有価証券報告書-第82期(2024/04/01-2025/03/31)
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績の状況
当期におけるわが国の経済は、消費者マインドが弱含んでいるものの、雇用・所得環境の改善の動きが続く中で、設備投資や輸出等と共に持ち直しの動きがあり、緩やかに回復しておりますが、米国の通商政策等による不透明感がみられました。
建設業界においては、政府建設投資は前年度を上回り、民間住宅投資は前年度比微増、非住宅建設投資は前年度比増加となり、建設投資全体としては前年度を上回る見通しとなりました。
このような状況のなかで、当社グループの得意とする鉄道分野につきましては、輸送量は緩やかに回復しており、設備投資の抑制や先送りなども緩和されつつあります。当社グループの社会的使命である「鉄道の安全・安定輸送の確保」のため、大規模地震に備えた耐震補強対策、激甚化する自然災害への対応等、社会インフラの維持に必要な工事を継続してまいりました。
当期より、当社グループは5ヶ年中期経営計画『アクションプラン2029』を始動いたしました。中期経営計画における成長ストーリーとして「JR東日本および公営・民間鉄道」「鉄道近接工事など鉄道関連分野」「公共事業体および民間事業者」の「3つの重点事業領域」を中心とした社会課題の解決に寄与する事業拡大を進めております。
「JR東日本および公営・民間鉄道」においては、JR東日本のプロジェクト関連工事を中心として、安全対策としての重要施策である大規模地震対策工事、ホームドア整備に伴うホーム改良工事、駅設備の改良工事などの安全施工に取り組むほか、利便性を高める駅の橋上化工事や駅に隣接する商業施設やオフィスビル建設などの大型工事にも取り組んでまいりました。公営・民間鉄道においては、各鉄道事業者においてもメンテナンス体制の維持が経営課題になりつつあるなか、当社が長年の鉄道工事で培った技術力、省人化のための大型保線機械を活用した施工ノウハウの提供等を通じて、交通インフラの安全・安定輸送に貢献してまいりました。
「鉄道近接工事など鉄道関連分野」においては、各地の道路等の線路交差部の長寿命化対応ニーズの高まりを捉え、当社グループが持つ特殊資格と技術力を活かして、道路橋の長寿命化対応工事や線路下の推進工事など、難易度の高い工事に対応してまいりました。
「公共事業体および民間事業者」においては、公共事業体が発注する道路等のインフラ関連工事や、民間事業者が保有する土木・建築構造物の長寿命化対応工事等の需要が拡大しており、鉄道工事で磨いた高付加価値な施工力を活かし、社会インフラ全体の課題解決に寄与してまいりました。
また、中期経営計画の基本戦略として、5つの戦略「安全戦略」「受注戦略」「人材戦略」「生産性向上戦略」「ESG戦略」を軸とした取組みを推進しております。
「安全戦略」においては、「安全はすべてに優先する」という経営理念のもと、お客様・地域社会・協力会社・従業員の「究極の安全と安心」を追求し、信頼を確保することを目指し、ITを活用した安全研修等、様々な施策を実施してまいりました。
「受注戦略」については、前述の「3つの重点事業領域」を中心に積極的に展開してまいりました。
「生産性向上戦略」においては、ホームドア工事に使用される覆工板のさらなる改良、将来予定されている新幹線大規模改修工事に対応した足場等の技術開発、駅舎の改修工事では無溶接工法のさらなる進化に取り組み、安全性、生産性の向上を図り、施工力を強化してまいりました。また、国内の人口減少や建設業を取り巻く環境が厳しさを増すなか、施工力確保のためDX推進室を中心に戦略的に推進し、建設現場におけるデジタル化を強力に推し進めております。東鉄DXオフィスカー(T-DOC)の導入や、3Dスキャナーおよび点群データの活用など、IT・ICT技術を活用し省力化と安全性向上を実現しております。
「人材戦略」においては、「人材力の拡充」の取り組みをさらに推進しております。優秀な人材の確保と働き方満足度の向上に向けて、初任給の引き上げや継続的かつ適正なベースアップ、若手社員の早期抜擢、人事異動における社内公募制の導入、女性管理職・幹部候補の育成、シニア社員の処遇改善、ワークライフバランスの向上のための子育て世代を支援する制度拡充等、各種施策に取り組んでまいりました。健康経営の取組みの一環として、誰もが働きやすい職場環境を整備し、生活習慣改善の支援を目的に「運動・食事・禁煙」をテーマにしたイベントなどを実施し、健康経営優良法人(大規模法人部門)の認定を継続的に頂いております。今後も人的資本への投資を積極的に推進してまいります。
「ESG戦略」においては、ステークホルダーから信頼される「誠実な経営」を推進し、「SDGs(持続可能な開発目標)」と「ESG」を事業活動に関連付け、事業活動を通じて当社グループの「社会的使命」を果たすことを方針としております。このプロセスを通じ、「環境(E)」への対応では、TCFD提言に沿ったCO₂削減への取組みについて、2050年度に実質ネットゼロとする目標に向けて、ZEB・ZEHの事業を推進しております。また、環境問題に対する意識向上のため、eco検定の取得に多くの社員が取り組んでおります。「社会(S)」への対応では、協力会社とのパートナーシップ強化により強固な施工体制の維持向上を図ることを目指し、人権デューデリジェンスを継続的に実施し、サプライチェーンの管理・モニタリングを実施いたしました。「企業統治(G)」への対応では、当社グループ全体におけるコンプライアンスの徹底のため、社外取締役による研修実施や内部統制監査の充実を図りました。また、政策保有株については、経営戦略上の重要性や取引先との良好かつ円滑な関係構築・維持・強化等の必要性を総合的に勘案しながら、保有意義を検証しつつ売却を進めております。
以上の5つの戦略に基づく取り組みを推進しつつ、当社と当社グループ会社および協力会社による「三位一体の経営」を推進してまいりました。グループ会社への支援では、人事交流や資機材の共同購入、共同使用を促進し、当社との「一体経営」を強化しております。協力会社への支援では、協力会社社員の賃金水準向上の支援等を通じて施工体制の維持・拡充を図りつつ、採用活動支援や東鉄総合研修センターを活用した社員育成など経営支援にも取り組み、東鉄工業グループの総合力の向上を図ってまいりました。これらの取組みを推進することで、当社グループの「持続的な成長」と「企業価値の向上」、そしてステークホルダーとの「共通価値の創造」に取り組んでまいりました。
以上の結果、当期の業績につきましては、受注高は149,454百万円(前期比4,783百万円減少)、売上高は160,047百万円(前期比18,201百万円増加)となりました。
利益につきましては、売上総利益は24,666百万円(前期比4,507百万円増加)、営業利益は15,526百万円(前期比3,774百万円増加)、経常利益は16,035百万円(前期比3,929百万円増加)、親会社株主に帰属する当期純利益は11,564百万円(前期比3,267百万円増加)となりました。
セグメントの業績は、次のとおりです。なお、セグメントの売上高につきましては、外部顧客への売上高を記載しております。
(土木事業)
受注高は100,504百万円(前期比9.9%減)、売上高は100,837百万円(前期比14.3%増)となり、次期繰越高は83,082百万円となりました。
セグメント利益は8,573百万円(前期比43.6%増)となりました。
(建築事業)
受注高は48,949百万円(前期比14.8%増)、売上高は49,668百万円(前期比9.8%増)となり、次期繰越高は33,533百万円となりました。
セグメント利益は5,428百万円(前期比24.3%増)となりました。
(その他)
売上高は9,542百万円(前期比13.8%増)で、その主なものは鉄道関連製品の製造及び販売収入であります。
セグメント利益は1,504百万円(前期比8.2%増)となりました。
(2) 財政状態の状況
当期末の資産合計は前期比12,997百万円増加し181,115百万円となりました。これは、売上高増加に伴う受取手形・完成工事未収入金等の増加等によるものであります。
負債合計は、前期比3,703百万円増加し60,338百万円となりました。これは、支払手形・工事未払金等の増加等によるものであります。
その結果、純資産合計は前期比9,293百万円増加し120,777百万円となりました。また、自己資本比率は、前期末の65.7%から66.0%となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況
当期末における現金及び現金同等物は、前期比665百万円減少し15,714百万円となりました。当期における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
仕入債務の増加額の減少等により、営業活動におけるキャッシュ・フローは前期比678百万円収入減少の4,160百万円の収入となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
有形固定資産の取得による支出の減少等により、投資活動におけるキャッシュ・フローは前期比2,433百万円支出減少の1,247百万円の支出となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
短期借入金の返済による支出の増加等により、財務活動におけるキャッシュ・フローは前期比5,186百万円支出増加の3,579百万円の支出となりました。
当社グループの資金の源泉は、主として営業活動からのキャッシュ・フロー及び金融機関からの借入等からなります。資金の主要な使途は、材料費・外注費、設備投資等であります。
流動性については、事業活動を行う上で十分な運転資金を確保していきますが、万一の緊急時における資金調達に備えるため、金融機関より随時利用可能な借入枠を確保しております。
(4) 生産、受注及び販売の状況
① 受注実績
② 売上実績
(注) 1 セグメント間の受注・取引については相殺消去しております。
2 当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産の状況」は記載しておりません。
3 売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の売上高及びその割合は次のとおりであります。
なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりであります。
建設事業における受注工事高及び完成工事高の状況
① 受注工事高、完成工事高及び次期繰越工事高
(注) 1 前期以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額が含まれております。したがいまして、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれております。
2 次期繰越工事高は(前期繰越工事高+当期受注工事高-当期完成工事高)であります。
② 受注工事高の受注方法別比率
工事受注方法は、特命と競争に大別しております。
(注) 百分比は請負金額比であります。
③ 完成工事高
(注) 1 完成工事のうち主なものは、次のとおりであります。
前事業年度
当事業年度
2 完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりであります。
④ 次期繰越工事高(2025年3月31日現在)
(注) 次期繰越工事のうち主なものは、次のとおりであります。
(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。
この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
a.工事収益総額及び工事原価総額
一定の期間にわたり履行義務が充足される工事契約については、工期がごく短い工事を除き、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、当該進捗度に基づき収益を一定の期間にわたり認識しております。進捗度の見積りは、契約ごとに、期末日までに発生した原価の累計額が、工事原価総額に占める割合(インプット法)に基づいて算定しております。
工事収益総額のうち、契約前に発注者の工事指示書等に基づき作業を行った場合、未契約金額については発注者からの工事指示書等の内容から、見積りによって工事収益総額を算定しております。
また、工事原価総額の見積りは、工事ごとに将来の気象条件や作成時点で入手可能な情報に基づいた施工条件や資機材価格について仮定を設定し、作業効率等を勘案して工種ごとに詳細に積み上げることによって見積っております。
工事収益総額及び工事原価総額の見積りは、新たな合意による工事契約の変更や工種並びに工法の見直し、新たな事象の発生等の状況変化により変動する可能性があります。その結果、工事収益総額及び工事原価総額は見積金額と異なる場合があり、翌年度の連結財務諸表の一定の期間にわたり履行義務が充足される工事契約に係る完成工事高に影響を与える可能性があります。
b.工事損失引当金
受注工事に係る将来の損失に備えるため、当連結会計年度末における手持工事のうち損失の発生が見込まれ、かつ、その金額を合理的に見積ることができる工事について、損失見込額を計上しております。損失見込額の算定に際しては現在入手可能な情報(発注者との条件、気象条件、施工条件、資機材価格、作業効率等)から過去の実績を基礎として、作業所、支店、関係本部において精査することにより算定しております。また引当金額の変更については発注者との変更契約の締結、協力会社との外注契約の締結等による原価変動が見込まれる場合に行っております。このようにさまざまな仮定要素があり、それらについて適時・適切に見積りを行っておりますが、将来の損益は見積金額と異なる可能性があります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績の状況
当期におけるわが国の経済は、消費者マインドが弱含んでいるものの、雇用・所得環境の改善の動きが続く中で、設備投資や輸出等と共に持ち直しの動きがあり、緩やかに回復しておりますが、米国の通商政策等による不透明感がみられました。
建設業界においては、政府建設投資は前年度を上回り、民間住宅投資は前年度比微増、非住宅建設投資は前年度比増加となり、建設投資全体としては前年度を上回る見通しとなりました。
このような状況のなかで、当社グループの得意とする鉄道分野につきましては、輸送量は緩やかに回復しており、設備投資の抑制や先送りなども緩和されつつあります。当社グループの社会的使命である「鉄道の安全・安定輸送の確保」のため、大規模地震に備えた耐震補強対策、激甚化する自然災害への対応等、社会インフラの維持に必要な工事を継続してまいりました。
当期より、当社グループは5ヶ年中期経営計画『アクションプラン2029』を始動いたしました。中期経営計画における成長ストーリーとして「JR東日本および公営・民間鉄道」「鉄道近接工事など鉄道関連分野」「公共事業体および民間事業者」の「3つの重点事業領域」を中心とした社会課題の解決に寄与する事業拡大を進めております。
「JR東日本および公営・民間鉄道」においては、JR東日本のプロジェクト関連工事を中心として、安全対策としての重要施策である大規模地震対策工事、ホームドア整備に伴うホーム改良工事、駅設備の改良工事などの安全施工に取り組むほか、利便性を高める駅の橋上化工事や駅に隣接する商業施設やオフィスビル建設などの大型工事にも取り組んでまいりました。公営・民間鉄道においては、各鉄道事業者においてもメンテナンス体制の維持が経営課題になりつつあるなか、当社が長年の鉄道工事で培った技術力、省人化のための大型保線機械を活用した施工ノウハウの提供等を通じて、交通インフラの安全・安定輸送に貢献してまいりました。
「鉄道近接工事など鉄道関連分野」においては、各地の道路等の線路交差部の長寿命化対応ニーズの高まりを捉え、当社グループが持つ特殊資格と技術力を活かして、道路橋の長寿命化対応工事や線路下の推進工事など、難易度の高い工事に対応してまいりました。
「公共事業体および民間事業者」においては、公共事業体が発注する道路等のインフラ関連工事や、民間事業者が保有する土木・建築構造物の長寿命化対応工事等の需要が拡大しており、鉄道工事で磨いた高付加価値な施工力を活かし、社会インフラ全体の課題解決に寄与してまいりました。
また、中期経営計画の基本戦略として、5つの戦略「安全戦略」「受注戦略」「人材戦略」「生産性向上戦略」「ESG戦略」を軸とした取組みを推進しております。
「安全戦略」においては、「安全はすべてに優先する」という経営理念のもと、お客様・地域社会・協力会社・従業員の「究極の安全と安心」を追求し、信頼を確保することを目指し、ITを活用した安全研修等、様々な施策を実施してまいりました。
「受注戦略」については、前述の「3つの重点事業領域」を中心に積極的に展開してまいりました。
「生産性向上戦略」においては、ホームドア工事に使用される覆工板のさらなる改良、将来予定されている新幹線大規模改修工事に対応した足場等の技術開発、駅舎の改修工事では無溶接工法のさらなる進化に取り組み、安全性、生産性の向上を図り、施工力を強化してまいりました。また、国内の人口減少や建設業を取り巻く環境が厳しさを増すなか、施工力確保のためDX推進室を中心に戦略的に推進し、建設現場におけるデジタル化を強力に推し進めております。東鉄DXオフィスカー(T-DOC)の導入や、3Dスキャナーおよび点群データの活用など、IT・ICT技術を活用し省力化と安全性向上を実現しております。
「人材戦略」においては、「人材力の拡充」の取り組みをさらに推進しております。優秀な人材の確保と働き方満足度の向上に向けて、初任給の引き上げや継続的かつ適正なベースアップ、若手社員の早期抜擢、人事異動における社内公募制の導入、女性管理職・幹部候補の育成、シニア社員の処遇改善、ワークライフバランスの向上のための子育て世代を支援する制度拡充等、各種施策に取り組んでまいりました。健康経営の取組みの一環として、誰もが働きやすい職場環境を整備し、生活習慣改善の支援を目的に「運動・食事・禁煙」をテーマにしたイベントなどを実施し、健康経営優良法人(大規模法人部門)の認定を継続的に頂いております。今後も人的資本への投資を積極的に推進してまいります。
「ESG戦略」においては、ステークホルダーから信頼される「誠実な経営」を推進し、「SDGs(持続可能な開発目標)」と「ESG」を事業活動に関連付け、事業活動を通じて当社グループの「社会的使命」を果たすことを方針としております。このプロセスを通じ、「環境(E)」への対応では、TCFD提言に沿ったCO₂削減への取組みについて、2050年度に実質ネットゼロとする目標に向けて、ZEB・ZEHの事業を推進しております。また、環境問題に対する意識向上のため、eco検定の取得に多くの社員が取り組んでおります。「社会(S)」への対応では、協力会社とのパートナーシップ強化により強固な施工体制の維持向上を図ることを目指し、人権デューデリジェンスを継続的に実施し、サプライチェーンの管理・モニタリングを実施いたしました。「企業統治(G)」への対応では、当社グループ全体におけるコンプライアンスの徹底のため、社外取締役による研修実施や内部統制監査の充実を図りました。また、政策保有株については、経営戦略上の重要性や取引先との良好かつ円滑な関係構築・維持・強化等の必要性を総合的に勘案しながら、保有意義を検証しつつ売却を進めております。
以上の5つの戦略に基づく取り組みを推進しつつ、当社と当社グループ会社および協力会社による「三位一体の経営」を推進してまいりました。グループ会社への支援では、人事交流や資機材の共同購入、共同使用を促進し、当社との「一体経営」を強化しております。協力会社への支援では、協力会社社員の賃金水準向上の支援等を通じて施工体制の維持・拡充を図りつつ、採用活動支援や東鉄総合研修センターを活用した社員育成など経営支援にも取り組み、東鉄工業グループの総合力の向上を図ってまいりました。これらの取組みを推進することで、当社グループの「持続的な成長」と「企業価値の向上」、そしてステークホルダーとの「共通価値の創造」に取り組んでまいりました。
以上の結果、当期の業績につきましては、受注高は149,454百万円(前期比4,783百万円減少)、売上高は160,047百万円(前期比18,201百万円増加)となりました。
利益につきましては、売上総利益は24,666百万円(前期比4,507百万円増加)、営業利益は15,526百万円(前期比3,774百万円増加)、経常利益は16,035百万円(前期比3,929百万円増加)、親会社株主に帰属する当期純利益は11,564百万円(前期比3,267百万円増加)となりました。
セグメントの業績は、次のとおりです。なお、セグメントの売上高につきましては、外部顧客への売上高を記載しております。
(土木事業)
受注高は100,504百万円(前期比9.9%減)、売上高は100,837百万円(前期比14.3%増)となり、次期繰越高は83,082百万円となりました。
セグメント利益は8,573百万円(前期比43.6%増)となりました。
(建築事業)
受注高は48,949百万円(前期比14.8%増)、売上高は49,668百万円(前期比9.8%増)となり、次期繰越高は33,533百万円となりました。
セグメント利益は5,428百万円(前期比24.3%増)となりました。
(その他)
売上高は9,542百万円(前期比13.8%増)で、その主なものは鉄道関連製品の製造及び販売収入であります。
セグメント利益は1,504百万円(前期比8.2%増)となりました。
(2) 財政状態の状況
当期末の資産合計は前期比12,997百万円増加し181,115百万円となりました。これは、売上高増加に伴う受取手形・完成工事未収入金等の増加等によるものであります。
負債合計は、前期比3,703百万円増加し60,338百万円となりました。これは、支払手形・工事未払金等の増加等によるものであります。
その結果、純資産合計は前期比9,293百万円増加し120,777百万円となりました。また、自己資本比率は、前期末の65.7%から66.0%となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況
当期末における現金及び現金同等物は、前期比665百万円減少し15,714百万円となりました。当期における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
仕入債務の増加額の減少等により、営業活動におけるキャッシュ・フローは前期比678百万円収入減少の4,160百万円の収入となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
有形固定資産の取得による支出の減少等により、投資活動におけるキャッシュ・フローは前期比2,433百万円支出減少の1,247百万円の支出となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
短期借入金の返済による支出の増加等により、財務活動におけるキャッシュ・フローは前期比5,186百万円支出増加の3,579百万円の支出となりました。
当社グループの資金の源泉は、主として営業活動からのキャッシュ・フロー及び金融機関からの借入等からなります。資金の主要な使途は、材料費・外注費、設備投資等であります。
流動性については、事業活動を行う上で十分な運転資金を確保していきますが、万一の緊急時における資金調達に備えるため、金融機関より随時利用可能な借入枠を確保しております。
(4) 生産、受注及び販売の状況
① 受注実績
セグメントの名称 | 前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) (百万円) | 当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) (百万円) | ||
土木事業 | 111,586 | 100,504 | ( △9.9 | %) |
建築事業 | 42,651 | 48,949 | ( 14.8 | %) |
合計 | 154,237 | 149,454 | ( △3.1 | %) |
② 売上実績
セグメントの名称 | 前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) (百万円) | 当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) (百万円) | ||
土木事業 | 88,212 | 100,837 | ( 14.3 | %) |
建築事業 | 45,247 | 49,668 | ( 9.8 | %) |
報告セグメント 計 | 133,460 | 150,505 | ( 12.8 | %) |
その他 | 8,385 | 9,542 | ( 13.8 | %) |
合計 | 141,845 | 160,047 | ( 12.8 | %) |
(注) 1 セグメント間の受注・取引については相殺消去しております。
2 当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産の状況」は記載しておりません。
3 売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の売上高及びその割合は次のとおりであります。
相 手 先 | 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | |||
金額(百万円) | 割合(%) | 金額(百万円) | 割合(%) | ||
土木事業 | 東日本旅客鉄道㈱ | 74,214 | 52.3 | 85,388 | 53.4 |
建築事業 | 東日本旅客鉄道㈱ | 25,311 | 17.8 | 25,326 | 15.8 |
なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりであります。
建設事業における受注工事高及び完成工事高の状況
① 受注工事高、完成工事高及び次期繰越工事高
期別 | 区分 | 前期繰越 工事高 (百万円) | 当期受注 工事高 (百万円) | 計 (百万円) | 当期完成 工事高 (百万円) | 次期繰越 工事高 (百万円) |
前事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) | 土木工事 | 60,040 | 110,622 | 170,663 | 87,248 | 83,415 |
建築工事 | 36,381 | 40,233 | 76,614 | 43,101 | 33,512 | |
計 | 96,422 | 150,856 | 247,278 | 130,350 | 116,927 | |
当事業年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) | 土木工事 | 83,415 | 99,389 | 182,804 | 99,722 | 83,082 |
建築工事 | 33,512 | 46,291 | 79,804 | 46,821 | 32,982 | |
計 | 116,927 | 145,681 | 262,609 | 146,543 | 116,065 |
(注) 1 前期以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額が含まれております。したがいまして、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれております。
2 次期繰越工事高は(前期繰越工事高+当期受注工事高-当期完成工事高)であります。
② 受注工事高の受注方法別比率
工事受注方法は、特命と競争に大別しております。
期別 | 区分 | 特命(%) | 競争(%) | 計(%) |
前事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) | 土木工事 | 67.2 | 32.8 | 100 |
建築工事 | 32.6 | 67.4 | 100 | |
当事業年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) | 土木工事 | 65.0 | 35.0 | 100 |
建築工事 | 46.7 | 53.3 | 100 |
(注) 百分比は請負金額比であります。
③ 完成工事高
期別 | 区分 | 官公庁 (百万円) | 民間 (百万円) | 計 (百万円) |
前事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) | 土木工事 | 10,006 | 77,242 | 87,248 |
建築工事 | 1,026 | 42,075 | 43,101 | |
計 | 11,032 | 119,317 | 130,350 | |
当事業年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) | 土木工事 | 10,218 | 89,503 | 99,722 |
建築工事 | 1,661 | 45,159 | 46,821 | |
計 | 11,880 | 134,663 | 146,543 |
(注) 1 完成工事のうち主なものは、次のとおりであります。
前事業年度
㈱大京 | (仮称)ライオンズ南千住新築工事 |
日本ホテル㈱ | 幕張豊砂駅前開発本体工事 A2 |
ナイス㈱ | (仮称)長町6丁目計画 新築工事 |
東日本旅客鉄道㈱ | 幕張豊砂駅前開発 本体工事 A1 |
トーセイ㈱ | (仮称)築地ホテル計画新築工事(設計・施工) |
当事業年度
ナイス㈱ | (仮称)足立区西加平2丁目計画新築工事 |
宮城県 東松島市 | 令和5年度 地域連携販売力強化施設等新築工事 |
東日本旅客鉄道㈱ | 2024年度東京エリア土木構造物修繕工事 |
東日本旅客鉄道㈱ | 海浜幕張駅本屋2号(新改札)ほか4棟新築他工事 |
㈱千葉ステーションビル | 海浜幕張駅高架下Aゾーン新築工事 |
2 完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりであります。
前事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) | 当事業年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) | ||||
相手先 | 金額 (百万円) | 割合(%) | 相手先 | 金額 (百万円) | 割合(%) |
東日本旅客鉄道㈱ | 99,525 | 76.4 | 東日本旅客鉄道㈱ | 110,697 | 75.5 |
④ 次期繰越工事高(2025年3月31日現在)
区分 | 官公庁(百万円) | 民間(百万円) | 計(百万円) |
土木工事 | 9,884 | 73,197 | 83,082 |
建築工事 | 554 | 32,428 | 32,982 |
計 | 10,438 | 105,626 | 116,065 |
(注) 次期繰越工事のうち主なものは、次のとおりであります。
東日本旅客鉄道㈱ | 大宮・小山間第2大成橋りょう外橋脚補強その他工事 | 2029年3月完成予定 |
東日本旅客鉄道㈱ | 高崎支社管内上越新幹線曙橋りょう外高架橋耐震補強工事 | 2029年3月完成予定 |
東日本旅客鉄道㈱ | 東北本部管内新幹線ラーメン橋台耐震補強他工事(第4工区) | 2029年3月完成予定 |
東日本旅客鉄道㈱ | 品川開発プロジェクト(第1期)4-2A街区新築工事 | 2027年1月完成予定 |
東日本旅客鉄道㈱ | 南古谷駅橋上本屋新設その他工事 | 2028年7月完成予定 |
(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。
この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
a.工事収益総額及び工事原価総額
一定の期間にわたり履行義務が充足される工事契約については、工期がごく短い工事を除き、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、当該進捗度に基づき収益を一定の期間にわたり認識しております。進捗度の見積りは、契約ごとに、期末日までに発生した原価の累計額が、工事原価総額に占める割合(インプット法)に基づいて算定しております。
工事収益総額のうち、契約前に発注者の工事指示書等に基づき作業を行った場合、未契約金額については発注者からの工事指示書等の内容から、見積りによって工事収益総額を算定しております。
また、工事原価総額の見積りは、工事ごとに将来の気象条件や作成時点で入手可能な情報に基づいた施工条件や資機材価格について仮定を設定し、作業効率等を勘案して工種ごとに詳細に積み上げることによって見積っております。
工事収益総額及び工事原価総額の見積りは、新たな合意による工事契約の変更や工種並びに工法の見直し、新たな事象の発生等の状況変化により変動する可能性があります。その結果、工事収益総額及び工事原価総額は見積金額と異なる場合があり、翌年度の連結財務諸表の一定の期間にわたり履行義務が充足される工事契約に係る完成工事高に影響を与える可能性があります。
b.工事損失引当金
受注工事に係る将来の損失に備えるため、当連結会計年度末における手持工事のうち損失の発生が見込まれ、かつ、その金額を合理的に見積ることができる工事について、損失見込額を計上しております。損失見込額の算定に際しては現在入手可能な情報(発注者との条件、気象条件、施工条件、資機材価格、作業効率等)から過去の実績を基礎として、作業所、支店、関係本部において精査することにより算定しております。また引当金額の変更については発注者との変更契約の締結、協力会社との外注契約の締結等による原価変動が見込まれる場合に行っております。このようにさまざまな仮定要素があり、それらについて適時・適切に見積りを行っておりますが、将来の損益は見積金額と異なる可能性があります。