有価証券報告書-第14期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

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2017/06/30 10:01
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対処すべき課題

当社グループを取り巻くビジネス環境においては、「デジタル化の進展による企業のマーケティング活動の変化」と「企業のグローバルシフトの加速」という2つの大きな構造的変化が起きており、この流れは今後も更に進むと考えております。
まず、「デジタル化の進展による企業のマーケティング活動の変化」についてですが、デジタル化の進展により、これまで把握できていなかった生活者の情報接触行動や購買行動をデータで可視化することが可能となりました。そして、これにデータ処理技術等の高度化・高速化が加わり、大量で多種多様なデータをリアルタイムに扱う「マーケティングへのデータ利活用」が本格化してきております。また、ソーシャルメディアの浸透等が企業と生活者を直接つなぐ機会を増加させており、「生活者とのつながりを活用したマーケティング活動ニーズ」も拡大してきております。このようにデジタル化の進展が、マーケティング手法の革新や新たなソリューションの開発を活発化させており、加えて、このような変化が、世界中ボーダレスに、しかも一斉に伝播普及する「マーケティングの世界同時/同質化」も引き起こしております。
次に、「企業のグローバルシフトの加速」についてですが、新興国、中でもアジア諸国における中間層の拡大は、今後一層、世界の消費を牽引していくと見られ、企業のアジアを中心とした新興国でのマーケティング活動の更なる活発化と、新興国を含めたグローバル・マーケティングの進展につながっていくと考えております。
当社グループは、このようなビジネス環境の変化に対応し、グループ全体の持続的成長を実現するため、平成25年11月に策定した中期経営計画に基づいて、積極的な事業活動を展開しております。平成31年3月期を最終年度とする本中期経営計画では、以下の中期基本戦略に則り、3つの成長ドライバーを強化し、各種経営課題への対応を積極的に行うことで中期経営目標の達成を目指すことを掲げております。
(1) 中期基本戦略
当社グループは、「企業のベスト・マーケティング・パートナーとして、世界一級のマーケティングサービス企業集団を目指すこと、そして、先進的かつ創造的な統合マーケティング・ソリューションの提供を通じて、新たな市場やムーブメントを創造し、社会/生活者に活力を与え続ける存在になること」を中期基本戦略としております。
この基本戦略に基づき、以下に掲げる3つの成長ドライバーを強化し、統合マーケティング・ソリューションの高度化・尖鋭化に努めております。
(2) 3つの成長ドライバー
① “生活者データ・ドリブン”マーケティング対応力の強化
デジタル化の進展により、これまで把握できていなかった多種多様な生活者データが入手できるようになり、それらを利活用した、いわゆる“生活者データ・ドリブン”なマーケティング活動に対するニーズは、益々本格化すると考えております。
当社グループは、これまでも、個々の人間を単なる消費者としてではなく、「生活者」としてまるごと理解し、その根源にある価値観や欲求の変化を読み解き発想する「生活者発想」をビジネス展開の、そして競争優位の「核」に据えてきました。
本中期経営計画期間においては、これまで当社グループが独自に蓄積してきた生活者データと、デジタル化の進展によって入手可能となった「リアルタイム・365日の生活者の情報行動・購買行動のデータ」及び「得意先・業種・メディア・コンテンツのデータ」を「先端テクノロジー」を用いて掛け合わせるなど、生活者発想の更なる高度化に取り組んでおります。
そして、今後も当社グループの強みであるプラニング力、クリエイティブ力、エグゼキューション力を駆使し、“生活者データ・ドリブン”な質の高いマーケティング・ソリューションを提供することで、得意先のマーケティング活動全体を統合的にマネジメントしてまいります。
② アジアを中心とした新興国での体制強化
アジアは今後も世界の成長センターであり、中でもアセアンについては、経済統合や中間層の拡大等、大きな成長機会があると考えております。特に、モータリゼーションの本格化は、自動車業種を最大の顧客基盤とする当社グループにとっては大きなチャンスであり、アジアでの企業・人材・ナレッジ構築への投資を積極的かつ重点的に行ってまいります。
具体的には、引き続き、日系得意先対応を強化する一方、ローカル得意先の獲得・拡大にも注力しております。また、M&A等の手法を積極的に活用し、成長著しいデジタル領域や、その他広告周辺領域の体制強化に注力することで、アジア地域に根差した統合マーケティング・ソリューション提供体制の構築を加速してまいります。
そして、このようなアジアでの基盤を「核」にしながら、その他新興国への新規参入、更には、得意先企業のグローバル・マーケティング・ニーズにも対応してまいります。
③ “専門性”と“先進性”の継続的な取り込み
デジタル化やグローバル化の進展に伴い、マーケティング手法の革新や新たなソリューションの開発が活発化しており、これが企業のマーケティング活動の高度化・複雑化をもたらしております。
当社グループは、このような状況に対応するため、主力事業である広告事業の強化に加え、専門的かつ先進的なマーケティング手法やソリューションを提供する「専門マーケティングサービス事業」領域の企業ラインナップを拡充することにも注力しております。
具体的には、国内だけでなく、最先端でユニークな専門マーケティングサービスの多くを生み出している欧米等海外においてもM&Aを一層積極化し、このような高度な専門マーケティングサービス事業会社の当社グループ内への取り込みを進めております。そして、これら専門事業会社が、直接得意先企業に対して先進的なソリューションを提供するとともに、グループ各社とも連携・協働することで、高度化・複雑化する得意先企業の課題解決に資する最適かつ統合的なソリューションを提供してまいります。
なお、平成26年5月に設立した戦略事業組織「kyu」は、本取り組みを推進する体制強化の一環であり、これまで複数のM&Aを実行するなど積極的な活動を継続しております。
今後も、上記の3つの成長ドライバーに人材を重点配置し、M&A及びインフラ整備に積極的に資金を投入することで、スピーディーかつ着実な成長を目指してまいります。
(3) 中期経営計画における目標
本中期経営計画を策定した平成25年11月時点で、計画最終年度(平成31年3月期)の中期経営目標として掲げた「連結のれん償却前営業利益:450億円」は平成28年3月期に3年前倒しで達成するに至りました。また、重点指標についても目標水準と同等もしくはこれを上回る水準で推移いたしました。そこで、昨年、中期経営目標及び重点指標について見直しを行い、以下のとおり、新たな数値目標を掲げました。
□中期経営目標(平成31年3月期)
連結のれん償却前営業利益(注1) : 570億円
また、計画期間中に管理していくべきと考える重点指標は、以下のとおりです。
<重点指標>連結売上総利益年平均成長率(注2) : +7~10%
連結のれん償却前オペレーティング・マージン(注3) : 18~20%
のれん償却前ROE(注4) : 10%以上
(注)1 連結のれん償却前営業利益とは、企業買収によって生じるのれんの償却額等を除外して算出される連
結営業利益のこと。
2 連結売上総利益年平均成長率は、平成28年3月期の実績から平成31年3月期までの年平均成長率のこ
と。
3 連結のれん償却前オペレーティング・マージン=連結のれん償却前営業利益÷連結売上総利益
4 のれん償却前ROE=企業買収によって生じるのれんの償却額等(持分法適用会社分を含む)を除外して
算出される親会社株主に帰属する当期純利益÷自己資本(期首・期末平均)
5 中期経営計画に関する上記の記述は、当社が現在入手している情報及び合理的であると判断する一定
の前提に基づいており、その達成を当社として約束する趣旨のものではありません。また、実際の業
績等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。
上記に掲げた中期経営計画の達成に向け、当社グループ一丸となって各種施策を推進してまいります。加えて、働き方改革等の経営課題にも積極的に取り組み、企業価値の一層の向上に努めてまいります。