの引き合いが増加しました。また、企業や団体においてコンプライアンスを重視する広がりから、設計や施工等の事業者選定プロセス及び、建設コストの妥当性確認や意思決定プロセスの可視化、これらに関する説明責任への関心が引続き高まっております。
当会計年度において、公共分野としては、国土交通省から6年連続で支援事業者として指定され、又、経済産業省からは産業経済研究委託事業を受託しました。
また、仙台市(宮城県)、中野区(東京都)、川崎市(神奈川県)、神戸市(兵庫県)等の庁舎や施設建設に関するプロポーザルに当社が応募し、事業者として選定されました。さらに、2019年11月に愛知県の、ジブリを主要テーマとした「愛・地球博記念公園設計技術協力業務に関するコストマネジメント業務」の公募型プロポーザルに当社が応募し選定されました。今後も老朽化した公共施設対策を検討する地方自治体が増加する中で、CM(コンストラクション・マネジメント=発注者支援事業)方式の導入実績が着実に増加し、引続き当社が提案する機会が増えるものと考えております。
民間企業からは、数多い業種をグループ内に持つ大手企業や大学などの教育機関からの、新規引き合いや、リピートオーダーが安定的に推移しており、徹底したコスト削減策のみならず、プロジェクト早期立上げや事業化支援業務といった上流工程からの引き合い案件が増加しています。また、昨年、当社がテレワーク先駆者として総務大臣賞を受賞したことや、『働き方改革』への昨今の関心の高まりから、『働き方改革』を伴う大規模なオフィス移転プロジェクトの引き合いが増加しております。
当会計年度は、ESGの観点から2019年10月に、東京都が発行する「東京グリーンボンド」への投資を行い、微力ながら東京都の環境施策へ貢献しました。そして、コーポレートガバナンスを高い水準で維持し、企業としての社会的な責任と貢献を持続的に行うことを目的として、 ブランド力及び社員の士気向上等も狙い、2019年11月26日をもって、東京証券取引所市場第二部から市場第一部指定となりました。
引続き、当社の独立・中立性を保ち、メーカーや系列に一切とらわれることなく、そして近年になって益々高度な専門性と実践力を求められる顧客ニーズに最適なCM手法を提案し、顧客の期待に一つ一つ確実に応えられるよう、CMサービス品質向上に取り組んでまいります。
当社の人員については、前事業年度末240名に対し、当事業年度末は230名(正社員4名を含む10名減)となりました。退職による補充についても、未曽有の状況を踏まえ、従来以上に慎重に対応した結果となります。当社を取り巻く環境を吟味しながらも、引続き、優秀な人材の確保と、次世代リーダーの育成、そして社員一人ひとりの更なる効率化による生産性向上に取り組んでまいります。
当会計年度の社内で管理する売上粗利益は、社会的にCMが普及する中、CM業界における当社認知度の向上もあり、前期を上回り過去最高を記録しました(粗利益※1参照)。
なお、当期も人材獲得・定着化を目的とした社員の処遇改善や、働きやすい環境へ整備するための設備投資を新たに意思決定したことによって、「賃上げ・生産性向上のための税制」の要件を満たす見込みとなり、税額控除分、当期純利益が増加することになりました。
これらの結果、当会計年度の売上高は4,353百万円(前期5,598百万円)、売上総利益は2,290百万円(前期2,226百万円)、営業利益は902百万円(前期774百万円)、経常利益は906百万円(前期780百万円)、当期純利益は639百万円(前期561百万円)と過去最高を更新しました。売上高が減少している理由は、顧客からピュアCM(工事原価を含まないフィーのみの契約型CM 図1参照)が選択され、アットリスクCM(工事原価を含む請負契約型CM 図2参照)が減少したことによります。
セグメントの業績は次のとおりです。
① オフィス事業
当社のCM手法によるPM(プロジェクト・マネジメント)サービスは、移転の可否やワークスタイルの方向性を検討する構想段階およびビルの選定から引越しまで高度な専門性を有し、ワンストップで支援することが可能であります。当会計年度においても大企業におけるグループ企業の統廃合、地方拠点の集約化、また、大規模な新築ビルの竣工時同時入居プロジェクトなど、難易度の高いオフィス事業に関するサービスを提供しました。
また、当社の自社開発による「ホワイトカラーの生産性定量化システム」を用いたアクティビティの可視化と蓄積されたデータの有効活用について、既に17年のデジタルオフィス運用実績を有する当社に、引続き多くの『働き方改革』に関する構想策定から定着化までの支援依頼が期待されます。ABW(Activity Based Working)の運用実績を有する当社の強みや実績を活かした営業展開を引続き継続いたします。
当会計年度のオフィス事業の売上高は、ピュアCM(工事原価を含まないフィーのみの契約型CM 図1参照)が選択され、アットリスクCM(工事原価を含む請負契約型CM 図2参照)の減少等により、1,144百万円(前期1,544百万円)となりました。
② CM事業
CM事業は、前述の仙台市(宮城県)、中野区(東京都)、川崎市(神奈川県)、神戸市(兵庫県)、愛知県に加え、練馬区(東京都)、葉山町(神奈川県)、大阪市(大阪府)、茨木市(大阪府)、鳴門市(徳島県)等、地方自治体庁舎や学校を始めとする公共施設においても当社のCMサービスが評価されました。また、グローバル企業の国内拠点となる大型研究施設、生産工場、商業施設及び大学施設の再構築や、鉄道会社による駅舎や大規模商業施設等での電気・機械設備更新等の実績を重ね、新規顧客が増加しております。
その中で、大規模テーマパーク「レゴランドジャパン(愛知県名古屋市)」CM業務が、スイス・ローザンヌのオリンピック博物館で行われた国際コンストラクションプロジェクトマネジメント協会(ICPMA:International Construction Project Management Association)が主催する2019年度の年次総会で、最優秀賞である「2019年度 Alliance Full Award 賞」を受賞しました。また、一般社団法人日本コンストラクション・マネジメント協会が主催する「CM選奨2020」に当社がCM業務を行った「市原市立小中学校空調設備導入」「資生堂グローバルイノベーションセンター」「ANA総合トレーニングセンター」「平塚信用金庫店舗競争力強化」の4件で「CM選奨」を受賞いたしました。
当会計年度のCM事業の売上高は、ピュアCM(工事原価を含まないフィーのみの契約型CM 図1参照)が選択され、アットリスクCM(工事原価を含む請負契約型CM 図2参照)の減少により、2,228百万円(前期3,058百万円)となりました。
③ CREM事業
大企業や自治体向けを中心に、当社の「窓口を一本化」して顧客保有資産の最適化をサポートするCREM(コーポレート・リアルエステート・マネジメント)事業については、当社技術者集団による透明なプロセス(CM手法)とデジタル活用による情報の可視化やデータベース活用によって、多拠点施設の新築・改修・移転や基幹設備の維持管理支援を行っております。工事コスト管理や保有資産のデータベース化による資産情報の一元管理、多拠点同時進行プロジェクトの一元管理、そして個々のプロジェクトの進捗状況を効率的に管理するシステム構築内製化の実績をもとに、複数の商業施設や支店等を保有する大企業、金融機関等から継続して依頼を頂いております。
また、公共分野では、当会計年度に選定された葉山町だけでなく、墨田区、練馬区から継続的に当社が選定されており、今後、各地方自治体が保有する多くの施設を建築設備の専門的な目線を含めデジタル活用による一元管理手法が益々拡張するものと期待しています。
当会計年度のCREM事業の売上高は、資産を多拠点に保有する既存顧客側の計画や予算の影響等により980百万円(前期995百万円)となりました。
※1 粗利益は、受注高(または売上高)から社内コスト以外の原価(工事費等)を差し引いたものです。当社の受注高(または売上高)は、顧客との契約形態(ピュアCM方式とアットリスクCM方式 下記図1、2参照)によって金額が大きく変動するため、社内における業績管理は、この粗利益を用いております。
(図1)ピュアCM方式の契約関係(業務委託契約)は次のとおりであります。
当社はマネジメントフィーのみを売上計上します。

(図2) アットリスクCM方式の契約関係(請負契約)は次のとおりであります。
当社は完成工事高(マネジメントフィーを含む)を売上計上します。

・CMの普及への取り組み
CM(発注者支援業務)方式の普及のため、公共団体や民間企業、協会、各種イベント等へ出展や講演を引続き実施しております。
また、2019年6月より、学校法人早稲田大学大学院創造理工学研究科においてCMに関する寄附講座を開設しました。CMr(コンストラクション・マネージャー)の育成だけではなく、発注者と共同作業を行うために必要な知識と交渉能力を有する設計者と施工者の育成を目指しております。
・テレワークとデータ活用について
今年に入り、世界的に広がる新型コロナウイルス感染症の拡大により、過去に経験したことのないような事態が続いておりますが、当社では、クラウド上でプロセスと情報を共有する等のICTを積極的に活用し、全社を挙げて完全なテレワーク環境で業務を実施することが可能な体制を構築しており、その中で、既に通常業務を日々遂行しております。
また、社内研修や、マネジメントスキル等の向上に向けたカリキュラムを充実させるなど、社員教育にも注力し、ICTを積極的に活用した職場環境改善によるサービス品質向上と社員の生産性向上に鋭意邁進しております。社員はそのような職場環境の中で、社内に10数年に亘って整理・蓄積された社員一人ひとりの「行動分析に関するビッグデータや顧客に提出する成果物の進化の度合」を解析し、各人が自らのアクティビティの改善やキャリアビジョン実現に向けた上司との協働などによって、主体的に能力の向上や働き方の改革を図っております。それらの取組みにより、当社の一人当たりの労働生産性は毎年着実に向上し、一方で、残業時間(月平均)は毎年減少しております。
このような当社のICTを活用した生産性向上や顧客満足度向上の双方を目的とした取組みについて、昨年開催された一般社団法人日本テレワーク協会主催の第19回テレワーク推進賞において「奨励賞」を受賞しました。さらに、総務省が実施・選出する「2019年度テレワーク先駆者百選 総務大臣賞」を受賞しました。
・コンプライアンス等について
当社では「明朗経営」と称し、各プロジェクトに関するプロセスや成果等の可視化や、企業業績等に関する情報を可視化し、「隠し事」が出来ない仕組みの構築及び各種法令を遵守するための体制や規程等を整備し、内部統制システムを構築しております。その中で、社内研修や社内教育コンテンツを展開し、「フェアネス・透明性・顧客側に立つプロ」の企業理念を企業風土として定着させ、社員一丸となって行動しております。また、CSR/ESGへの取組みに関する方針を次の通り定めて活動しております。
(CSR/ESGへの取組みの概要)
当社では環境CM方針を定め、建築や設備のプロがオフィスやビルの環境負荷の低減、環境に配慮した技術の導入・運用等に関する支援をお客様に対して行い、発注者支援事業を通じて、お客様の環境目標達成の実現に貢献し、「地球環境への配慮」をともに実現しております。当社は、環境及び近隣地域のCSR団体に加盟し、他の加盟社の活動やボランティア情報を収集し、車椅子の定期的な寄贈等会社として活動する他、社員へ啓蒙を図り、一体となって活動しております。
また、発注者支援事業の透明性に基づく意思決定プロセスの構築を通じて、透明性や信用を基盤とした持続可能な社会の実現に貢献し、ESGを重視した経営に取り組んで参ります。
(生産、受注及び販売の状況)
(1)生産実績
当社における生産状況は、施工管理、施工技術、機械力、資金力及び資材調達力等の総合によるものであり、工事内容が多様化しており、また外注に依存している割合が高いことから具体的に表示することが困難であるため、記載を省略しております。
(2)受注実績
当事業年度の受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
| セグメントの名称 | 当事業年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | |
| 金額(千円) | 前年同期比(%) | |
| オフィス事業 | 1,265,996 | 94.6 |
| CM事業 | 2,285,579 | 96.6 |
| CREM事業 | 896,650 | 80.0 |
| 合計 | 4,448,226 | 92.2 |
(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(3)販売実績
当事業年度の販売状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
| セグメントの名称 | 当事業年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | |
| 金額(千円) | 前年同期比(%) | |
| オフィス事業 | 1,144,900 | 74.1 |
| CM事業 | 2,228,072 | 72.9 |
| CREM事業 | 980,658 | 98.5 |
| 合計 | 4,353,631 | 77.8 |
(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
| 相手先 | 前事業年度 | 当事業年度 | ||
| 金額(千円) | 割合(%) | 金額(千円) | 割合(%) | |
| 公立大学法人大阪府立大学 | 1,118,189 | 20.0 | ― | ― |
(注)当事業年度の公立大学法人大阪府立大学に対する販売実績は、当該販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満であるため、記載を省略しております。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
文中における将来に関する事項は、当事業年度末(2020年3月31日)現在において当社が判断したものであります。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されており、財政状態及び経営成績に関する以下の分析が行われております。
当社経営陣は、財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の報告数値及び偶発資産・負債の開示、並びに報告期間における収入・費用の報告数値に影響を与える見積り及び仮定設定を行わなければなりません。経営陣は、収益の認識、対応する原価の計上、貸倒債権、法人税等、偶発事象や訴訟等に関する見積り及び判断に対して、継続して評価を行っております。経営陣は、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行い、その結果は、他の方法では判断しにくい資産・負債の簿価及び収入・費用の報告数字についての判断の基礎となります。実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社は、特に以下の重要な会計方針が、当社の財務諸表において使用される当社の重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。
①収益の認識
当社の売上高は、完成工事高については工事完成基準により完成引渡しした時点で、または工事進行基準により工事進捗率で計上、マネジメントサービス料収入についてはサービスの提供が完了した時点で、または工事進行基準によりサービスの進捗率で計上、その他売上高については完成引渡時に顧客から引渡書を受領した時点で計上し、いずれも完了時には顧客から引渡書等の証憑を受領しております。一部顧客側の事情により証憑が発行されないケースがありますが、それに代わる関連する他の書類等を受領し計上しております。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響につきましては、(追加情報)に記載しております。
(2)財政状態の分析
当社の当事業年度の財政状態は、以下の通りであります。
①資産の部
流動資産は、前事業年度末に比べて、6.1%減少し、4,809百万円となりました。これは、現金及び預金が542百万円減少したことなどによります。
固定資産は、前事業年度末に比べて、19.9%増加し、710百万円となりました。
この結果、総資産は、前事業年度末に比べ3.4%減少し、5,519百万円となりました。
②負債の部
流動負債は、前事業年度末に比べて、47.1%減少し、808百万円となりました。これは、工事未払金が591百万円減少したことなどによります。
固定負債は、前事業年度末に比べて、9.8%増加し、584百万円となりました。
この結果、負債合計は、前事業年度末に比べ32.4%減少し、1,392百万円となりました。
③純資産の部
純資産合計は、前事業年度末に比べて、12.9%増加し、4,127百万円となりました。これは、繰越利益剰余金が388百万円増加したことなどによります。
(3)経営成績の分析
当社の売上高は顧客との契約形態によって変動するものであり、契約形態は顧客がプロジェクト毎に選択可能であります。当事業年度の売上高は、前事業年度にも増してピュアCM(工事原価を含まないフィーのみの契約型CM)が顧客から選択されたことにより、4,353百万円(前期5,598百万円)と前期に比べ22.2%減少しました。
区分ごとの主な内容は、以下の通りであります。
①売上高
当事業年度の売上高は4,353百万円となりました。
②売上原価
当事業年度の売上原価は2,062百万円であり、完成工事原価が99百万円、マネジメントサービス料原価が1,961百万円となり、全体では前期に比べ1,309百万円減少しました。
③販売費及び一般管理費
当事業年度の販売費及び一般管理費は1,387百万円であり、前期に比べ64百万円減少しました。これは主として、採用教育費の減少39百万円であります。
④営業利益
当事業年度の営業利益は902百万円であり、前期に比べ128百万円の増加となりました。
⑤営業外収益(費用)
当事業年度の営業外収益は4百万円であり、主として保険返戻金1百万円であります。
⑥経常利益
当事業年度の経常利益は906百万円であり、前期に比べ126百万円増加しました。
当事業年度の経常利益目標790百万円(実績906百万円)を上回りました。
(4)流動性及び資金の源泉
①キャッシュ・フロー
当事業年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は、前事業年度末に比べ542百万円減少し、1,834百万円となりました。
当事業年度末の各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果支出した資金は、146百万円となりました(前事業年度は244百万円の取得)。
支出の主な内訳は、仕入債務の減少592百万円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果支出した資金は、143百万円となりました(前事業年度は114百万円の支出)。
支出の主な内訳は、投資有価証券の取得による支出100百万円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果支出した資金は、252百万円となりました(前事業年度は151百万円の支出)。
支出の主な内訳は、配当金の支払額252百万円であります。
②資金需要
当社の運転資金需要のうち主なものは、顧客の要望に基づきアットリスクCM方式にて対応することになる一時的な資金負担部分であります。当該部分について支払と回収のタイムラグを回避する工夫を行う等、運転資金需要を抑制するようにしております。