有価証券報告書-第93期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

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2019/06/27 14:58
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「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、財政状態の状況については、当該会計基準等を遡って適用した後の数値で前連結会計年度との比較・分析を行っております。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の世界経済及び日本経済は、堅調な設備投資や個人消費を背景に緩やかな回復基調が続いておりましたが、一方で、米中貿易摩擦や中国経済の減速、欧州では英国の欧州連合(EU)離脱問題等により、景気の先行きに不確実性が高まりました。
当社グループにおきましては、2017年5月に公表した前中期経営計画に沿って諸施策を遂行し、その成果も着実に出てきておりました。
自動車機器事業においては、電気自動車市場の拡大に向け日本及び中国の設備を増強、水加熱ヒーターやヒートポンプシステム等、先端技術製品への設備投資も行ないました。また、前中期計画の重点項目である「収益性向上に向けたコスト構造改革」のため、当社の戦略的重要市場である欧州、米州、中国、アジアにおいて拠点再編を進めてまいりました。
流通システム事業においては、国内におけるコーヒーサーバーの新規納入等、顧客の成長戦略及び環境指向に対応した製品・システム・サービスのトータルな提案・提供を継続してまいりました。海外においても、日本で確立したコールド・チェーンの経営ノウハウを、成長が期待出来るアジアへ展開するため、東南アジアを中心にサービス・保守ビジネスの拠点を設置する等、将来成長に向けた体制構築を進めてまいりました。
しかしながら一方で、冒頭の環境変化に加え、欧州環境規制、米国の中東制裁等、当社を取り巻く経営環境も前中期経営計画の策定時より一段と厳しい状況となり、自動車機器事業において、ディーゼル車両向製品やイランの経済制裁に伴うアジア地域での販売減、新規車両向製品の販売延期等、多大な影響を受けました。
その結果、当連結会計年度の売上高は、流通システム事業の販売増があるものの、米中貿易摩擦の影響による市場の落ち込みや海外を中心とした自動車販売の減速等の影響を受け、273,934百万円(前年同期比4.8%減)となりました。損益につきましても、収益性向上に向けたコスト構造改革に取り組んでまいりましたが、主に減収の影響により、営業利益は889百万円(前年同期比83.7%減)、経常利益は564百万円(前年同期比87.2%減)となりました。親会社株主に帰属する当期純損失については、中東に所在する関連会社に対する売上債権等について貸倒引当金繰入額(特別損失)を計上したことや構造改革費用の計上等により、23,060百万円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純利益4,255百万円)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
A.自動車機器事業
自動車機器事業においては、顧客の環境指向を的確に捉えた最先端の商品開発を進め、小型・軽量化、省動力化を軸に価値ある製品を提供してまいりました。
しかしながら、欧州を中心に環境車製品の販売増はあるものの、米中通商政策等の影響によるアジア・中国の販売減、米国における主要顧客の販売減影響等により、売上高は前年同期に比べ減収となりました。
利益については、急激な販売減に対し原価低減や更なる費用見直しを進めましたが、前年同期に比べ減益となりました。その結果、売上高は193,465百万円(前年同期比7.4%減)、営業利益は560百万円(前年同期比91.5%減)となりました。
B.流通システム事業
店舗システム事業においては、顧客の成長戦略及び環境指向に対応した製品・システム・サービスのトータルな提案・提供を継続してまいりました。売上高は国内店舗システムにおけるコーヒーサーバーの新規納入等により前年同期に比べ増収となりました。
ベンディングシステム事業においては、積極的な環境製品の開発や新製品展開によるビジネス拡大を図りましたが、国内自動販売機市場の縮小傾向等の影響を受け、売上高は前年同期水準に留まりました。
利益については、規模増の影響等により、前年同期に比べ増益となりました。その結果、売上高は69,423百万円(前年同期比1.9%増)、営業利益は773百万円(前年同期比170.9%増)となりました。
当連結会計年度末における総資産は、主に貸倒引当金の計上及び、現金及び預金、有形固定資産、繰延税金資産等の減少により、前連結会計年度末に比べて29,247百万円減少し、246,401百万円となりました。
セグメントごとの資産は、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)
前連結会計年度
(2018年3月31日)
当連結会計年度
(2019年3月31日)
前年差
自動車機器事業210,216175,234△34,981
流通システム事業55,41961,9316,511
報告セグメント計265,636237,165△28,470
その他10,0139,235△777
合計275,649246,401△29,247

負債については、主に有利子負債等の増加、支払手形及び買掛金、未払金等の減少があり、前連結会計年度末に比べて1,829百万円減少し、222,862百万円となりました。
純資産については、親会社株主に帰属する当期純損失、為替換算調整勘定の減少等により、前連結会計年度末に比べて27,418百万円減少し、23,538百万円となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ5,746百万円減少、13,030百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純損失20,568百万円を計上しましたが、貸倒引当金の増減額、構造改革費用等の営業資産圧縮により3,043百万円(前年同期比4,097百万円の収入減)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出14,196百万円等により、△11,362百万円(前年同期比15,456百万円の支出増)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済及び社債の償還により20,452百万円等の支出があったものの、長期借入金の実施及び社債の発行による18,835百万円の収入等により、2,679百万円(前年同期比9,215百万円の収入増)となりました。
③生産、受注及び販売の実績
A. 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
金額(百万円)前年同期比(%)
自動車機器事業181,71495.4
流通システム事業64,00199.7
報告セグメント計245,71596.5
その他2,23953.4
合計247,95595.8

(注) 1.金額は販売価格によっております。
2.金額には消費税等は含まれておりません。
B. 商品仕入実績
当連結会計年度における商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
金額(百万円)前年同期比(%)
自動車機器事業9,03778.5
流通システム事業3,348172.2
報告セグメント計12,38692.0
その他6,767106.1
合計19,15396.5

(注) 1.金額は実際購入価格によっております。
2.金額には消費税等は含まれておりません。
C. 受注実績
当社グループ(当社及び連結子会社)は、国内外での受注状況、最近の販売実績及び販売見込等の情報を基礎として、見込生産を行っております。
D. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
金額(百万円)前年同期比(%)
自動車機器事業193,46592.6
流通システム事業69,423101.9
報告セグメント計262,88894.9
その他11,045104.1
合計273,93495.2

(注) 金額には消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
A.貸倒引当金
当社グループは、金銭債権の貸倒による損失に備えるため、当社及び国内連結子会社は、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見積額を計上しております。また在外連結子会社は主として特定の債権について回収不能見込額を計上しております。
したがって、顧客の財政状態が悪化し、その支払能力が低下した場合には当該引当金の追加処理が必要となる可能性があります。
B.製品保証引当金
当社グループは、製品の販売後の無償サービス費用に充てるため、売上高に対する過年度の発生率による金額の他、個別に発生額を見積もることができる費用について製品保証引当金を計上しております。
当社グループの製品不良率や保証コストの見積りが実際と異なる場合は、製品保証費用の見積りについて修正が必要となる可能性があります。
C.投資の減損
当社グループは、保有株式について将来の市況悪化や投資先の業績不振等を勘案して、投資価値の著しい下落が一時的ではないと判断される場合、評価損の計上が必要となる可能性があります。
D.固定資産の減損
当社グループは、固定資産を保有しており、固定資産の回収可能価額について、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき算出しております。従って、当初見込んでいた収益が得られなかった場合や、将来キャッシュ・フロー等の前提条件に変更があった場合、固定資産の減損を実施する可能性があります。
E.繰延税金資産
当社グループは、将来の課税所得及び実現可能性の高い継続的なタックスプランニングを分析、検討して繰延税金資産を計上しております。
繰延税金資産の全部又は一部を将来にわたり回収できないと判断した場合、当該判断を決定した期間において、繰延税金資産の減額を実施します。一方、今後新たに繰延税金資産を回収できると判断した場合には、法人税等調整額により繰延税金資産の増額を実施します。
F.退職給付に係る会計処理の方法
当社グループは、従業員の退職給付に備えるため、連結会計年度末における退職給付債務及び年金資産の見積額に基づき、退職給付に係る負債を計上しております。
当社グループの退職給付債務の計算における割引率、退職率、昇給率、運用付加金利等の前提条件が将来において変化した場合には、将来期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼす可能性があります。
・退職給付見込額の期間帰属方法
退職給付債務の算定にあたり、退職給付見込額を当連結会計年度末までの期間に帰属させる方法については、給付算定式基準によっております。
・数理計算上の差異及び過去勤務費用の費用処理方法
過去勤務費用は、その発生時の従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数による定額法により費用処理しております。
数理計算上の差異は、各連結会計年度の発生時における従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数による定額法により費用処理することとしております。なお、当社については発生年度に一括処理しております。
G.損害賠償損失引当金
特定の自動車部品の過去の取引についての独占禁止法違反等に関連する和解金等の支払に備えるために、将来に発生しうる損失の見積額を計上しております。
H.環境費用引当金
米国における連結子会社THE VENDO COMPANYが、その旧工場の所在地や近隣地区の土壌及び水質汚染の浄化に係る費用に充てるため、将来の発生見積額から環境浄化費用に利用できる基金の残高を控除した額を当該引当金として計上しておりますが、浄化作業の進捗状況の如何によっては追加引当もしくは引当の減額が必要となる可能性があります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
売上高の主な増減要因
自動車機器事業においては、市場の大きい欧州で燃費及び排ガス規制の影響はありましたが、電動コンプレッサーやトラック向けHVAC等の増加により6%の売上伸長となりました。一方、中国、アジア地区につきましては、米中通商政策の影響、特に中国における市場環境の競争激化、米州地区に関してはOEMでの中小型車販売不振、日本地区では日系商権の切り替え等の影響によりそれぞれ減収となりました。これらの要因により、自動車機器事業における売上高は1,935億円となり前年同期に比べ154億円の減収となりました。
流通システム事業においては、国内のコンビニエンスストア業界では、店舗数は頭打ち、新規出店が横ばい傾向で推移する中、人手不足に起因するビジネスモデル見直しと省人化対応、消費者志向の変化への対応等多くの課題を抱えております。また当社におきましても主要顧客での競争激化等の影響により苦戦が続いていますが、これまでの客様ニーズの掘り起こし活動が結実したコンビニエンスストア向けコーヒーマシンのビジネスが寄与し、店舗システム事業全体では3%の増加となりました。ベンディングシステム事業につきましても、国内自動販売機の市場は横ばい傾向が続きましたが、セル生産システムにより改善されつつあるコスト競争力によりシェアアップを図り増収となりました。また、海外につきましては米州における日系コンビニエンスストア向けの需要があり増収、欧州・アジア・中国ではお客様投資減により減収となりました。これらの要因により流通システム事業における売上高は、694億円となり前年同期に比べ13億円の増収となりました。
営業利益の主な増減要因
当期の営業利益は9億円であり前年同期に比べ46億円の減益となりました。これは主に「自動車メーカーからの年次値下げ」を「原価低減」や「費用の改善」等で対応したものの、「大幅な販売減及びそれに伴う生産性の悪化」をカバーできず、また「将来に向けた継続的な開発投資」もあり、減益となりました。
自動車機器事業は、営業利益6億円となり前年同期に比べ61億円の大幅減益となりました。主な増減は、自動車メーカーからの年次値下げ44億円を原価低減37億円や費用の改善12億円等で吸収したものの、大幅な販売減及びそれに伴う生産性の悪化47億円をカバーできず、また、将来に向けた継続的な開発投資13億円等によるものです。
流通システム事業においては、営業利益8億円となり前年同期に比べ5億円の増益となりました。主な増減は、コンビニエンスストア向けコーヒーマシンの新規投入等による売上規模増3億円や原価低減5億円、費用の改善等2億円により価格要因の悪化4億円等を吸収しております。
その他事業においては、2016年度に事業ポートフォリオ見直しの一環として 「住環境事業の縮小・生産撤退」等を進めてまいりました。その結果、売上高は110億円で前年同期に比べ横ばいですが、営業損失4億円となり前年同期の営業損失14億円から赤字幅が改善されております。
資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金は、製品製造のための材料及び部品購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用の支出です。
また、設備投資の主なものは、グローバル生産体制強化に伴う、現地生産化・内製化、及び開発用設備の他、合理化等に伴う設備の維持更新と生産用金型の取得であります。なお、当連結会計年度の主な設備投資は、国内外の自動車機器事業に係わるものであります。
これらの必要資金につきましては、営業活動によるキャッシュ・フロー及び自己資金のほか、金融機関からの借入及び社債発行等による資金調達にて対応していくこととしております。
資金調達
当社グループは、資金使途及び資金の必要な時期、期間、地域に応じ資金調達を決定しております。
運転資金については、期限を1年以内とし、グループ各社が運転資金として調達することを基本としております。
当連結会計年度末短期借入金残高51,513百万円の主な通貨は円、US$、ユーロであります。一方、生産設備投資等に必要な長期資金を長期借入金で調達しております。
当連結会計年度末長期借入金残高71,644百万円の主たる部分は金融機関からの固定金利による借入金であります。
なお、当連結会計年度中において、日本を中心に17,368百万円の長期借入を実施し、設備投資等に充当しております。
長期資金の調達手段の判断は、金利条件や市場環境に加え、直接、間接調達の比率、金融機関との取引状況等を総合的に判断し決定しております。
当社グループは、常に健全な財務状態を目指しており、今後の成長に必要な資金についても、営業活動によるキャッシュ・フロー、金融機関及び債券・資本市場より調達することが可能であると考えております。