有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2022/10/18 15:00
【資料】
PDFをみる
【項目】
127項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) 経営方針・経営環境・経営戦略等
当社は、新規の作用機序に基づいた医薬品候補物質を開発し、アンメット・メディカル・ニーズの改善を実現する画期的な医薬品を患者さんに送り届けることを目的としております。
医薬品開発企業が新たな医薬品を上市するまでに必要とされる研究開発費の額は年々増加しており、これに伴って開発費の回収がより困難になっております。医薬品の効果には人種間や民族間の差があまり見られないため、同一製品で世界市場に対応することが可能であり、このような環境下では世界の主要市場に対して同時にアプローチすることが有利となります。また、医薬品規制調和国際会議(ICH)の定着により先進国での同時開発が容易になったこともあり、グローバルに医薬品開発を行うことが一般的になりつつあります。
当社は、オリジナルの作用機序に基づく新規化合物を単独で臨床試験に持ち上げ、海外大手製薬会社との提携に結び付けた実績を有しております。日本のバイオベンチャー企業で、このような実績を持った企業は非常に限られていると考えております。このノウハウを活用し、全く新しい医薬品を世の中に送り出し続けていくことを目指します。
当面は、現在取り組んでいる可溶性エポキシドハイドロラーゼ(sEH)阻害による抗炎症作用に基づく医薬品開発に重心を置きますが、それ以外の新規作用機序に基づく研究開発プロジェクトも順次手掛けてまいります。特に、大手製薬会社が注目するような標的分子をターゲットにするのではなく、独自性の高い作用機序に取り組んでいきます。また、当社のリードパイプラインであるTMS-007の開発において経験したように、天然由来化合物を手掛けることで得られる新たな知見を研究開発にフィードバックする仕組み作りに取り組んでまいります。
当社は、日本の大学で創出されたシーズについて、研究段階・前臨床段階・臨床試験段階と開発を進め、ヒトPOC取得まで至ることができました。またその過程でグローバルに展開する海外製薬会社との提携を実現した実績を有しています。当社の経営陣は、これらの実績・経験を有するメンバーがコアとなっています。当社では、このような実績・経験を活かして、①SMTP化合物、特に急性期脳梗塞患者を対象とした治験で良好な成績を収めたTMS-007を基盤として上場企業としての基礎固めを行い、②日本を中心としたアカデミアの創薬シーズを積極的に導入してパイプラインを拡充し、グローバルの医薬品市場に向けて開発していくことで今後の成長を実現していくこと、を成長戦略として描いています。
(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
一日も早い治療薬の上市を目指す当社は、研究開発から上市までのプロセス管理を行っていくことが、当面、最も重要な経営管理と考えております。また、パイプラインの充実を図っていくことも、経営の安定化及び企業価値の増大に不可欠であります。従いまして、現在研究開発段階にある当社は、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の設定はしておりません。しかしながら、これら開発プロセス及びパイプラインの充実を重要な目標として事業活動を推進しております。
(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①TMS-007の開発支援
当社のリードパイプラインであるTMS-007は、バイオジェン社がオプション契約に基づくオプション権を行使したため、今後の開発はバイオジェン社が担うことになっております。このため、当社がTMS-007の開発に関する意思決定に直接的に関与することはありませんが、バイオジェン社による開発がスムーズに進むように側面的な支援を行ってまいります。
②TMS-008の開発推進
sEH阻害を主たる作用機序とするTMS-008は、多様な炎症性疾患に対する治療薬となり得る可能性を秘めております。TMS-008の現在の開発段階は非臨床試験ですが、早期に第Ⅰ相臨床試験に移行することを目指してまいります。
③パイプラインの拡充
TMS-007、TMS-008及びTMS-009は、同じSMTP化合物ファミリーに属しており、類似した作用機序を有しております。今後は、新たな化合物の探索を進めると共に、外部アセットの導入も検討し、SMTPファミリー以外のパイプラインを獲得することを目指します。
④人材確保と組織体制強化
新規作用機序に基づく医薬品開発は、誰も歩んだことがない道を進むようなものであり、医薬品の研究開発の中でも特に高度な能力と経験を有するミッションであると考えられます。このため、優秀な人材確保と、優秀な人材がその能力をいかんなく発揮できる組織体制作りが必須となります。当社では、特に、専門分野毎の縦割り型ではなく、研究・製造・薬事・開発等に専門性を有する人材が自由闊達に議論を交わせるような組織作りを目指すとともに、優秀な人材の採用を積極的に行ってまいります。
⑤財務基盤の拡充
創薬ベンチャー企業においては、研究段階からパイプラインの開発の進展に伴って多額の資金が必要となります。当社においても、パイプライン育成のための研究開発投資の推進などのため、資金需要のより一層の増加が予想されます。当社はこれまで数度にわたるエクイティ・ファイナンスにより、都度、必要資金を調達してまいりました(2010年6月1日以降で合計約30億円)が、今後資金需要の増加が見込まれる中でも積極的な研究開発活動を続けていくため、必要に応じて適切な時期に資金調達を実施し、財務的基盤の安定を図ります。