有価証券届出書(新規公開時)

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2022/10/18 15:00
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事業等のリスク

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。また、当社は、医薬品等の開発を行っていますが、医薬品等の開発には長い年月と多額の研究費用を要し、各パイプラインの開発が必ずしも成功するとは限りません。特に研究開発段階のパイプラインを有する製品開発型バイオベンチャー企業は、事業のステージや状況によっては、一般投資者の投資対象として供するには相対的にリスクが高いと考えられており、当社への投資はこれに該当します。
なお、文中の将来に関する記載は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)医薬品の研究開発、医薬品業界に関するリスク
① 新薬開発の不確実性
医療用医薬品の開発には多額の研究開発投資と長い時間を要し、また前臨床試験や初期の臨床試験での成功が、必ずしもその後の臨床試験の成功や当局の承認等が得られることを保証するものではありません。当社の医薬品開発においても、臨床試験で有用な効果を発見できないことや、臨床試験の方法又は実施に関する規制当局等との合意形成の遅れ等により研究開発が予定どおりに進行せず、開発の延長や中止の判断が行われる可能性があります。また、当社が主要な市場として期待する日本、米国及び欧州諸国をはじめとする世界の主要国へ医薬品を展開するためには、各国における薬事関連法規等の法規制等の適用を受けることとなり、新薬の製造及び販売には当局の厳格な審査に基づく承認を取得しなければなりません。かかる審査に適合する有効性、安全性、及び品質等に関する十分なデータが得られない場合、当社が希望する範囲の適応症や患者集団への投与の承認が得られない場合、開発期間中に当局の政策が変更される場合、又は当局の承認その他の販売許可の条件として追加的な臨床試験の実施が必要となった場合等は、当社は予定していた時期に上市できず、又は上市を断念する可能性があります。医療用医薬品候補の開発を断念した場合、当該開発への投資全てを失うおそれがあります。
さらに、当社が世界の主要国以外へ医薬品を展開する場合、主要国における承認とは別途、各地域の当局から医薬品の上市にあたって承認を取得しなければならず、販売価格等の承認も必要とされる場合があるため、主要国における承認が仮に得られたとしても、当社はこれらの承認を適時に得られない可能性があります。
これは当社のパイプラインを他社にライセンス・アウト(新薬候補化合物等に関する特許権やノウハウ等を他社に売却、又は使用を許諾すること)した場合も同様であり、当社が研究開発を行った医療用医薬品候補及び他社にライセンス・アウトした医療用医薬品候補の上市が延期又は中止された場合、開発や販売に関するマイルストーン又はロイヤリティ収入を予定していた時期に得られないこと又は全く得られないことにより、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対しては、パイプラインとなる化合物や対象疾患の拡充を図るとともに、医薬品の開発や事業化について経験を有する人材を社内外に確保してプロジェクトを推進する体制の構築に努めております。また、開発にあたっては、対象疾患に精通した医師等からの情報収集に努めるとともに、臨床試験の計画・実施に当たっては、規制当局との事前相談等を通じて適切な助言を得て開発を推進してまいります。
② 脳梗塞治療薬の開発に関するリスク
当社のリードパイプラインであるTMS-007は、脳梗塞治療薬としての開発が進められております。
急性期脳梗塞治療薬は、FDAより唯一承認された製品として、組織型プラスミノーゲン・アクティベータ(t-PA)がある他、Pharmazz, Inc.がインドにおいて第Ⅲ相臨床試験を完了したsovateltide (PMZ-1620)等の複数の医薬品候補の臨床開発が行われています。また、t-PAと同等の有効性と安全性をもつ後続医薬品であるバイオシミラー(先行バイオ医薬品と同等/同質の品質、安全性及び有効性を有し、異なる製造販売業者により開発される医薬品(バイオ後続品))が参入する可能性もあります。
バイオテクノロジー及び製薬業界においては、大手製薬会社等、医療用医薬品の開発及び販売において豊富な財源や技術資源等を有する潜在的競合他社が存在し、競合他社の研究開発が脳梗塞領域で先行した場合、TMS-007の優位性は低下する可能性があります。急性期脳梗塞に対する新たな治療法の承認や、競合他社による新薬の登場、t-PAの投与が不能な患者等に限定して臨床試験を行う場合におけるTMS-007の投与が可能な患者の数の不足、新型コロナウイルス感染症の感染拡大などにより、TMS-007の臨床試験において被験者の登録が停滞し臨床試験が遅延する可能性や登録被験者の数が目標被験者数に届かず臨床試験が中止となり、当社の事業戦略や経営成績等に甚大な影響を及ぼす可能性があります。
さらに、競合する新薬の開発が先行し、又は競合新薬が上市されたことにより、事業性が大きく毀損されたとバイオジェン社が判断する場合は、バイオジェン社の判断により、TMS-007の開発スケジュールが遅延する可能性や、開発中断に至る可能性があります。上市に至った場合においても、他社が同様の効果や、より安全性のある製品を販売しバイオジェン社の製品に当社が想定していた薬価が付かず、又はカテーテル治療等の血管内治療の利用の増加等により、バイオジェン社の製品が医療関係者に十分に受容されない結果として当社が想定したロイヤリティ収入が得られない等により、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
TMS-007は、バイオジェン社がオプション契約に基づくオプション権を行使したことにより、今後の開発はバイオジェン社が担うことになり、バイオジェン社によるTMS-007の開発に関する意思決定に当社が直接的に関与することはありませんが、当社は、バイオジェン社による開発がスムーズに進むように側面的な支援を行ってまいります。
③ 副作用発現、製造物責任
医薬品には、臨床試験段階から更には上市後において、予期せぬ副作用が発現する可能性があり、特に製品候補がより大規模で長期にわたり使用されるようになると、以前の試験では認められなかった副作用が発現する可能性があります。当社が開発する医薬品についても、予期せぬ副作用が発現することで、当該医薬品の開発が遅延もしくは中止され、又は当局により追加の臨床試験が必要とされる可能性があります。また、当社は、予期せぬ副作用が発現する場合等に備えて、製造物責任を含めた各種賠償責任に対応するための保険に加入する可能性がありますが、最終的に当社が負担する賠償額の全てに相当する保険金が支払われる保証はありません。また、当社に対する損害賠償の請求が認められなかったとしても、損害賠償請求等がなされたこと自体によるネガティブ・イメージにより、当社及び当社の製品に対する信頼に悪影響が生じ、当社製品の需要が減少する等の可能性があります。上記のとおり、予期せぬ副作用が発現した場合、当社の業績及び財政状態に重大な影響が及ぶ可能性があるとともに、社会的信頼の失墜を通じて当社の事業展開にも重大な影響を及ぼす可能性があります。
④ 医薬品に係る法規制及び医療費削減の圧力等に関するリスク
当社の開発する医療用医薬品について、規制当局による承認が得られた場合でも、製造、表示、広告、市販後調査の実施、安全性や有効性等に関する情報の提出、薬機法上の誇大広告規制など、様々な規制の適用を継続して受けることになります。近年、多くの国の規制当局が承認後のモニタリングの強化に取り組んでおり、その結果、製品の使用に関して規制当局から製品使用の一時停止などの勧告がなされる可能性もあります。当社が、適用される規制要件を遵守できない場合、規制当局は、当社に対して、民事、刑事又は行政上の措置を講じる可能性があり、それらの措置は、当社の事業、経営成績及び財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
また、医療用医薬品は、日本及びその他各国政府による医療保険制度や薬価に関する規制の影響を受けます。国内においては医療費抑制策が継続的に行われており、毎年の薬価基準の改定や後発医薬品の使用の促進をはじめとする、医療制度や健康保険に関する行政施策の動向により、薬価が抑制されることで、当社の経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。また、医療費抑制は世界的な傾向になっており、医療用医薬品は海外においても各種の規制を受けるところ、例えば米国においては医療費の抑制等のために医療サービスの提供を管理するマネージドケア・グループや政府系の購入者からの価格圧力等にさらされるほか、近年、医療用医薬品の価格上昇に伴い、薬価に関する制度改正の動きが見られ、また欧州においては並行輸入品や後発品との競争、費用対効果に基づく医療技術評価の利用の増加等により、薬価の下落圧力にさらされるなど、行政施策の動向及び医療費削減の圧力による悪影響(当社が製品候補の販売から得るロイヤリティ収入の減少を含みます。)を受ける可能性があります。
(2)事業遂行上のリスク
① 特定のパイプラインに関する提携契約への依存、収益の変動と不確実性
当社は、脳梗塞治療薬TMS-007の導出を完了しましたが、その他のパイプラインは研究段階もしくは開発の初期段階にあります。
当社の収益計画は、TMS-007の導出に関するバイオジェン社とのオプション契約に基づき当社が受領するマイルストーン及びロイヤリティ収入に依存しており、導出後の研究開発・承認申請・製造及び販売活動をバイオジェン社が行うことになるため、当社の収益は同社の戦略及び開発進捗等に依存し、大きく変動することとなります。バイオジェン社はTMS-007に関連する特許を単独で所有し、今後のTMS-007の臨床試験を単独で管理することから、バイオジェン社が実施する臨床試験において、良好な結果が得られないこと、予期せぬ副作用が発生すること、もしくはバイオジェン社における戦略変更によるポートフォリオの見直しが行われること等により、開発の中止や延期等の決定がなされた場合、当社がバイオジェン社に譲渡した特許の範囲や有効期間の不足によりジェネリックの参入を防げなかったこと、TMS-007が主要なSMTP化合物以外のSMTP化合物を用いて製品化されたこと等により当社が受領するマイルストーン及びロイヤリティ収入が減額された場合、バイオジェン社がオプション契約上当社のマイルストーン及びロイヤリティ収入の対象とならない非静脈内投与製剤等を製品化した場合、当社の事業、財務状況及び業績に影響を及ぼす可能性があります。また、バイオジェン社との契約上、バイオジェン社のロイヤリティ支払義務の有無を確認するための一定の監査を当社が行うことが出来るものの、バイオジェン社の有するTMS-007の開発状況及び商業化に関する情報への当社のアクセスの権利はないことから、バイオジェン社から十分な情報を適時に得られる保証はなく、当社が当社の株主に提供できる情報もバイオジェン社が公表した情報及び当社がバイオジェン社から取得した情報のうち同社との契約上開示可能なものに限られます。バイオジェン社が公表した情報が正確であるか又は最新であるかを確認することができず、当社は将来の収益を正確に予測できない可能性があります。また、バイオジェン社はTMS-007の開発につき商業上合理的な努力義務を負うものの、開発を継続する保証はなく、したがって、仮にバイオジェン社がTMS-007の開発を中止した場合、当社とバイオジェン社は関連する知的財産権等の譲渡に関し協議することが予定されていますが、結果的にバイオジェン社が譲渡を行わない可能性又は当社にとって商業的合理性を欠く譲渡条件が提示される可能性があります。加えて、バイオジェン社が関連製品に関する権利を第三者に譲渡した場合、当該第三者はTMS-007の開発につき商業上合理的な努力義務を負いますが、当該第三者が製品の開発を継続すること又は製品の開発もしくは商業化に成功することの保証はありません。
また、TMS-007以外のパイプラインであるTMS-008及びTMS-009につき、当社はバイオジェン社より、同社に譲渡した知的財産に係る特定の化合物(グラントバック化合物)につき、特定の適応症のみを対象として開発するための無償使用許諾を受けており、当社は当該無償使用許諾の範囲内で開発を行う必要があり、加えて当社がグラントバック化合物につきサブライセンスする場合、バイオジェン社が優先交渉権を有しており、かかる制約は当社による製品候補の開発及び商業化並びに当社の事業に悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、バイオジェン社は、オプション契約に基づくオプション権を行使した後5年間は、同社に譲渡した知的財産に係るSMTP化合物(グラントバック化合物を含む。)につき、一定の疾患を除く特定の適応症を対象として開発することが禁止されていますが、当該禁止期間の終了後にバイオジェン社が開発を禁止されていた開発を行った場合、当社の製品候補の開発及び商業化並びに当社の事業に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社は、現在、SMTP化合物の開発に専念しており、SMTP化合物以外のパイプラインを有していないため、最終的にSMTP化合物が適応症に対して有効でないことが判明した場合、当社の事業及びその成長に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。当社の資金、製造資源及び経営資源には限りがあるため、他の製品候補及び適応症において、より大きな市場機会があることが判明した場合でも、その機会の追求を見送ったり、遅らせたりする可能性があり、有益な市場機会を活用することができない可能性があります。
当社は、バイオジェン社による開発がスムーズに進むように側面的な支援を継続するとともに、パイプライン及びその対象疾患を拡充することにより、収益の早期の安定化を図ってまいります。
② 小規模組織及び少数の事業推進者への依存
当社は、最近日現在、取締役6名(社外取締役2名含む。)、監査役4名(非常勤監査役2名を含む。)及び正社員13名の小規模組織であり、現在の内部管理体制はこのような組織規模に応じたものとなっております。今後、業容拡大に応じて内部管理体制の拡充を図る方針であります。
また、当社の代表取締役である若林拓朗、創業研究者である蓮見惠司や研究者である稲村典昭をはじめとする現在の経営陣、事業を推進する各部門の責任者及び少数の研究開発人員はそれぞれが高度に専門的な業務に従事しており、当社の事業活動はかかかる少数の主要な人材に強く依存するところがあります。そのため、常に優秀な人材の確保と育成に努めておりますが、人材確保及び育成が順調に進まない場合、並びに人材の流出が生じた場合には、当社の事業活動に支障が生じ、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、当社が今後パイプラインの拡大や、製品候補の製造又は販売を行う場合、従業員数及び事業範囲を拡大し、商業化等の担当者を採用、維持する必要がありますが、当社が事業の拡大を適切に管理し、適切な人材を採用できない場合は当社の成長戦略に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、当社の理念の浸透を図るとともに、専門分野毎の縦割り型ではなく、研究・製造・薬事・開発等に専門性を有する人材が自由闊達に議論を交わせるような組織作りを通じ、やりがいを感じることのできる風土を醸成するとともに、新規採用も含め社内体制の強化を進めてまいります。
③ 知的財産権
(a) 当社又は当社の提携先が保有する知的財産権に係るリスク
当社及びバイオジェン社を含む当社の提携先は、製品候補に関連して様々な特許を取得及び出願していますが、特許の取得及び維持には一定のコストを要し、出願した特許が登録に至る保証はなく、さらには当社又は当社の提携先が取得した特許はその保護の範囲や有効期間が十分でないか、又は競争上の優位性を当社にもたらさない可能性があります。当社又は当社の提携先が特許の取得、維持又は有効期間の延長に失敗した場合、当社の製品候補の商業化を成功させる能力、又は当社の事業計画や業績に悪影響が及ぶ可能性があります。特に、TMS-007については、バイオジェン社からのロイヤルティは最も有効期間が長い特許の有効期間の満了日又は最初に製品が商業的に販売された日から6年間のいずれか遅い日まで支払われるところ、当社がバイオジェン社に譲渡した一部の特許又は出願中の特許の有効期間は2030年又は2042年の満了を見込んでおり、関連する特許に適用される期間延長が認められない場合、又は当社がバイオジェン社に譲渡した特許出願が権利化されずTMS-007の独占性を担保できない場合、バイオジェン社から支払われるマイルストーン及びロイヤリティ収入の額に悪影響が及ぶ可能性があります。TMS-008及びTMS-009に関しては、バイオジェン社が保有する特許の有効期間は2027年の満了を見込んでおり、当社がこれらの製品候補に関する追加の特許を取得できない限り、製品候補を引き続き開発・商業化する能力に悪影響が及ぶ可能性があります。また、当社がバイオジェン社に譲渡したSMTP化合物に関する知的財産権等については、バイオジェン社が独占して行使する権限を有していることから、バイオジェン社が当該権限を適切に行使しない場合、当社のTMS-008を含む製品候補を開発し商業化する能力に悪影響を及ぼす可能性があります。
加えて、特許に関する法律もしくはその解釈等の変更が行われた場合、特許権者が第三者に対して実施許諾を与えることを強制する法律が適用された場合、又は一部の国・地域において、米国、日本もしくは欧州諸国の法令と同程度の保護が与えられない場合には、当社又は当社の提携先の特許を取得する能力及び取得した特許を行使もしくは防御する能力又は当社の業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社又は当社の提携先が将来、製品候補の商標及び商号に関する権利を保護できない場合、又は第三者が当社又は当社の提携先の知的財産権を侵害する粗悪な模倣品を流通・販売し、購入者に健康被害が生じた場合、当社又は当社の製品への風評被害が生じ、開発製品のブランド認知を損なう等、当社の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(b) 使用許諾に係るリスク
当社は、TMS-008及びTMS-009に係るバイオジェン社からの無償使用許諾を含め、当社の製品候補の開発を行うために必要なライセンス契約を締結していますが、ライセンスの範囲が不十分である場合、当社の開発能力に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社が将来製品候補を開発するために、第三者の特許又は専有技術の使用が必要となる場合において、当該特許もしくは技術に関するライセンスを取得できないとき、不利な条件でのライセンス供与を余儀なくされたとき、又は当社が供与されたライセンスの条件を遵守できないときは、当社の事業に重大な損害を与える可能性があります。
(c) 知的財産に関する訴訟及びクレーム等の対応に係るリスク
当社は、本書提出日時点において、当社の事業に対する特許権等の知的財産権に関する第三者との間での苦情及び訴訟等といった問題は認識しておりません。また、発明者、TLO法(大学等技術移転促進法)に基づく大学等の知的財産管理機関、企業及び研究機関から、「特許権又は特許を受ける権利」を正当に譲り受け、又は「実施権の許諾」を受け、事業化が推進できる体制を築いております。
しかしながら、医薬品開発事業の一般的なリスクとして、自社で出願した特許以外にも第三者の特許が関連する可能性があります。当社が第三者との間で係争に巻き込まれた場合、当社は弁護士や弁理士との協議の上、その内容に応じて対応策を検討していく方針でありますが、仮に相手方の主張が認められる可能性が低い係争であっても、係争の解決に多大な労力、時間及び費用を要する可能性があり、その場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、将来的な事業展開においては、他社が保有する特許権等への抵触により、製品候補の開発の停止等を命ぜられる等の事業上の制約を受けるなど、当社の事業、財務状況及び業績に影響を及ぼす可能性があります。当社は、新たな開発に着手する際は、他社の特許権等を侵害しないことを確認する調査等によりリスクの低減を図るとともに、第三者との間で係争が生じた際には、顧問弁護士及び弁理士と連携し、当該係争に迅速に対応する方針であります。
(d) 職務発明等に係るリスク
当社が職務発明について役職員等から特許を受ける権利を譲り受けた場合、日本の特許法が適用される限り、同法に定める「相当の利益」を支払うことになります。また、当社の元従業員や共同研究者等が、職務発明者又は共同発明者等として、当社の所有する又はライセンス供与された特許等について何らかの権利を有する旨の主張がなされ、当社に報酬の支払いを請求する等の問題が生じた場合、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④ 外部委託先への依存
当社は、固定費を抑制して経営の機動性・効率性を確保するため、組織の規模拡大を優先せず、研究開発の各段階において外部の専門機関を積極的に活用して体制を構築していることから、当社の事業は当該外部の委託先に依存しております。例えば、当社は製造設備を有していないことから、製品候補の製造及び供給につき日本マイクロバイオファーマ株式会社等の第三者受託製造機関に依存しており、また今後製品の製造等に関与する場合にも第三者受託製造機関に依存することが予想されます。
当社は、業務委託先の選定及び当該業務委託先との関係の構築について慎重に対応しておりますが、専門的な知識及び技術を有する日本マイクロバイオファーマ株式会社等、代替先の確保が困難な委託先もあることから、不測の理由により委託先との契約が終了したり、委託先における地震や風水害といった自然災害、事故、又は規制当局による取り締まり等により長期間にわたって業務が停滞し、委託業務の遂行に支障が生じたりした場合、又は当該委託先との契約において当社が委託先に対して負っている義務(日本マイクロバイオファーマ株式会社をTMS-007の製造に関与させる義務を含む。)を遵守できない場合には、当社の事業活動に支障が生じ、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
これは当社のパイプラインを他社にライセンス・アウトした場合も同様であり、当社が他社にライセンス・アウトした医療用医薬品候補につき、製造委託先において製造に支障が生じた場合、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、TMS-007の第Ⅲ相臨床試験及び商業生産を実施するにあたって、製品候補の生産能力を増強するために、製造及び供給能力を持つ業務委託先を新たに追加する場合には、当社が既存の業務委託先に対してロイヤリティを支払うことに合意する必要性が生じる可能性やこれらの業務委託先との交渉状況等によってはTMS-007の開発スケジュールが遅延する可能性があります。
⑤ 東京農工大学等の研究機関との関係に係るリスク
当社は、東京農工大学等の研究機関と共同研究を実施しており、今後も同大学等との間で良好な関係を維持し、共同研究を継続していく方針であります。しかしながら、何らかの理由で、これらの契約の更新が困難となった場合又は解除等により取引が困難となった場合、研究開発活動の遅延等、当社の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、大学との取引について、良好な関係を維持しつつも当社又は株主の利益を害することがないよう、法規制を遵守するとともに、取締役会の監視等を通じて十分留意しております。
⑥ 開発・製造・販売体制の構築に係るリスク
当社は、開発する医薬品候補物質について、国内外の製薬会社と提携して開発製造販売権を付与し、提携先製薬会社からマイルストーン及びロイヤリティ収入を得ることを、基本的な事業モデルとしております。適切な提携先を確保もしくは維持できない場合、当該提携先との間の契約条件が当社に最適なものとはいえない場合、又は提携先において何らかの理由により開発、製造方法の確立、製造体制及び販売体制の構築等が困難になった場合には、当社の経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 医療関係者等との関係に係るリスク
当社又は当社の提携先と、医療関係者及び第三者支払機関等との間の取引関係は、国内外の医療関連法規の適用を受ける可能性があり、これに違反した場合は、刑事手続、民事訴訟又は行政制裁の対象となる可能性があります。その場合には当社の事業成績及び市場での競争力に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑧ 情報管理に係るリスク
当社は、情報セキュリティ、研究開発等に関する機密情報等及び個人情報の管理について、情報システムを活用しつつ、情報セキュリティ管理規程、個人情報保護管理規程及び個人情報保護方針に沿って運用を行っておりますが、当社の役職員、提携先、取引先の不注意や故意、セキュリティ障害、第三者による攻撃等により、当社の研究開発等に関する重要な機密情報や個人情報が流出した場合には、当社の事業展開や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。当社は当該リスクを低減するため、当社の提携先及び取引先との間で守秘義務を含む契約を締結するとともに、規程に沿った情報管理の運用に努めておりますが、現在、当社はサイバーセキュリティ保険には加入しておりません。また、当社は、諸外国の法律を含め、変化の激しいデータプライバシー及びセキュリティに関する規制等の適用を受けますが、これらの規制等を遵守することができなかった場合、当社の評判が悪化し、又は当社が業務停止を含む規制上の措置・制裁や訴訟の対象となる可能性があり、当社の事業成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑨ 代表取締役の兼任
当社代表取締役社長である若林拓朗は、先端科学技術エンタープライズ株式会社の代表取締役を兼任しております。同社は資産管理のみを行っており実質的に休眠状態にあることから、当該兼任により当社の業務執行に支障をきたすことはありません。
⑩ 新型コロナウイルス感染症の感染拡大及び自然災害の発生等に係るリスク
医薬品は必需品であるため、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による需要の変化はないものと予測しております。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の感染拡大や長期化により、当社、提携先及び委託先の事業活動に支障が生じ、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、地震や風水害等の自然災害や予期せぬ事故等により、当社の従業員の安全や当社が使用するインフラ設備に支障が生じた場合等は、当社の事業に重大な影響を及ぼす可能性があります。
⑪ 市場規模の推計に係るリスク
当社は、TAM(Total Addressable Market)について、一定の仮定及び前提の下、第三者機関の提供する推計値等に基づき推計しています。当社は推計に当たり当社が信頼できると考えるデータを用いておりますが、推計値の正確性には限界があります。生活習慣の改善等の要因により脳卒中の患者数が減少する等、製品候補の対象となる患者数が想定より少ない場合や、薬価が想定より低額となった場合等、かかる将来予想に用いられたデータ、仮定又は前提が不正確もしくは不適切であった場合、実際の当該潜在的市場の規模は推計より大きく下回る可能性があります。
さらに、仮に潜在的市場の推計値が正確であった場合でも、競争やその他の要因により、当社の製品候補が十分な市場シェアを獲得できる保証はありません。
⑫ 海外展開に係るリスク
当社又は当社の提携先は今後、米国及び欧州等において医療用医薬品の販売等を行う可能性がありますが、海外市場への展開においては、展開先での製造や販売に支障が生じる可能性があるほか、当該地域の薬事法制を含む法令及び実務、政情不安、経済動向の不確実性、税制の変更や解釈の多様性、為替相場の変動、商習慣の相違等に直面する場合があり、これらに伴うコンプライアンスに関する問題の発生等が当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
⑬ 環境問題に係るリスク
当社の事業では、特定の危険物を管理しながら使用しており、当社がそのような危険物の取扱い及び処分に関して採用している安全策は、政府の求める基準に適合していると考えておりますが、当該危険物による環境汚染、人身事故等が発生した場合、多額の賠償責任又は罰金が発生し、当社の事業に重大な悪影響を与える可能性があります。
⑭ 内部統制に関するリスク
当社は、法令に基づき、財務報告の適正性確保のために内部統制システムを構築し運用する予定ですが、当社の財務報告に重大な欠陥が発見される可能性は否定できず、また、将来にわたって常に有効な内部統制システムを構築及び運用できる保証はありません。更に、内部統制システムには本質的に内在する固有の限界があるため、今後、当社の財務報告に係る内部統制システムが有効に機能しなかった場合や財務報告に係る内部統制システムに重大な不備が発生した場合には、当社の財務報告の信頼性に影響が及ぶ可能性があります。
(3)業績等に関するリスク
① マイナスの繰越利益剰余金の計上及び繰越欠損金
当社は、医薬品の研究開発を主軸とするベンチャー企業であります。医薬品の研究開発には多額の初期投資を要し、その投資資金回収も他産業と比較して相対的に長期に及ぶため、ベンチャー企業が当該事業に取り組む場合は、一般的に期間損益のマイナスが先行する傾向にあり、当社もこれまで多額の純損失を計上してきました。
当社は、脳梗塞治療薬をはじめとするパイプラインの開発を推し進めることにより、将来の利益拡大を目指しており、当事業年度においては、欠損填補を行ったことに加えて、バイオジェン社のオプション権の行使に伴って、営業利益及び当期純利益を計上したため、繰越利益剰余金はプラスとなっております。しかしながら、積極的な開発投資を推進することやバイオジェン社によるTMS-007の商業化に遅れが生じ当社がマイルストーン等の収入を期待どおりに得られないこと等により、繰越利益剰余金が再びマイナスとなる可能性があります。
加えて、当社は社歴が浅く、過去に大規模かつ重要な後期臨床試験を成功させた実績や医薬品の商業化を成功させた実績を有していないことから、過去の業績から将来の業績等を推測することは特に難しく、また、企業として未経験の問題等に対する対応能力については未知のリスクがあります。
なお、当社は、2022年2月期末において、658百万円の繰越欠損金が存在しています。しかし、繰越欠損金の繰越期間内に、繰越欠損金の全て又は一部を利用するために十分な課税所得を当社が得られるという保証はありません。また、当社の業績が順調に推移し、繰越欠損金が解消した場合や税法改正により繰越欠損金による課税所得の控除が認められなくなった場合には、通常の税率に基づく法人税、住民税及び事業税が計上されることとなり、当社の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 収益計上
当社の収益構造は、当社が研究開発する医薬品について、その研究開発の進捗に伴って評価された製品的価値の初期評価であるProof of Concept(POC)に基づいて製薬企業等とのライセンス契約等を締結し、その対価として契約一時金・マイルストーン収入及び製品の上市以降その販売に伴って発生するロイヤリティ収入等を段階的に見込むことを基本としています。
ライセンス契約等の締結において、製薬企業から、それまでの当社の研究開発で得られた医薬品候補物質の有効性及び安全性、並びに予想される対象患者数や薬価、特許存続期間等の事業性に関して一定の評価を受ける必要があります。従って、製薬企業から評価されうる研究開発成果が得られず、もしくは、研究成果が得られたとしても、研究開発の遅延により想定どおりのタイミングで評価を受けられない可能性があり、結果的に、当社の想定する条件やタイミングで契約を締結できず、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
また、ライセンス契約締結後においても、次の開発段階に進むために必要な臨床試験成績や、製品の製造・販売に必要な規制当局からの承認が得られない可能性、開発途中での競合新薬の上市、治療法そのものの変化のほか、特許係争の発生等で事業性が大きく毀損されたとライセンス・アウト先製薬企業が判断する場合は、開発が遅延又は中断する可能性や、ライセンス契約解消に至る可能性があります。
そして、上市に至った場合においても、薬価が当初の想定を大きく下回る、市場環境等の状況が当初の想定より悪化する可能性があります。
さらに、現在、当社のリードパイプラインであるTMS-007の導出先であるバイオジェン社の戦略及び開発進捗等により当社の収益は大きく変動する可能性があります。
当社の事業計画上は当面はバイオジェン社からのマイルストーン及びロイヤリティ収入以外を見込んでおらず、次のマイルストーンは第Ⅲ相臨床試験の5例目投与完了時となる見込みです。
なお、バイオジェン社は米国の企業であり、当社とバイオジェン社との取引は米ドル建てで行われています。外貨建取引は、財務諸表上全て円換算しており、これらの項目は、現地通貨における価値が変化しなかった場合も、換算時のレートによって円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。
③ 資金繰り
当社は、研究開発型企業として多額の研究開発資金を必要とし、また研究開発費用の負担により長期にわたって先行投資の期間が続きます。この先行投資期間においては、継続的に営業損失を計上し、営業活動によるキャッシュ・フローはマイナスとなる傾向があります。当社も特定の事業年度を除くと営業キャッシュ・フローのマイナスが続いており、かつ現状では安定的な収益源を十分には有しておりません。
このため、安定的な収益源を確保するまでの期間においては、製品候補の開発の進捗等に応じて、適切な時期に資金調達等を実施し、財務基盤の強化を図る方針ですが、必要なタイミング又は適切な条件で資金を確保できなかった場合は、当社事業の継続に重大な懸念が生じる、又は株主の保有する権利に影響を及ぼす可能性があります。
④ 調達資金使途
上場時の公募増資により調達する予定の資金は、医薬品の研究開発を中心とした事業費用に充当する計画です。但し、新薬開発に関わる研究開発活動の成果が収益に結びつくには長期間を要する一方で、研究開発投資から期待した成果が得られる保証はなく、また当社の判断により調達資金を上記以外の目的で使用する可能性があり、その結果、調達した資金の投資が期待される利益に結びつかない可能性があります。
⑤ 新株発行による資金調達
当社は医薬品の研究開発型企業であり、将来の研究開発活動の拡大に伴い、増資を中心とした資金調達を機動的に実施していく可能性があります。その場合には、当社の発行済株式数が増加することにより、1株当たりの株式価値が希薄化し、株価形成に影響を与える可能性があります。
⑥ 新株予約権
当社は、当社取締役、監査役、従業員及び社外協力者の業績向上に対する意欲や士気を高め、また優秀な人材を確保する観点から、ストック・オプション制度を採用しております。会社法第236条、第238条及び第239条の規定に基づき、株主総会の承認を受け、当社取締役、監査役、従業員及び社外協力者に対して新株予約権の発行と付与を行っております。
本書提出日現在における当社の発行済株式総数は33,102,080株であり、これら新株予約権の権利が行使された場合は、新たに2,273,680株の新株式が発行され、当社の1株当たりの株式価値は希薄化し、株価形成に影響を与える可能性があります。
また、今後も優秀な人材の確保のため、同様のインセンティブ・プランを継続する可能性があります。従って、今後付与される新株予約権が行使された場合にも、当社の1株当たりの株式価値は希薄化し、株価形成に影響を与える可能性があります。
⑦ 配当政策
医薬品の研究開発には多額の初期投資を要し、その投資回収も長期に及ぶ傾向にあり、当社も創業以来継続的に営業損失及び当期純損失を計上しており、配当は実施しておりません。このような状況下においては、積極的な開発推進によって企業価値を高めることこそが、株主利益の最大化に繋がると考えております。
そのため、当面の間は、積極的な医薬品の研究開発を進めるために内部留保の充実を優先し、配当は実施しない予定となっております。
株主への利益還元については重要な経営課題と認識しており、将来、現在開発中の新薬が上市され、その販売によって当期純利益が計上される時期においては、経営成績及び財政状態を勘案しながら、利益還元の実施を検討したいと考えております。
⑧ ベンチャーキャピタルによる株式保有
本書提出日現在の当社の発行済株式総数33,102,080株のうち、ベンチャーキャピタル及びベンチャーキャピタルが組成した投資事業組合(以下これらを総称して「VC等」とします。)による所有割合は76.6%と高い水準となっております。
一般的に、VC等による未上場企業の株式への投資は、株式上場後に株式を売却してキャピタルゲインを得ることを目的としており、当社株主であるVC等についても、当社株式上場後に所有する株式の全部又は一部を売却することが想定されます。そのような場合には、需給バランスが変動して当社株式の市場価格に影響を及ぼす可能性があります。