有価証券報告書-第123期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/24 14:19
【資料】
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【項目】
173項目

対処すべき課題

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものである。
(1) 経営方針、経営戦略等
① 経営方針
当社グループでは、技術と誠意を経営の根幹として、社会に役立つ価値を広く創造し、豊かな未来社会に貢献することを企業理念としている。
この企業理念のもと、“ものづくりとエンジニアリング”の知恵と先端技術を活用した製品・サービスを提供することにより、豊かな地球環境と社会・産業・生活基盤づくりに貢献する社会的存在感のある企業グループを目指すとともに、広く社会とのコミュニケーションを行い、会社情報を積極的かつ公正に開示することにより、社会から信頼される企業グループづくりに努めている。
② 経営戦略等
当社グループでは、事業規模のみならず収益性・健全性を兼ね備えた社会的存在感のある企業グループとなるための長期ビジョン「Hitz 2030 Vision」及び、その実現を目指した中期経営計画「Change & Growth」を2017年に策定し、3年間取り組んできた。その結果、サービス事業の拡大やICT技術の活用による生産性の向上などで一定の成果を得ることができたが、高収益化策の推進、グループ総合力の発揮やポートフォリオ・マネジメントの推進に関しては、十分な成果を得るには至らなかった。これらの原因分析を行って当社グループとして今後取り組むべき課題を確認するとともに、世界的にSDGs(持続可能な開発目標)の概念が広がり、持続可能な開発・循環型社会の実現に向けて社会が動き出しており、これは事業・製品を通じてサステナブル(持続可能)で、安全・安心な社会の実現に貢献するという当社グループの事業の方向性と一致している。このことを受け、長期ビジョン「Hitz 2030 Vision」のコア事業領域、目指す姿をより明確に再定義し、中期経営計画「Change & Growth」で明らかになった課題に対処するため、2020年度を初年度とする3か年の新中期経営計画「Forward 22」を策定した。
長期ビジョン「Hitz 2030 Vision」における当社グループが2030年に目指す姿は、クリーンなエネルギー・水の提供、環境保全、災害に強く豊かな街づくりを通じて、全てのステークホルダーに対する「サステナブルで、安全・安心な社会の実現に貢献するソリューションパートナー」として社会的使命を果たすことである。そのためには、自らも収益性を高め持続可能な企業になる必要があり、顧客への提供価値最大化による利益率の向上に取り組んでいく。クリーンなエネルギー・水に対する取組みとしては、ごみ焼却発電の更なる展開、バイオマス利用システムによる発電、陸上・洋上風力発電の推進等により、CO₂削減に貢献する再生可能エネルギーの利用拡大を目指すとともに、水事業に対する国内自治体の財源不足に対応するための官民連携や、レンタル設備による災害時の緊急水需要への対応に取り組んでいく。また、環境保全、災害に強く豊かな街づくりの実現のため、ごみ焼却発電・リサイクル施設事業によるごみ処理・廃プラスチック問題への取組みを行うほか、フラップゲート式水門による津波・高潮対策や、橋梁、高速道路、水門等のインフラ設備の老朽化や自然災害対策としてのメンテナンス・遠隔監視事業の展開、都市地下網の新規開拓を可能にする特殊シールド掘進機の積極提案等に取り組んでいく。
新中期経営計画「Forward 22」では、長期ビジョン「Hitz 2030 Vision」で目指す姿を見据え、2020年度から2022年度までの3か年を「収益力の強化」を推進し確実に成果をあげる期間と位置づけ、グループ全員が一丸となり、「私がやる!踏み出す一歩が未来を変える」という心構えで着実に力強く前進するべく、製品・サービスの付加価値向上、事業の選択・集中の推進とリソースの伸長分野へのシフト及び業務効率化・生産性向上による働き方改革の実現に取り組む。具体的な施策は次のとおりである。なお、新型コロナウイルス感染症が当社に及ぼす影響として、環境・プラント部門及びインフラ部門では、公共工事の割合が大きく、また豊富な受注済案件及び継続的事業により現時点では受注の落込みは見られない一方で、機械部門においては、舶用原動機、自動車用プレス機械及び精密機械等、民需を中心としているため、受注への影響が予想されている。こうした予想を踏まえて、2020年度の収益目標については、現時点で予想される影響を織り込んで作成している。
新中期経営計画「Forward 22」具体的施策
1.製品・サービスの付加価値向上
(1) 先端技術の活用
データの収集・蓄積・分析の基盤整備、診断・自動運転技術の開発及び当社グループの製品やサービスへのIoTやAIの組み込み提案など、先端技術を活用した新しいビジネスの創出と伸長を行う。
(2) 事業立地の転換、顧客・市場との対話の促進
社会の変化を敏感に察知し、顧客との対話を通じて求められているものを的確に捉え事業立地の転換を図り、顧客の課題を解決する新しい事業モデル、製品・サービスを提供することにより、事業領域の拡大、良質受注の確保に努める。
(3) グループ総合力の発揮
当社グループは、ごみ焼却発電、水処理、橋梁などの事業分野別に、当社事業部門と関係会社で構成する事業グループを形成しているが、さらに共同研究開発機関等や業務提携先を加え共創型の事業グループに進化させることにより、競争力のある企業グループを実現する。
2.事業の選択・集中の推進とリソースの伸長分野へのシフト
(1) Hitz目標管理制度の導入
事業・機種別の目標数値を重要目標達成指標(KGI)で設定するとともに、それを達成するための重要成功要因(KSF)と重要業績評価指標(KPI)を明確にした事業戦略を策定し、PDCA(Plan:計画、Do:実行、Check:評価、Action:改善)サイクル、特に「Check」と「Action」を確実に実施することにより、収益管理を徹底する。
(2) ポートフォリオ・マネジメントの一層の推進
Hitz目標管理制度による各事業・機種の目標数値の達成度(定量評価)と当該事業の魅力度・将来性などの事業評価(定性評価)を総合的に判断して、事業の選択と集中を推進する。
3.業務効率化・生産性向上による働き方改革の実現
(1) グループ経営管理制度の変革による業務効率化
本社共通部門のグループ統括機能(戦略企画・推進機能、コントロール機能、コンプライアンス・社会的責任遂行機能)を強化し、グループ全体を統制するとともに、当社と関係会社で持つ専門サービス提供機能をグループとして再編・効率化し、グループ全体の管理部門の人員配置の見直し、重点部門への最適配置を推進する。
(2) ものづくり事業のあり方の検討
ものづくり事業へのロボットの導入、AIの活用、生産現場のIoT革新など、スマート工場化に向けた取組みを推進し、働き方改革や収益力向上に努める。また、グループ全体で「ものづくりのあり方」を検討し、事業の改善、再構築に取り組む。
(3) 人材育成と働き方改革
人事戦略のもと、人事の重点施策にKPIを設定し、人材育成の強化、ダイバーシティ・マネジメント及びテレワークの推進など働き方改革の一層の実現に取り組む。
③ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、新中期経営計画「Forward 22」の最終年度となる2022年度における計数目標として、4,000億円レベルの受注高・売上高、営業利益率5%を計画している。長期ビジョン「Hitz 2030 Vision」で示した社会的使命を果たすためには、自らも収益性を高め持続可能な企業となる必要がある。2030年の計数目標として、これまで売上高1兆円等を掲げてきたが、持続可能な企業を判断する指標として利益率の向上(営業利益率10%)を最優先目標に設定している。また、当社グループの目指す姿の達成状況を判断するための一つの指標として、当社グループが設計・施工している廃棄物発電、バイオマス発電、風力発電、太陽光発電などのクリーンエネルギー施設が、顧客の事業活動等を通じて貢献するCO₂排出量削減を設定している。
(2) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループでは、2017年に策定した中期経営計画「Change & Growth」に3年間取り組んできたが、高収益化策の推進、グループ総合力の発揮やポートフォリオ・マネジメントの推進に関しては十分な成果を得るに至らず、計数目標についても、利益項目は大幅な未達成となった。この主な要因は、Hitachi Zosen Inova AGの業績悪化や、ものづくり事業の収益低迷によるものであり、これらの対応に取り組むとともに、「(1) 経営方針、経営戦略等 ② 経営戦略等」に記載の新中期経営計画「Forward 22」の具体的施策を着実に実行することで、「収益力の強化」を推進し、長期ビジョン「Hitz 2030 Vision」で目指す姿を見据えて確実に成果をあげていく。
また、当社グループでは、ガバナンス体制の強化によるリスク管理、コンプライアンスの徹底、安全管理の徹底による災害ゼロを目指していく。特に、海外において事業を推進するにあたっては、様々な角度からリスクを評価・見極め、十分なリスクヘッジをした上で、事業への取組みを決定し、その進捗をフォローしていくため、2020年度から当社にリスク統括部門を設置しており、慎重かつ大胆に推進していく所存である。