有価証券報告書-第52期(2023/01/01-2023/12/31)
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表の作成にあたり、経営者は、決算日における資産・負債及び報告期間における収益・費用の金額並びに開示に影響を与える見積りを行っています。これらの見積りについては、過去の実績や状況等に応じ合理的に判断をしていますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果と異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表において採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載していますが、経営者が行う見積りや判断のうち、特に次の重要な会計方針及び見積りが財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があると考えています。
(a) 棚卸資産の評価
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
(b) のれん及びその他の無形固定資産の評価
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
(c) 固定資産の減損
当社グループは、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき、減損の要否を検討し、固定資産に減損が見込まれる場合は、将来キャッシュ・フローの現在価値又は正味売却価額に基づいて減損損失を計上しています。将来の事業計画の変更や経営環境等の悪化により将来キャッシュ・フローの見積りが著しく減少する場合は、減損損失を計上する可能性があります。
(d) 投資の減損
当社グループは、時価のある有価証券について、市場価格等が取得原価に比べて50%以上下落した場合に、原則として減損処理を行っています。また、下落率が30%以上50%未満の有価証券については、過去2年間の平均下落率においても概ね30%以上に該当した場合に減損処理を行っています。時価のない有価証券については、その発行会社の財政状態の悪化により実質価額が取得原価に比べて50%以上下落した場合に、原則として減損処理を行っています。将来の市況悪化又は投資先の業績不振により、現在の簿価に反映されていない損失又は簿価の回収不能が発生した場合、評価損を計上する可能性があります。
(e) 繰延税金資産の回収可能性
当社グループは、繰延税金資産の算定にあたって、将来の業績予測やタックス・プランニングを基に将来の課税所得を見積り、繰延税金資産の回収可能性を判断しています。経営環境等の悪化により、その見積りに変更が生じた場合は、繰延税金資産が取り崩されることにより税金費用を計上する可能性があります。
(f) 退職給付債務の算定
当社は確定給付企業年金制度(キャッシュバランスプラン)を採用しており、従業員の退職給付費用及び退職給付債務について、数理計算に使用される前提条件に基づいて算定しています。これらの前提条件には、割引率、退職率、死亡率及び昇給率、年金選択率、年金資産の期待運用収益率等の重要な見積りが含まれており、特に損益に重要な影響を与えると思われる割引率については、期末における日本の長期国債の利回りを基礎として設定しています。また、長期期待運用収益率については、運用方針等に基づき設定しています。実際の結果が前提条件と異なる場合や前提条件が変更された場合、その影響は累計され、将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来の会計期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼします。
(2) 経営成績等の状況の概要並びに経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度における当社グループを取り巻く世界経済は、世界的にポストコロナへの移行が大きく進んだ一方で、ロシア・ウクライナ情勢の長期化、中国市場の減速、世界的な物価や金利の上昇、金融不安等により先行き不透明な状況が継続しました。
電子楽器に対する需要は、全体としては概ね堅調に推移しましたが、回復の遅れる中国や、Stay at Home需要の反動減が見られる電子ピアノなど、地域やカテゴリーによって濃淡が見られました。出荷に関しては、コロナ禍を要因とした供給制約が緩和されたことによる供給過多により、当期は、特に米国においてディーラーの在庫が過剰になるなど、サプライチェーンの正常化に向けた調整局面が継続しました。コスト面においては、原材料価格は高止まりを見せていますが、大きく上昇していた海上輸送費の減少等により改善が見られました。また、市場の変化に迅速かつ柔軟に対応すべく、経費執行についても適時適切に見直しを図り、利益の創出に注力しました。
このような環境下、当社グループでは「The World Leader in Music Creation ~音楽創造分野において世界的リーダーとなる~」という長期ビジョンのもと、「Create Fans For Life! ~生涯にわたるファンを生み出し、より多くの音楽愛好家に愛されるブランドになる~」という中期経営計画目標を掲げ、その1年目として「需要創造」、「シェア拡大」、「LTV(ライフタイムバリュー)向上」、「基盤強化」に取り組みました。
「需要創造」においては、市場競争力強化を目指した主要製品群のリニューアル及びラインアップの追加に加え、Game Changer製品による新たな市場創造に注力しました。具体的には、前期買収したDrum Workshop, Inc.(以下DW社)との技術シナジーにより、アコースティックドラムとしても電子ドラムとしても演奏できる、世界初のコンバーチブルドラム「DWe」を発売しました。また今後ますます盛り上がりが期待されるeスポーツ市場に向けては、ゲーム配信用のオーディオミキサー「BRIDGE CAST」を投入しました。合わせて、音楽生成AIサービスと提携した新サービスとして、同製品で使用できる著作権フリーBGMライブラリ「BGM CAST」を「Roland Cloud」より提供を開始しました。
「シェア拡大」においては、当社にとっては未開拓市場であるポータブル・キーボード市場へ向けた低価格キーボード「E-X10」を投入しました。加えてポータブル・キーボード、電子ピアノでは、お客様の購買行動の変化に合わせ、新規チャネルの開拓にも取り組みました。新興国においては、引き続き膨大な人口増加により中間層の購買力増加が進む、インド、インドネシア等での販売体制強化に注力しました。また、当社ではお客様が実際に楽器に触れて、納得して購入いただける場所として、世界の主要都市へ直営店舗「ローランドストア」の出店を進めており、2023年10月には日本初の拠点として東京の原宿に出店しました。
「LTV(ライフタイムバリュー)向上」においては、Roland Cloudの使い勝手を大幅に向上させるユーザーインターフェースの刷新に加え、当社歴代のシンセサイザーとリズム・マシンを1台に融合したソフトウエア「GALAXIAS」をリリースしました。また、好評をいただいているシンセサイザー「FANTOMシリーズ」への有償アップグレードの提供や、シンセサイザー以外のカテゴリーでもご利用いただけるRoland Cloudサービスの拡充に取り組みました。加えて、当社によるお客様の理解とコミュニケーションの充実、製品やサービスの精度向上のため、顧客データの一元管理を行うRoland Platformの構築を進めました。
「基盤強化」においては、グローバルでの適材適所の人材配置や、株式報酬制度のグローバル展開といった人事制度の拡充に取り組みました。また、開発部門の集約によるInnovationの加速、社員エンゲージメント及び生産性の向上を目的に、現在本社を置く静岡県浜松市に、研究開発の中核拠点となる新本社の建設を決定しました。加えて、ビジネスのさらなる拡大に向けた基幹システムの導入や、販売機会ロスの低減やリードタイム短縮に向けた生産管理システムの導入も決定しました。
(a) 売上高
DW社の新規連結効果や円安効果もあり、当連結会計年度の売上高は、102,445百万円(前期比6.9%増)となりました。製品カテゴリーごとの販売状況(対前期比)は以下のとおりです。
(鍵盤楽器)売上高27,546百万円(前期比7.8%減)
電子ピアノは、コロナ禍を契機とした非常に高い需要の落ち着きに加え、ディーラーの在庫調整、競合激化等により苦戦しました。
(管打楽器)売上高29,342百万円(前期比27.3%増)
ドラムは、中国においては、コロナや政府の学習塾に対する規制を背景とした音楽教室縮小の影響を受けましたが、新製品の導入を中心に欧米では概ね堅調に推移しました。ドラム事業全体としては、DW社の新規連結効果もあり販売は大きく伸長しました。
電子管楽器は、主力市場である中国、日本での市場在庫の調整に加え、中国を中心に新規参入企業との競合もあ
り、販売は苦戦しました。
(ギター関連機器)売上高25,726百万円(前期比9.3%増)
ギターエフェクターは、前期の供給不足からの回復に加え、新製品の効果もあり好調に推移しました。
楽器用アンプは、米国を中心としたディーラーの在庫調整影響はありましたが、堅調な需要に加え新製品の貢献あり好調に推移しました。
(クリエーション関連機器&サービス)売上高12,662百万円(前期比3.7%増)
シンセサイザーは、前期に多くの新製品を発売したため反動減がありましたが、需要は概ね堅調に推移しました。
ダンス&DJ関連製品では、今期発売した新製品群は貢献しているものの、既存製品には落ち着きが見られました。
ソフトウエア/サービス分野では、Roland Cloudにおいて、ソフトウエアシンセサイザーやサウンドコンテンツ、ハードウエアのアップデータ等の提供を継続的に行い、会員数は安定的に増加しました。
(映像音響機器)売上高4,073百万円(前期比6.5%減)
ビデオ関連製品は、イベント需要が回復し、関連製品の需要が高まりましたが、Stay at Homeによる個人向け配信需要に落ち着きが見られました。またV-MODAブランドのヘッドホン等が苦戦しました。
(b) 営業利益
原材料価格は高止まりを見せていますが、大きく上昇していた海上輸送費は減少し、また市場の変化に迅速かつ柔軟に対応すべく、経費執行についても適時適切に見直しを図ったことにより、当連結会計年度の営業利益は11,871百万円(前期比10.4%増)となりました。
(c) 経常利益
営業外収益は210百万円、営業外費用は927百万円となりました。営業外費用では為替差損760百万円が発生しました。
以上の結果、当連結会計年度の経常利益は11,154百万円(前期比8.8%増)となりました。
(d) 親会社株主に帰属する当期純利益
特別利益は8百万円、特別損失は14百万円、税金費用は2,955百万円となりました。
以上の結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は8,151百万円(前期比8.8%減)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益が対前期比で減少した要因は、前期において繰延税金資産の計上による一過性要因の影響があったことによるものです。
(e) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
ROE(自己資本利益率)は、上記のとおり親会社株主に帰属する当期純利益が減少し、適切な株主還元を実施しましたが、為替の影響もあり、22.2%(前期比6.7ポイント減)となりました。
ROIC(投下資本利益率)は、上記のとおり営業利益は増加したものの、新本社社屋(土地・建物等)への投資等により有形固定資産が増加した結果、17.2%(前期比1.5ポイント減)となりました。
(f) 生産、受注及び販売の実績
当社グループは電子楽器事業の単一セグメントであるため、セグメントに関連付けては記載していません。
(イ)生産実績
(注)金額は、販売価格によっています。
(ロ)受注実績
当社グループは、需要予測に基づく見込生産を行っているため、該当事項はありません。
(ハ)販売実績
(3) 財政状態の分析
総資産は、前連結会計年度末と比較して3,912百万円増加し、80,969百万円となりました。その主な要因は、棚卸資産が2,178百万円減少した一方、次項に詳述するキャッシュ・フローの状況により現金及び預金が2,377百万円、売上債権が899百万円、有形固定資産が2,190百万円それぞれ増加したことによるものです。
負債は、前連結会計年度末と比較して2,454百万円減少し、40,854百万円となりました。その主な要因は、仕入債務が660百万円増加した一方、借入金が3,639百万円減少したことによるものです。
純資産は、前連結会計年度末と比較して6,366百万円増加し、40,114百万円となりました。その主な要因は、配当金の支払いにより剰余金が4,506百万円減少した一方で、主要国通貨に対する円安進行により為替換算調整勘定が1,849百万円増加し、また親会社株主に帰属する当期純利益が8,151百万円あったことによるものです。
以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末と比較して5.7ポイント増加し、49.2%となりました。
(4) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度において現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、2,377百万円増加(前年同期は1,724百万円増加)し、期末残高は12,883百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動の結果得られた資金は、主として税金等調整前当期純利益及び運転資金の減少により、15,428百万円(前年同期に得られた資金は793百万円)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動の結果使用した資金は、主として有形固定資産の取得による支出により、3,576百万円(前年同期に使用した資金は11,351百万円)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動の結果使用した資金は、主として借入金の返済や配当金の支払等により、8,668百万円(前年同期に得られた資金は12,879百万円)となりました。
(5) 経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に記載のとおりです。
(6) 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの主な資金需要は、当社グループ製品を製造するための原材料の仕入、労務費、外部委託にて製造された当社グループ商品の仕入、研究開発費や広告販促費等の営業費用の運転資金及び製造設備の刷新、拡充です。
当社グループは、必要な運転資金及び設備投資資金について、自己資金又は外部借入で対応しています。効率的な資金調達を行うため、取引金融機関と当座貸越契約及びコミットメントライン契約を締結し、流動性リスクを管理しています。当連結会計年度末において、これらの契約に基づく当社グループの借入未実行残高は9,700百万円です。
当社グループは、今後とも営業活動によって得る自己資金を基本的な資金源としながら、資金繰りの見通しや市場金利の状況を考慮し、必要に応じて銀行借入を活用することで資金調達コストを抑制し、資本効率の最適化を図ります。
[参考情報]
当社グループは、投資家が当社グループの業績評価を行い、当社グループの企業価値を把握するうえで有用な情報を提供することを目的として、連結財務諸表に記載された売上高以外に、当社グループの主要な市場ごとの外部顧客への売上高及び製品カテゴリーごとの外部顧客への売上高の推移を下表のとおり把握しています。なお、比率(%表示)は売上高の構成比を示しています。
(1) 地域ごとの売上高
(注)1.アメリカ及びカナダでの売上高になります。
2.オーストリア、ベルギー、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、イタリア、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ロシア、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ及び英国での売上高を含みます。
3.中国本土での売上高になります。
(2) 製品カテゴリーごとの売上高
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表の作成にあたり、経営者は、決算日における資産・負債及び報告期間における収益・費用の金額並びに開示に影響を与える見積りを行っています。これらの見積りについては、過去の実績や状況等に応じ合理的に判断をしていますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果と異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表において採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載していますが、経営者が行う見積りや判断のうち、特に次の重要な会計方針及び見積りが財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があると考えています。
(a) 棚卸資産の評価
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
(b) のれん及びその他の無形固定資産の評価
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
(c) 固定資産の減損
当社グループは、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき、減損の要否を検討し、固定資産に減損が見込まれる場合は、将来キャッシュ・フローの現在価値又は正味売却価額に基づいて減損損失を計上しています。将来の事業計画の変更や経営環境等の悪化により将来キャッシュ・フローの見積りが著しく減少する場合は、減損損失を計上する可能性があります。
(d) 投資の減損
当社グループは、時価のある有価証券について、市場価格等が取得原価に比べて50%以上下落した場合に、原則として減損処理を行っています。また、下落率が30%以上50%未満の有価証券については、過去2年間の平均下落率においても概ね30%以上に該当した場合に減損処理を行っています。時価のない有価証券については、その発行会社の財政状態の悪化により実質価額が取得原価に比べて50%以上下落した場合に、原則として減損処理を行っています。将来の市況悪化又は投資先の業績不振により、現在の簿価に反映されていない損失又は簿価の回収不能が発生した場合、評価損を計上する可能性があります。
(e) 繰延税金資産の回収可能性
当社グループは、繰延税金資産の算定にあたって、将来の業績予測やタックス・プランニングを基に将来の課税所得を見積り、繰延税金資産の回収可能性を判断しています。経営環境等の悪化により、その見積りに変更が生じた場合は、繰延税金資産が取り崩されることにより税金費用を計上する可能性があります。
(f) 退職給付債務の算定
当社は確定給付企業年金制度(キャッシュバランスプラン)を採用しており、従業員の退職給付費用及び退職給付債務について、数理計算に使用される前提条件に基づいて算定しています。これらの前提条件には、割引率、退職率、死亡率及び昇給率、年金選択率、年金資産の期待運用収益率等の重要な見積りが含まれており、特に損益に重要な影響を与えると思われる割引率については、期末における日本の長期国債の利回りを基礎として設定しています。また、長期期待運用収益率については、運用方針等に基づき設定しています。実際の結果が前提条件と異なる場合や前提条件が変更された場合、その影響は累計され、将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来の会計期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼします。
(2) 経営成績等の状況の概要並びに経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度における当社グループを取り巻く世界経済は、世界的にポストコロナへの移行が大きく進んだ一方で、ロシア・ウクライナ情勢の長期化、中国市場の減速、世界的な物価や金利の上昇、金融不安等により先行き不透明な状況が継続しました。
電子楽器に対する需要は、全体としては概ね堅調に推移しましたが、回復の遅れる中国や、Stay at Home需要の反動減が見られる電子ピアノなど、地域やカテゴリーによって濃淡が見られました。出荷に関しては、コロナ禍を要因とした供給制約が緩和されたことによる供給過多により、当期は、特に米国においてディーラーの在庫が過剰になるなど、サプライチェーンの正常化に向けた調整局面が継続しました。コスト面においては、原材料価格は高止まりを見せていますが、大きく上昇していた海上輸送費の減少等により改善が見られました。また、市場の変化に迅速かつ柔軟に対応すべく、経費執行についても適時適切に見直しを図り、利益の創出に注力しました。
このような環境下、当社グループでは「The World Leader in Music Creation ~音楽創造分野において世界的リーダーとなる~」という長期ビジョンのもと、「Create Fans For Life! ~生涯にわたるファンを生み出し、より多くの音楽愛好家に愛されるブランドになる~」という中期経営計画目標を掲げ、その1年目として「需要創造」、「シェア拡大」、「LTV(ライフタイムバリュー)向上」、「基盤強化」に取り組みました。
「需要創造」においては、市場競争力強化を目指した主要製品群のリニューアル及びラインアップの追加に加え、Game Changer製品による新たな市場創造に注力しました。具体的には、前期買収したDrum Workshop, Inc.(以下DW社)との技術シナジーにより、アコースティックドラムとしても電子ドラムとしても演奏できる、世界初のコンバーチブルドラム「DWe」を発売しました。また今後ますます盛り上がりが期待されるeスポーツ市場に向けては、ゲーム配信用のオーディオミキサー「BRIDGE CAST」を投入しました。合わせて、音楽生成AIサービスと提携した新サービスとして、同製品で使用できる著作権フリーBGMライブラリ「BGM CAST」を「Roland Cloud」より提供を開始しました。
「シェア拡大」においては、当社にとっては未開拓市場であるポータブル・キーボード市場へ向けた低価格キーボード「E-X10」を投入しました。加えてポータブル・キーボード、電子ピアノでは、お客様の購買行動の変化に合わせ、新規チャネルの開拓にも取り組みました。新興国においては、引き続き膨大な人口増加により中間層の購買力増加が進む、インド、インドネシア等での販売体制強化に注力しました。また、当社ではお客様が実際に楽器に触れて、納得して購入いただける場所として、世界の主要都市へ直営店舗「ローランドストア」の出店を進めており、2023年10月には日本初の拠点として東京の原宿に出店しました。
「LTV(ライフタイムバリュー)向上」においては、Roland Cloudの使い勝手を大幅に向上させるユーザーインターフェースの刷新に加え、当社歴代のシンセサイザーとリズム・マシンを1台に融合したソフトウエア「GALAXIAS」をリリースしました。また、好評をいただいているシンセサイザー「FANTOMシリーズ」への有償アップグレードの提供や、シンセサイザー以外のカテゴリーでもご利用いただけるRoland Cloudサービスの拡充に取り組みました。加えて、当社によるお客様の理解とコミュニケーションの充実、製品やサービスの精度向上のため、顧客データの一元管理を行うRoland Platformの構築を進めました。
「基盤強化」においては、グローバルでの適材適所の人材配置や、株式報酬制度のグローバル展開といった人事制度の拡充に取り組みました。また、開発部門の集約によるInnovationの加速、社員エンゲージメント及び生産性の向上を目的に、現在本社を置く静岡県浜松市に、研究開発の中核拠点となる新本社の建設を決定しました。加えて、ビジネスのさらなる拡大に向けた基幹システムの導入や、販売機会ロスの低減やリードタイム短縮に向けた生産管理システムの導入も決定しました。
(a) 売上高
DW社の新規連結効果や円安効果もあり、当連結会計年度の売上高は、102,445百万円(前期比6.9%増)となりました。製品カテゴリーごとの販売状況(対前期比)は以下のとおりです。
(鍵盤楽器)売上高27,546百万円(前期比7.8%減)
電子ピアノは、コロナ禍を契機とした非常に高い需要の落ち着きに加え、ディーラーの在庫調整、競合激化等により苦戦しました。
(管打楽器)売上高29,342百万円(前期比27.3%増)
ドラムは、中国においては、コロナや政府の学習塾に対する規制を背景とした音楽教室縮小の影響を受けましたが、新製品の導入を中心に欧米では概ね堅調に推移しました。ドラム事業全体としては、DW社の新規連結効果もあり販売は大きく伸長しました。
電子管楽器は、主力市場である中国、日本での市場在庫の調整に加え、中国を中心に新規参入企業との競合もあ
り、販売は苦戦しました。
(ギター関連機器)売上高25,726百万円(前期比9.3%増)
ギターエフェクターは、前期の供給不足からの回復に加え、新製品の効果もあり好調に推移しました。
楽器用アンプは、米国を中心としたディーラーの在庫調整影響はありましたが、堅調な需要に加え新製品の貢献あり好調に推移しました。
(クリエーション関連機器&サービス)売上高12,662百万円(前期比3.7%増)
シンセサイザーは、前期に多くの新製品を発売したため反動減がありましたが、需要は概ね堅調に推移しました。
ダンス&DJ関連製品では、今期発売した新製品群は貢献しているものの、既存製品には落ち着きが見られました。
ソフトウエア/サービス分野では、Roland Cloudにおいて、ソフトウエアシンセサイザーやサウンドコンテンツ、ハードウエアのアップデータ等の提供を継続的に行い、会員数は安定的に増加しました。
(映像音響機器)売上高4,073百万円(前期比6.5%減)
ビデオ関連製品は、イベント需要が回復し、関連製品の需要が高まりましたが、Stay at Homeによる個人向け配信需要に落ち着きが見られました。またV-MODAブランドのヘッドホン等が苦戦しました。
(b) 営業利益
原材料価格は高止まりを見せていますが、大きく上昇していた海上輸送費は減少し、また市場の変化に迅速かつ柔軟に対応すべく、経費執行についても適時適切に見直しを図ったことにより、当連結会計年度の営業利益は11,871百万円(前期比10.4%増)となりました。
(c) 経常利益
営業外収益は210百万円、営業外費用は927百万円となりました。営業外費用では為替差損760百万円が発生しました。
以上の結果、当連結会計年度の経常利益は11,154百万円(前期比8.8%増)となりました。
(d) 親会社株主に帰属する当期純利益
特別利益は8百万円、特別損失は14百万円、税金費用は2,955百万円となりました。
以上の結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は8,151百万円(前期比8.8%減)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益が対前期比で減少した要因は、前期において繰延税金資産の計上による一過性要因の影響があったことによるものです。
(e) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
ROE(自己資本利益率)は、上記のとおり親会社株主に帰属する当期純利益が減少し、適切な株主還元を実施しましたが、為替の影響もあり、22.2%(前期比6.7ポイント減)となりました。
ROIC(投下資本利益率)は、上記のとおり営業利益は増加したものの、新本社社屋(土地・建物等)への投資等により有形固定資産が増加した結果、17.2%(前期比1.5ポイント減)となりました。
(f) 生産、受注及び販売の実績
当社グループは電子楽器事業の単一セグメントであるため、セグメントに関連付けては記載していません。
(イ)生産実績
品目 | 第52期連結会計年度 (自 2023年 1月 1日 至 2023年12月31日) | 前期比(%) |
鍵盤楽器(百万円) | 27,273 | △15.5 |
管打楽器(百万円) | 27,056 | +17.4 |
ギター関連機器(百万円) | 24,788 | △1.6 |
クリエーション関連機器& サービス(百万円) | 12,579 | +11.4 |
映像音響機器(百万円) | 4,438 | +2.9 |
その他(百万円) | 2,157 | +13.7 |
合計(百万円) | 98,294 | +0.3 |
(注)金額は、販売価格によっています。
(ロ)受注実績
当社グループは、需要予測に基づく見込生産を行っているため、該当事項はありません。
(ハ)販売実績
品目 | 第52期連結会計年度 (自 2023年 1月 1日 至 2023年12月31日) | 前期比(%) |
鍵盤楽器(百万円) | 27,546 | △7.8 |
管打楽器(百万円) | 29,342 | +27.3 |
ギター関連機器(百万円) | 25,726 | +9.3 |
クリエーション関連機器& サービス(百万円) | 12,662 | +3.7 |
映像音響機器(百万円) | 4,073 | △6.5 |
その他(百万円) | 3,094 | +9.7 |
合計(百万円) | 102,445 | +6.9 |
(3) 財政状態の分析
総資産は、前連結会計年度末と比較して3,912百万円増加し、80,969百万円となりました。その主な要因は、棚卸資産が2,178百万円減少した一方、次項に詳述するキャッシュ・フローの状況により現金及び預金が2,377百万円、売上債権が899百万円、有形固定資産が2,190百万円それぞれ増加したことによるものです。
負債は、前連結会計年度末と比較して2,454百万円減少し、40,854百万円となりました。その主な要因は、仕入債務が660百万円増加した一方、借入金が3,639百万円減少したことによるものです。
純資産は、前連結会計年度末と比較して6,366百万円増加し、40,114百万円となりました。その主な要因は、配当金の支払いにより剰余金が4,506百万円減少した一方で、主要国通貨に対する円安進行により為替換算調整勘定が1,849百万円増加し、また親会社株主に帰属する当期純利益が8,151百万円あったことによるものです。
以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末と比較して5.7ポイント増加し、49.2%となりました。
(4) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度において現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、2,377百万円増加(前年同期は1,724百万円増加)し、期末残高は12,883百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動の結果得られた資金は、主として税金等調整前当期純利益及び運転資金の減少により、15,428百万円(前年同期に得られた資金は793百万円)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動の結果使用した資金は、主として有形固定資産の取得による支出により、3,576百万円(前年同期に使用した資金は11,351百万円)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動の結果使用した資金は、主として借入金の返済や配当金の支払等により、8,668百万円(前年同期に得られた資金は12,879百万円)となりました。
(5) 経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に記載のとおりです。
(6) 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの主な資金需要は、当社グループ製品を製造するための原材料の仕入、労務費、外部委託にて製造された当社グループ商品の仕入、研究開発費や広告販促費等の営業費用の運転資金及び製造設備の刷新、拡充です。
当社グループは、必要な運転資金及び設備投資資金について、自己資金又は外部借入で対応しています。効率的な資金調達を行うため、取引金融機関と当座貸越契約及びコミットメントライン契約を締結し、流動性リスクを管理しています。当連結会計年度末において、これらの契約に基づく当社グループの借入未実行残高は9,700百万円です。
当社グループは、今後とも営業活動によって得る自己資金を基本的な資金源としながら、資金繰りの見通しや市場金利の状況を考慮し、必要に応じて銀行借入を活用することで資金調達コストを抑制し、資本効率の最適化を図ります。
[参考情報]
当社グループは、投資家が当社グループの業績評価を行い、当社グループの企業価値を把握するうえで有用な情報を提供することを目的として、連結財務諸表に記載された売上高以外に、当社グループの主要な市場ごとの外部顧客への売上高及び製品カテゴリーごとの外部顧客への売上高の推移を下表のとおり把握しています。なお、比率(%表示)は売上高の構成比を示しています。
(1) 地域ごとの売上高
(単位:百万円) | ||||||||||
2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | ||||||
日本 | 9,237 | 14.6% | 9,066 | 14.2% | 9,666 | 12.1% | 9,736 | 10.2% | 9,693 | 9.5% |
北米 (注)1 | 18,914 | 29.9% | 19,963 | 31.2% | 25,959 | 32.4% | 34,904 | 36.4% | 38,920 | 38.0% |
欧州 (注)2 | 19,518 | 30.9% | 21,027 | 32.8% | 24,958 | 31.2% | 26,439 | 27.6% | 29,663 | 28.9% |
中国 (注)3 | 7,194 | 11.4% | 6,304 | 9.8% | 8,673 | 10.8% | 9,641 | 10.1% | 8,796 | 8.6% |
アジア・オセアニア・その他の地域 | 8,381 | 13.2% | 7,682 | 12.0% | 10,775 | 13.5% | 15,118 | 15.7% | 15,372 | 15.0% |
合計 | 63,247 | 100.0% | 64,044 | 100.0% | 80,032 | 100.0% | 95,840 | 100.0% | 102,445 | 100.0% |
(注)1.アメリカ及びカナダでの売上高になります。
2.オーストリア、ベルギー、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、イタリア、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ロシア、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ及び英国での売上高を含みます。
3.中国本土での売上高になります。
(2) 製品カテゴリーごとの売上高
(単位:百万円) | ||||||||||
2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | ||||||
鍵盤楽器 | 17,104 | 27.0% | 17,842 | 27.9% | 24,792 | 31.0% | 29,869 | 31.2% | 27,546 | 26.9% |
管打楽器 | 14,205 | 22.4% | 14,620 | 22.8% | 19,053 | 23.8% | 23,046 | 24.1% | 29,342 | 28.6% |
ギター関連機器 | 16,744 | 26.5% | 16,712 | 26.1% | 19,093 | 23.9% | 23,540 | 24.6% | 25,726 | 25.1% |
クリエーション関連機器&サービス | 8,267 | 13.1% | 8,010 | 12.5% | 10,122 | 12.6% | 12,206 | 12.7% | 12,662 | 12.4% |
映像音響機器 | 4,289 | 6.8% | 4,597 | 7.2% | 4,282 | 5.3% | 4,357 | 4.5% | 4,073 | 4.0% |
その他 | 2,634 | 4.2% | 2,261 | 3.5% | 2,689 | 3.4% | 2,819 | 2.9% | 3,094 | 3.0% |
合計 | 63,247 | 100.0% | 64,044 | 100.0% | 80,032 | 100.0% | 95,840 | 100.0% | 102,445 | 100.0% |