有価証券報告書-第75期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)
(業績等の概要)
(1) 業績
当期におけるわが国の経済は、個人消費が持ち直し、設備投資も緩やかに増加するなかで、企業収益や雇用情勢が着実に改善するなど、緩やかな回復基調が続きました。
建設業界におきましては、民間建設投資は、民間住宅投資において微増、民間非住宅建設投資も企業収益の改善等を背景とした設備投資などにより増加が見込まれ、また、政府建設投資も前年を上回る水準が予測されるなど、建設投資全体としては前年度比微増となる見通しです。
このような状況のなかで、当社グループにおきましては、3ヵ年中期経営計画(2015~2018)『東鉄 3D Step 2018』の最終年度にあたり、その基本方針、及び基本戦略である『3D戦略』(スリーディ戦略)に基づき、諸施策の推進を積極的に図ってまいりました。
「顧客層」のウイング拡大を図る《Ⅹ軸戦略》につきましては、最大最重要顧客である東日本旅客鉄道(株)からの受注工事の安全遂行を当社の社会的使命と捉え、経営資源を継続的に重点投下してまいりました。その最も重要なプロジェクトの一つである首都直下地震に備えた「耐震補強対策工事」では、これまで施工を進めてきた「御茶ノ水盛土・切土耐震補強」や駅舎等の「天井耐震化工事」など数々の工事に加え、さらに施工対象範囲を広げた工事も新たに開始されるなど、各種の耐震補強対策工事に継続的に取り組んでまいりました。また、「品川新駅プロジェクトに伴う軌道移設工事」、「常磐線梅戸橋こ線道路橋架替工事」、「青梅線東中神駅橋上化工事」や「新大久保駅バリアフリー化工事」をはじめとする駅舎改良工事など、様々な鉄道関連工事の安全施工に努めました。社会的な要請が益々高まっている「ホームドア」につきましては、山手線に続き、京浜東北線における設置工事が最盛期を迎えつつあり、さらに、2020年東京オリンピック・パラリンピック関連工事では、新国立競技場のメインゲート駅となる「千駄ヶ谷駅」、「信濃町駅」などの改良工事、また、インバウンド関連工事では、「ホテルメッツ秋葉原」、「ホテルメッツ五反田」などの施工を進めてまいりました。
多方面にわたる民間一般部門のお客様に対しては、「顧客層」のウイング拡大を図り、「地下鉄南北線王子車両基地分岐器改良工事(東京地下鉄(株))」、「東武野田線六実~逆井間複線化工事(東武鉄道(株))」、「相鉄本線西横浜駅リニューアル工事(相模鉄道(株))」、「東急田園都市線あざみ野駅高架下駐輪場新設工事(東京急行電鉄(株))」、「リーフィアレジデンス栗平新築工事(小田急不動産(株))」、「ジェイアールバス関東東京支店リニューアル工事(ジェイアールバス関東(株))」など、幅広い多数のお客様からの受注や施工を進めるとともに、当社が過去に施工させていただいたお客様からのリピーター受注も獲得いたしました。また、官公庁部門におきましても、当社初となる大型の公共建築工事である「高崎芸術劇場新築工事(群馬県高崎市)」をはじめ、「九州新幹線久山トンネル新設工事(鉄道・運輸機構)」、「大面川第二雨水幹線下水道整備工事(横浜市)」、「都電荒川線向原~東池袋四丁目間軌道移設工事(東京都交通局)」、「横浜市営地下鉄関内~吉野町間軌道改良工事(横浜市交通局)」など様々な受注・施工実績をあげることができました。
「業域」の深掘りを図る《Y軸戦略》につきましては、当社の強みである鉄道関連工事、防災・耐震・メンテナンス関連工事などの業務分野を徹底的に継続強化したうえで、お客様や社会の新しいニーズに応じた業務・業域の深掘りによる拡大強化を図り、新しい成長機会に挑戦してまいりました。本年度より本格稼働を開始した世界初の新幹線レール交換システム(通称[REXS])では、周辺機器の開発も並行して行いながら更なる効率化を図り、安全で高品質な施工を進めております。また、当社が設計から施工まで担当した「日本リーテック総合研修センター ゆめみ野学園新築工事(日本リーテック(株))」では、国内初となる、屋根をケーブルで支える先進的な構造を採用した大型研修施設にも取り組みました。
また、当社が強みとするメンテナンス技術を活かした施工では、「聖橋長寿命化工事(東京都財務局)」、「横浜市営地下鉄トンネル中柱補強工事(横浜市交通局)」、「富谷市まちづくり産業交流プラザ整備工事(宮城県富谷市)」、また、大震災復旧・復興関連では、「常磐線竜田~浪江間災害復旧工事(東日本旅客鉄道(株))」、「富岡~夜ノ森間富岡川橋りょう新設工事(同左)」、「富岡駅新築工事(同左)」、「気仙沼市南町海岸公共・公益施設新築工事(宮城県気仙沼市)」、「閖上小塚原線道路改良工事(宮城県名取市)」など、新しい業域での受注・施工実績をあげることができました。
環境事業につきましては、当社施工部門との相互連携・シナジー強化を目的に「東鉄ECO2プロジェクト」を積極的に推進中でありますが、環境に配慮した駅の実現に向けた「エコステ」化工事においては、「小淵沢駅エコステ化工事(東日本旅客鉄道(株))」、「武蔵溝ノ口駅エコステ化工事(同左)」を、緑化事業では、「横浜オフィスビル新築工事(東日本旅客鉄道(株))」、「東神奈川オフィスビル新築工事(同左)」における「壁面緑化工事」の受注・施工を行うなど、多くの案件に取り組みました。また、工事現場の周辺環境との調和や近隣への環境配慮を目的に進めている「工事用仮囲い緑化」が、「藤代駅北口駅前広場整備工事(茨城県取手市)」などにおいて採用されるなど、当社の緑化技術が様々なシーンで広がりを見せています。さらには、国土交通省が主催した「東京オリンピック・パラリンピックに向けた「暑熱対策公開テスト」」に当社の壁面緑化技術が選定されるなど、高い評価を得ることができました。
『3D戦略』(スリーディ戦略)において、最も重要な戦略である《Z軸戦略》につきましては、「安全」「品質」「技術力」「企業力」の一層の強化を図る様々な取り組みを実施してまいりました。
「安全」においては、経営の最重要事項に掲げている「安全はすべてに優先する」という経営理念のもと、お客様・地域社会・従業員の「究極の安全と安心」を徹底的に追求し、「東鉄グループ方式」による的確な「作業毎のリスク把握」と、危険なポイントを「見える化」した安全ビジュアル教材(「要注カード」など)の徹底活用など、実効性のある教育・訓練を継続実施し、全社をあげて重大事故、致命的労働災害の防止に努めてまいりました。
「品質」においては、安全・安心や品質に対する社会的責任や要請が益々高まるなかで、「品質管理」「技術力」のたゆまざる維持・強化に努め、品質管理力強化のための「施工の見える化」、鉄道関連工事をはじめ様々な工事によって培ってきた専門的技術力の維持・向上・継承、研究開発力の強化、総合評価方式に対応する高度な技術力・提案力の強化などに取り組んでまいりました。
「施工力」につきましては、工事量の増大に対応するために、新卒・社会人採用の継続的強化を推進いたしました。協力会社との関係強化においては、技術力の育成支援をはじめ、宿舎の整備など福利厚生の向上に取り組むとともに、協力会社とその社員の方々をご紹介する「プロフェッショナル」誌の定期的な発行などを通して、パートナーシップの一層の強化を図りました。また、綿密な施工計画の徹底と様々な創意工夫、タブレット端末の活用促進や種々の技術開発などにより、施工や業務の効率化を図り、工期短縮にも努めてまいりました。
「企業力」においては、『東鉄 3D Step 2018』の基本方針である、「すべてのステークホルダーから信頼される誠実な経営」、「攻めと守りのバランスのとれたコーポレート・ガバナンスによる経営」に取り組んでまいりました。コーポレートガバナンス・コードにも積極的に対応し、複数の独立社外取締役体制、及び任意の諮問機関としての「経営諮問委員会」などにより、独立社外取締役の適切な関与・助言を得る運営を継続的に強化しております。また、「取締役会全体の実効性評価」や、「議決権の電子行使および招集通知の英訳」にも対応済みであり、さらに、資本効率や株主還元の一層の充実を図るべく、ROE・総還元性向を目標化し、中間配当も継続的に実施しております。
また、適正な勤務管理やメンタルヘルスケアの推進など、労働環境の一層の改善に取り組むとともに、福利厚生制度や各種手当の充実など、従業員満足度の向上にも注力してまいりました。コンプライアンス、リスク管理体制については、実効性の高いコンプライアンス研修を定期的に実施するなど、さらなる強化を図るとともに、IR活動においては、継続的に適時適切な情報開示に努め、CSR報告書についても内容の一層の充実化を図るなど、「誠実な経営」の推進に取り組みました。
また、当社では、「生産性向上(技術開発、働き方改革等)」や「人材活用(女性等活躍推進、協力会社関係強化、教育研修等)」、「受注力強化」など、新しい社会環境の変化に応じて対応すべき重要な経営課題につき、全社横断的なプロジェクトチームを組成し、その提言を、新中期経営計画の各種施策に活かすべく、活発な検討を展開してまいりました。
以上のとおり、中期経営計画(2015~2018)『東鉄 3D Step 2018』におきましては、各分野において様々な施策に積極的に取り組んでまいりました。
当社グループは、『3D戦略』(スリーディ戦略)の推進により上記諸施策を着実に実施した結果、当期の業績につきましては、受注高は、官公庁の一般工事が前期受注の大型工事の影響により減少したものの、官公庁の鉄道工事や民間一般など幅広いお客様からの受注も順調に増加したことから、微減ながら過去2番目となる126,717百万円(前期比350百万円減少)の高い水準を確保することができました。
売上高は、前期からの繰越工事高が高水準でスタートしたことや、工事の進捗も順調に進んだことに加え、付帯事業の増加も寄与し、131,209百万円(前期比574百万円増加)と、増収かつ過去最高を更新しました。
利益につきましては、利益率・額が相対的に低い工事が一部にあったことなどから、売上総利益は19,785百万円(前期比299百万円減少)、営業利益は13,002百万円(前期比369百万円減少)、経常利益は13,301百万円(前期比366百万円減少)と、減益とはなりましたが、いずれも過去2番目の実績となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、税金費用の減少等もあり9,982百万円(前期比399百万円増加)と、増益かつ過去最高益を更新しました。
なお、中期経営計画(2015~2018)『東鉄 3D Step 2018』の最終年度(平成30年3月期)の数値目標のうち、「売上高1,350億円」につきましては、上記のとおり、当期売上高は過去最高を更新したものの未達となりましたが、「営業利益130億円以上」は2年連続して達成し、また、「ROE10%以上」についても13.6%と、3年連続して達成することができました。
セグメントの業績は、次のとおりです。なお、セグメントの売上高につきましては、外部顧客への売上高を記載しております。
(土木事業)
受注高は86,293百万円(前期比3.5%増)、売上高は86,702百万円(前期比2.6%減)となりました。
売上高のうち工事進行基準による計上額は51,337百万円であり、次期繰越高は45,020百万円となりました。
セグメント利益は7,848百万円(前期比8.7%減)となりました。
(建築事業)
受注高は40,423百万円(前期比7.5%減)、売上高は37,210百万円(前期比6.0%増)となりました。
売上高のうち工事進行基準による計上額は27,029百万円であり、次期繰越高は30,648百万円となりました。
セグメント利益は4,339百万円(前期比8.7%増)となりました。
(その他)
売上高は7,296百万円(前期比11.9%増)で、その主なものは鉄道関連製品の製造及び販売収入であります。
セグメント利益は798百万円(前期比3.6%増)となりました。
財政状態の状況は、次のとおりです。
当期末の資産合計は前期比5,518百万円増加し127,839百万円となりました。主な要因は、受取手形・完成工事未収入金等の増加であります。
負債合計は、前期比2,267百万円減少し49,711百万円となりました。主な要因は、支払手形・工事未払金等の減少であります。
その結果、純資産合計は前期比7,785百万円増加し78,127百万円となりました。また、自己資本比率は、前期末の56.7%から60.3%となりました。
(2) キャッシュ・フローの状況
当期末における現金及び現金同等物は、前期比1,569百万円減少し15,788百万円となりました。当期における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
売上債権の増加による収入の減少等により、営業活動におけるキャッシュ・フローは前期比920百万円収入が減少し2,667百万円の収入となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
有形固定資産の取得による支出の減少等により、投資活動におけるキャッシュ・フローは前期比147百万円支出が減少し1,417百万円の支出となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
配当金の支払額の増加等により、財務活動におけるキャッシュ・フローは前期比324百万円支出が増加し2,818百万円の支出となりました。
(生産、受注及び販売の状況)
(1) 受注実績
(2) 売上実績
(注) 1 セグメント間の受注・取引については相殺消去しております。
2 当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産の状況」は記載しておりません。
3 売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の売上高及びその割合は次のとおりであります。
なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりであります。
建設事業における受注工事高及び完成工事高の状況
① 受注工事高、完成工事高及び次期繰越工事高
(注) 1 前期以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額が含まれております。したがいまして、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれております。
2 次期繰越工事高は(前期繰越工事高+当期受注工事高-当期完成工事高)であります。
② 受注工事高の受注方法別比率
工事受注方法は、特命と競争に大別しております。
(注) 百分比は請負金額比であります。
③ 完成工事高
(注) 1 完成工事のうち主なものは、次のとおりであります。
前事業年度
当事業年度
2 完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりであります。
④ 次期繰越工事高(平成30年3月31日現在)
(注) 次期繰越工事のうち主なものは、次のとおりであります。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されておりますが、この連結財務諸表の作成にあたっては過去の実績や状況に応じ合理的と考えられる見積りが会計基準の一定の範囲内で行われており、連結決算日における資産・負債や収益・費用の数値に反映されております。これらの見積りには不確実性が伴い実際の結果とは異なる場合があるため、連結財務諸表に影響を及ぼすものと考えられます。
(2) 財政状態の分析
((業績等の概要) (1)業績 に記載しております。)
(3) 経営成績の分析
((業績等の概要) (1)業績 に記載しております。)
(4) 経営成績に重要な影響を与える要因について
(2 事業等のリスク に記載しております。)
(5) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
((業績等の概要) (2)キャッシュ・フローの状況 に記載しております。)
(6) 経営者の問題意識と今後の方針について
(1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 に記載しております。)
(1) 業績
当期におけるわが国の経済は、個人消費が持ち直し、設備投資も緩やかに増加するなかで、企業収益や雇用情勢が着実に改善するなど、緩やかな回復基調が続きました。
建設業界におきましては、民間建設投資は、民間住宅投資において微増、民間非住宅建設投資も企業収益の改善等を背景とした設備投資などにより増加が見込まれ、また、政府建設投資も前年を上回る水準が予測されるなど、建設投資全体としては前年度比微増となる見通しです。
このような状況のなかで、当社グループにおきましては、3ヵ年中期経営計画(2015~2018)『東鉄 3D Step 2018』の最終年度にあたり、その基本方針、及び基本戦略である『3D戦略』(スリーディ戦略)に基づき、諸施策の推進を積極的に図ってまいりました。
「顧客層」のウイング拡大を図る《Ⅹ軸戦略》につきましては、最大最重要顧客である東日本旅客鉄道(株)からの受注工事の安全遂行を当社の社会的使命と捉え、経営資源を継続的に重点投下してまいりました。その最も重要なプロジェクトの一つである首都直下地震に備えた「耐震補強対策工事」では、これまで施工を進めてきた「御茶ノ水盛土・切土耐震補強」や駅舎等の「天井耐震化工事」など数々の工事に加え、さらに施工対象範囲を広げた工事も新たに開始されるなど、各種の耐震補強対策工事に継続的に取り組んでまいりました。また、「品川新駅プロジェクトに伴う軌道移設工事」、「常磐線梅戸橋こ線道路橋架替工事」、「青梅線東中神駅橋上化工事」や「新大久保駅バリアフリー化工事」をはじめとする駅舎改良工事など、様々な鉄道関連工事の安全施工に努めました。社会的な要請が益々高まっている「ホームドア」につきましては、山手線に続き、京浜東北線における設置工事が最盛期を迎えつつあり、さらに、2020年東京オリンピック・パラリンピック関連工事では、新国立競技場のメインゲート駅となる「千駄ヶ谷駅」、「信濃町駅」などの改良工事、また、インバウンド関連工事では、「ホテルメッツ秋葉原」、「ホテルメッツ五反田」などの施工を進めてまいりました。
多方面にわたる民間一般部門のお客様に対しては、「顧客層」のウイング拡大を図り、「地下鉄南北線王子車両基地分岐器改良工事(東京地下鉄(株))」、「東武野田線六実~逆井間複線化工事(東武鉄道(株))」、「相鉄本線西横浜駅リニューアル工事(相模鉄道(株))」、「東急田園都市線あざみ野駅高架下駐輪場新設工事(東京急行電鉄(株))」、「リーフィアレジデンス栗平新築工事(小田急不動産(株))」、「ジェイアールバス関東東京支店リニューアル工事(ジェイアールバス関東(株))」など、幅広い多数のお客様からの受注や施工を進めるとともに、当社が過去に施工させていただいたお客様からのリピーター受注も獲得いたしました。また、官公庁部門におきましても、当社初となる大型の公共建築工事である「高崎芸術劇場新築工事(群馬県高崎市)」をはじめ、「九州新幹線久山トンネル新設工事(鉄道・運輸機構)」、「大面川第二雨水幹線下水道整備工事(横浜市)」、「都電荒川線向原~東池袋四丁目間軌道移設工事(東京都交通局)」、「横浜市営地下鉄関内~吉野町間軌道改良工事(横浜市交通局)」など様々な受注・施工実績をあげることができました。
「業域」の深掘りを図る《Y軸戦略》につきましては、当社の強みである鉄道関連工事、防災・耐震・メンテナンス関連工事などの業務分野を徹底的に継続強化したうえで、お客様や社会の新しいニーズに応じた業務・業域の深掘りによる拡大強化を図り、新しい成長機会に挑戦してまいりました。本年度より本格稼働を開始した世界初の新幹線レール交換システム(通称[REXS])では、周辺機器の開発も並行して行いながら更なる効率化を図り、安全で高品質な施工を進めております。また、当社が設計から施工まで担当した「日本リーテック総合研修センター ゆめみ野学園新築工事(日本リーテック(株))」では、国内初となる、屋根をケーブルで支える先進的な構造を採用した大型研修施設にも取り組みました。
また、当社が強みとするメンテナンス技術を活かした施工では、「聖橋長寿命化工事(東京都財務局)」、「横浜市営地下鉄トンネル中柱補強工事(横浜市交通局)」、「富谷市まちづくり産業交流プラザ整備工事(宮城県富谷市)」、また、大震災復旧・復興関連では、「常磐線竜田~浪江間災害復旧工事(東日本旅客鉄道(株))」、「富岡~夜ノ森間富岡川橋りょう新設工事(同左)」、「富岡駅新築工事(同左)」、「気仙沼市南町海岸公共・公益施設新築工事(宮城県気仙沼市)」、「閖上小塚原線道路改良工事(宮城県名取市)」など、新しい業域での受注・施工実績をあげることができました。
環境事業につきましては、当社施工部門との相互連携・シナジー強化を目的に「東鉄ECO2プロジェクト」を積極的に推進中でありますが、環境に配慮した駅の実現に向けた「エコステ」化工事においては、「小淵沢駅エコステ化工事(東日本旅客鉄道(株))」、「武蔵溝ノ口駅エコステ化工事(同左)」を、緑化事業では、「横浜オフィスビル新築工事(東日本旅客鉄道(株))」、「東神奈川オフィスビル新築工事(同左)」における「壁面緑化工事」の受注・施工を行うなど、多くの案件に取り組みました。また、工事現場の周辺環境との調和や近隣への環境配慮を目的に進めている「工事用仮囲い緑化」が、「藤代駅北口駅前広場整備工事(茨城県取手市)」などにおいて採用されるなど、当社の緑化技術が様々なシーンで広がりを見せています。さらには、国土交通省が主催した「東京オリンピック・パラリンピックに向けた「暑熱対策公開テスト」」に当社の壁面緑化技術が選定されるなど、高い評価を得ることができました。
『3D戦略』(スリーディ戦略)において、最も重要な戦略である《Z軸戦略》につきましては、「安全」「品質」「技術力」「企業力」の一層の強化を図る様々な取り組みを実施してまいりました。
「安全」においては、経営の最重要事項に掲げている「安全はすべてに優先する」という経営理念のもと、お客様・地域社会・従業員の「究極の安全と安心」を徹底的に追求し、「東鉄グループ方式」による的確な「作業毎のリスク把握」と、危険なポイントを「見える化」した安全ビジュアル教材(「要注カード」など)の徹底活用など、実効性のある教育・訓練を継続実施し、全社をあげて重大事故、致命的労働災害の防止に努めてまいりました。
「品質」においては、安全・安心や品質に対する社会的責任や要請が益々高まるなかで、「品質管理」「技術力」のたゆまざる維持・強化に努め、品質管理力強化のための「施工の見える化」、鉄道関連工事をはじめ様々な工事によって培ってきた専門的技術力の維持・向上・継承、研究開発力の強化、総合評価方式に対応する高度な技術力・提案力の強化などに取り組んでまいりました。
「施工力」につきましては、工事量の増大に対応するために、新卒・社会人採用の継続的強化を推進いたしました。協力会社との関係強化においては、技術力の育成支援をはじめ、宿舎の整備など福利厚生の向上に取り組むとともに、協力会社とその社員の方々をご紹介する「プロフェッショナル」誌の定期的な発行などを通して、パートナーシップの一層の強化を図りました。また、綿密な施工計画の徹底と様々な創意工夫、タブレット端末の活用促進や種々の技術開発などにより、施工や業務の効率化を図り、工期短縮にも努めてまいりました。
「企業力」においては、『東鉄 3D Step 2018』の基本方針である、「すべてのステークホルダーから信頼される誠実な経営」、「攻めと守りのバランスのとれたコーポレート・ガバナンスによる経営」に取り組んでまいりました。コーポレートガバナンス・コードにも積極的に対応し、複数の独立社外取締役体制、及び任意の諮問機関としての「経営諮問委員会」などにより、独立社外取締役の適切な関与・助言を得る運営を継続的に強化しております。また、「取締役会全体の実効性評価」や、「議決権の電子行使および招集通知の英訳」にも対応済みであり、さらに、資本効率や株主還元の一層の充実を図るべく、ROE・総還元性向を目標化し、中間配当も継続的に実施しております。
また、適正な勤務管理やメンタルヘルスケアの推進など、労働環境の一層の改善に取り組むとともに、福利厚生制度や各種手当の充実など、従業員満足度の向上にも注力してまいりました。コンプライアンス、リスク管理体制については、実効性の高いコンプライアンス研修を定期的に実施するなど、さらなる強化を図るとともに、IR活動においては、継続的に適時適切な情報開示に努め、CSR報告書についても内容の一層の充実化を図るなど、「誠実な経営」の推進に取り組みました。
また、当社では、「生産性向上(技術開発、働き方改革等)」や「人材活用(女性等活躍推進、協力会社関係強化、教育研修等)」、「受注力強化」など、新しい社会環境の変化に応じて対応すべき重要な経営課題につき、全社横断的なプロジェクトチームを組成し、その提言を、新中期経営計画の各種施策に活かすべく、活発な検討を展開してまいりました。
以上のとおり、中期経営計画(2015~2018)『東鉄 3D Step 2018』におきましては、各分野において様々な施策に積極的に取り組んでまいりました。
当社グループは、『3D戦略』(スリーディ戦略)の推進により上記諸施策を着実に実施した結果、当期の業績につきましては、受注高は、官公庁の一般工事が前期受注の大型工事の影響により減少したものの、官公庁の鉄道工事や民間一般など幅広いお客様からの受注も順調に増加したことから、微減ながら過去2番目となる126,717百万円(前期比350百万円減少)の高い水準を確保することができました。
売上高は、前期からの繰越工事高が高水準でスタートしたことや、工事の進捗も順調に進んだことに加え、付帯事業の増加も寄与し、131,209百万円(前期比574百万円増加)と、増収かつ過去最高を更新しました。
利益につきましては、利益率・額が相対的に低い工事が一部にあったことなどから、売上総利益は19,785百万円(前期比299百万円減少)、営業利益は13,002百万円(前期比369百万円減少)、経常利益は13,301百万円(前期比366百万円減少)と、減益とはなりましたが、いずれも過去2番目の実績となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、税金費用の減少等もあり9,982百万円(前期比399百万円増加)と、増益かつ過去最高益を更新しました。
なお、中期経営計画(2015~2018)『東鉄 3D Step 2018』の最終年度(平成30年3月期)の数値目標のうち、「売上高1,350億円」につきましては、上記のとおり、当期売上高は過去最高を更新したものの未達となりましたが、「営業利益130億円以上」は2年連続して達成し、また、「ROE10%以上」についても13.6%と、3年連続して達成することができました。
セグメントの業績は、次のとおりです。なお、セグメントの売上高につきましては、外部顧客への売上高を記載しております。
(土木事業)
受注高は86,293百万円(前期比3.5%増)、売上高は86,702百万円(前期比2.6%減)となりました。
売上高のうち工事進行基準による計上額は51,337百万円であり、次期繰越高は45,020百万円となりました。
セグメント利益は7,848百万円(前期比8.7%減)となりました。
(建築事業)
受注高は40,423百万円(前期比7.5%減)、売上高は37,210百万円(前期比6.0%増)となりました。
売上高のうち工事進行基準による計上額は27,029百万円であり、次期繰越高は30,648百万円となりました。
セグメント利益は4,339百万円(前期比8.7%増)となりました。
(その他)
売上高は7,296百万円(前期比11.9%増)で、その主なものは鉄道関連製品の製造及び販売収入であります。
セグメント利益は798百万円(前期比3.6%増)となりました。
財政状態の状況は、次のとおりです。
当期末の資産合計は前期比5,518百万円増加し127,839百万円となりました。主な要因は、受取手形・完成工事未収入金等の増加であります。
負債合計は、前期比2,267百万円減少し49,711百万円となりました。主な要因は、支払手形・工事未払金等の減少であります。
その結果、純資産合計は前期比7,785百万円増加し78,127百万円となりました。また、自己資本比率は、前期末の56.7%から60.3%となりました。
(2) キャッシュ・フローの状況
当期末における現金及び現金同等物は、前期比1,569百万円減少し15,788百万円となりました。当期における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
売上債権の増加による収入の減少等により、営業活動におけるキャッシュ・フローは前期比920百万円収入が減少し2,667百万円の収入となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
有形固定資産の取得による支出の減少等により、投資活動におけるキャッシュ・フローは前期比147百万円支出が減少し1,417百万円の支出となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
配当金の支払額の増加等により、財務活動におけるキャッシュ・フローは前期比324百万円支出が増加し2,818百万円の支出となりました。
(生産、受注及び販売の状況)
(1) 受注実績
セグメントの名称 | 前連結会計年度 (自 平成28年4月1日 至 平成29年3月31日) (百万円) | 当連結会計年度 (自 平成29年4月1日 至 平成30年3月31日) (百万円) | |
土木事業 | 83,359 | 86,293 | ( 3.5% ) |
建築事業 | 43,707 | 40,423 | (△7.5% ) |
合計 | 127,067 | 126,717 | (△0.3% ) |
(2) 売上実績
セグメントの名称 | 前連結会計年度 (自 平成28年4月1日 至 平成29年3月31日) (百万円) | 当連結会計年度 (自 平成29年4月1日 至 平成30年3月31日) (百万円) | |
土木事業 | 89,006 | 86,702 | ( △2.6% ) |
建築事業 | 35,107 | 37,210 | ( 6.0% ) |
報告セグメント 計 | 124,113 | 123,912 | ( △0.2% ) |
その他 | 6,520 | 7,296 | ( 11.9% ) |
合計 | 130,634 | 131,209 | ( 0.4% ) |
(注) 1 セグメント間の受注・取引については相殺消去しております。
2 当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産の状況」は記載しておりません。
3 売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の売上高及びその割合は次のとおりであります。
相 手 先 | 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | |||
金額(百万円) | 割合(%) | 金額(百万円) | 割合(%) | ||
土木事業 | 東日本旅客鉄道㈱ | 80,919 | 61.9 | 77,276 | 58.9 |
建築事業 | 東日本旅客鉄道㈱ | 19,035 | 14.6 | 22,834 | 17.4 |
なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりであります。
建設事業における受注工事高及び完成工事高の状況
① 受注工事高、完成工事高及び次期繰越工事高
期別 | 区分 | 前期繰越 工事高 (百万円) | 当期受注 工事高 (百万円) | 計 (百万円) | 当期完成 工事高 (百万円) | 次期繰越 工事高 (百万円) |
前事業年度 (自 平成28年4月1日 至 平成29年3月31日) | 土木工事 | 51,065 | 83,030 | 134,095 | 88,669 | 45,426 |
建築工事 | 18,353 | 41,860 | 60,213 | 33,251 | 26,961 | |
計 | 69,418 | 124,890 | 194,308 | 121,920 | 72,388 | |
当事業年度 (自 平成29年4月1日 至 平成30年3月31日) | 土木工事 | 45,426 | 85,889 | 131,316 | 86,298 | 45,017 |
建築工事 | 26,961 | 38,270 | 65,232 | 35,071 | 30,161 | |
計 | 72,388 | 124,159 | 196,548 | 121,369 | 75,178 |
(注) 1 前期以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額が含まれております。したがいまして、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれております。
2 次期繰越工事高は(前期繰越工事高+当期受注工事高-当期完成工事高)であります。
② 受注工事高の受注方法別比率
工事受注方法は、特命と競争に大別しております。
期別 | 区分 | 特命(%) | 競争(%) | 計(%) |
前事業年度 (自 平成28年4月1日 至 平成29年3月31日) | 土木工事 | 79.4 | 20.6 | 100 |
建築工事 | 41.9 | 58.1 | 100 | |
当事業年度 (自 平成29年4月1日 至 平成30年3月31日) | 土木工事 | 76.6 | 23.4 | 100 |
建築工事 | 34.6 | 65.4 | 100 |
(注) 百分比は請負金額比であります。
③ 完成工事高
期別 | 区分 | 官公庁 (百万円) | 民間 (百万円) | 計 (百万円) |
前事業年度 (自 平成28年4月1日 至 平成29年3月31日) | 土木工事 | 6,450 | 82,219 | 88,669 |
建築工事 | 913 | 32,337 | 33,251 | |
計 | 7,363 | 114,556 | 121,920 | |
当事業年度 (自 平成29年4月1日 至 平成30年3月31日) | 土木工事 | 7,775 | 78,523 | 86,298 |
建築工事 | 1,941 | 33,129 | 35,071 | |
計 | 9,717 | 111,652 | 121,369 |
(注) 1 完成工事のうち主なものは、次のとおりであります。
前事業年度
東日本旅客鉄道㈱ | 東北線外利用高架橋その他耐震補強工事2015 |
梶原工業㈱ | 梶原工業株式会社新工場新築工事 |
ナイスエスト㈱・大栄不動産㈱・ | (仮称)JV藤沢川名計画新築工事 |
三信住建㈱・京急不動産㈱共同企業体 | |
㈱大京 | (仮称)綾瀬三丁目新築工事 |
JR東京西駅ビル開発㈱ | セレオ八王子北館 特別高圧受変電設備他更新工事 |
当事業年度
小田急不動産㈱ | リーフィアレジデンス栗平 新築工事 |
東日本旅客鉄道㈱ | 東北線外利用高架橋その他耐震補強工事2016 |
東日本旅客鉄道㈱ | 東中神駅橋上本屋ほか新築その他(その2・躯体仕上)工事 |
㈱ジェイアール東日本都市開発 | 中央線三鷹駅南口ビル新築工事 |
東日本旅客鉄道㈱ | 宇都宮駅新幹線上り乗降場上家屋根改良その他工事 |
2 完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりであります。
前事業年度 (自 平成28年4月1日 至 平成29年3月31日) | 当事業年度 (自 平成29年4月1日 至 平成30年3月31日) | ||||
相手先 | 金額 (百万円) | 割合(%) | 相手先 | 金額 (百万円) | 割合(%) |
東日本旅客鉄道㈱ | 99,831 | 81.9 | 東日本旅客鉄道㈱ | 99,717 | 82.2 |
④ 次期繰越工事高(平成30年3月31日現在)
区分 | 官公庁(百万円) | 民間(百万円) | 計(百万円) |
土木工事 | 9,411 | 35,606 | 45,017 |
建築工事 | 4,312 | 25,848 | 30,161 |
計 | 13,723 | 61,454 | 75,178 |
(注) 次期繰越工事のうち主なものは、次のとおりであります。
群馬県 高崎市 | 高崎芸術劇場建設工事 | 平成31年3月完成予定 |
東日本旅客鉄道㈱ | 宇都宮・那須塩原間第3岩曽高架橋外橋脚補強その他工事 | 平成34年3月完成予定 |
東日本旅客鉄道㈱ | 山梨市駅橋上本屋ほか新築その他工事 | 平成33年3月完成予定 |
ジェイアールバス関東㈱ | 東京支店事務所新築その他工事 | 平成32年2月完成予定 |
東日本旅客鉄道㈱ | 東北線外利用高架橋その他耐震補強工事その3 | 平成31年3月完成予定 |
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されておりますが、この連結財務諸表の作成にあたっては過去の実績や状況に応じ合理的と考えられる見積りが会計基準の一定の範囲内で行われており、連結決算日における資産・負債や収益・費用の数値に反映されております。これらの見積りには不確実性が伴い実際の結果とは異なる場合があるため、連結財務諸表に影響を及ぼすものと考えられます。
(2) 財政状態の分析
((業績等の概要) (1)業績 に記載しております。)
(3) 経営成績の分析
((業績等の概要) (1)業績 に記載しております。)
(4) 経営成績に重要な影響を与える要因について
(2 事業等のリスク に記載しております。)
(5) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
((業績等の概要) (2)キャッシュ・フローの状況 に記載しております。)
(6) 経営者の問題意識と今後の方針について
(1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 に記載しております。)