有価証券報告書-第20期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

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2020/06/22 16:20
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(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当事業年度におけるわが国経済は、一定の内外需を背景とした継続的かつ底堅い基調でありましたが、事業年度始めから存在していた米中、米朝、中東含む国際情勢に端を発する海外発の景気下振れリスク、これらに加え、当事業年度第4四半期より発生した新型コロナウイルスの感染拡大により先行きが不透明な状況にもあります。
このような経済環境の中、次世代高速通信網5Gの導入、社会へ普及が進むAIなど人と機械のコミュニケーション手段の進展、また世界的なリモートワークの広がりに代表される生活様式とインターネット活用の関係性の変化、多様化などがより一層進むことは予想されます。その過程で様々な行動履歴(ログ)、環境情報や生体情報などあらゆるセンシング情報を含む大量の情報やコンテンツなどが従来とは比較にならない規模でインターネット上に保管、流通される状況がさらに進みます。一方で欧州の個人情報保護規則(GDPR)に代表される個人情報の扱い方について慎重な検討や対策が進められる状況が日本においても起こりつつあります。それらの未来に向けた次世代のネットワーク、テクノロジー、データの有効な利活用において、新たな産業構造が生まれる可能性があります。
その中で、あらゆるエンターテイメント分野やマーケティング分野、音楽・映像・書籍・テレビ・イベントなどエンターテイメント全般および広告サービスを体験する機会においても、次世代のネットワーク、テクノロジー、データの利活用は今後、確実にかつ急速に進みます。日々の生活の中でより多くのコンテンツや情報が流通することのみならず、いかに個々人に最適化され、また一方で多様化が必要とされる、という一見相反する社会ニーズへの価値提案が大きな事業機会となります。
またインターネットにつながるデバイスが、家電、テレビ、自動車など生活に密着した機器にまで広がるIoTと大量データを自律的に学習するAIの普及、データ解析や予測技術の進展、これらを通じて新たな価値を生み出すデータベース関連サービスの事業機会の増加が予想されます。また人と機械、人とテクノロジーとのコミュニケーションにおいて、人と機械がより自然に会話をするなかで、情報のみならず感情など目に見えない情報までもやりとりする人と機械が気持ちを通わす新しい対話型インターネットサービスの進展も予想されます。
当社はこれらの事業機会を実現しうる技術として「文脈(コンテキスト)を解釈する技術」「人間の感性や感情を科学する技術」の開発に注力しております。またこの技術開発に重要な役割を果たす当社独自の「感性メタデータ」を創業以来、開発を続けております。
当社の強みは、創業来10年以上、音楽、映像を中心としたエンターテイメント分野を通じて人間が持つ感情や感性を体系的、網羅的、詳細にデータベース化を行い、国内最大級の感性データベースであるMSDBとして自社開発、運用しているところにあります。またさらにそれら「感性メタデータ」を活用した感性AI、感情分析などの「感性テクノロジー」を開発し、人間の感性と感情に寄り添う独自のサービス開発技術にあります。
これら感性および感情を科学する技術を発展させ、エンターテイメント産業の発展に貢献するのはもちろんのこと、人の感性を理解するテクノロジーを通じて美容、食品、飲料、衣料、消費財、旅行、イベントなどにデータ開発の領域を広げております。そのうえで、エンターテイメントから始まりあらゆる分野の感性データを連携する「広告マッチングサービス」「ブランドパートナーシップ」「クロスプロモーション」など独自の感性マーケティングサービスを提供してまいります。
当社は、「データベース・サービスカンパニー」として、『人の想像力をつなぐ』ことをミッションに、コンテンツに紐づく情報をデータベース化したオリジナルのメディアサービスデータベースを開発し、主に通信会社およびインターネットサービス会社を対象に、データ提供、検索機能提供、レコメンド・パーソナライズ機能提供、データ分析などの多様なデータベース関連サービスの開発および提供を行っております。
これらのサービスについては、ユーザーベースをもつパートナー企業への技術ライセンス提供として、KDDI株式会社、株式会社レコチョクを通じた株式会社NTTドコモ、ヤフー株式会社、楽天株式会社、LINE MUSIC株式会社などのサービスにて利用されております。
一方で従来の大手通信会社向けの受託型の開発・運用事業においては、さらなる縮小が続いております。
また当社独自の「感性AI」を活用した「人間の感性、感情を理解するテクノロジー」による特定分野に特化した「専門AI」に関する特定パートナー企業との実証実験(PoC=Proof of Concept)の取り組みが進捗しております。また感性マーケティング事業に向けて美容分野等、エンターテイメント分野以外への感性メタデータ提供も進捗しております。
将来の企業成長のために進めている開発・運用売上からライセンス収入主体への事業モデルの進化に向けたデータ・テクノロジーライセンス事業に一段と主力事業がシフトする一方で、研究開発やデータ開発を売上の25%を目処に積極的な投資を実行しております。それらの結果として売上高は前事業年度比85.1%の1,227,895千円となりました。
売上原価は、利益率の高いデータライセンス事業の進展や既存事業の開発・運用の効率化により、前事業年度比83.5%の670,935千円となりました。売上総利益は、前事業年度比87.0%の556,959千円、販売費及び一般管理費は、外部委託コストの削減(インハウス化)などにより、前事業年度比94.5%の535,747千円となりました。
これらの事業活動の結果、当事業年度の経営成績は、売上高1,227,895千円(前事業年度比85.1%)、営業利益21,212千円(前事業年度比29.0%)、経常利益21,474千円(前事業年度比29.5%)、当期純利益17,202千円(前事業年度比25.5%)となりました。
当事業年度末における総資産は、1,259,483千円(前事業年度末比13,624千円増)となりました。流動資産につきましては1,050,728千円(同67,393千円増)となりました。増減の主な要因としましては、現金及び預金の増加(同126,278千円増)、回収による売掛金の減少(同55,810千円減)があったことによります。固定資産につきましては、関係会社株式の売却(同49,000千円減)により、208,755千円(同53,768千円減)となりました。
負債は、203,711千円(同1,966千円増)となりました。増減の主な要因としましては、買掛金の減少(同11,282千円減)、未払費用の減少(同8,956千円減)、未払金の増加(同8,649千円)、退職給付引当金の増加(同8,784千円)などがあったことによります。
以上の結果、純資産は、1,055,771千円(同11,658千円増)となり、自己資本比率は、前事業年度末の81.5%から81.4%となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」といいます)は前事業年度末に比べ、126,278千円増加し、765,612千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は、126,025千円(前事業年度末比60,965千円増)となりました。主な収入要因としては、税引前当期純利益20,456千円の計上、減価償却費41,438千円の計上、売上債権の減少55,810千円、未払金の増加8,826千円、退職給付引当金の増加8,784千円などがありました。一方で主な支出要因としては、仕入債務の減少11,282千円などであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果獲得した資金は、8,032千円(前事業年度末比14,102千円増)となりました。主な収入要因としては、関係会社株式の売却による収入47,473千円であります。主な支出要因としては、無形固定資産の取得38,836千円などであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、7,779千円(前事業年度末比15,336千円減)となりました。主な支出要因としては、配当金の支払額7,297千円であります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社は、生産実績を定義することが困難であるため、生産実績の記載はしておりません。
b.受注実績
当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載に馴染まないため、当該記載を省略しております。
c.販売実績
当事業年度の販売実績において、当社は単一セグメントとしているため、サービスライン別に示すと次のとおりであります。
名称前事業年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
当事業年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
金額(千円)前年同期比(%)金額(千円)前年同期比(%)
メディアビジネス1,436,88990.71,223,89385.2
コンテンツビジネス6,32831.44,00163.2
合計1,443,21890.01,227,89585.1

(注)最近2事業年度の主な相手先別の販売実績および当該販売実績に対する割合は次のとおりであります。なお、KDDI株式会社に対する販売実績は、各通信事業者の情報料回収代行サービスを利用して、一般ユーザーに有料情報サービスを提供するものが含まれております。
相手先前事業年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
当事業年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
金額(千円)割合(%)金額(千円)割合(%)
KDDI株式会社451,53931.3260,07921.2

(注)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
これらの財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債および収益・費用の報告数値に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、過去の実績などを勘案して合理的な見積りを行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。
なお、当社の財務諸表の作成に際して採用している重要な会計方針は、「第5経理の状況(1)財務諸表[注
記事項](重要な会計方針)」に記載しております。
②経営者の視点による経営成績等の状況及び、資本の財源、資金の流動性についての分析
当事業年度においては、開発収入や運用収入による売上依存度を下げ、独自技術資産を活用したデータライセンス提供に関連する事業を主体に事業構造の変革を引き続き進めております。結果、データライセンス事業売上が売上の5割を超える水準まで伸長しております。この事業構造の変化により売上は14.9%減少、一方前事業年度より引き続きのデータライセンス事業が伸長したことにより、売上総利益率が前年度44.3%から45.4%まで上昇するなど収益構造が継続的に向上しております。
また、当社の主な資金需要は運転資金および研究開発費用であります。
運転資金は人件費支払いに充てるためのものであり、原則として営業活動による収入で賄うこととしております。
研究開発費用は人工知能関連の技術開発、社内で使用するソフトウエアや、ソフトウエア開発に使用するサーバー等が主なものであり、基本的には営業活動による収入を主たる財源としておりますが、資金繰りや金融情勢を勘案し、良好な関係にある金融機関から借入による資金調達も必要に応じ、検討可能な状況であります。
(3)経営戦略の現状と見通し
インターネット関連業界は、通信速度の高速化、通信料の定額化、プラットフォームのオープン化、スマートフォンの普及が進んでおり、スマートフォンやPC、タブレットのみならず家電や自動車、ロボット、産業機械などあらゆる端末機器がインターネットに接続されるIoTの進展は今後ますます急速に進んでいきます。
また、クラウドコンピューティングの発展および大量の行動データの超高速処理環境の発展も進んでいきます。
当社は、エンターテイメント分野で培った人の感性や感情を理解するデータ関連技術を更に深堀りすること、およびその関連技術を非エンターテイメント分野に広げることにより、①エンターテイメント分野の発展への貢献、②非エンターテイメント分野での感性・感情に基づくマーケティングという2つの成長機会をもたらします。AI技術、データ分析技術などは普及化が進む状況ですが、その中で当社は「人間の感性や感情を理解するテクノロジー」に特化しており、当社が独自開発を行う感性AIにて実現する人間の感性や感情を科学する関連市場の開拓余地が大きくあります。
当社はまずエンターテイメント関連のデータサービスにおいて事実上の標準ともいえる普及を目指します。
エンターテイメント関連市場においては、
①ネットワーク経由で音楽や映像を聴取・視聴する機会が、作品やライブ共に増大が見込まれます。
②インターネットを活用したエンターテイメントサービスの発展に伴いエンターテイメントに特化したデータ分析および分析によるさらなる聴取・視聴機会拡大へのニーズの高まりが見込まれます。
③IoT、AI技術の進展によりスマートフォンやタブレット、パソコンのみならず自動車や家電など、よりエンターテイメントサービスを体験する環境が広がることが見込まれます。
そのような環境のもと、当社は
①当社独自の「感性メタデータ」を活用した新たなレコメンド体験、パーソナライズ体験を実現するエンジンの開発・改善によりライセンス先サービスの発展に寄与し、音楽・映像分野を中心にエンターテイメント産業に貢献します。
②音楽分野における分析サービスを広げ、日本におけるエンターテイメント分野のデータアナリティクス(データ分析)分野を開拓します。
③エンターテイメント分野に特化したAI技術を活用した新たな人とコンテンツの接触機会、聴取・視聴機会を生むサービス機能をスマートフォンやタブレット、パソコンのみならず自動車や家電を通じて様々な企業と連携し提供します。
非エンターテイメント関連市場においては
①効率や生産性が求められる時代背景の中で、各企業・商品・サービス・ブランドが、「消費者との感情的な結びつき」を差別化または独自性の要素として活用することの増加がさらに見込まれます。
②各社導入が進んだDMP(Data Management Platform)などの生産性、効果の可視化がより積極的に行なわれ、そのための分析精度の定量的・定性的な評価が進むことが見込まれます。この定性的な評価において当社の「感性や感情を科学する技術」が活用できます。
③クッキーレスなど、個人情報の保護の機運の高まりの中で、行動履歴だけに頼らない分析・情報および商品マッチングの精度向上へのニーズが高まることが見込まれます。
そのような環境のもと、当社は
①エンターテイメント分野で培った感性メタデータの開発・利活用など「人の感性・感情を理解する技術」を美容、食品、飲料、衣料、消費財、旅行、イベントなどの分野において応用し、世の中のあらゆる商品・サービス・体験を「感性メタデータ」化します。
②エンターテイメント分野で培った感性や感情の可視化、体系化を実現する自然言語処理、データ開発技術をより進展させ、文脈(コンテキスト)を解釈する「独自のマーケティングサービス」を開発します。
③潜在的に共通する感性・感情的な結びつきによる消費者と関係構築を望む企業同士が連帯して、消費者に働きかける「クロスプロモーション」「ブランドパートナーシップ」の実現に向けたデータおよび技術開発を進め、複数企業・ブランドとの実証実験を行ないます。
また当社の中期的な指針であるエンターテイメント・テクノロジーを活用した感性マーケティングの実現に向けたエンターテイメント関連市場と非エンターテイメント関連市場を結びつける事業・サービスである異なる分野の企業同士が「顧客との感情的な結びつき」を協力して強めていく「ブランドパートナーシップ」「クロスプロモーション」「Co-Creative(共同制作)」など新しいマーケティングサービスの開拓、プラットフォーム化を目指します。
あわせてより効率的、効果的なビジネスモデルに向けた当社テーマである「独自テクノロジーのオープン化」に向けて一部無料などのより柔軟な価格体系を伴ったビジネスモデルを創出します。
今後、感性AIという当社独自技術発展に向け、感性・感情理解にさらに特化する目的を持った機械学習や深層学習、自然言語処理など分析応用技術の開発・活用を進め、レコメンデーション、パーソナライズサービスの進化、分析サービスや予測サービスや開発支援、制作支援、販売促進支援などの当社独自データベースならではの付加価値型データベースマーケティング事業を広げていきます。
これらすべての当社独自データベース関連サービスにおいて重要な要素として創業以来の当社の注力領域である人間の持つ「感情」や「感性」のデータベース化およびその利活用にあります。当社は「人の感情や感性を理解する技術」の開発をより一層進めてまいります。そのための土台となるのが、当社独自感性データベースおよび感性AIの技術となります。それらを利活用し
①エンターテイメントとテクノロジーの連携・融合の可能性を技術開発、事業開発の面で最大限に追求します。
②エンターテイメント分析を通じて培った人間の感情・感性を理解する技術を用途特化型「専門AI」開発に活かし、社会に存在するあらゆる汎用的なAIと連携してまいります。
③「専門AI」を通じて培った技術をコミュニケーション型生活提案サービスなど次世代マーケティングサービスに活用し「感性マーケティングサービス」を実現します。
そのうえで、中長期的には自社にてユーザーベースを持ち得る当社独自のデータベース活用サービスを展開し、国内外で一人でも多くの利用者を増やしていくことで、当社ミッションである世界中の『人の想像力をつなぐ』ことに寄与していきます。
(4)経営者の問題意識と今後の方針について
当社の経営陣は、現在の事業環境および入手可能な情報に基づき最善の経営戦略を立案し、実行するように努力しておりますが、当社の属するインターネット業界は開発スピードが速く、その内容も複雑化してきております。また、提供するサービスについても、ユーザーの嗜好や流行の変化を捉え、柔軟な事業展開が必要となり、競合他社との競争が激化する事も予想されます。
そのような事業環境の中で、当社はデータベースを基盤とした事業モデルにより集中し収益体質を強化し、自社プロパティであるデータベースや技術のライセンス収入モデルを確立いたします。
またエンターテイメント分野と非エンターテイメント分野を「感性」や「感情」を軸に繋いでいくことにより、通信事業者と事業の再構築の強化、データベースおよび関連技術サービスのライセンス先拡大、拡大のための実証実験サービス、プロトタイプ開発など次期主力事業を目的とした種まきの実施、当社プロパティのプロダクト化およびオープン化などの「事業面の強化」、感性AI関連技術および感性メタデータの集中開発、またそれら独自技術のサービス体験(UX)を実現するシステムアップなど「開発面の強化」、今後より企画、営業力を強化していくための非開発メンバーの採用、リーダー層の育成、企業文化のさらなる熟成、浸透などの「人材およびマネージメント面の強化」を行っていきます。

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