訂正有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2015/10/19 15:01
【資料】
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【項目】
83項目

対処すべき課題

日本銀行の量的・質的金融緩和の効果浸透により歴史的な低金利が継続するなど、当行を取り巻く経営環境は、現在厳しい状況にありますが(金融経済環境は、「1 業績等の概要 (1) 業績 ① 金融経済環境」をご参照ください。)、当行の最大の課題は平成27年度半ば以降の上場の実現です。
当行の株式は現在、自己株式を除き、日本郵政株式会社がその全てを保有しておりますが、郵政民営化法により、同社が保有する当行株式はその全部を処分することを目指し、当行の経営状況、ユニバーサルサービスの履行への影響等を勘案しつつ、できる限り早期に処分するものとされております。
これを受けた当行の株式上場は、郵政民営化の基本理念(経営の自主性、創造性及び効率性の向上、公正かつ自由な競争の促進)に則り、「経営の自由度の確保」「自立的な経営体制の確立」の実現を目指すものです。
また、当行では、郵便局をメインとするネットワークを通じ、お客さま満足度No.1のサービスを提供する「最も身近で信頼される銀行」、適切なリスク管理の下で運用の多様化を推進し、安定的収益を確保する「本邦最大級の機関投資家」を目指し、以下の課題に取り組んでまいります。
(営業戦略の拡充)
日本郵便株式会社(郵便局)との一体営業を継続・強化し、総預かり資産残高の拡大を目指します。
給与・年金口座といったメイン化商品や定額貯金などを活用し、お客さまのライフサイクルに応じ、様々なニーズに応えられる営業を展開して、安定的な顧客基盤の構築に繋げます。更に、各店舗(直営店・郵便局)のお客さまの属性や取引状況をタイムリーに把握して、的確な商品をご提案するため、「担当顧客システム」の利用定着と機能拡充に注力します。
また、投資信託等の資産運用商品販売の促進のため、全直営店に配備したタブレット端末も活用して、フィナンシャル・コンサルタント(FC)によるお客さまの運用資産全体に亘る「コンサルティング営業」に注力します。さらに、新しい資産運用会社を設立し、簡明で分かりやすい投資信託商品を、当行と郵便局のネットワークを通じて幅広く・迅速にご提供することを目指すとともに、お客さまのご意向により一層応え、長期安定的な資産形成をお手伝いできるよう努めてまいります。
全国に約27,000台設置しているATMの更なる利便性向上・拡充、クレジットカード等の収益性向上にも取り組み、市場金利に左右されにくい手数料ビジネスを強化してまいります。また、当行ATMネットワークの活用を通じて地域金融機関との連携を図ります。
更に、「無通帳型総合口座サービス(ゆうちょダイレクト+(プラス))」導入など個人のお客さま向けインターネットバンキングの機能強化、法人のお客さま向け大量送金・代金収納のリアルタイム・サービス拡充、給与受取口座の営業強化等により、顧客基盤の拡充を図ります。
(資金運用戦略の展開)
安定的な調達構造の下、有価証券運用をベースとしつつ、一層の収益確保を求めて、運用戦略の高度化を目指します。具体的には、ALM(資産・負債の総合的管理)の枠組みである2つのポートフォリオの内、「ベース・ポートフォリオ」では、国債等による利鞘確保重視の運用スタイルを基本に、機動的に円金利・流動性リスクをマネージし、中期的な安定的収益の積上げに注力します。
一方、「サテライト・ポートフォリオ」では、市場(金利・為替等)・経済情勢(景気・信用状況等)等が安定推移する場合、自家運用・委託運用の国際分散投資、高度化の推進や、オルタナティブ(代替的)投資など新たな投資領域の開拓に取り組み、主に信用・市場リスク商品への運用を更に促進します。このため、市場部門の整備、専門的人材の確保等を進め、運用態勢を更に強化してまいります。
このほか、地域金融機関などとも連携しつつ、地域経済の活性化を支援する様々な取組みを検討してまいります。
また、これらの運用の多様化を踏まえ、パフォーマンス(運用実績)の要因分析、将来の市場変動に備えたリスク分析・管理態勢の強化、審査態勢の高度化にも注力していきます。
(内部管理態勢の充実)
「コンプライアンスなくして会社は存続し得ない」との強い信念のもと、日本郵便株式会社と連携しつつ、引き続き、業務改善計画(当行は、平成21年12月に金融庁から業務改善命令を受け、平成22年1月に業務改善計画を策定しております。「4 事業等のリスク (6) オペレーショナル・リスク等 ⑦ 法令違反等に係るリスク」をご参照ください。)の徹底に努め、経営トップからのメッセージの発信や各種研修の強化等による「考えるコンプライアンス」の更なる浸透を通じて、上場企業に求められる法令等遵守意識を醸成し、内部管理態勢の充実を図ります。
また、お客さまの個人情報管理ルール・基本動作を改めて徹底し、資産運用商品販売時の顧客属性・ニーズやリスクに応じた説明態勢を強化する等、顧客保護態勢の充実に努めます。
更に、店舗の事務品質向上のため、マニュアルの検索性を高め、職場でのOJT(On-the-Job Training)を支援すると共に、「ゆうちょダイレクト」の不正送金やサイバー攻撃への対応により、インターネット取引のセキュリティ強化を継続し、お客さま満足度の向上に努めてまいります。
(経営態勢の強化)
日本郵政株式会社が昨年12月に公表した、平成27年度半ば以降の郵政グループ3社の同時上場実現に向け、上場企業に相応しい開示・IR態勢の構築などを推進していきます。
また、従業員のモチベーションを更に高めるべく、頑張った者が一層報われる新たな給与制度、在職期間中の貢献度をより反映する退職手当制度を導入すると共に、引き続き、人材育成の充実、女性の活躍等ダイバーシティの推進、戦略的な人材配置による人的資源の有効活用に取り組みます。
加えて、顧客サービスの向上や成長に向けた投資を拡充する一方、生産性向上のため全社的に仕事の進め方を見直すBPR(Business Process Re-engineering)を継続し、経費の効率的使用に努めます。
更に、当行では、CSR(企業の社会的責任)を経営の最重要課題のひとつに位置づけ、引き続き「人に優しい事業環境の整備」「社会、地域社会への貢献の推進」「環境保全活動の推進」に取り組みます。具体的には、施設のバリアフリー化や、地域に根ざした社会貢献、次代を担う子ども達への金融啓発、更に東日本大震災の被災者の方々への支援等の活動を継続してまいります。
日本郵政グループが「トータル生活サポート企業」を目指す中で、当行は、「郵便局ネットワークとの有機的な結合」を深めつつ、上掲の諸施策を通じて企業価値を高め、お客さま満足度No.1サービスを提供する「最も身近で信頼される銀行」の実現に、全社一丸となって取り組んでまいります。