有価証券報告書-第49期(令和2年1月1日-令和2年12月31日)

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2021/03/31 15:19
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当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表の作成にあたり、経営者は、決算日における資産・負債及び報告期間における収益・費用の金額並びに開示に影響を与える見積りを行っています。これらの見積りについては、過去の実績や状況等に応じ合理的に判断をしていますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果と異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表において採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載していますが、経営者が行う見積りや判断のうち、特に次の重要な会計方針及び見積りが財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があると考えています。
(a) たな卸資産の評価
当社グループは、保有するたな卸資産について、正味売却価額又は再調達原価に基づき収益性の低下による簿価切り下げを認識しています。また、一定期間を超えて滞留するたな卸資産について、過去の実績及び将来の計画に基づき滞留期間を見積り、滞留期間に応じた評価により簿価切り下げを認識しています。将来の市場価格の変動や競争激化に伴う価格下落圧力等が生じる場合及び当社グループの需要予測と実際の需要が異なる等により在庫状況に変化が生じた場合にはたな卸資産の簿価を切下げ、評価損を計上する可能性があります。
(b) 固定資産の減損
当社グループは、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき、減損の要否を検討し、固定資産に減損が見込まれる場合は、将来キャッシュ・フローの現在価値又は正味売却価額に基づいて減損損失を計上しています。将来の事業計画の変更や経営環境等の悪化により将来キャッシュ・フローの見積りが著しく減少する場合は、減損損失を計上する可能性があります。
(c) 投資の減損
当社グループは、時価のある有価証券について、市場価格等が取得原価に比べて50%以上下落した場合に、原則として減損処理を行っています。また、下落率が30%以上50%未満の有価証券については、過去2年間の平均下落率においても概ね30%以上に該当した場合に減損処理を行っています。時価のない有価証券については、その発行会社の財政状態の悪化により実質価額が取得原価に比べて50%以上下落した場合に、原則として減損処理を行っています。将来の市況悪化又は投資先の業績不振により、現在の簿価に反映されていない損失又は簿価の回収不能が発生した場合、評価損を計上する可能性があります。
(d) 繰延税金資産の回収可能性
当社グループは、繰延税金資産の算定にあたって、将来の業績予測やタックス・プランニングを基に将来の課税所得を見積り、繰延税金資産の回収可能性を判断しています。経営環境等の悪化により、その見積りに変更が生じた場合は、繰延税金資産が取り崩されることにより税金費用を計上する可能性があります。
(e) 退職給付債務の算定
当社は確定給付企業年金制度(キャッシュバランスプラン)を採用しており、従業員の退職給付費用及び退職給付債務について、数理計算に使用される前提条件に基づいて算定しています。これらの前提条件には、割引率、退職率、死亡率及び昇給率、年金選択率、年金資産の期待運用収益率等の重要な見積りが含まれており、特に損益に重要な影響を与えると思われる割引率については、期末における日本の長期国債の利回りを基礎として設定しています。また、長期期待運用収益率については、運用方針等に基づき設定しています。実際の結果が前提条件と異なる場合や前提条件が変更された場合、その影響は累計され、将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来の会計期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼします。
(2) 経営成績等の状況の概要並びに経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延により経済活動が大きく制限されました。当第3四半期以降では感染拡大防止策の緩和もみられましたが、第2波、第3波とされる感染拡大により、先行きは依然として不透明な状況が継続しました。
当社の属する楽器業界においても影響は免れず、各国の感染拡大防止策により、取引先の販売店舗の多くが休業となり、当社においても中国工場及び主力であるマレーシア工場が一時操業停止となりました。一方で、長期化したステイホームを契機として楽器需要が増加、特にインターネット販売に適した電子楽器に対する需要は大きく増加しました。
このような環境下、当社グループでは「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 中長期的な経営戦略と対処すべき課題」に記載している「世界中の人々をワクワクさせる」というビジョンのもと、重点戦略である「当社にしかできない高付加価値な製品/サービスの開発」、「顧客創造と熱狂ファンの絆づくりによる市場開拓」、「欠品/過剰在庫のない事業継続にも配慮したSCMの実現」、「成長を支える人づくりと、徹底した見える化によるガバナンス強化」に取り組みました。
「当社にしかできない高付加価値な製品/サービスの開発」においては、市場競争力強化を目指した主要製品群のリニューアル、ラインアップ追加に加え、休眠層の活性化や新規顧客の獲得を目指した製品開発に引き続き取り組みました。開発プロセスにおいては、中長期的な成長を視野に、様々な製品カテゴリーにおいて共通プラットフォームの活用を進めました。また、より効率的に素早くアイデアを製品化できる一括企画も推進しました。加えて、新規事業基盤の創出のため、様々なソフトウエア音源をクラウド経由で提供するサービス“Roland Cloud”のコンテンツ拡充及び、更に魅力を高める新サービス開発に向けた体制作りに注力しました。5月には、当社ハードウエアとソフトウエアでのデータ互換を実現するソフトウエア・シンセサイザー「ZENOLOGY」を発表しました。
「顧客創造と熱狂ファンの絆づくりによる市場開拓」においては、引き続きデジタルマーケティングの活用を推進しました。新型コロナウイルス感染症の拡大防止策として多くの音楽イベントが中止となるなか、世界中のミュージシャンやキー・インフルエンサーとのパートナーシップにより魅力的なデジタルコンテンツを作成し、多くの顕在/潜在顧客の方々に情報を届けました。10月には、国内において、オンラインでのユーザー参加型イベント「ROLAND/BOSS プレイヤーズ・サミット」を開催しました。地域面では、主要市場である北米、欧州を中心に、コロナ禍で顕在化した電子楽器に対する巣ごもり需要に対応するため、オンラインを中心とした効果的な営業活動に取り組みました。
「欠品/過剰在庫のない事業継続にも配慮したSCMの実現」においては、新型コロナウイルス感染症の拡大防止策による主力工場の操業停止はあったものの、製造現場の感染症対策を進めることで早期に操業を再開し、また需要増加と再度の活動制限に備え、大幅な増産と適切な在庫配置に努めました。
「成長を支える人づくりと、徹底した見える化によるガバナンス強化」においては、主に新型コロナウイルス感染症の対策として、グローバルでのテレワーク導入やオンライン会議等の積極的な活用により、会社と社員のエンゲージメントを高め、多様な働き方に対応できる職場環境や人事制度作りを推進しました。
(a) 売上高
当連結会計年度の売上高は64,044百万円(前期比1.3%増)となりました。主要カテゴリーの状況は次のとおりです。
(鍵盤楽器)
主要カテゴリーでは、ポータブルタイプの電子ピアノ「FPシリーズ」や電子キーボード「GOシリーズ」が、顕在化した巣ごもり需要による効果もあり、特にオンライン販売において好調に推移しました。当第3四半期以降は北米での販路拡大も軌道に乗り、販売は伸長しました。
以上により、鍵盤楽器の売上高は17,842百万円(前期比4.3%増)となりました。
(管打楽器)
主要カテゴリーでは、電子ドラムは、中国において新型コロナウイルス感染症による音楽教室営業停止の影響が長期化したものの、新製品のVドラム・アコースティック・デザイン・シリーズが好調に推移し、主に欧州、日本において、販売は伸長しました。
電子管楽器は、顕在化した巣ごもり需要による効果もあり、主に欧州、中国、新興国において、好調に推移しました。
以上により、管打楽器の売上高は14,620百万円(前期比2.9%増)となりました。
(ギター関連機器)
主要カテゴリーでは、ギターエフェクトは、記録した演奏を再生しながらそれにあわせて演奏を楽しむことができるルーパーシリーズが欧州で好調に推移したものの、北米、日本、新興国において新型コロナウイルス感染症による店頭販売の減少とライブ需要減少の影響が長期化し、販売は減少しました。
楽器用アンプは、巣ごもり需要による小型アンプ市場の活性化が見られました。当社ではギターアンプの人気シリーズ「KATANA」のリニューアル効果に加え、前期投入したワイヤレス・ヘッドホン型パーソナル・ギターアンプ・システム「WAZA-AIR」が引き続き好調に推移し、販売は伸長しました。
以上により、ギター関連機器の売上高は16,712百万円(前期比0.2%減)となりました。
(クリエーション関連機器&サービス)
主要カテゴリーでは、シンセサイザーは、コンパクトサイズのステージピアノ「RD-88」、フラッグシップ・シンセサイザー「JUPITER-X」等の新製品が好調に推移したものの、新型コロナウイルス感染症によるライブ需要減少により、販売は減少しました。
ダンス&DJは、前期発売新製品の反動減により、販売は減少しました。
ソフトウエア/サービス分野は、Roland Cloudでの新料金プラン設定や、ソフトウエア音源の新たな販売プランの開始、ソフトウエアのバージョンアップ等が奏功し、販売は大きく伸長しました。
以上により、クリエーション関連機器&サービスの売上高は8,010百万円(前期比3.1%減)となりました。
(映像音響機器)
主要カテゴリーでは、ビデオ関連製品は、新型コロナウイルス感染症により、イベント・レンタル需要の落ち込みがあったものの、ライブとオンライン配信を同時に行うハイブリッド・イベントの新たな需要や、企業や教育、個人の配信需要の高まりにより、関連製品の販売は大きく伸長しました。
音響関連機器は、設備投資需要の減少により苦戦しました。
以上により、映像音響機器の売上高は4,597百万円(前期比7.2%増)となりました。
(b) 営業利益
売上高の増加に伴い売上総利益が増加したことに加え、コロナ禍を契機に経費の使い方を見直し、販売費及び一般管理費を削減したことにより、当連結会計年度の営業利益は7,115百万円(前期比35.0%増)となりました。
(c) 経常利益
営業外収益は154百万円、営業外費用は992百万円となりました。営業外費用では売上割引576百万円及び上場に関連する一時的な費用として上場関連費用133百万円が発生しました。
以上の結果、当連結会計年度の経常利益は6,277百万円(前期比32.8%増)となりました。
(d) 親会社株主に帰属する当期純利益
特別利益は125百万円、特別損失は556百万円となりました。特別損失では、一部の欧州子会社において現地競争法当局の調査を受けていましたが、2020年9月に課徴金決定通知を受領したことにより、競争法関連損失として343百万円を計上しました。また新型コロナウイルス感染症による影響で、当社グループの主力生産拠点であるマレーシア工場が政府による活動制限令により一時操業停止となり、当該工場が通常生産に復帰するまでの期間における固定費を、新型コロナウイルス感染症関連損失として183百万円計上しました。なお、税金費用は1,538百万円でした。
以上の結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は4,301百万円(前期比63.6%増)となりました。
「経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標」として位置付けているROE(自己資本利益率)及びROIC(投下資本利益率)について、ROEは上記のとおり親会社株主に帰属する当期純利益が増加し、また適切な株主還元を実施したことにより、22.7%(対前期比+8.3ポイント)となりました。ROICは、上記のとおり営業利益が増加したことにより、22.1%(対前期比+5.5ポイント)となりました。
(e) 生産、受注及び販売の実績
当社グループは電子楽器事業の単一セグメントであるため、セグメントに関連付けては記載していません。
(イ)生産実績
品目第49期連結会計年度
(自 2020年 1月 1日
至 2020年12月31日)
前期比(%)
鍵盤楽器(百万円)19,254+7.2
管打楽器(百万円)17,490+18.2
ギター関連機器(百万円)18,532+4.9
クリエーション関連機器&
サービス(百万円)
8,411△10.3
映像音響機器(百万円)4,739+26.3
その他(百万円)1,615+41.6
合計(百万円)70,043+8.3

(注)1.金額は、販売価格によっています。
2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
(ロ)受注実績
当社グループは、需要予測に基づく見込生産を行っているため、該当事項はありません。
(ハ)販売実績
品目第49期連結会計年度
(自 2020年 1月 1日
至 2020年12月31日)
前期比(%)
鍵盤楽器(百万円)17,842+4.3
管打楽器(百万円)14,620+2.9
ギター関連機器(百万円)16,712△0.2
クリエーション関連機器&
サービス(百万円)
8,010△3.1
映像音響機器(百万円)4,597+7.2
その他(百万円)2,261△14.2
合計(百万円)64,044+1.3

(注)上記の金額には、消費税等は含まれていません。
(3) 財政状態の分析
総資産は、前連結会計年度末と比較して2,563百万円増加し、46,096百万円となりました。その主な要因は、売上債権が2,982百万円減少した一方、下記に詳述するキャッシュ・フローの状況により現金及び預金が2,017百万円、たな卸資産が3,859百万円それぞれ増加したことによるものです。
負債は、前連結会計年度末と比較して640百万円増加し、25,945百万円となりました。その主な要因は、借入金が1,394百万円減少した一方、仕入債務が1,097百万円、賞与引当金が346百万円増加したことによるものです。
純資産は、前連結会計年度末と比較して1,923百万円増加し、20,151百万円となりました。その主な要因は、剰余金の配当が2,275百万円あったことに加え、主要国通貨に対する円高進行により為替換算調整勘定が487百万円減少した一方、親会社株主に帰属する当期純利益が4,301百万円あったことによるものです。
以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末と比較して1.7ポイント上昇し、43.1%となりました。
(4) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前期に比べ2,017百万円増加し、期末残高は10,832百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動の結果得られた資金は、主として税金等調整前当期純利益により、6,902百万円(前期より1,910百万円の収入増)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動の結果使用した資金は、主として有形固定資産の取得による支出により、901百万円(前期より686百万円の支出減)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動の結果使用した資金は、主として配当金の支払及び借入金の返済により、3,669百万円(前期より523百万円の支出増)となりました。
(5) 経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」に記載のとおりです。
(6) 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの主な資金需要は、当社グループ製品を製造するための原材料の仕入、労務費、外部委託にて製造された当社グループ商品の仕入、研究開発費や広告販促費等の営業費用の運転資金及び製造設備の刷新、拡充です。
当社グループは、必要な運転資金及び設備投資資金について、自己資金又は外部借入で対応しています。効率的な資金調達を行うため、取引金融機関とコミットメントライン契約を締結し、流動性リスクを管理しています。当連結会計年度末において、これらの契約に基づく当社グループの借入未実行残高は8,000百万円です。
当社グループは、今後とも営業活動によって得る自己資金を基本的な資金源としながら、資金繰りの見通しや市場金利の状況を考慮し、必要に応じて銀行借入を活用することで資金調達コストを抑制し、資本効率の最適化を図ります。

[参考情報]
当社グループは、投資家が当社グループの業績評価を行い、当社グループの企業価値を把握するうえで有用な情報を提供することを目的として、連結財務諸表に記載された売上高以外に、当社グループの主要な市場ごとの外部顧客への売上高及び製品カテゴリーごとの外部顧客への売上高の推移を下表のとおり把握しています。
(1) 地域ごとの売上高
(単位:百万円)
2016年2017年2018年2019年2020年
日本8,81717.4%8,80715.4%8,68314.2%9,23714.6%9,06614.2%
北米 (注)114,80329.1%17,05629.8%18,16929.7%18,91429.9%19,96331.2%
欧州 (注)216,29132.1%18,81032.8%19,75132.3%19,51830.9%21,02732.8%
中国 (注)33,5597.0%4,2677.4%6,0059.8%7,19411.4%6,3049.8%
アジア・オセアニア・その他の地域7,29714.4%8,37914.6%8,54314.0%8,38113.2%7,68212.0%
合計50,768100.0%57,320100.0%61,153100.0%63,247100.0%64,044100.0%

(注)1.アメリカ及びカナダでの売上高になります。
2.オーストリア、ベルギー、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、イタリア、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ロシア、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ及び英国での売上高
を含みます。
3.中国本土での売上高になります。
(2) 製品カテゴリーごとの売上高
(単位:百万円)
2016年2017年2018年2019年2020年
鍵盤楽器11,89823.4%14,12624.6%15,55125.4%17,10427.0%17,84227.9%
管打楽器11,90323.5%12,36321.6%14,35123.5%14,20522.4%14,62022.8%
ギター関連機器12,28624.2%14,59625.5%16,41126.8%16,74426.5%16,71226.1%
クリエーション関連
機器&サービス
7,87115.5%8,69315.2%7,64712.5%8,26713.1%8,01012.5%
映像音響機器4,8619.6%5,1739.0%4,6247.6%4,2896.8%4,5977.2%
その他1,9473.8%2,3664.1%2,5664.2%2,6344.2%2,2613.5%
合計50,768100.0%57,320100.0%61,153100.0%63,247100.0%64,044100.0%