有価証券報告書-第76期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/28 15:03
【資料】
PDFをみる
【項目】
63項目
(1)経営成績等の状況の概要
①経営成績の状況
当連結会計年度における経済環境を顧みますと、景気は総じて緩やかな回復基調が続きました。地域別に見ますと、米国では個人消費の増加や雇用環境の改善を背景に着実に回復が続きました。中南米および欧州においては緩やかに回復し、中国では持ち直しの動きがみられました。日本は、堅調な雇用・所得情勢を受けて個人消費が底堅く推移したことにより、緩やかな回復基調が続きました。
このような状況の中、エプソンの主要市場につきましては、以下のとおりとなりました。
インクジェットプリンターの需要は、日本および欧州では縮小が継続しましたが、米州では堅調に推移しました。大容量インクタンクモデルに対する需要は堅調に拡大しました。大判インクジェットプリンターの需要は、堅調に推移しました。シリアルインパクトドットマトリクスプリンター(SIDM)の需要は、中国での前年度の「営改増」施行による徴税市場における特需がなくなり、米州および欧州でも縮小が継続しました。
プロジェクターの需要は、前年度の欧州での大型スポーツイベントによる需要増加がなくなったこと、欧州一部主要国での教育需要縮小、および北米リテール市場の低迷継続により縮小しました。
電子デバイス製品の水晶デバイスは、主要なアプリケーションであるスマートフォンの需要が、中国において市場の成熟化により縮小しました。ウオッチの需要は、日本では緩やかに回復しました。ウオッチムーブメントの需要は堅調に推移しました。産業用ロボットの需要は、中国を中心に拡大しました。
当連結会計年度の米ドルおよびユーロの平均為替レートはそれぞれ110.85円および129.66円と前期に比べ、米ドルでは2%の円安、ユーロでは9%の円安に推移しました。
こうした経営環境の下、当連結会計年度の経営成績につきましては、以下のとおりとなりました。
(億円)
前連結
会計年度
当連結
会計年度
増減金額増減率主な増減理由
売上収益10,24811,0217727.5%プリンティングソリューションズ事業セグメントの増収および為替の影響等による増加
売上原価△6,588△7,012△423-売上収益の変動および為替の影響等による増加
売上総利益3,6594,0083489.5%
販売費及び
一般管理費
△3,001△3,260△258-為替の影響等による増加
事業利益 ※6587478913.6%為替の影響等による増加
その他の営業収益・
その他の営業費用
20△97△118-為替差損および海外拠点再整備に伴う費用等の増加
営業利益678650△28△4.3%
金融収益・金融費用△4△24△19-為替差損等の増加
税引前利益674626△48△7.1%
法人所得税費用△184△208△24-米国税制改正に伴う繰延税金資産の取崩し等による増加
当期利益484417△66△13.8%

※ 事業利益は、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出しています。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。
(プリンティングソリューションズ事業セグメント)
プリンター事業の売上収益は増加となりました。製品別の内容は以下のとおりです。
インクジェットプリンターは、大容量インクタンクモデルが新興国を中心に販売数量が大幅に増加したことに加え、先進国においても市場認知度の高まりから販売数量が増加し、売上の拡大が継続しました。また、為替による増収影響もあり、全体では売上増加となりました。消耗品は、コンシューマー向けインクカートリッジは減少したものの、大容量インクタンクモデル用ボトルが増加したことや為替による増収影響もあり、前期並みに推移しました。
ページプリンターは、高付加価値製品を中心に販売を絞り込んだことにより、本体販売の減少に加えて消耗品販売も落ち込んだ結果、売上減少となりました。
SIDMは、中国徴税市場での特需があった前期に対して売上減少となりました。
プロフェッショナルプリンティング事業の売上収益は増加となりました。製品別の内容は以下のとおりです。
大判インクジェットプリンターは、成長市場であるサイネージ分野、テキスタイル分野およびラベル分野でも好調に推移したことで売上が拡大し、為替による増収影響もあり、全体では売上増加となりました。
POSシステム関連製品は、北米での案件獲得などによる販売数量の増加、為替による増収影響もあり、売上増加となりました。
プリンティングソリューションズ事業セグメントのセグメント利益につきましては、SIDMでの売上減少や原材料の高騰などがあったものの、インクジェットプリンターの大容量インクタンクモデルや大判インクジェットプリンターの売上増加、為替による影響もあり、増益となりました。
以上の結果、プリンティングソリューションズ事業セグメントの売上収益は7,366億円(前期比7.3%増)、セグメント利益は948億円(同12.8%増)となりました。
(ビジュアルコミュニケーション事業セグメント)
ビジュアルコミュニケーション事業の売上収益は増加となりました。
液晶プロジェクターは、高光束分野でのレーザー光源モデル等が好調に推移したことで高付加価値製品の販売数量が大幅に増加し、為替による影響もあり、全体では売上増加となりました。
ビジュアルコミュニケーション事業セグメントのセグメント利益につきましては、高光束分野等での販売数量の増加、為替による影響もあり、増益となりました。
以上の結果、ビジュアルコミュニケーション事業セグメントの売上収益は1,988億円(前期比10.7%増)、セグメント利益は244億円(同51.3%増)となりました。
(ウエアラブル・産業プロダクツ事業セグメント)
ウエアラブル機器事業の売上収益は、為替による増収影響がありましたが、北米における小売市場での需要減少等により、前期をやや下回る売上となりました。
ロボティクスソリューションズ事業の売上収益は増加となりました。産業用ロボットが中国を中心としたロボット需要を取り込み売上増加となり、また為替による増収影響もあり、全体では売上増加となりました。
マイクロデバイス事業の売上収益は、増加となりました。水晶デバイスは、為替による増収影響がありましたが、携帯電話などのパーソナル機器向けの数量減少により売上減少となりました。半導体は、市場の需要増による販売数量の増加、為替による増収影響により、売上増加となりました。
ウエアラブル・産業プロダクツ事業セグメントのセグメント利益につきましては、ロボティクスソリューションズ事業や半導体での売上増加、為替による影響があったものの、ウエアラブル機器事業や水晶デバイスでの売上減少により、減益となりました。
以上の結果、ウエアラブル・産業プロダクツ事業セグメントの売上収益は1,673億円(前期比5.5%増)、セグメント利益は71億円(同8.4%減)となりました。
(その他)
その他の売上収益は9億円(前期比37.9%減)、セグメント損失は5億円(前期は4億円のセグメント損失)となりました。
(調整額)
セグメントに帰属しない基礎研究に関する研究開発費や新規事業・本社機能に係る費用の計上などにより、セグメントの利益の合計額との調整額が△511億円(前期の調整額は△417億円)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、842億円の収入(前期は968億円の収入)となりました。これは当期利益417億円に加え、減価償却費及び償却費の計上499億円などの増加要因があったことによります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産および無形資産の取得による支出736億円などがあったことにより、746億円の支出(前期は757億円の支出)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の償還による支出100億円や配当金の支払額211億円があった一方、社債の発行による収入198億円や短期借入金の純増115億円などにより、0億円の収入(前期は266億円の支出)となりました。
以上の結果、当連結会計年度の現金及び現金同等物の期末残高は、2,296億円(前期は2,217億円)となりました。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2017年4月1日
至 2018年3月31日)
前期比(%)
プリンティングソリューションズ事業(百万円)741,665109.1
ビジュアルコミュニケーション事業(百万円)208,598118.9
ウエアラブル・産業プロダクツ事業(百万円)160,060108.5
セグメント計(百万円)1,110,324110.7
その他(百万円)17629.6
合計(百万円)1,110,500110.7

(注)1.上記金額は、販売価格により示しており、セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2.上記金額には、消費税等は含まれておりません。
3.上記金額には、外注製品仕入高等が含まれております。
b.受注実績
エプソンでは、製品の性質上、原則として見込生産を行っているため、該当事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2017年4月1日
至 2018年3月31日)
前期比(%)
プリンティングソリューションズ事業(百万円)736,239107.3
ビジュアルコミュニケーション事業(百万円)198,889110.7
ウエアラブル・産業プロダクツ事業(百万円)158,535105.2
セグメント計(百万円)1,093,663107.6
その他(百万円)18723.8
合計(百万円)1,093,851107.5

(注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2.上記金額には、消費税等は含まれておりません。
3.総販売実績に対する販売割合が10%以上の相手先はありません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点によるエプソンの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項については、当連結会計年度末現在における予想や一定の前提に基づくものであり、これらの記載は実際の結果と異なる可能性があるとともに、その達成を保証するものではありません。
①経営成績等
(財政状態)
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に対して589億円増加し、1兆333億円となりました。これは主に、有形固定資産の増加227億円、棚卸資産の増加147億円、売上債権及びその他の債権の増加95億円、現金及び現金同等物の増加78億円、その他の流動資産の増加33億円があったことなどによるものです。当連結会計年度末のプリンティングソリューションズ事業セグメントのセグメント資産は、新製品対応や生産能力増強を主目的とした設備投資に伴う有形固定資産の増加などにより、前連結会計年度末と比較して337億円増加し、4,104億円となりました。同様にビジュアルコミュニケーション事業セグメントのセグメント資産は、前連結会計年度末比123億円増加の1,273億円、また、ウエアラブル・産業プロダクツ事業セグメントのセグメント資産は、同83億円増加の1,423億円となりました。
負債合計は、前連結会計年度末に対して385億円増加し、5,182億円となりました。これは主に、その他の流動負債の減少53億円、退職給付に係る負債の減少29億円があった一方で、流動負債および非流動負債の社債、借入金及びリース債務の増加199億円、仕入債務及びその他の債務の増加131億円、その他の非流動負債の増加79億円、流動負債および非流動負債の引当金の増加71億円があったことなどによるものです。
親会社の所有者に帰属する持分合計は、前連結会計年度末に対して205億円増加し、5,127億円となりました。これは主に、配当金の支払い211億円、円高進行に伴う在外営業活動体の換算差額の減少を主因とするその他の資本の構成要素の減少52億円がありましたが、利益剰余金が当期利益418億円の計上および確定給付制度の再測定49億円により増加したことなどによるものです。
運転資本(流動資産から流動負債を差し引いた金額)は、前連結会計年度末と比較して657億円増加し、3,167億円となりました。
(経営成績)
経営成績につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載のとおりです。
(キャッシュ・フローの状況)
キャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
②資金の源泉および流動性
当連結会計年度後1年間の設備投資計画金額は830億円であり、所要資金につきましては、自己資金でまかなう予定です。セグメントごとの設備投資計画金額につきましては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりです。
エプソンでは、設備投資等の事業活動に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用および金融機関からの借入と社債の発行により資金を調達しております。
有利子負債の当連結会計年度末残高は、社債の償還があった一方、社債の発行および借入金の増加により、前連結会計年度と比較して199億円増加し、1,665億円となりました。現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度と比較して78億円増加し、2,296億円となりました。手元流動性は十分に確保しております。
なお、エプソンは、株式会社格付投資情報センターから信用格付を取得しており、当連結会計年度末において、A(シングルA)となっております。
③経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
エプソンは、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、長期ビジョン「Epson 25」およびこの実現に向けた中期経営計画に基づく成長戦略を推進し、事業基盤や財務構造の強化を図ることにより、2025年度の業績目標(為替レート前提:1米ドル 115円・1ユーロ 125円)として、売上収益:1兆7,000億円、事業利益:2,000億円、ROS(事業利益/売上収益):12%、ROE(当期利益/親会社所有者帰属持分):15%を目指しています。
今後、独自の強みを発揮できる各イノベーション領域において、上記の「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」で掲げた各事業の将来成長に向けた施策を成し遂げ、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図ることにより、業績目標の実現に取り組んでまいります。
(経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報)
IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と連結財務諸表規則(第7章及び第8章を除く。以下「日本基準」という。)により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、以下のとおりです。
退職後給付に係る費用
エプソンは、日本基準の下で、発生した数理計算上の差異および過去勤務費用を一定の期間で償却しておりました。IFRSでは、確定給付制度の再測定は、発生した期においてその他の包括利益として一括認識しており、直ちに利益剰余金に振り替えております。過去勤務費用は、制度改訂または縮小が発生した時あるいは関連するリストラクチャリング費用または解雇給付を認識した時のいずれか早い期において純損益として認識しております。
この影響により、IFRSでは日本基準に比べて、前連結会計年度の売上原価、販売費及び一般管理費および金融費用は4億円増加し、当連結会計年度の売上原価、販売費及び一般管理費および金融費用は23億円増加しております。