有価証券報告書-第87期(平成26年4月1日-平成27年3月31日)

【提出】
2015/06/25 14:47
【資料】
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【項目】
127項目

財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(平成27年6月25日)現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。一般に公正妥当と認められる連結財務諸表の作成にあたっては、期末日における資産及び負債の報告額や、報告対象期間中の収益及び費用の報告額に影響する判断及び見積りを行うことが要求されます。当社グループの連結財務諸表作成にあたっては、過去実績や状況に応じて合理的と考えられる様々な要因に基づいて判断及び見積りを行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合もあります。
当社は、特に以下の重要な会計方針の適用において使用される当社の判断と見積りが、当社グループの連結財務諸表の報告額に重要な影響を及ぼすと考えております。
① 貸倒引当金
当社グループでは、債権の貸倒れによる損失に備えるため、貸倒懸念債権等特定の債権については、保守的に見積った回収不能見込額を貸倒引当金として計上しております。
② 完成工事補償引当金
当社グループでは、主として、過去の経験割合に基づく一定の算定基準により、完成工事に係わる瑕疵担保等の費用を見積り、完成工事補償引当金を計上しております。
③ 工事損失引当金
当社グループでは、当連結会計年度末において損失の発生が見込まれる未引渡工事に係る将来の損失に備えるため、合理的に見積もった損失見込み額を工事損失引当金として計上しております。
④ 退職給付に係る負債
当社グループでは、従業員の退職給付に備えるため、見積りを反映した各種の仮定に基づく数理計算により算出された退職給付債務及び年金資産の見込額に基づき退職給付に係る負債の計上を行っております。
⑤ 収益の認識
当社グループでは、当連結会計年度末までの進捗部分について成果の確実性が認められる工事については、工事進行基準(工事進捗率の見積りは原価比例法)により完成工事高を計上しております。
⑥ 工事原価の見積り
当社グループでは、工事契約において定められている目的物の引渡しを行った連結会計年度末において確定していない費用については、次期以降に発生する費用を見積り、工事原価として計上しております。
⑦ 繰延税金資産
当社グループでは、繰延税金資産の回収可能性を評価するにあたり、将来の課税所得を合理的に見積り、将来の税金負担を軽減する効果を有すると判断した繰延税金資産を計上しております。
(2) 当連結会計年度の経営成績の分析
① 概要
当連結会計年度における当社グループを取り巻く事業環境は、米国経済の回復基調が保たれる一方で、世界各地域の景気低迷と地政学的リスクが続く中、年度半ばからの原油価格急落の影響により不透明感が増してきています。各種の設備投資計画では、中長期的に予測されるエネルギー需要増への対応と足もとの不透明感が交錯し、個々の案件の推進にも慎重さが出始めています。一方、国内経済は金融政策と円安、さらには原油安や株高に伴うプラス効果が景気の下支えとなり、景気持ち直しの傾向は強まっているものの、消費税増税後の落ち込みからの回復ペースは弱く、総じて一進一退の動きとなっています。
このような状況下、当社グループは中期経営計画の諸施策に沿って、従来分野への取り組みを継続、オフショア及びアップストリーム分野での事業展開、当社独自技術による水素サプライチェーンの構築や太陽光・太陽熱発電の推進など、新エネルギーや再生可能エネルギーを含む新たな分野への進出に取り組んでいます。
工事の遂行については、海外ではオーストラリアと米国、ロシアでのLNG(液化天然ガス)プラント、ベトナムやカタール、ベネズエラでの石油関連プラント、モンゴルでの新国際空港、国内ではLNG受入基地や太陽光発電設備工事などが順調に進みました。
これらの結果、当連結会計年度の連結受注工事高は 7,467億91百万円(前連結会計年度比 26.6%増)、連結受注残高は 1兆4,169億1百万円(同 32.1%増)となりました。また、連結完成工事高については 4,809億79百万円(同 7.8%増)、営業利益は 214億66百万円(同 1.8%増)、経常利益は 222億71百万円(同 2.5%減)、当期純利益は 110億29百万円(同 18.0%減)となりました。
② 受注工事高/完成工事高
当連結会計年度の受注工事高は、海外 6,358億1百万円(前連結会計年度比 31.0%増)、国内 1,109億89百万円(同 6.0%増)、合計 7,467億91百万円(同 26.6%増)を獲得し、完成工事高は、海外 3,676億38百万円(同 15.8%増)、国内 1,133億41百万円(同 12.0%減)、合計 4,809億79百万円(同 7.8%増)となりました。
当社の主たる事業セグメントであるエンジニアリング事業の概況は、次のとおりです。
a LNG・その他ガス分野
海外では、オーストラリア、米国、ロシアでのLNGプラントのEPC(設計・調達・建設)業務、またインドネシア、モザンビーク、カナダ及び米国でのLNGプラントのFEED(基本設計)業務を鋭意遂行中です。一方、カタールでは、当社が建設したLNG・ガス処理プラントの改造・改修案件のEPCm(設計・調達・建設管理)業務を現地グループ会社が継続して受注・遂行中です。国内では、LNG受入基地案件の内、2件を完工し、1件の建設工事を遂行するほか、既設プラントの改造等に伴う検討業務及び工事案件を引き続き遂行しています。
LNG・その他ガス分野は当社の重点分野であり、今後とも国内・海外、陸上・海上、在来ガス・非在来ガスの全てについて注力していきます。
当連結会計年度の受注工事高は 6,004億18百万円(前連結会計年度比 33.1%増)となり、完成工事高は 2,959億21百万円(同 18.1%増)となりました。
b 石油・石油化学・ガス化学分野
海外では、マレーシアの製油所向けに受注した残油流動接触分解装置のEPCC(設計・調達・建設・試運転)業務を開始するとともに、ベトナムでの製油所・石油化学コンプレックス、カタールでの製油所のEPC業務及びベネズエラでの重質油処理設備のEPsCm(設計・調達支援・建設管理)業務などを鋭意遂行中です。また、シンガポールのグループ会社が、アジア地域の石油・石油化学等ダウンストリーム案件に関わるプロジェクトマネジ
メント業務を長期契約にて遂行中です。
国内では、石油顧客各社向けに、国土強靭化基本法に関連する既設設備改造工事や石油化学製品製造装置、既設諸装置の省エネ対応工事を受注し遂行中です。また、エネルギー供給構造高度化法対応を目的とした既設設備改造や不均化装置を完工しました。
当連結会計年度の受注工事高は 490億61百万円(同 0.2%減)となり、完成工事高は 1,066億65百万円(同 40.4%増)となりました。
c 一般化学・産業設備・資源・環境分野
交通インフラ分野では、新モンゴル国際空港のEPC業務を遂行する一方で、新たにフィリピン新ボホール空港のEPC業務を受注し、更なる空港案件や鉄道案件の受注に向けて準備中です。水分野では、サウジアラビアの工業排水処理/再利用モデル事業のほか、中東及びアジア地域で現地グループ会社による中小規模水処理EPC遂行体制の整備に取り組むなど関連する案件の受注に向けて営業活動を進めています。
その他ノンハイドロカーボン関連分野でも、国内顧客の海外進出案件に対し、鋭意営業活動を展開しています。
国内では、各地で太陽光発電設備(メガソーラー)のEPC業務を受注・遂行中で、引き続き案件獲得に向けグループ遂行体制を強化し営業活動を展開しています。医薬品関連分野においては、新規に原薬製造工場やワクチン製造工場の増設工事を受注し、バイオ医薬品製造設備などのEPC業務とともに遂行しています。また産官学連携のナノテクノロジー研究開発施設等を完工しました。
当連結会計年度の受注工事高は 914億8百万円(同 7.6%増)となり、完成工事高は 739億12百万円(同 35.8%減)となりました。
d 新分野
オフショア及びアップストリーム分野に関しては、資本提携した英国のエクソダスグループ社と協調して、わが国の資源開発会社等に対し海洋開発分野への設計、コンサルティング等のサービス提供を行っており、
インドネシアではFPU(洋上ガス処理設備)のEPCI(設計・調達・建設・据付)業務を遂行中です。また、エクソダスグループ社及びサイペムインターナショナル社と共同で新会社を設立、サブシー(海中・海底設備)・エンジニアリング事業への展開を進める一方、メタンハイドレートの中長期海洋産出試験等への参画を目指す新会社にも資本参加し、我が国のメタンハイドレート資源開発に貢献していきます。
また、新エネルギー関連では、水素社会実現に向け自社開発した水素の大量貯蔵・輸送技術を活用する水素サプライチェーンの事業化に向けて、国内外の関係者との検討・協議を継続しており、太陽熱発電でもイタリアでの「溶融塩パラボリックトラフ型太陽熱発電」の実証運転と商用化に向けた検討を継続しています。
更に、iPS細胞に象徴される新しい医療分野の展開にも注目し、医療・医薬を軸にライフサイエンス事業の展開を行ってまいります。
③ 完成工事総利益
完成工事総利益は、前連結会計年度比 10.1%増の 456億51百万円となりました。また、完成工事総利益率は前連結会計年度の9.3%から0.2ポイント増加し9.5%となりました。
④ 販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費は、前連結会計年度より 38億1百万円増加し 241億85百万円となりました。また、販売費及び一般管理費比率は前連結会計年度の4.6%から0.4ポイント増加し5.0%となりました。
⑤ 営業利益
営業利益は、前連結会計年度比 1.8%増の 214億66百万円となりました。また、営業利益率は前連結会計年度の4.7%から0.2ポイント減少し4.5%となりました。
⑥ 営業外収益・営業外費用
営業外収益及び営業外費用は、前連結会計年度の 17億58百万円の収益超過に対し、8億4百万円の収益超過となりました。
為替差損益については、前連結会計年度では 1億45百万円の為替差損を計上したのに対し、当連結会計年度は 11億82百万円の為替差損を計上しました。
また、受取利息・受取配当金から支払利息を差し引いた金融収支は、当連結会計年度は 28億55百万円の入金超過となり、前連結会計年度に比べ 4億99百万円増加しました。持分法による投資損益は、前連結会計年度の 3億74百万円の投資損失に対し、当連結会計年度は 7億83百万円の投資損失となりました。
⑦ 特別利益・特別損失
特別利益及び特別損失は、前連結会計年度が 2億99百万円の損失超過であったのに対し、当連結会計年度では 2億58百万円の損失超過となりました。
⑧ 法人税、住民税及び事業税・法人税等調整額
当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度に比べ 5億25百万円減少し 220億12百万円となりました。また、法人税、住民税及び事業税は、前連結会計年度に比べ 68億43百万円減少し 62億57百万円となりました。
法人税等調整額は 45億42百万円のプラスとなったことから、税金費用負担額(純額)は 107億99百万円となり、前連結会計年度に比べ 14億72百万円の増加となりました。
⑨ 当期純利益
当連結会計年度の当期純利益は、前連結会計年度比 18.0%減の 110億29百万円となりました。
(3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
① キャッシュ・フロー
当連結会計年度の現金及び現金同等物の期末残高は 1,132億46百万円となり、前連結会計年度末に比べ 320億57百万円減少しました。これは、税金等調整前当期純利益計上した一方で、ジョイントベンチャー持分資産の増加、法人税等の支払額を計上したこと等により営業活動によるキャッシュ・フローが 241億45百万円のキャッシュ・アウト・フロー(前連結会計年度は 171億77百万円のキャッシュ・アウト・フロー)、投資活動によるキャッシュ・フローが 54億44百万円のキャッシュ・アウト・フロー、財務活動によるキャッシュ・フローが 45億69百万円のキャッシュ・アウト・フローとなったことによります。
② 資金需要
当社グループの資金需要のうち主なものは、当社が受注した国内外のプラント建設に関わる費用、販売費及び一般管理費のほか、今後の成長戦略を支えるための投資であります。販売費及び一般管理費のうち主なものは、従業員給与手当等の人件費のほか、業務委託費等であります。当社の研究開発費は、研究開発に携わる従業員の人件費が過半を占めております。
③ 財務政策
現在、当社グループは、運転資金及び投資向け資金等の必要資金については、内部資金又は借入により資金調達することとしております。このうち、当社の運転資金については、将来の資金需要に備えて、150億円の短期コミットメントライン枠を設定しております。
また、今後の投資資金については、コア事業の強化、ビジネス・ポートフォリオの多様化・拡大を目指した成長のための戦略投資、競争力強化並びに業務効率化のためのITやオフィスを始めとした経営基盤強化投資及び当社技術力の更なる強化、早期のビジネス化を目指した研究開発投資などを想定しており、手元資金を充当してまいります。
当社グループは、現時点での受注実績、財政状態、営業活動によるキャッシュ・フローを生み出す能力と、短期コミットメントラインの未使用借入枠により、当社グループを安定的に運営するのに充分な資金調達が可能と考えております。
(4) 経営成績に重要な影響を与える要因・経営者の問題意識、及び戦略的現状と今後の方針について
経営成績に重要な影響を及ぼす可能性のある主な事項、及び、それらに対する対応については、4.事業等のリスクに記載致しました。
史上最高水準の受注残高を抱える状況下においては、オーストラリア、米国、ロシアでの大型プロジェクトの確実な遂行に加え、新分野を伸長させ事業ポートフォリオを多様化する中期経営計画の成長戦略をより一層加速させてまいります。