有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2020/02/20 15:00
【資料】
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【項目】
70項目
(1)経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
なお、当社はWebセキュリティ事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
①財政状態の状況
第9期事業年度(自 2018年1月1日 至 2018年12月31日)
(資産)
当事業年度末における流動資産は245,998千円となり、前事業年度末と比較して107,680千円増加いたしました。これは主に、運転資金調達のための新規借入に伴い現金及び預金が79,801千円増加、売上高増加に伴い売掛金が16,538千円増加したことによるものであります。
固定資産は42,640千円となり、前事業年度末と比較して19,505千円増加いたしました。これは主に、本社移転に伴い建物が12,343千円増加したことによるものであります。
この結果、総資産は288,639千円となり、前事業年度末に比べて127,185千円増加いたしました。
(負債)
当事業年度末における流動負債は187,016千円となり、前事業年度末と比較して109,696千円増加いたしました。これは主に、運転資金調達のための新規借入に伴い短期借入金が30,000千円増加、1年内返済予定の長期借入金が23,328千円増加したことに加え、事業拡大により未払金が23,221千円増加したことによるものであります。
固定負債は45,284千円となり、前事業年度末と比較して45,284千円増加いたしました。これは、運転資金調達のための新規借入に伴う長期借入金が45,284千円増加したことによるものであります。
この結果、負債合計は232,300千円となり、前事業年度末に比べ154,980千円増加いたしました。
(純資産)
当事業年度末における純資産は56,339千円となり、前事業年度末と比較して27,794千円減少いたしました。これは、当期純損失の計上による繰越利益剰余金27,794千円の減少によるものであります。
第10期第3四半期累計期間(自 2019年1月1日 至 2019年9月30日)
(資産)
当第3四半期会計期間末における流動資産は380,181千円となり、前事業年度末に比べ134,182千円増加いたしました。これは主に、事業拡大による売上増加の結果、現金及び預金が106,858千円増加したことによるものであります。固定資産は37,792千円となり、前事業年度末に比べ4,848千円減少いたしました。これは主に、減価償却により無形固定資産が3,750千円減少したことによるものであります。
この結果、総資産は、417,974千円となり、前事業年度末に比べ129,334千円増加いたしました。
(負債)
当第3四半期会計期間末における流動負債は209,841千円となり、前事業年度末に比べ22,825千円増加いたしました。これは主に、借入金の返済に伴い短期借入金が24,000千円減少した一方、1年内返済予定の長期借入金が17,212千円増加したこと、事業拡大により未払法人税等が21,226千円増加、前受金が19,466千円が増加したことによるものであります。固定負債は48,916千円となり、前事業年度末に比べ3,632千円増加いたしました。これは長期借入金が3,632千円増加したことによるものであります。
この結果、負債合計は258,757千円となり、前事業年度末に比べ26,457千円増加いたしました。
(純資産)
当第3四半期会計期間末における純資産は159,216千円となり、前事業年度末に比べ102,877千円増加いたしました。これは四半期純利益の計上により利益剰余金が102,877千円増加したことによるものであります。
②経営成績の状況
第9期事業年度(自 2018年1月1日 至 2018年12月31日)
当事業年度におけるわが国経済は、企業収益や雇用情勢の改善等により、緩やかな回復基調が続きました。先行きにつきましては、海外経済の不確実性や米国の動向に留意する必要があるものの、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を見据えて、引き続き堅調に回復していくことが期待されております。
当社が属するセキュリティ業界におきましては、各企業のセキュリティ製品におけるクラウドサービスの利用拡大や、対策を外部に委託するケースが増えており、2022年には5,735億円(注1)になると予測されている市場全体の中でも、Webセキュリティ市場の成長率が最も高く、中でもSaaS(注2)型製品が好調なWAF(Webアプリケーションファイアウォール)が市場をけん引していくと推測されております。
DDoS攻撃やランサムウェア等、多様化するサイバー攻撃被害が相次いでいる事を背景として需要が拡大しており、従来、需要の中心であった大規模組織のみならず、相対的にセキュリティ対策が遅れていた中堅・中小企業における新規導入需要が拡大しております。当社におきましても、これらの動きを背景とした問い合わせや相談件数が増加いたしました。
このような状況の中、「世界中の人々が安心安全に使えるサイバー空間を創造する」という経営理念のもと、クラウド型WAF「攻撃遮断くん」の機能強化と導入企業数拡大、「WafCharm」の提供に向けた活動に取り組みました。
「攻撃遮断くん」の機能強化として、新たな脆弱性に対する迅速な対応はもちろんのこと、Webサイトからの申し込み自動化機能の開発などを実現した結果、「攻撃遮断くん」売上高は前期比193.6%と増加しました。
2017年12月より提供開始した「WafCharm」におきましても、世界のクラウド市場で47.8%のシェアを持つAWS(Amazon Web Services)(注3)に搭載されたAWS WAFの自動運用を可能にしました。導入と運用の手軽さだけでなく、AWSとの連携によるAWS WAFの新機能リリースに迅速に対応した「WafCharm」の新機能の開発もあり、販売開始より多くのユーザーにご利用いただいております。
また、Webセキュリティの啓蒙も含めた広告宣伝活動においては、当社サービスの認知度向上及び市場の拡大に向けた先行投資として、タレントを起用したWeb動画広告、情報セキュリティEXPOへの出展のほか、当社セキュリティエンジニアによるセキュリティレポートの強化などに取り組みました。
以上の結果、当事業年度の当社の業績は、売上高488,838千円(前事業年度比197.9%)、営業損失29,091千円(前事業年度は営業損失42,287千円)、経常損失27,525千円(前事業年度は経常損失46,840千円)、当期純損失27,794千円(前事業年度は当期純損失52,256千円)となりました。
(注)1 出典:富士キメラ総研「2018 ネットワークセキュリティビジネス調査総覧」
2 SaaS:Software as a Serviceの略称。ユーザー側のコンピューターにソフトウェアをインストールす るのではなく、ネットワーク経由でソフトウェアを利用する形態のサービス
3 出典:Gartner(July 2019) Worldwide Iaas Public Cloud Services Market Share
第10期第3四半期累計期間(自 2019年1月1日 至 2019年9月30日)
当第3四半期累計期間におけるわが国経済は、企業収益や雇用情勢の改善等により、緩やかな回復基調がみられ
るものの、国際情勢の緊張不安や不確実性による為替や株価の不安定な動きにより、依然として不透明な状況が続
いております。
このような状況の中、「世界中の人々が安心安全に使えるサイバー空間を創造する」という経営理念のもと、ク
ラウド型WAF「攻撃遮断くん」の機能強化と導入企業数拡大、「WafCharm」の導入企業数拡大に向けた取り組みに
加え、2019年2月にはAWS WAFのManaged Rules「Cyber Security Cloud Managed Rules for AWS WAF -
HighSecurity OWASP Set-」の販売を開始いたしました。
以上の結果、当第3四半期累計期間の当社の業績は、売上高579,414千円、営業利益123,537千円、経常利益
121,674千円、四半期純利益102,877千円となりました。
③キャッシュ・フローの状況
第9期事業年度(自 2018年1月1日 至 2018年12月31日)
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は前事業年度末に比べ79,801千円増加し、204,151千円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によって得られた資金は、6,696千円(前事業年度は8,000千円の支出)となりました。その主な内訳は、税引前当期純損失27,525千円の計上、未払金の増加額23,221千円、未払費用の増加額13,006千円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によって支出された資金は、25,507千円(前事業年度は13,177千円の支出)となりました。その主な内訳は、本社移転に伴う敷金の差入による支出15,102千円、有形固定資産の取得による支出13,586千円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によって得られた資金は、98,612千円(前事業年度は130,161千円の収入)となりました。その主な内訳は、運転資金の調達に伴う短期借入れによる収入30,000千円、長期借入れによる収入70,000千円であります。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社が提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しております。
b.受注実績
当社が提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、記載を省略しております。
c.販売実績
第9期事業年度及び第10期第3四半期累計期間における販売実績をサービス別に示すと次のとおりであります。
サービスの名称第9期事業年度
(自 2018年1月1日
至 2018年12月31日)
第10期第3四半期累計期間
(自 2019年1月1日
至 2019年9月30日)
販売高前年同期比(%)販売高
攻撃遮断くん(千円)477,766193.6527,779
WafCharm(千円)11,071-43,843
Managed Rules(千円)--7,791
合計(千円)488,838197.9579,414

(注)1.当社はWebセキュリティ事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。上記ではサービス別の販売実績を記載しております。
2.最近2事業年度及び第10期第3四半期累計期間における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、その割合が100分の10以上に該当する相手先がないため記載を省略しております。
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に準拠して作成しております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告数値に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績や状況に応じて合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性が存在するため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。
②経営成績の分析
第9期事業年度(自 2018年1月1日 至 2018年12月31日)
a.売上高
当事業年度の売上高は、前事業年度に比べ241,881千円増加し、488,838千円(前年同期比97.9%増)となりました。これは主に、「攻撃遮断くん」の月額課金額の増加に伴い2018年12月のMRRが44,782千円(2017年12月比64.0%増)まで伸びたこと、2018年の月次平均解約率が1.24%(2017年の月次平均解約率は0.99%)と低い数字を維持したこと、「WafCharm」の販売を開始したためであります。
b.売上原価、売上総利益
当事業年度における売上原価は、「攻撃遮断くん」の契約数増加に伴い通信費が増加したこと、組織拡大のため中途採用を積極的に行ったことによる人件費の増加等により、前事業年度に比べ74,499千円増加し、147,448千円(前年同期比102.1%増)となりました。
この結果、売上総利益は、前事業年度に比べ167,382千円増加し、341,389千円(前年同期比96.2%増)となりました。
c. 販売費及び一般管理費、営業損失
当事業年度における販売費及び一般管理費は、組織拡大のため、中途採用を積極的に行ったことによる採用費、人件費の増加及び本社移転に伴い地代家賃が増加、積極的な広告宣伝活動による広告宣伝費の増加などにより、前事業年度に比べ154,187千円増加し、370,481千円(前年同期比71.3%増)となりました。
この結果、営業損失は29,091千円(前年同期は営業損失42,287千円)となりました。
d. 営業外損益、経常損失
当事業年度における営業外収益は、助成金収入等により、前事業年度に比べ1,811千円増加し、1,883千円(前年同期比2,515.3%増)となりました。
当事業年度における営業外費用は、支払利息の減少により前事業年度に比べ4,309千円減少し、317千円(前年同期比93.1%減)となりました。
この結果、営業外損益は1,565千円の利益となり、経常損失は27,525千円(前年同期は経常損失46,840千円)となりました。
e. 特別損益、当期純損失
当事業年度において特別損益の計上はなく、税引前当期純損失は27,525千円(前年同期は税引前当期純損失51,966千円)となりました。また、法人税等268千円を計上した結果、当期純損失は27,794千円(前年同期は当期純損失52,256千円)となりました。
第10期第3四半期累計期間(自 2019年1月1日 至 2019年9月30日)
a.売上高
当第3四半期累計期間における売上高は、579,414千円となりました。これは主に、前年度より実施した大型のマーケティング活動による当社サービスの認知度向上や、新規顧客開拓に努めた結果、「攻撃遮断くん」の受注増加に伴い2019年9月のMRRが62,998千円まで伸びたこと、2019年9月時点で直近12ヶ月の月次平均解約率が1.09%と低い数字を維持したこと、「WafCharm」の新規受注が堅調に推移したためであります。
b.売上原価、売上総利益
当第3四半期累計期間における売上原価は、162,107千円となりました。これは主に人件費及び通信費等によるものであります。この結果、売上総利益は417,306千円となりました。
c.販売費及び一般管理費、営業利益
当第3四半期累計期間における販売費及び一般管理費は、293,768千円となりました。これは主に人件費及び広告宣伝費等によるものであります。この結果、営業利益は123,537千円となりました。
d.営業外損益、経常利益
当第3四半期累計期間において営業外収益が1,753千円、営業外費用が3,617千円発生しております。この結果、経常利益は121,674千円となりました。
e.特別損益、四半期純利益
当第3四半期累計期間の特別損益については、該当事項はありません。法人税等を18,797千円計上した結果、四半期純利益は102,877千円となりました。
③財政状態の分析
財政状態の分析につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態の状況」をご参照下さい。
④キャッシュ・フローの状況の分析
キャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」をご参照下さい。
⑤経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因の詳細につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」をご参照下さい。
⑥資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社の運転資金需要のうち主なものは、通信費、人件費、広告宣伝費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は本社移転に伴う敷金の差入等によるものであります。
当社は、事業活動に必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、運転資金及び投資資金は、自己資金及び金融機関からの借入により調達しております。
なお、当事業年度末における借入金残高は98,612千円となっております。また、当事業年度末の現金及び現金同等物は204,151千円であり、流動性を確保しております。
⑦経営者の問題意識と今後の方針について
当社の経営者は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、当社が今後さらなる成長を遂げるためには、様々な課題に対処する事が必要であると認識しております。
それらの課題に対応するために、経営者は常に事業環境の変化に関する情報の入手及び分析を行い、現在及び将来における事業環境を確認し、その間の課題を認識すると同時に最適な解決策を実施しさらなる事業拡大を図ってまいります。