有価証券報告書-第79期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
(1)経営成績等の状況の概要
①経営成績の状況
当連結会計年度における経済環境を顧みますと、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大が終息となる見通しの不透明さは継続しており、各国の経済対策やワクチン接種率の増加によって、世界経済全体は改善に向かう方向にありますが、国や地域、業種間で異なる回復状況となっています。また、世界景気の回復への動きに伴い消費需要が高まるなか、海上輸送におけるコンテナ不足に加え、電子部品および半導体不足などのサプライチェーン上の問題が発生しており、今後の動向について引き続き注視をしていきます。地域別に見ますと、新興国では、インドや東南アジア、中南米の一部で経済活動の制限継続の影響を受け、引き続き厳しい経済環境の地域がありますが、中国では経済活動の緩やかな回復が継続しています。また、先進国は、下げ止まりから回復への動きが期待されますが、感染症再拡大の動きがある国や地域もあり、引き続き注視が必要な状況にあります。
当連結会計年度の米ドルおよびユーロの平均為替レートはそれぞれ106.01円および123.67円と前期に比べ、米ドルは3%の円高、ユーロは2%の円安に推移しました。また、南米など新興国の通貨については円高に推移しました。
こうした経営環境の下、当連結会計年度の経営成績につきましては、以下のとおりとなりました。
(億円)
※事業利益は、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出しています。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。
(プリンティングソリューションズ事業セグメント)
プリンター事業の売上収益は増加となりました。オフィス・ホーム用インクジェットプリンターは、在宅勤務や家庭学習による印刷ニーズの高まりから大幅な需要増となりました。大容量インクタンクモデルおよびインクカートリッジモデル本体は、新型コロナウイルス影響により製造工場の操業が一時的に低下または停止した影響、および海上輸送におけるコンテナ不足や港湾混雑による輸送遅延などにより、十分な製品供給が行えなかったものの、販売価格の上昇などにより、売上増となりました。消耗品は、高まる在宅印刷需要に対して増産対応をはかり、売上増となりました。シリアルインパクトドットマトリクスプリンターについては、市場縮小に伴う販売減少および為替のマイナス影響により、売上減少となりました。
プロフェッショナルプリンティング事業の売上収益は減少となりました。商業・産業用インクジェットプリンターは、第2四半期以降では、フォト/プルーフでの大口案件獲得、コーポレート・CAD向けモデルや昇華転写プリンターでの本体販売好調などにより増加となった一方、第1四半期で、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う世界各地での経済活動制限の影響を強く受けたことにより、減少となりました。POSシステム関連製品は昨年度のイタリアでの税制改定に伴う需要増の反動に加え、新型コロナウイルス感染拡大による経済活動制限の影響を受けて需要が減少したことにより、売上が減少しました。
その他はOS切り替えに伴うPCの需要増があった前期に対して減収となりました。
プリンティングソリューションズ事業セグメントのセグメント利益は、為替のマイナス影響があったものの、インクジェットプリンターの本体販売価格の上昇および消耗品の売上増加に加え、費用執行を厳選して大幅な費用削減を実施したことにより、増加となりました。
以上の結果、プリンティングソリューションズ事業セグメントの売上収益は7,077億円(前期比0.1%減)、セグメント利益は1,085億円(同43.5%増)となりました。
(ビジュアルコミュニケーション事業セグメント)
ビジュアルコミュニケーション事業の売上収益は、学校の再開に伴う教育案件、およびホーム需要拡大の動きが見られましたが、世界各地での新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済活動制限、各種イベントの延期・中止による影響、さらに継続しているフラットパネルディスプレイの攻勢によりプロジェクター市場の縮小が進んだこと、また、輸送遅延による製品供給不足も加わり、減少となりました。
ビジュアルコミュニケーション事業セグメントのセグメント利益は、費用の執行を厳選し、大幅な削減を進めていますが、減収影響により、減少となりました。
以上の結果、ビジュアルコミュニケーション事業セグメントの売上収益は1,414億円(前期比22.8%減)、セグメント利益は13億円(同90.1%減)となりました。
(ウエアラブル・産業プロダクツ事業セグメント)
ウエアラブル機器事業の売上収益は、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大により、世界各地で販売店の営業自粛、経済活動制限の影響を受けたこと、また特に国内では感染拡大による年末商戦期の需要落ち込みに加え、インバウンド需要が大幅に減少したことなどにより、大幅な減少となりました。
ロボティクスソリューションズ事業の売上収益は、主に中国での案件獲得による販売増加により、大幅な増加となりました。
マイクロデバイス事業の売上収益は、市場からの需要が足もとで急増するなか、水晶デバイスでPCおよびヘルスケア向けが増加したことに加え、半導体でファンドリの需要増により、増加となりました。
ウエアラブル・産業プロダクツ事業セグメントのセグメント利益は、ウエアラブル機器事業を中心とした減収影響があったものの、費用執行の抑制・削減により、増加となりました。
以上の結果、ウエアラブル・産業プロダクツ事業セグメントの売上収益は1,486億円(前期比2.8%減)、セグメント利益は32億円(同75.0%増)となりました。
なお、上記のほか、ウエアラブル機器事業において、収益性の低下、ならびに事業戦略の見直しにより、減損損失75億円を計上しております。
(その他)
その他の売上収益は8億円(前期比12.2%減)、セグメント損失は6億円(前期は5億円のセグメント損失)となりました。
(調整額)
報告セグメントに帰属しない基礎研究に関する研究開発費や新規事業・本社機能に係る費用の計上などにより、報告セグメントの利益の合計額との調整額が△508億円(前期の調整額は△496億円)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは1,332億円の収入(前期は1,023億円の収入)となりました。これは当期利益が309億円であったのに対し、棚卸資産の増加128億円などによる減少要因があった一方で、減価償却費及び償却費の計上698億円、仕入債務の増加131億円などの増加要因があったことによります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産および無形資産の取得による支出558億円などがあったことにより、574億円の支出(前期は761億円の支出)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払い214億円、長期借入金の返済による支出140億円があった一方で、社債の発行696億円があったことにより、231億円の収入(前期は2億円の支出)となりました。
以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、3,040億円(前期は1,962億円)となりました。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注)1.上記金額は、販売価格により示しており、セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2.上記金額には、消費税等は含まれておりません。
3.上記金額には、外注製品仕入高等が含まれております。
b.受注実績
エプソンでは、製品の性質上、原則として見込生産を行っているため、該当事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2.上記金額には、消費税等は含まれておりません。
3.総販売実績に対する販売割合が10%以上の相手先はありません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点によるエプソンの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項については、当連結会計年度末現在における予想や一定の前提に基づくものであり、これらの記載は実際の結果と異なる可能性があるとともに、その達成を保証するものではありません。
①経営成績等
(財政状態)
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に対して1,204億円増加し、1兆1,613億円となりました。これは主に、現金及び現金同等物が社債発行などにより増加1,077億円、棚卸資産の増加229億円があったことなどによるものです。
負債合計は、前連結会計年度末に対して734億円増加し、6,083億円となりました。これは主に、グリーンボンド発行などにより社債、借入金及びリース負債の増加562億円、その他の流動負債の増加131億円があったことなどによるものです。
なお、親会社の所有者に帰属する持分合計は、前連結会計年度末に対して471億円増加し、5,509億円となりました。これは主に、親会社の所有者に帰属する当期利益309億円の計上、および確定給付制度の再測定を主因としたその他の包括利益376億円の計上があった一方で、配当金の支払い214億円があったことなどによるものです。
運転資本(流動資産から流動負債を差し引いた金額)は、前連結会計年度末と比較して964億円増加し、4,340億円となりました。
(経営成績)
経営成績につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載のとおりです。
(キャッシュ・フローの状況)
キャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
②資金の源泉および流動性
当連結会計年度後1年間の設備投資計画金額は600億円であり、所要資金につきましては、内部資金、金融機関からの借入および社債の発行によりまかなう予定です。セグメントごとの設備投資計画金額につきましては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりです。なお、上記設備投資計画金額には、リースによる設備投資を含めております。
エプソンでは、設備投資等の事業活動に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用および金融機関からの借入と社債の発行により資金を調達しております。
有利子負債の当連結会計年度末残高は、グリーンボンド発行などによる社債、借入金及びリース負債の増加などにより、前連結会計年度と比較して562億円増加し、2,659億円となりました。現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度と比較して1,077億円増加し、3,040億円となりました。手元流動性は十分に確保しております。
また、コロナ禍による先行きが不透明な中、有事に備えた財務基盤強化の一環として、2020年5月に主要行との間で、環境評価融資商品のコミットメントライン契約を締結しました。なお、当連結会計年度末における当該コミットメントライン契約に基づく借入実行残高はありません。
なお、エプソンは、株式会社格付投資情報センターから信用格付を取得しており、当連結会計年度末において、A(シングルA)となっております。
③経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
エプソンは、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、社会課題の解決のために、創業当時からの独自の強みである「省・小・精の技術」を基盤として、自らの常識やビジョンを超えて果敢に挑戦し、イノベーションを起こすことに取り組んでいます。そして、全社員が価値観を共有のうえ総合力を発揮しつつ、自律的に行動するように努めています。これにより、画期的なお客様価値を継続的かつタイムリーに創造・提供し、より良い社会の構築に「なくてはならない会社」として中心的な役割を果たすとともに、持続的成長および中長期的な企業価値向上を実現してまいります。
エプソンは、将来にわたって追求する「ありたい姿」として設定した「持続可能でこころ豊かな社会の実現」に向け、2021年3月に長期ビジョンを見直し、「Epson 25 Renewed」を策定しました。また、エプソンとして重視している環境問題への対応では、「環境ビジョン2050」を改定し、2050年に「カーボンマイナス」と「地下資源(※)消費ゼロ」の達成を目指すこととしました。
※ 原油、金属などの枯渇性資源
なお、当該長期ビジョンの実現に向けて設定した財務目標の進捗状況は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
④重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
エプソンの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
なお、エプソンの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針 4.重要な会計上の見積りおよび見積りを伴う判断」に記載しております。
①経営成績の状況
当連結会計年度における経済環境を顧みますと、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大が終息となる見通しの不透明さは継続しており、各国の経済対策やワクチン接種率の増加によって、世界経済全体は改善に向かう方向にありますが、国や地域、業種間で異なる回復状況となっています。また、世界景気の回復への動きに伴い消費需要が高まるなか、海上輸送におけるコンテナ不足に加え、電子部品および半導体不足などのサプライチェーン上の問題が発生しており、今後の動向について引き続き注視をしていきます。地域別に見ますと、新興国では、インドや東南アジア、中南米の一部で経済活動の制限継続の影響を受け、引き続き厳しい経済環境の地域がありますが、中国では経済活動の緩やかな回復が継続しています。また、先進国は、下げ止まりから回復への動きが期待されますが、感染症再拡大の動きがある国や地域もあり、引き続き注視が必要な状況にあります。
当連結会計年度の米ドルおよびユーロの平均為替レートはそれぞれ106.01円および123.67円と前期に比べ、米ドルは3%の円高、ユーロは2%の円安に推移しました。また、南米など新興国の通貨については円高に推移しました。
こうした経営環境の下、当連結会計年度の経営成績につきましては、以下のとおりとなりました。
(億円)
前連結 会計年度 | 当連結 会計年度 | 増減金額 | 増減率 | 主な増減理由 | |
売上収益 | 10,436 | 9,959 | △476 | △4.6% | [売上収益] プリンティングソリューションズ事業セグメント △8 ビジュアルコミュニケーション事業セグメント △418 ウエアラブル・産業プロダクツ事業セグメント △42 [事業利益] プリンティングソリューションズ事業セグメント +329 ビジュアルコミュニケーション事業セグメント △122 ウエアラブル・産業プロダクツ事業セグメント +13 |
売上原価 | △6,816 | △6,435 | 380 | - | |
売上総利益 | 3,620 | 3,523 | △96 | △2.7% | |
販売費及び 一般管理費 | △3,211 | △2,907 | 304 | - | |
事業利益(※) | 408 | 616 | 207 | 50.9% | |
その他の営業収益・ その他の営業費用 | △13 | △139 | △126 | - | ウエアラブル機器事業における減損損失計上および為替差損等の増加 |
営業利益 | 394 | 476 | 81 | 20.7% | |
金融収益・金融費用 | 1 | △28 | △29 | - | 為替差損等の増加 |
税引前利益 | 397 | 449 | 52 | 13.1% | |
法人所得税費用 | △318 | △139 | 179 | - | 前期は繰延税金資産の取崩等による増加があったが、当期は多額の取崩がなかったことにより費用減少 |
当期利益 | 78 | 309 | 231 | 296.2% | |
親会社の所有者に 帰属する当期利益 | 77 | 309 | 231 | 299.9% |
※事業利益は、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出しています。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。
(プリンティングソリューションズ事業セグメント)
プリンター事業の売上収益は増加となりました。オフィス・ホーム用インクジェットプリンターは、在宅勤務や家庭学習による印刷ニーズの高まりから大幅な需要増となりました。大容量インクタンクモデルおよびインクカートリッジモデル本体は、新型コロナウイルス影響により製造工場の操業が一時的に低下または停止した影響、および海上輸送におけるコンテナ不足や港湾混雑による輸送遅延などにより、十分な製品供給が行えなかったものの、販売価格の上昇などにより、売上増となりました。消耗品は、高まる在宅印刷需要に対して増産対応をはかり、売上増となりました。シリアルインパクトドットマトリクスプリンターについては、市場縮小に伴う販売減少および為替のマイナス影響により、売上減少となりました。
プロフェッショナルプリンティング事業の売上収益は減少となりました。商業・産業用インクジェットプリンターは、第2四半期以降では、フォト/プルーフでの大口案件獲得、コーポレート・CAD向けモデルや昇華転写プリンターでの本体販売好調などにより増加となった一方、第1四半期で、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う世界各地での経済活動制限の影響を強く受けたことにより、減少となりました。POSシステム関連製品は昨年度のイタリアでの税制改定に伴う需要増の反動に加え、新型コロナウイルス感染拡大による経済活動制限の影響を受けて需要が減少したことにより、売上が減少しました。
その他はOS切り替えに伴うPCの需要増があった前期に対して減収となりました。
プリンティングソリューションズ事業セグメントのセグメント利益は、為替のマイナス影響があったものの、インクジェットプリンターの本体販売価格の上昇および消耗品の売上増加に加え、費用執行を厳選して大幅な費用削減を実施したことにより、増加となりました。
以上の結果、プリンティングソリューションズ事業セグメントの売上収益は7,077億円(前期比0.1%減)、セグメント利益は1,085億円(同43.5%増)となりました。
(ビジュアルコミュニケーション事業セグメント)
ビジュアルコミュニケーション事業の売上収益は、学校の再開に伴う教育案件、およびホーム需要拡大の動きが見られましたが、世界各地での新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済活動制限、各種イベントの延期・中止による影響、さらに継続しているフラットパネルディスプレイの攻勢によりプロジェクター市場の縮小が進んだこと、また、輸送遅延による製品供給不足も加わり、減少となりました。
ビジュアルコミュニケーション事業セグメントのセグメント利益は、費用の執行を厳選し、大幅な削減を進めていますが、減収影響により、減少となりました。
以上の結果、ビジュアルコミュニケーション事業セグメントの売上収益は1,414億円(前期比22.8%減)、セグメント利益は13億円(同90.1%減)となりました。
(ウエアラブル・産業プロダクツ事業セグメント)
ウエアラブル機器事業の売上収益は、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大により、世界各地で販売店の営業自粛、経済活動制限の影響を受けたこと、また特に国内では感染拡大による年末商戦期の需要落ち込みに加え、インバウンド需要が大幅に減少したことなどにより、大幅な減少となりました。
ロボティクスソリューションズ事業の売上収益は、主に中国での案件獲得による販売増加により、大幅な増加となりました。
マイクロデバイス事業の売上収益は、市場からの需要が足もとで急増するなか、水晶デバイスでPCおよびヘルスケア向けが増加したことに加え、半導体でファンドリの需要増により、増加となりました。
ウエアラブル・産業プロダクツ事業セグメントのセグメント利益は、ウエアラブル機器事業を中心とした減収影響があったものの、費用執行の抑制・削減により、増加となりました。
以上の結果、ウエアラブル・産業プロダクツ事業セグメントの売上収益は1,486億円(前期比2.8%減)、セグメント利益は32億円(同75.0%増)となりました。
なお、上記のほか、ウエアラブル機器事業において、収益性の低下、ならびに事業戦略の見直しにより、減損損失75億円を計上しております。
(その他)
その他の売上収益は8億円(前期比12.2%減)、セグメント損失は6億円(前期は5億円のセグメント損失)となりました。
(調整額)
報告セグメントに帰属しない基礎研究に関する研究開発費や新規事業・本社機能に係る費用の計上などにより、報告セグメントの利益の合計額との調整額が△508億円(前期の調整額は△496億円)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは1,332億円の収入(前期は1,023億円の収入)となりました。これは当期利益が309億円であったのに対し、棚卸資産の増加128億円などによる減少要因があった一方で、減価償却費及び償却費の計上698億円、仕入債務の増加131億円などの増加要因があったことによります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産および無形資産の取得による支出558億円などがあったことにより、574億円の支出(前期は761億円の支出)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払い214億円、長期借入金の返済による支出140億円があった一方で、社債の発行696億円があったことにより、231億円の収入(前期は2億円の支出)となりました。
以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、3,040億円(前期は1,962億円)となりました。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | 前期比(%) |
プリンティングソリューションズ事業(百万円) | 662,229 | 95.8 |
ビジュアルコミュニケーション事業(百万円) | 135,636 | 76.5 |
ウエアラブル・産業プロダクツ事業(百万円) | 137,854 | 96.5 |
セグメント計(百万円) | 935,720 | 92.5 |
その他(百万円) | - | - |
合計(百万円) | 935,720 | 92.5 |
(注)1.上記金額は、販売価格により示しており、セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2.上記金額には、消費税等は含まれておりません。
3.上記金額には、外注製品仕入高等が含まれております。
b.受注実績
エプソンでは、製品の性質上、原則として見込生産を行っているため、該当事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | 前期比(%) |
プリンティングソリューションズ事業(百万円) | 707,563 | 100.0 |
ビジュアルコミュニケーション事業(百万円) | 141,468 | 77.2 |
ウエアラブル・産業プロダクツ事業(百万円) | 140,595 | 96.9 |
セグメント計(百万円) | 989,626 | 95.5 |
その他(百万円) | 190 | 102.5 |
合計(百万円) | 989,817 | 95.5 |
(注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2.上記金額には、消費税等は含まれておりません。
3.総販売実績に対する販売割合が10%以上の相手先はありません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点によるエプソンの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項については、当連結会計年度末現在における予想や一定の前提に基づくものであり、これらの記載は実際の結果と異なる可能性があるとともに、その達成を保証するものではありません。
①経営成績等
(財政状態)
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に対して1,204億円増加し、1兆1,613億円となりました。これは主に、現金及び現金同等物が社債発行などにより増加1,077億円、棚卸資産の増加229億円があったことなどによるものです。
負債合計は、前連結会計年度末に対して734億円増加し、6,083億円となりました。これは主に、グリーンボンド発行などにより社債、借入金及びリース負債の増加562億円、その他の流動負債の増加131億円があったことなどによるものです。
なお、親会社の所有者に帰属する持分合計は、前連結会計年度末に対して471億円増加し、5,509億円となりました。これは主に、親会社の所有者に帰属する当期利益309億円の計上、および確定給付制度の再測定を主因としたその他の包括利益376億円の計上があった一方で、配当金の支払い214億円があったことなどによるものです。
運転資本(流動資産から流動負債を差し引いた金額)は、前連結会計年度末と比較して964億円増加し、4,340億円となりました。
(経営成績)
経営成績につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載のとおりです。
(キャッシュ・フローの状況)
キャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
②資金の源泉および流動性
当連結会計年度後1年間の設備投資計画金額は600億円であり、所要資金につきましては、内部資金、金融機関からの借入および社債の発行によりまかなう予定です。セグメントごとの設備投資計画金額につきましては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりです。なお、上記設備投資計画金額には、リースによる設備投資を含めております。
エプソンでは、設備投資等の事業活動に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用および金融機関からの借入と社債の発行により資金を調達しております。
有利子負債の当連結会計年度末残高は、グリーンボンド発行などによる社債、借入金及びリース負債の増加などにより、前連結会計年度と比較して562億円増加し、2,659億円となりました。現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度と比較して1,077億円増加し、3,040億円となりました。手元流動性は十分に確保しております。
また、コロナ禍による先行きが不透明な中、有事に備えた財務基盤強化の一環として、2020年5月に主要行との間で、環境評価融資商品のコミットメントライン契約を締結しました。なお、当連結会計年度末における当該コミットメントライン契約に基づく借入実行残高はありません。
なお、エプソンは、株式会社格付投資情報センターから信用格付を取得しており、当連結会計年度末において、A(シングルA)となっております。
③経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
エプソンは、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、社会課題の解決のために、創業当時からの独自の強みである「省・小・精の技術」を基盤として、自らの常識やビジョンを超えて果敢に挑戦し、イノベーションを起こすことに取り組んでいます。そして、全社員が価値観を共有のうえ総合力を発揮しつつ、自律的に行動するように努めています。これにより、画期的なお客様価値を継続的かつタイムリーに創造・提供し、より良い社会の構築に「なくてはならない会社」として中心的な役割を果たすとともに、持続的成長および中長期的な企業価値向上を実現してまいります。
エプソンは、将来にわたって追求する「ありたい姿」として設定した「持続可能でこころ豊かな社会の実現」に向け、2021年3月に長期ビジョンを見直し、「Epson 25 Renewed」を策定しました。また、エプソンとして重視している環境問題への対応では、「環境ビジョン2050」を改定し、2050年に「カーボンマイナス」と「地下資源(※)消費ゼロ」の達成を目指すこととしました。
※ 原油、金属などの枯渇性資源
なお、当該長期ビジョンの実現に向けて設定した財務目標の進捗状況は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
④重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
エプソンの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
なお、エプソンの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針 4.重要な会計上の見積りおよび見積りを伴う判断」に記載しております。