有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2021/11/18 15:00
【資料】
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【項目】
136項目
(1)経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
a 経営成績
第25期事業年度(自 2020年1月1日 至 2020年12月31日)
当事業年度においては、新型コロナウイルス感染症による経済活動の停滞ムードが続いている環境でありますが、当社の属する情報通信業界は、大企業・中堅企業を中心に事業構造の変革や競争力の強化を目的としたIT投資が一定水準以上で継続したことに加え、企業のクラウド利用の一層の拡大、相次ぐサイバーセキュリティ事故への対策を含む事業継続力の強靭化需要など、当社のビジネス参入機会が一層拡大しました。
また、テレワークの急速な普及により、セキュリティレベルの高いリモートアクセス(テレワーク/モバイル用の遠隔暗号通信ネットワーク)の需要が急増しており、「Network All Cloud」のサービスのひとつであるクラウドVPNソリューションサービス「Verona」においては、多くの企業からお問い合わせを受けております。
さらに、当第2四半期より、Ubiquiti UniFiシリーズ製品の販売を開始いたしました。Ubiquiti社は、「ネットワークテクノロジーの民主化」をテーマに、世界でネットワーク製品を展開している米国の企業で、これまでの総出荷台数は約8,500万台を超え、アメリカの無線アクセスポイント市場では、トップクラスのシェアを誇っております。
Ubiquiti社の製品の導入により、当社がこれまで培ってきた、クラウド型ネットワークインフラ「Network All Cloud」における2,000社以上の企業ネットワークを構築・運用してきた実績と、多数在籍するネットワークエンジニアの専門性、そして、Ubiquiti社の高品質なネットワーク機器を掛け合わせることで、導入から運用まで、ハイレベルなネットワーク環境をお客様へご提供する相乗効果があります。
この結果、当事業年度の売上高は2,314,581千円(前期比7.1%増)、営業利益は186,924千円(前期比45.8%増)、経常利益は185,808千円(前期比43.9%増)、当期純利益は125,931千円(前期比65.3%増)となりました。
セグメント別の業績は次のとおりであります。
データセキュリティ事業
コロナ禍により企業への導入作業ができない時期があり、第1四半期においては、前年同期比減収となりましたが、その後大型の官公庁関連の受注などで収益が改善しております。この結果、当事業年度における売上高は1,050,004千円(前期比1.9%増)、セグメント利益は601,980千円(前期比2.2%増)となりました。
ネットワークセキュリティ事業
当事業年度において、新型コロナウイルス感染症による社会環境の変化により、大きく影響を受けた年となりました。テレワーク導入企業の増加や、大型医療機関や大学等のネットワーク環境整備が進み、堅調な結果となりました。また期中に導入したUbiquiti社の製品の導入により、新たな収益機会を確保できるようになりました。この結果、当事業年度における売上高は1,264,577千円(前期比11.7%増)、セグメント利益は218,198千円(前期比93.7%増)となりました。
第26期事業年度第3四半期累計期間(自 2021年1月1日 至 2021年9月30日)
当第3四半期累計期間においては、東京オリンピック2020の開催、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種拡大による収束期待といった明るい話題があるものの、感染収束の不透明さや半導体不足の長期化など、日本国内における経済状況は依然として不透明な状況にあります。
このような経営環境の中、当社のデータセキュリティ事業では、新型コロナウイルス感染症拡大によるログ管理に対する投資抑制圧力や現地作業の延期などにより受注に影響はあったものの、第3四半期には回復の兆しが見られております。また、テレワーク環境整備、オフィス内におけるWEB会議等のためのWiFi環境整備に対する需要は引き続き高く、当社の「Network All Cloud」のビジネス機会が拡大し、ネットワークセキュリティ事業は増収増益となりました。
この結果、当第3四半期累計期間の売上高は2,146,087千円、営業利益は288,221千円、経常利益は297,552千円、四半期純利益は191,746千円となりました。
セグメント別の業績は次のとおりであります。
データセキュリティ事業
当第3四半期累計期間においては、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響によるログ管理への投資抑制圧力並びに現地作業の延期などから、2021年上期(2021年1月1日~2021年6月30日)は、前年同期比で減収となりましたが、新型コロナウイルスワクチンへの期待もあり、回復の兆しが見られ、第3四半期は増収となりました。この結果、第3四半期累計期間における売上高は、796,519千円、セグメント利益は、443,130千円となりました。
ネットワークセキュリティ事業
当第3四半期累計期間においては、半導体不足に対する対応策として先行して機器の在庫確保を行ったことが奏功し、高需要の「クラウドVPN Verona」(テレワーク環境整備)、「クラウド無線LAN Hypersonix」(オフィスのWiFi環境整備)の安定供給が実現し、業績は好調に推移いたしました。
この結果、第3四半期累計期間における売上高は、1,349,567千円、セグメント利益は、274,787千円となりました。
b 財政状態
第25期事業年度(自 2020年1月1日 至 2020年12月31日)
(資産)
当事業年度末における総資産は1,863,216千円となり前事業年度末と比較して427,527千円増加しました。テレワーク導入企業の増加やネットワーク環境整備が進んだことにより、売上が拡大し債権が増加したことに加えて、新型コロナウイルス感染症がわが国経済にもたらす影響を鑑み、金融機関から運転資金の調達を行いました。その結果、現金及び預金が393,635千円増加いたしました。また、当期にリリースした販売用ソフトウエアの増加によりソフトウエアが39,408千円増加いたしました。
(負債)
当事業年度末における負債合計は1,390,293千円となり前事業年度末と比較して291,715千円増加しました。新型コロナウイルス感染症がわが国経済にもたらす影響を鑑み、金融機関から運転資金の調達を行い長期借入金(一年以内含む)が207,731千円増加し、また取引先増加による前受金が138,723千円増加いたしました。
(純資産)
当事業年度末における純資産は472,922千円となり、前事業年度末と比較して135,811千円の増加となりました。これは主に当期純利益の計上による利益剰余金合計125,931千円の増加、第三者割当のための自己株式3,559千円を処分、及びその処分差益により資本剰余金が6,320千円増加したこと等によるものです。
セグメント別の財政状態は、取締役会が経営の意思決定上、当該情報をセグメントに配分していないことから記載しておりません。
第26期事業年度第3四半期累計期間(自 2021年1月1日 至 2021年9月30日)
(資産)
当第3四半期会計期間末における総資産は2,111,511千円となり前事業年度末と比較して248,295千円増加しました。これは前事業年度と同様にネットワークセキュリティ事業の売上が好調であったため、現金及び預金が194,800千円、及び売掛金が64,852千円増加したこと等によるものです。
(負債)
当第3四半期会計期間末における負債合計は1,446,842千円となり前事業年度末と比較して56,549千円増加しました。これは借入金の返済により長期借入金が63,813千円減少した一方で、取引先増加により前受金が89,106千円増加したこと、またネットワークセキュリティ事業の売上が好調だったことにより部材費、外注費が増加したこと売上原価が増加し、買掛金が28,458千円増加したこと等によるものです。
(純資産)
当第3四半期会計期間末における純資産は664,669千円となり前事業年度末と比較して191,746千円増加しました。これは四半期純利益の計上により利益剰余金が191,746千円増加したことによるものです。
② キャッシュ・フローの状況
第25期事業年度(自 2020年1月1日 至 2020年12月31日)
当事業年度末における現金及び現金同等物は、前事業年度末と比較して393,635千円増加し、921,819千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの変動要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度の営業活動におけるキャッシュ・フローは273,326千円の収入(前事業年度は211,759千円の収入)となりました。これは主に法人税等の支払額75,305千円、未払金の減少額37,625千円、ネットワークセキュリティ事業の売上増加に伴う機器部材の購入によるたな卸資産の増加額32,254千円等の支出があった一方で、税引前当期純利益183,431千円、取引先の増加による前受金の増加額138,723千円、工具、器具及び備品、ソフトウエア資産の増加による減価償却費67,694千円、売上債権の減少額12,082千円等の収入によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度の投資活動におけるキャッシュ・フローは97,302千円の支出(前事業年度は116,889千円の支出)となります。これは主に社内利用のPC、サーバ、さっぽろ研究所設立に伴う工具、器具及び備品等の有形固定資産24,897千円の取得、またソフトウエアの購入及び販売用ソフトウエアの製作による無形固定資産72,393千円の支出によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度の財務活動におけるキャッシュ・フローは217,611千円の収入(前事業年度は11,296千円の支出)となります。これは主に新型コロナウイルス感染症の影響に備えた長期借入れによる収入230,000千円があった一方で、その長期借入金の返済による支出22,269千円によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社は生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。
b.受注実績
概ね受注から役務提供の開始までの期間が短いため、受注実績に関する記載を省略しております。
c.販売実績
第25期事業年度及び第26期事業年度第3四半期累計期間における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称第25期事業年度
(自2020年1月1日
至2020年12月31日)
前期比(%)
データセキュリティ事業(千円)1,050,004101.9
ネットワークセキュリティ事業(千円)1,264,577111.7
合計(千円)2,314,581107.1

(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績の10%以上の相手先がないため、記載を省略しております。
セグメントの名称第26期事業年度第3四半期累計期間
(自2021年1月1日
至2021年9月30日)
データセキュリティ事業(千円)796,519
ネットワークセキュリティ事業(千円)1,349,567
合計(千円)2,146,087

(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績の10%以上の相手先がないため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針の見積り及び当該見積に用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。財務諸表の作成に当たり、資産及び負債または損益の状況に影響を与える会計上の見積りは、過去の実績等の財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
財務諸表の作成に当たって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響に関し、第25期事業年度については「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項(追加情報)」に、第26期第3四半期累計期間については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 当第3四半期累計期間(自 2021年1月1日 至 2021年9月30日)に関する注記事項(追加情報)」に記載しております。
会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、特に重要なものは次のとおりとなります。
(繰延税金資産の回収可能性)
当社は、将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について、繰延税金資産を計上することとしております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
② 経営成績の分析
第25期事業年度(自 2020年1月1日 至 2020年12月31日)
a 売上高
当事業年度における売上高は、2,314,581千円(前期比7.1%増)となりました。
セグメント別の内訳は次のとおりとなります。
データセキュリティ事業では、ソフトウエア保守継続率が86.9%と高い更新率を維持したことにより、ソフトウエア保守の売上が安定的に伸長(前期比10.0%増)し、当社において重要な指標としておりますデータセキュリティ事業のストック売上高前期比10%以上を達成いたしました。その結果、当事業年度売上高は1,050,004千円(前期比1.9%増)となりました。
ネットワークセキュリティ事業では、データセキュリティ事業同様、サービス解約率が7.1%と、高いサービス継続率を維持したことにより、リカーリング収益であるクラウドのサービス利用料の売上が伸長(前期比23.1%増)し、当社において重要な指標としておりますネットワークセキュリティ事業のストック売上高前期比15%以上を達成いたしました。また、テレワーク需要による新規案件数が前期比で、36.4%増加したことが要因となり、当事業年度売上高は、1,264,577千円(前期比11.7%増)となりました。
b 売上原価、売上総利益
当事業年度における売上原価は、1,000,705千円(前期比0.2%増)となりました。売上高の伸長は、データセキュリティ事業・ネットワークセキュリティ事業ともにリカーリング収益の伸長が大きな要因であるため、売上原価は僅かな増加となりました。この結果、売上総利益は1,313,876千円(前期比13.0%増)となりました。
c 販売費及び一般管理費、営業利益
当事業年度における販売費及び一般管理費は、1,126,951千円(前期比8.9%増)となりました。これは主に、業績拡大に伴う人件費の増加のほか、当社製品の認知度を高めるための宣伝広告費投資を行ったことにより、広告宣伝費、人件費等が増加しました。この結果、営業利益は186,924千円(前期比45.8%増)となりました。
d 営業外損益、経常利益
当事業年度における営業外損益は、営業外収益が前事業年度に比べ863千円減少し、858千円となりました。また、営業外費用は、前事業年度に比べ1,186千円増加し、1,975千円となりました。この結果、経常利益は185,808千円(前期比43.9%増)となりました。
e 特別損益、当期純利益
当事業年度における特別損益として、特別損失は、前事業年度に比べ2,121千円増加し、2,376千円となりました。これは固定資産除却損220千円、関係会社清算損2,156千円を計上したことによるものであります。また法人税等は57,500千円となりました。この結果、当期純利益は125,931千円(前期比65.3%増)となりました。
第26期事業年度第3四半期累計期間(自 2021年1月1日 至 2021年9月30日)
a 売上高
当第3四半期累計期間における売上高は2,146,087千円となりました。
セグメント別の内訳は次のとおりとなります。
データセキュリティ事業では、新型コロナウイルス感染症の影響による景気停滞のため、ソフトウエアのライセンス売上が減少したものの、ソフトウエア保守の売上が引き続き堅調に伸長した為、売上高は796,519千円となりました。
ネットワークセキュリティ事業では、新型コロナウイルス感染症の影響で生活スタイルの変化を余儀なくされ、それとともにリモートワーク対応に伴うセキュリティやネットワークの強化などITインフラの見直しの需要が高まりました。当社が取り扱うNetwork All Cloud・Ubiquiti製品はネットワークインフラの市場ニーズにマッチし、堅調なインバウンドリードの創出、及び顧客獲得につなげることができました。そのため、ネットワークセキュリティ事業の売上高は伸長し1,349,567千円となりました。
b 売上原価、売上総利益
当第3四半期累計期間における売上原価は1,022,163千円となりました。
これはNetwork All Cloudの売上伸長に伴うアクセスポイントなどの部材費の出庫増加、及び外注請負社員の人数増加による外注費の増加によるものです。この結果、売上総利益は1,123,923千円となりました。
c 販売費及び一般管理費、営業利益
当第3四半期累計期間における販売費及び一般管理費は835,701千円となりました。これは従業員の増員による人件費の増加によるものです。この結果、営業利益は288,221千円となりました。
d 営業外損益、経常利益
当第3四半期累計期間における営業外損益は、札幌市IT・コンテンツ・バイオ立地促進補助金などの助成金、補助金収入等により営業外収益が13,723千円を計上いたしました。営業外費用は、支払利息及び、株式上場に関する費用の計上により4,392千円となりました。この結果、経常利益は297,552千円となりました。
e 特別損益、四半期純利益
当第3四半期累計期間における特別損失は0千円、法人税等は105,805千円となりました。この結果、四半期純利益は191,746千円となりました。
③財政状態の分析
第25期事業年度及び第26期事業年度第3四半期累計期間の財政状態の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュフローの状況分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況 b 財政状態」に記載の通りであります。
④ キャッシュ・フローの分析
前述の「(1)経営成績等の状況の概要②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
⑤ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社の事業活動における運転資金需要の主なものは、製造・開発活動に係る人件費及び外注費、販売費及び一般管理費の広告宣伝費用等による運転資金であります。これらの資金につきましては、営業活動によって得られる資金でまかなうことを基本として、必要に応じて金融機関から調達を実施する方針であります。
また、資金の流動性については、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は、921,819千円あり、事業運営上、必要な資金は確保されていますが、今後も十分な流動性を維持していく考えであります。
⑥ 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社の経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
⑦ 経営者の問題意識と今後の方針について
経営者の問題意識と今後の方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載のとおりであります。