有価証券報告書-第82期(2023/04/01-2024/03/31)

【提出】
2024/06/26 9:36
【資料】
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【項目】
150項目
(1)経営成績等の状況の概要
①経営成績の状況
当連結会計年度における経済環境を顧みますと、高インフレや各国の金融引き締めが継続し、世界経済の減速が強まっています。とりわけ、中国における景気回復ペースの鈍化が世界経済に大きな影響を及ぼしているほか、欧州経済の減速が顕在化しています。また、米国消費はこれまで堅調を維持しているものの、今後の消費動向は不透明となっています。なお、商品市場別の状況としましては、特にデバイス市場において在庫調整局面が長期化し、大幅な落ち込みとなっています。
今後も世界的な高インフレや景気減速の長期化等のリスクが想定され、先行き不透明な状況にありますので、今後の動向を引き続き注視していきます。
当連結会計年度の米ドルおよびユーロの平均為替レートはそれぞれ144.44円および156.66円と前期に比べ、米ドルは7%の円安、ユーロは11%の円安に推移しました。また、南米など新興国の通貨も円安に推移しました。
こうした経営環境の下、当連結会計年度の経営成績につきましては、以下のとおりとなりました。
(単位:億円)
前連結
会計年度
当連結
会計年度
増減金額増減率主な増減理由
売上収益13,30313,139△163△1.2%[売上収益]
プリンティングソリューションズ事業セグメント+162
ビジュアルコミュニケーション事業セグメント+5
マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業セグメント△355
[事業利益]
プリンティングソリューションズ事業セグメント+67
ビジュアルコミュニケーション事業セグメント△32
マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業セグメント△298
売上原価△8,636△8,57363-
売上総利益4,6664,566△99△2.1%
販売費及び
一般管理費
△3,715△3,919△204-
事業利益(※)951647△303△31.9%
その他の営業収益・
その他の営業費用
19△71△91-英国現地法人の年金バイアウトに向けた関連費用計上および為替差益の減少等
営業利益970575△395△40.7%
金融収益・金融費用6612559-為替差益の増加等
税引前利益1,037700△336△32.4%
法人所得税費用△287△174112-税引前利益の減少等
当期利益750526△224△29.9%
親会社の所有者に
帰属する当期利益
750526△224△29.9%

※ 事業利益は、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出しています。
報告セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。
(プリンティングソリューションズ事業セグメント)
オフィス・ホームプリンティング事業の売上収益は微減となりました。ラインインクジェットプリンター新製品投入によるオフィス共有IJPの大幅な売上増や為替のプラス影響があったものの、インクカートリッジモデル本体の販売数量が大幅な減少となったことや、大容量インクタンクモデル本体の販売数量が減少となったことなどにより、インクジェットプリンター本体の売上は減少となりました。インクジェットプリンターの消耗品は、インクカートリッジの売上が若干の減少となったものの、大容量インクタンクモデルのインクボトルおよびオフィス共有IJPのインクの売上が大幅に増加したことや為替のプラス影響により、全体でも増加となりました。
商業・産業プリンティング事業の売上収益は増加となりました。商業・産業IJP本体の売上は、金利上昇に伴う投資需要の低下等で欧米向け販売が減少したものの、為替のプラス影響により若干の増加となりました。商業・産業IJPの消耗品売上は、印刷需要が継続していることで増加となりました。小型プリンターの売上は、金利上昇やインフレ等による市況悪化により欧米中心に市場需要が低下し、減少となりました。プリントヘッド外販ビジネスの売上は、新興国向け輸出を手掛ける中国顧客向けを中心に需要が増加し、大幅な増加となりました。
プリンティングソリューションズ事業セグメントのセグメント利益は、インクジェットプリンター本体や小型プリンターの販売減、事業活動の本格化に伴う販管費の増加等があったものの、プリントヘッド外販ビジネスの売上が増加したことや、為替のプラス影響により増加となりました。
以上の結果、プリンティングソリューションズ事業セグメントの売上収益は9,186億円(前期比1.8%増)、セグメント利益は961億円(同7.6%増)となりました。
(ビジュアルコミュニケーション事業セグメント)
ビジュアルコミュニケーション事業セグメントの売上収益は、前期は受注残の解消が進んだ影響を含むことに加え、今期は個人消費の落ち込みに伴うホーム向けプロジェクターの販売減、北米における教育向けの需要減による影響があったものの、新興国で教育向け需要が堅調であったことや為替のプラス影響により前期並みとなりました。
ビジュアルコミュニケーション事業セグメントのセグメント利益は、生産抑制に伴う利益マイナス影響等により、減少となりました。
以上の結果、ビジュアルコミュニケーション事業セグメントの売上収益は2,174億円(前期比0.3%増)、セグメント利益は315億円(同9.4%減)となりました。
(マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業セグメント)
マニュファクチャリングソリューションズ事業の売上収益は、中国における売上減の影響が大きく、大幅な減少となりました。
ウエアラブル機器事業の売上収益は、国内において高単価の新製品販売が増加した前期と比較すると、減少となりました。
マイクロデバイス事業の売上収益は、大幅な減少となりました。水晶デバイスの売上は、市場での在庫調整影響に伴う需要減により、中国向けを中心に大幅な減少となりました。半導体の売上は、市場での在庫調整に伴う需要減により、減少となりました。
マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業セグメントのセグメント利益は、マイクロデバイス事業を中心とした売上減の影響が大きく、大幅な減少となりました。
以上の結果、マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業セグメントの売上収益は1,799億円(前期比16.5%減)、セグメント損失は15億円(前期はセグメント利益283億円)となりました。
なお、上記の他、マニュファクチャリングソリューションズ事業において、中国における景気低迷やローカルメーカーの台頭等の市場環境の変化に加え、成長に向けた人的投資の継続により、収益性の改善に時間を要する見込みであることから、減損損失6億円を計上しております。
(調整額)
報告セグメントに帰属しない基礎研究に関する研究開発費や新規事業・本社機能に係る収益、費用の計上などにより、報告セグメントの利益の合計額との調整額が△614億円(前期の調整額は△573億円)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、1,655億円の収入(前期は613億円の収入)となりました。これは主に、当期利益526億円に加え、減価償却費及び償却費686億円、棚卸資産の減少額710億円などの増加要因があったことによるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、589億円の支出(前期は616億円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産および無形資産の取得による支出565億円などがあったことによるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、653億円の支出(前期は793億円の支出)となりました。これは主に、社債の償還による支出300億円、リース負債の返済による支出100億円、配当金の支払額258億円などがあったことによるものです。
以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、為替変動の影響を合わせて、前連結会計年度末から611億円増加し、3,284億円となりました。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
エプソンの生産実績は、販売実績と近似しているため、記載を省略しております。
b.受注実績
エプソンでは、製品の性質上、原則として見込生産を行っているため、該当事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2023年4月1日
至 2024年3月31日)
前期比(%)
プリンティングソリューションズ事業(百万円)918,630101.8
ビジュアルコミュニケーション事業(百万円)217,462100.3
マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業(百万円)170,80383.2
報告セグメント計(百万円)1,306,89598.7
その他(百万円)7,102124.6
合計(百万円)1,313,99898.8

(注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2.総販売実績に対する販売割合が10%以上の相手先はありません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点によるエプソンの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項については、当連結会計年度末現在における予想や一定の前提に基づくものであり、これらの記載は実際の結果と異なる可能性があるとともに、その達成を保証するものではありません。
①経営成績等
(財政状態)
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に対して715億円増加し、1兆4,130億円となりました。これは主に、棚卸資産の減少312億円があった一方で、現金及び現金同等物の増加611億円、売上債権及びその他の債権の増加109億円、有形固定資産の増加164億円、その他の金融資産の増加52億円などがあったことによるものです。
負債合計は、前連結会計年度末に対して121億円減少し、6,019億円となりました。これは主に、その他の流動負債の増加62億円があった一方で、社債、借入金及びリース負債の減少284億円などがあったことによるものです。
なお、親会社の所有者に帰属する持分合計は、前連結会計年度末に対して836億円増加し、8,109億円となりました。これは主に、配当金の支払い258億円があった一方で、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上526億円、在外営業活動体の換算差額を主因としたその他の包括利益の計上566億円などがあったことによるものです。
運転資本(流動資産から流動負債を差し引いた金額)は、前連結会計年度末と比較して402億円増加し、5,610億円となりました。
(経営成績)
経営成績につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載のとおりです。
(キャッシュ・フローの状況)
キャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
②資金の源泉および流動性
当連結会計年度後1年間の設備投資計画金額は730億円であり、所要資金につきましては、内部資金によりまかなう予定です。セグメントごとの設備投資計画金額につきましては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりです。なお、上記設備投資計画金額には、リースによる設備投資を含めております。
エプソンでは、設備投資等の事業活動に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用および金融機関からの借入と社債の発行により資金を調達しております。
有利子負債の当連結会計年度末残高は、社債の償還などにより前連結会計年度と比較して284億円減少し、2,047億円となりました。現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度と比較して611億円増加し、3,284億円となり、手元流動性は十分に確保しております。
また、有事に備えた財務基盤強化の一環として、2020年5月に主要行との間で、環境評価融資商品のコミットメントライン契約を締結し、2023年5月に契約を更新しておりますが、当連結会計年度末における当該コミットメントライン契約に基づく借入実行残高はありません。
なお、エプソンは、株式会社格付投資情報センターから信用格付を取得しており、当連結会計年度末において、A(シングルA)となっております。
③経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
エプソンは、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、社会課題の解決のために、創業当時からの独自の強みである「省・小・精の技術」を基盤として、自らの常識やビジョンを超えて果敢に挑戦し、イノベーションを起こすことに取り組んでいます。そして、全社員が価値観を共有のうえ総合力を発揮しつつ、自律的に行動するように努めています。これにより、画期的なお客様価値を継続的かつタイムリーに創造・提供し、より良い社会の構築に「なくてはならない会社」として中心的な役割を果たすとともに、持続的成長および中長期的な企業価値向上を実現してまいります。
エプソンは、将来にわたって追求する「ありたい姿」として設定した「持続可能でこころ豊かな社会の実現」に向け、2021年3月に長期ビジョンを見直し、「Epson 25 Renewed」を策定しました。また、エプソンとして重視している環境問題への対応では、「環境ビジョン2050」を改定し、2050年に「カーボンマイナス」と「地下資源(※)消費ゼロ」の達成を目指すこととしました。
※ 原油、金属などの枯渇性資源
なお、当該長期ビジョンの実現に向けて設定した財務目標の進捗状況は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
④重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
エプソンの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
なお、エプソンの連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針、会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針 4.重要な会計上の見積りおよび見積りを伴う判断」に記載しております。