有価証券報告書-第77期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績の状況
当期におけるわが国の経済は、年度初めにおいては海外経済の減速等を背景に外需が弱含むものの、雇用・所得環境の改善等に加え、消費税率の引き上げに当たって各種の対応策が実施されることにより、内需を中心に緩やかに回復する見通しでありましたが、1月以降に発生した新型コロナウイルス感染症の影響により、個人消費が急速に弱まり、企業収益も製造業を中心に弱含むなど足元では大幅に下押しされており、厳しい状況となりました。
建設業界におきましては、政府建設投資は前年度を上回る水準、民間建設投資は、民間住宅・非住宅建設投資ともに微増と予測され、建設投資全体として通年では前年度比微増の見通しとなりました。
このような状況のなかで、当社グループにおきましては、中期経営計画(2018~2021)『東鉄 3D Power Up 2021』の2年目にあたり、その基本戦略である「3D戦略」(スリーディ戦略)に基づき、「成長戦略[X軸×Y軸]」における諸施策の推進、「クォリティ戦略[Z軸]」における諸施策、即ち4つの重要テーマ「Z-1 安全・品質向上」、「Z-2 生産性向上/技術開発」、「Z-3 働き方改革/人材育成」、「Z-4 ESG(環境・社会・ガバナンス)」の推進を図る「Power Up Project」に積極的に取り組んでまいりました。
「顧客層」のウイング拡大を図る《Ⅹ軸戦略》につきましては、最大最重要顧客である東日本旅客鉄道(株)からの受注工事の安全遂行を当社の社会的使命と捉え、経営資源を継続的に重点投下してまいりました。なかでも、橋りょう、高架橋、盛土・切土、駅舎など数々の「耐震補強工事」、社会的な要請が益々高まっている「ホームドア」設置に伴うホーム改良工事の推進、「中央快速線グリーン車サービス」導入に伴う車両基地整備や駅・ホームの改良工事など、各種大型プロジェクトの安全施工に取り組んでまいりました。また、「東京オリンピック・パラリンピック」関連では競技場周辺駅や主要乗換駅の改良工事、さらに「インバウンド」関連では駅に隣接するホテルや商業施設の建設にも取り組んでまいりました。
多方面にわたる民間一般部門のお客様に対するウイングの拡大では、「東武鉄道(株)、東武野田線六実~逆井間複線化工事」、「真岡鐵道(株)、第二多田羅街道踏切拡幅工事」、「相模鉄道(株)、西横浜駅分岐器改良工事」、「三陸鉄道(株)、第二赤崎橋梁改築工事」、「(株)ジェイアール東日本都市開発、日比谷OKUROJI新築工事」、「大成有楽不動産(株)、カレッジコート宮崎台(学生寮)新築工事」、「(株)フォース、H:Ⅱマンション新築工事」、「(株)ヤマデン、ヤマデン本社新築工事」など、幅広いお客様からの受注・施工を進めてまいりました。また、官公庁部門におきましても、「鉄道・運輸機構、北陸新幹線小松軌道敷設他工事」、「東京都交通局、大江戸線レール交換工事」「同、都電荒川線軌道移設工事」、「宮城県気仙沼市、南気仙沼雨水幹線函渠築造工事」、「青森県、三沢十和田線橋梁架替(古間木橋)工事」、「宮城県塩釜市、西塩釜駅自由通路エレベーター整備工事」など様々な受注実績をあげることができました。
「業域」の深掘りを図る《Y軸戦略》につきましては、当社の強みである鉄道関連工事、防災・耐震・メンテナンス関連工事などの業務分野を徹底的に継続強化したうえで、お客様や社会環境の変化、時代の要請に応じた業域の深掘りによる拡大強化を図り、新しい成長機会に挑戦してまいりました。
当社が得意とする鉄道関連工事においては、「高輪ゲートウェイ駅周辺再開発プロジェクトに伴う軌道移設工事」、「飯田橋駅改良に伴う軌道工事」、「新大久保駅バリアフリー化工事」など、施工難易度の高い様々な工事に取り組んでまいりました。また、今後予定されている新幹線鉄道大規模改修に向けては、JR東日本総合研修センター構内に実物大試験設備を構築する工事の施工を進めております。さらには、上越新幹線の速度向上に伴う「騒音対策工事」、「機械設備技術研修センター新築工事」など幅広い工事の受注に取り組んでまいりました。
当社が強みとする耐震やメンテナンス、リニューアルの技術を活かした施工では、「神奈川県横浜市、開削トンネル中柱補強工事」、「国土交通省、国道6号水戸大橋補修工事」、「東京都葛飾区、小松橋補修工事」、「(株)アトレ、信濃町店改装工事」などを受注し、災害復旧・復興関連では、東日本大震災から9年を経て全線運転再開となった常磐線の「竜田~浪江間災害復旧工事」を施工してまいりました。さらに、台風15号、19号による鉄道関連の災害復旧にも取り組み、様々な業域での受注・施工実績をあげることができました。
環境事業につきましては、当社施工部門との相互連携・シナジー強化を目的に「東鉄ECO2プロジェクト」を積極的に推進中でありますが、緑化事業においては、「上野駅公園口駅舎改良に伴う緑化工事」や「前橋駅エコステーション化工事」の受注・施工など多くの案件に取り組みました。また、当社が開発した自立型の緑化施設である「木陰のトンネル」が国土交通省の暑熱対策実証試験に選定され、日産スタジアム前の新横浜駅前公園の暑熱対策として採用されております。さらには、Nearly ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の認証を取得した「日本電設工業(株)、NDK千葉ビル新築工事」に参画するなど、当社の環境技術が様々な広がりをみせています。
「質」を向上させ企業価値を高める「クォリティ戦略」《Z軸戦略》につきましては、4つの重要なテーマの「Power Up Project」を推進するため、様々な施策を実施してまいりました。
「Z-1 安全・品質向上」においては、経営の最重要事項に掲げている「安全はすべてに優先する」という経営理念のもと、お客様・地域社会・協力会社・従業員の「究極の安全と安心」を追求し、安全・安心で、高品質・高効率・低コストの技術・サービス・商品の提供によりお客様の満足度と信頼を確保することを目指し、様々な施策を実施してまいりました。
「Z–2 生産性向上/技術開発」においては、技術開発力の強化により、安全性、生産性の向上を図り、工事量の増大に対応するための施工力を強化するとともに、協力会社とのパートナーシップ強化により強固な施工体制の維持向上を図ることを目指し、様々な施策を実施してまいりました。
「Z–3 働き方改革/人材育成」においては、当社がこれまで取り組んできた「人を大切にする風土づくり」をさらに推進し、「働き方改革」や「人材育成」の取り組みを進めております。
「Z–4 ESG」においては、「ステークホルダーから信頼」される「誠実な経営」を推進し、「SDGs(持続可能な開発目標)」と「ESG」を事業活動に関連付け、「事業機会」と「リスク・コスト要因」の両面を認識したうえで事業活動に取り組み、当社の「社会的使命」を果たすことを方針としております。このプロセスを通じ、当社の「企業価値向上」・「持続的成長」と、ステークホルダーとの「共通価値の創造」に取り組んでまいりました。
以上のとおり、中期経営計画(2018~2021)『東鉄 3D Power Up 2021』の2年目において、「3D戦略」及び「Power Up Project」の諸施策を着実に推進した結果、当期の業績につきましては、官庁及び民間の鉄道関連工事が増加したことにより、受注高は134,317百万円(前期比153百万円増加)となり、2期連続して1,300億円台を超え過去最高となりました。
売上高は、前期からの繰越工事高が高水準でスタートしたことや、手持ち工事が順調に進捗したことなどにより、146,034百万円(前期比11,294百万円増加)と大幅に増加し、7期連続して過去最高を更新しました。
利益につきましては、上記売上高が大幅に増加したことなどにより、売上総利益は22,629百万円(前期比2,942百万円増加)、営業利益は14,858百万円(前期比2,641百万円増加)、経常利益は15,347百万円(前期比2,642百万円増加)、親会社株主に帰属する当期純利益は10,657百万円(前期比1,794百万円増加)となり、いずれも過去最高を更新いたしました。
なお、中期経営計画(2018~2021)『東鉄 3D Power Up 2021』の最終年度(2021年3月期)数値目標である「売上高1,400億円」「営業利益140億円」を、1年前倒しにて達成することができました。
新型コロナウイルス感染症の影響につきましては、当連結会計年度における当社グループの経営成績等への影響は軽微でありますが、経済への影響は翌連結会計年度の一定期間にわたり継続することが考えられ、鉄道関連分野の設備投資の抑制や先送り、民間建設投資の大幅な下振れ等による受注高の減少、感染予防対策・工期延伸等による費用の増加等が懸念されます。
セグメントの業績は、次のとおりです。なお、セグメントの売上高につきましては、外部顧客への売上高を記載しております。
(土木事業)
受注高は93,580百万円(前期比1.8%減)、売上高は89,619百万円(前期比2.9%増)となりました。
売上高のうち工事進行基準による計上額は51,326百万円であり、次期繰越高は57,165百万円となりました。
セグメント利益は8,483百万円(前期比14.7%増)となりました。
(建築事業)
受注高は40,737百万円(前期比4.8%増)、売上高は48,005百万円(前期比20.8%増)となりました。
売上高のうち工事進行基準による計上額は38,005百万円であり、次期繰越高は22,520百万円となりました。
セグメント利益は5,539百万円(前期比34.2%増)となりました。
(その他)
売上高は8,410百万円(前期比6.5%増)で、その主なものは鉄道関連製品の製造及び販売収入であります。
セグメント利益は817百万円(前期比21.0%増)となりました。
(2) 財政状態の状況
当期末の資産合計は前期比10,057百万円増加し145,349百万円となりました。これは、売上高増加に伴う受取手形・完成工事未収入金等の増加、新研修センター用地の取得による土地の増加、保線用大型機械のファイナンス・リース契約に伴うリース資産の増加、保有株式の時価下落に伴う投資有価証券の減少等によるものであります。
負債合計は、前期比4,387百万円増加し55,959百万円となりました。これは、工事量増加に伴う支払手形・工事未払金等の増加、保線用大型機械のファイナンス・リース契約に伴うリース債務の増加等によるものであります。
その結果、純資産合計は前期比5,670百万円増加し89,389百万円となりました。また、自己資本比率は、前期末の61.0%から60.7%となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況
当期末における現金及び現金同等物は、前期比597百万円増加し17,475百万円となりました。当期における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
税金等調整前当期純利益の増加等により、営業活動におけるキャッシュ・フローは前期比1,972百万円収入増加の8,060百万円の収入となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
有形固定資産の取得による支出等により、投資活動におけるキャッシュ・フローは前期比2,697百万円支出増加の4,417百万円の支出となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
配当金の支払い等により、財務活動におけるキャッシュ・フローは前期比232百万円支出減少の3,046百万円の支出となりました。
当社グループの資金の源泉は、主として国内事業に係る営業活動からのキャッシュ・フローによる収入からなります。資金の主要な使途は、材料費・外注費、設備投資等であります。
流動性については、事業活動を行う上で十分な運転資金を確保していきますが、新型コロナウイルス感染症の影響による収入の減少等、万一の緊急時における資金調達に備えるため、金融機関より随時利用可能な借入枠を確保しております。
(4) 生産、受注及び販売の状況
① 受注実績
② 売上実績
(注) 1 セグメント間の受注・取引については相殺消去しております。
2 当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産の状況」は記載しておりません。
3 売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の売上高及びその割合は次のとおりであります。
なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりであります。
建設事業における受注工事高及び完成工事高の状況
① 受注工事高、完成工事高及び次期繰越工事高
(注) 1 前期以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額が含まれております。したがいまして、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれております。
2 次期繰越工事高は(前期繰越工事高+当期受注工事高-当期完成工事高)であります。
② 受注工事高の受注方法別比率
工事受注方法は、特命と競争に大別しております。
(注) 百分比は請負金額比であります。
③ 完成工事高
(注) 1 完成工事のうち主なものは、次のとおりであります。
前事業年度
当事業年度
2 完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりであります。
④ 次期繰越工事高(2020年3月31日現在)
(注) 次期繰越工事のうち主なものは、次のとおりであります。
(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。
この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
a.工事原価総額
完成工事高及び完成工事原価の計上基準は、当連結会計年度末までの進捗部分について成果の確実性が認められる工事については工事進行基準(工事の進捗率の見積りは原価比例法)を、その他の工事については工事完成基準を適用しております。工事進行基準による完成工事高の計上においては工事原価総額の見積りにより収益に影響を与えます。工事原価総額の見積りは当初は実行予算によって行います。実行予算作成時には、将来の気象条件や作成時点で入手可能な情報に基づいた施工条件や資機材価格について仮定を設定し、作業効率等を勘案して工種毎に詳細に積み上げることによって工事原価総額を見積ります。工事着工後は作業所において実際の発生原価と対比して適時・適切に工事原価総額の見直しを行っており、支店・関係本部においては作業所からの管理月報等による報告書に基づく見直し後の工事原価総額について検討・分析を実施しており、計上額が妥当であることを検証しております。このように気象条件、施工条件、資機材価格、作業効率等さまざまな仮定要素があり、それらについて適時・適切に見積りを行っておりますが、将来の工事原価総額は見積金額と異なる可能性があります。なお、新型コロナウイルス感染症は2021年3月期の一定期間にわたり継続すると見込まれるものの、2020年4月の緊急事態宣言の発出後の当社グループの工事の状況から判断し、当連結会計年度末時点で受注・着工済の工事については、工事の中断や工期の大幅な延長といった新型コロナウイルス感染症に起因する工事原価総額の重要な増加要因はないとの仮定に基づき、工事原価総額を見積もっております。
b.工事損失引当金
受注工事に係る将来の損失に備えるため、当連結会計年度末における手持工事のうち損失の発生が見込まれ、かつ、その金額を合理的に見積ることができる工事について、損失見込額を計上しております。損失見込額の算定に際しては現在入手可能な情報(発注者との条件、気象条件、施工条件、資機材価格、作業効率等)から過去の実績を基礎として、作業所、支店、関係本部において精査することにより算定しております。また引当金額の変更については発注者との変更契約の締結、専門工事業者との外注契約の締結等による確実な原価低減が見込まれる場合に行っております。このようにさまざまな仮定要素があり、それらについて適時・適切に見積りを行っておりますが、将来の損益は見積金額と異なる可能性があります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績の状況
当期におけるわが国の経済は、年度初めにおいては海外経済の減速等を背景に外需が弱含むものの、雇用・所得環境の改善等に加え、消費税率の引き上げに当たって各種の対応策が実施されることにより、内需を中心に緩やかに回復する見通しでありましたが、1月以降に発生した新型コロナウイルス感染症の影響により、個人消費が急速に弱まり、企業収益も製造業を中心に弱含むなど足元では大幅に下押しされており、厳しい状況となりました。
建設業界におきましては、政府建設投資は前年度を上回る水準、民間建設投資は、民間住宅・非住宅建設投資ともに微増と予測され、建設投資全体として通年では前年度比微増の見通しとなりました。
このような状況のなかで、当社グループにおきましては、中期経営計画(2018~2021)『東鉄 3D Power Up 2021』の2年目にあたり、その基本戦略である「3D戦略」(スリーディ戦略)に基づき、「成長戦略[X軸×Y軸]」における諸施策の推進、「クォリティ戦略[Z軸]」における諸施策、即ち4つの重要テーマ「Z-1 安全・品質向上」、「Z-2 生産性向上/技術開発」、「Z-3 働き方改革/人材育成」、「Z-4 ESG(環境・社会・ガバナンス)」の推進を図る「Power Up Project」に積極的に取り組んでまいりました。
「顧客層」のウイング拡大を図る《Ⅹ軸戦略》につきましては、最大最重要顧客である東日本旅客鉄道(株)からの受注工事の安全遂行を当社の社会的使命と捉え、経営資源を継続的に重点投下してまいりました。なかでも、橋りょう、高架橋、盛土・切土、駅舎など数々の「耐震補強工事」、社会的な要請が益々高まっている「ホームドア」設置に伴うホーム改良工事の推進、「中央快速線グリーン車サービス」導入に伴う車両基地整備や駅・ホームの改良工事など、各種大型プロジェクトの安全施工に取り組んでまいりました。また、「東京オリンピック・パラリンピック」関連では競技場周辺駅や主要乗換駅の改良工事、さらに「インバウンド」関連では駅に隣接するホテルや商業施設の建設にも取り組んでまいりました。
多方面にわたる民間一般部門のお客様に対するウイングの拡大では、「東武鉄道(株)、東武野田線六実~逆井間複線化工事」、「真岡鐵道(株)、第二多田羅街道踏切拡幅工事」、「相模鉄道(株)、西横浜駅分岐器改良工事」、「三陸鉄道(株)、第二赤崎橋梁改築工事」、「(株)ジェイアール東日本都市開発、日比谷OKUROJI新築工事」、「大成有楽不動産(株)、カレッジコート宮崎台(学生寮)新築工事」、「(株)フォース、H:Ⅱマンション新築工事」、「(株)ヤマデン、ヤマデン本社新築工事」など、幅広いお客様からの受注・施工を進めてまいりました。また、官公庁部門におきましても、「鉄道・運輸機構、北陸新幹線小松軌道敷設他工事」、「東京都交通局、大江戸線レール交換工事」「同、都電荒川線軌道移設工事」、「宮城県気仙沼市、南気仙沼雨水幹線函渠築造工事」、「青森県、三沢十和田線橋梁架替(古間木橋)工事」、「宮城県塩釜市、西塩釜駅自由通路エレベーター整備工事」など様々な受注実績をあげることができました。
「業域」の深掘りを図る《Y軸戦略》につきましては、当社の強みである鉄道関連工事、防災・耐震・メンテナンス関連工事などの業務分野を徹底的に継続強化したうえで、お客様や社会環境の変化、時代の要請に応じた業域の深掘りによる拡大強化を図り、新しい成長機会に挑戦してまいりました。
当社が得意とする鉄道関連工事においては、「高輪ゲートウェイ駅周辺再開発プロジェクトに伴う軌道移設工事」、「飯田橋駅改良に伴う軌道工事」、「新大久保駅バリアフリー化工事」など、施工難易度の高い様々な工事に取り組んでまいりました。また、今後予定されている新幹線鉄道大規模改修に向けては、JR東日本総合研修センター構内に実物大試験設備を構築する工事の施工を進めております。さらには、上越新幹線の速度向上に伴う「騒音対策工事」、「機械設備技術研修センター新築工事」など幅広い工事の受注に取り組んでまいりました。
当社が強みとする耐震やメンテナンス、リニューアルの技術を活かした施工では、「神奈川県横浜市、開削トンネル中柱補強工事」、「国土交通省、国道6号水戸大橋補修工事」、「東京都葛飾区、小松橋補修工事」、「(株)アトレ、信濃町店改装工事」などを受注し、災害復旧・復興関連では、東日本大震災から9年を経て全線運転再開となった常磐線の「竜田~浪江間災害復旧工事」を施工してまいりました。さらに、台風15号、19号による鉄道関連の災害復旧にも取り組み、様々な業域での受注・施工実績をあげることができました。
環境事業につきましては、当社施工部門との相互連携・シナジー強化を目的に「東鉄ECO2プロジェクト」を積極的に推進中でありますが、緑化事業においては、「上野駅公園口駅舎改良に伴う緑化工事」や「前橋駅エコステーション化工事」の受注・施工など多くの案件に取り組みました。また、当社が開発した自立型の緑化施設である「木陰のトンネル」が国土交通省の暑熱対策実証試験に選定され、日産スタジアム前の新横浜駅前公園の暑熱対策として採用されております。さらには、Nearly ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の認証を取得した「日本電設工業(株)、NDK千葉ビル新築工事」に参画するなど、当社の環境技術が様々な広がりをみせています。
「質」を向上させ企業価値を高める「クォリティ戦略」《Z軸戦略》につきましては、4つの重要なテーマの「Power Up Project」を推進するため、様々な施策を実施してまいりました。
「Z-1 安全・品質向上」においては、経営の最重要事項に掲げている「安全はすべてに優先する」という経営理念のもと、お客様・地域社会・協力会社・従業員の「究極の安全と安心」を追求し、安全・安心で、高品質・高効率・低コストの技術・サービス・商品の提供によりお客様の満足度と信頼を確保することを目指し、様々な施策を実施してまいりました。
「Z–2 生産性向上/技術開発」においては、技術開発力の強化により、安全性、生産性の向上を図り、工事量の増大に対応するための施工力を強化するとともに、協力会社とのパートナーシップ強化により強固な施工体制の維持向上を図ることを目指し、様々な施策を実施してまいりました。
「Z–3 働き方改革/人材育成」においては、当社がこれまで取り組んできた「人を大切にする風土づくり」をさらに推進し、「働き方改革」や「人材育成」の取り組みを進めております。
「Z–4 ESG」においては、「ステークホルダーから信頼」される「誠実な経営」を推進し、「SDGs(持続可能な開発目標)」と「ESG」を事業活動に関連付け、「事業機会」と「リスク・コスト要因」の両面を認識したうえで事業活動に取り組み、当社の「社会的使命」を果たすことを方針としております。このプロセスを通じ、当社の「企業価値向上」・「持続的成長」と、ステークホルダーとの「共通価値の創造」に取り組んでまいりました。
以上のとおり、中期経営計画(2018~2021)『東鉄 3D Power Up 2021』の2年目において、「3D戦略」及び「Power Up Project」の諸施策を着実に推進した結果、当期の業績につきましては、官庁及び民間の鉄道関連工事が増加したことにより、受注高は134,317百万円(前期比153百万円増加)となり、2期連続して1,300億円台を超え過去最高となりました。
売上高は、前期からの繰越工事高が高水準でスタートしたことや、手持ち工事が順調に進捗したことなどにより、146,034百万円(前期比11,294百万円増加)と大幅に増加し、7期連続して過去最高を更新しました。
利益につきましては、上記売上高が大幅に増加したことなどにより、売上総利益は22,629百万円(前期比2,942百万円増加)、営業利益は14,858百万円(前期比2,641百万円増加)、経常利益は15,347百万円(前期比2,642百万円増加)、親会社株主に帰属する当期純利益は10,657百万円(前期比1,794百万円増加)となり、いずれも過去最高を更新いたしました。
なお、中期経営計画(2018~2021)『東鉄 3D Power Up 2021』の最終年度(2021年3月期)数値目標である「売上高1,400億円」「営業利益140億円」を、1年前倒しにて達成することができました。
新型コロナウイルス感染症の影響につきましては、当連結会計年度における当社グループの経営成績等への影響は軽微でありますが、経済への影響は翌連結会計年度の一定期間にわたり継続することが考えられ、鉄道関連分野の設備投資の抑制や先送り、民間建設投資の大幅な下振れ等による受注高の減少、感染予防対策・工期延伸等による費用の増加等が懸念されます。
セグメントの業績は、次のとおりです。なお、セグメントの売上高につきましては、外部顧客への売上高を記載しております。
(土木事業)
受注高は93,580百万円(前期比1.8%減)、売上高は89,619百万円(前期比2.9%増)となりました。
売上高のうち工事進行基準による計上額は51,326百万円であり、次期繰越高は57,165百万円となりました。
セグメント利益は8,483百万円(前期比14.7%増)となりました。
(建築事業)
受注高は40,737百万円(前期比4.8%増)、売上高は48,005百万円(前期比20.8%増)となりました。
売上高のうち工事進行基準による計上額は38,005百万円であり、次期繰越高は22,520百万円となりました。
セグメント利益は5,539百万円(前期比34.2%増)となりました。
(その他)
売上高は8,410百万円(前期比6.5%増)で、その主なものは鉄道関連製品の製造及び販売収入であります。
セグメント利益は817百万円(前期比21.0%増)となりました。
(2) 財政状態の状況
当期末の資産合計は前期比10,057百万円増加し145,349百万円となりました。これは、売上高増加に伴う受取手形・完成工事未収入金等の増加、新研修センター用地の取得による土地の増加、保線用大型機械のファイナンス・リース契約に伴うリース資産の増加、保有株式の時価下落に伴う投資有価証券の減少等によるものであります。
負債合計は、前期比4,387百万円増加し55,959百万円となりました。これは、工事量増加に伴う支払手形・工事未払金等の増加、保線用大型機械のファイナンス・リース契約に伴うリース債務の増加等によるものであります。
その結果、純資産合計は前期比5,670百万円増加し89,389百万円となりました。また、自己資本比率は、前期末の61.0%から60.7%となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況
当期末における現金及び現金同等物は、前期比597百万円増加し17,475百万円となりました。当期における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
税金等調整前当期純利益の増加等により、営業活動におけるキャッシュ・フローは前期比1,972百万円収入増加の8,060百万円の収入となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
有形固定資産の取得による支出等により、投資活動におけるキャッシュ・フローは前期比2,697百万円支出増加の4,417百万円の支出となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
配当金の支払い等により、財務活動におけるキャッシュ・フローは前期比232百万円支出減少の3,046百万円の支出となりました。
当社グループの資金の源泉は、主として国内事業に係る営業活動からのキャッシュ・フローによる収入からなります。資金の主要な使途は、材料費・外注費、設備投資等であります。
流動性については、事業活動を行う上で十分な運転資金を確保していきますが、新型コロナウイルス感染症の影響による収入の減少等、万一の緊急時における資金調達に備えるため、金融機関より随時利用可能な借入枠を確保しております。
(4) 生産、受注及び販売の状況
① 受注実績
セグメントの名称 | 前連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) (百万円) | 当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) (百万円) | ||
土木事業 | 95,298 | 93,580 | (△1.8 | % ) |
建築事業 | 38,866 | 40,737 | ( 4.8 | % ) |
合計 | 134,164 | 134,317 | ( 0.1 | % ) |
② 売上実績
セグメントの名称 | 前連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) (百万円) | 当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) (百万円) | ||
土木事業 | 87,114 | 89,619 | ( 2.9 | % ) |
建築事業 | 39,726 | 48,005 | ( 20.8 | % ) |
報告セグメント 計 | 126,841 | 137,624 | ( 8.5 | % ) |
その他 | 7,898 | 8,410 | ( 6.5 | % ) |
合計 | 134,739 | 146,034 | ( 8.4 | % ) |
(注) 1 セグメント間の受注・取引については相殺消去しております。
2 当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産の状況」は記載しておりません。
3 売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の売上高及びその割合は次のとおりであります。
相 手 先 | 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | |||
金額(百万円) | 割合(%) | 金額(百万円) | 割合(%) | ||
土木事業 | 東日本旅客鉄道㈱ | 77,242 | 57.3 | 79,472 | 54.4 |
建築事業 | 東日本旅客鉄道㈱ | 24,917 | 18.5 | 28,428 | 19.5 |
なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりであります。
建設事業における受注工事高及び完成工事高の状況
① 受注工事高、完成工事高及び次期繰越工事高
期別 | 区分 | 前期繰越 工事高 (百万円) | 当期受注 工事高 (百万円) | 計 (百万円) | 当期完成 工事高 (百万円) | 次期繰越 工事高 (百万円) |
前事業年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 土木工事 | 45,017 | 94,807 | 139,824 | 86,713 | 53,110 |
建築工事 | 30,161 | 36,593 | 66,754 | 37,275 | 29,478 | |
計 | 75,178 | 131,400 | 206,578 | 123,988 | 82,589 | |
当事業年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 土木工事 | 53,110 | 93,184 | 146,295 | 89,222 | 57,072 |
建築工事 | 29,478 | 38,400 | 67,879 | 45,608 | 22,271 | |
計 | 82,589 | 131,584 | 214,174 | 134,830 | 79,343 |
(注) 1 前期以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額が含まれております。したがいまして、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれております。
2 次期繰越工事高は(前期繰越工事高+当期受注工事高-当期完成工事高)であります。
② 受注工事高の受注方法別比率
工事受注方法は、特命と競争に大別しております。
期別 | 区分 | 特命(%) | 競争(%) | 計(%) |
前事業年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 土木工事 | 73.5 | 26.5 | 100 |
建築工事 | 47.7 | 52.3 | 100 | |
当事業年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 土木工事 | 79.7 | 20.3 | 100 |
建築工事 | 40.3 | 59.7 | 100 |
(注) 百分比は請負金額比であります。
③ 完成工事高
期別 | 区分 | 官公庁 (百万円) | 民間 (百万円) | 計 (百万円) |
前事業年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 土木工事 | 7,577 | 79,135 | 86,713 |
建築工事 | 3,097 | 34,178 | 37,275 | |
計 | 10,674 | 113,313 | 123,988 | |
当事業年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 土木工事 | 8,175 | 81,047 | 89,222 |
建築工事 | 1,608 | 43,999 | 45,608 | |
計 | 9,784 | 125,046 | 134,830 |
(注) 1 完成工事のうち主なものは、次のとおりであります。
前事業年度
東日本旅客鉄道㈱ | 広町社宅跡地暫定開発新築工事 |
東日本旅客鉄道㈱ | 東神奈川現業事務所(仮称)新築工事 |
東日本旅客鉄道㈱ | 常磐線神立駅橋上化及び自由通路外新設他工事 |
東日本旅客鉄道㈱ | 榎戸駅橋上駅舎新設他(その2駅舎本体)工事 |
宮城県 気仙沼市 | (仮称)南町海岸公共・公益施設新築建築本体工事 |
当事業年度
東日本旅客鉄道㈱ | 常磐線竜田・浪江間土木構造物災害復旧工事(Ⅱ工区) |
群馬県 高崎市 | 高崎芸術劇場建設工事 |
大京・リゾン共同企業体 | ライオンズ朝霞ベルポートレジデンス新築工事 |
日本ホテル㈱ | 五反田駅東口ビル(仮称)新築工事(A2-1) |
日本ホテル㈱ | 秋葉原ホテル新築A2工事 |
2 完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりであります。
前事業年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 当事業年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | ||||
相手先 | 金額 (百万円) | 割合(%) | 相手先 | 金額 (百万円) | 割合(%) |
東日本旅客鉄道㈱ | 102,057 | 82.3 | 東日本旅客鉄道㈱ | 107,421 | 79.7 |
④ 次期繰越工事高(2020年3月31日現在)
区分 | 官公庁(百万円) | 民間(百万円) | 計(百万円) |
土木工事 | 17,591 | 39,480 | 57,072 |
建築工事 | 147 | 22,123 | 22,271 |
計 | 17,739 | 61,604 | 79,343 |
(注) 次期繰越工事のうち主なものは、次のとおりであります。
東京都 財務局 | 谷沢川分水路工事 | 2023年9月完成予定 |
東京都 財務局 | 境川金森調節池工事その2 | 2024年5月完成予定 |
東日本旅客鉄道㈱ | 東北線東京・秋葉原間外利用高架橋その他耐震補強工事 | 2023年3月完成予定 |
鉄道・運輸機構 大阪支社 | 北陸新幹線、小松軌道敷設他 | 2023年1月完成予定 |
東日本旅客鉄道㈱ | 稲田堤駅橋上本屋及び自由通路新設その他(その2)工事 | 2023年9月完成予定 |
(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。
この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
a.工事原価総額
完成工事高及び完成工事原価の計上基準は、当連結会計年度末までの進捗部分について成果の確実性が認められる工事については工事進行基準(工事の進捗率の見積りは原価比例法)を、その他の工事については工事完成基準を適用しております。工事進行基準による完成工事高の計上においては工事原価総額の見積りにより収益に影響を与えます。工事原価総額の見積りは当初は実行予算によって行います。実行予算作成時には、将来の気象条件や作成時点で入手可能な情報に基づいた施工条件や資機材価格について仮定を設定し、作業効率等を勘案して工種毎に詳細に積み上げることによって工事原価総額を見積ります。工事着工後は作業所において実際の発生原価と対比して適時・適切に工事原価総額の見直しを行っており、支店・関係本部においては作業所からの管理月報等による報告書に基づく見直し後の工事原価総額について検討・分析を実施しており、計上額が妥当であることを検証しております。このように気象条件、施工条件、資機材価格、作業効率等さまざまな仮定要素があり、それらについて適時・適切に見積りを行っておりますが、将来の工事原価総額は見積金額と異なる可能性があります。なお、新型コロナウイルス感染症は2021年3月期の一定期間にわたり継続すると見込まれるものの、2020年4月の緊急事態宣言の発出後の当社グループの工事の状況から判断し、当連結会計年度末時点で受注・着工済の工事については、工事の中断や工期の大幅な延長といった新型コロナウイルス感染症に起因する工事原価総額の重要な増加要因はないとの仮定に基づき、工事原価総額を見積もっております。
b.工事損失引当金
受注工事に係る将来の損失に備えるため、当連結会計年度末における手持工事のうち損失の発生が見込まれ、かつ、その金額を合理的に見積ることができる工事について、損失見込額を計上しております。損失見込額の算定に際しては現在入手可能な情報(発注者との条件、気象条件、施工条件、資機材価格、作業効率等)から過去の実績を基礎として、作業所、支店、関係本部において精査することにより算定しております。また引当金額の変更については発注者との変更契約の締結、専門工事業者との外注契約の締結等による確実な原価低減が見込まれる場合に行っております。このようにさまざまな仮定要素があり、それらについて適時・適切に見積りを行っておりますが、将来の損益は見積金額と異なる可能性があります。