有価証券報告書-第78期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

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2018/06/27 14:21
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108項目
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びに経営者
の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中において将来に関する事項が含まれていますが、有価証券報告書提出日(平成30年6月27日)現在に
おいて、当社グループが判断したものです。
(1) 経営成績
当連結会計年度は、米国の景気は着実に回復が進み、日本及びユーロ圏も穏やかな景気回復が続き、中国及び新興諸国も景気回復への動きが見られるなど、世界経済全体は堅調に推移しました。一方、各国の政策による金融資本市場の変動や通商問題、北朝鮮情勢等による地政学的リスクの高まりなど、先行きの不確実性が高まりました。為替相場は、第3四半期まではドルが底堅さを増していく見通しから概ね安定的に推移しましたが、当連結会計年度末にかけて金融緩和縮小観測、米国のインフレ懸念、世界連鎖株安によるリスク回避の動きなどにより円高ドル安が加速しました。
航空輸送業界では、世界的な航空需要の拡大と原油安により、エアラインの収益は改善傾向にありますが、格安航空会社(LCC)の攻勢により競争の激化が続いており、大手エアラインは需要の大きい運航路線の獲得、客室サービスの向上、LCCとの業務提携など様々な戦略を打ち出しています。航空機メーカーでは、小型旅客機、中型旅客機であるボーイング787型機やエアバスA350型機の生産が増加する一方、エアバスA380型機などの大型旅客機や新型機に移行するボーイング777型機などの機体は減産傾向にありますが、今後はその代替として777X型機の需要増加が見込まれています。
こうしたなか当社グループでは、航空機内装品等製造関連においては、生産効率改善とコスト削減の取組みを進めると共に、777X型機向けラバトリーやA350型機向け後部ギャレーなど新規製品の開発製造を進めました。
航空機シート等製造関連においては、生産効率改善とコスト削減の取組みを進めると共に、次世代のスタンダードシートなど新型シートの開発製造を進めました。
航空機器等製造関連においては、炭素繊維構造部材及び航空機エンジン部品の生産性改善に取り組みました。
航空機整備等関連においては、飛行安全の確保と品質向上の取組みを継続すると共に、各種サービスの充実と収益改善の取組みに加え、新規品目の受注を進めました。
当連結会計年度の業績は、ボーイングが開発中の777X型機への移行の端境期を迎えた現行の777型機向けギャレー及びラバトリーの出荷減少の影響が大きく、売上高は前期に対して減少しました。一方、採算性の良いスペアパーツ販売や顧客仕様変更に伴う追加売上などが増加したことから、利益は前期に対して増加しました。
この結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高 77,791百万円(前期比 4,042百万円減)、営業利益 4,466百万円(前期比 2,334百万円増)、経常利益 3,504百万円(前期比 2,218百万円増)、親会社株主に帰属する当期純利益 1,681百万円(前期比 667百万円増)となりました。
なお、当連結会計年度末に次期以降の完成工事に対する工事損失引当金を 2,066百万円計上しております。この工事損失引当金による期間損益への影響は、第4四半期連結会計期間において売上原価 638百万円の減少(第3四半期連結会計期間末の工事損失引当金は 2,705百万円)、又、当連結会計年度においては売上原価 1,367百万円の減少(前連結会計年度末の工事損失引当金は 3,434百万円)となりました。
グループ全体の販売費及び一般管理費、営業外損益、特別損益の状況は次のとおりです。
販売費及び一般管理費は、人件費、販売手数料、保証工事費の減少等により 8,687百万円(前期比 182百万円減)となりました。
営業外損益は、急激な円高の影響を受けた前期よりも為替差損益が改善しましたが、顧客との契約の中途解約に伴う支払補償費 416百万円の計上などにより 962百万円の損(前期は、846百万円の損)となりました。なお、第3四半期連結累計期間(平成29年4月1日~平成29年12月31日)において為替差益 12百万円を計上しておりましたが、為替相場の変動等により、第4四半期連結会計期間(平成30年1月1日~平成30年3月31日)において、 429百万円の為替差損が発生したため、当連結会計年度(平成29年4月1日~平成30年3月31日)においては、 416百万円の為替差損を営業外費用に計上しております。
特別損益は、固定資産処分損等により、49百万円の損(前期は、23百万円の損)となりました。
法人税等合計は、米国において平成29年12月22日(現地日付)に連邦法人税率が35%から21%に引き下げられることを含む税制改革法が成立し、米国子会社の繰延税金資産再計算による修正の影響 421百万円を計上したことなどにより 1,690百万円となりました。(前期比 1,491百万円増)
セグメント別の業績は次のとおりです。
[航空機内装品等製造関連]
当事業では、客室内装備の一括供給メーカー(トータル・インテリア・インテグレーター)を目指した事業戦略に沿い、新規品目及びアフターマーケットの受注拡大に向けた種々の施策を継続する一方、新造機向け内装品の開発製造、生産体制の効率化に努めてまいりました。
当期は、A350型機向け後部ギャレーの出荷を開始いたしました。
当期の売上高は、ボーイングが開発中の777X型機への移行の端境期を迎えたことで現行の777型機向けギャレー及びラバトリーの出荷数の減少などで、前期に比べ減少しました。
一方、経常利益については、売上高減少の影響がありましたが、スペアパーツ販売の増加、顧客仕様変更に伴う追加売上、コストダウン施策による原価低減及び工事損失引当金繰入額の減少などにより、前期に比べ増加しました。
この結果、航空機内装品等製造関連は、売上高 50,992百万円(前期比 4,319百万円減)、経常利益 6,793百万円(前期比 2,117百万円増)となりました。
[航空機シート等製造関連]
当事業では、魅力的な製品開発による販売を促進する一方、安定した事業基盤と生産性向上の実現に向けて、コストマネジメントとサプライチェーンの強化に努めてまいりました。
当期は、シンガポール航空のA380型機向けビジネスクラスシートの納入を開始いたしました。また、787型機向けのプレミアムシートを発表するなど次世代のスタンダードシートの開発と販売を進めました。
当期の売上高は、新規プログラムの製品出荷やシートのスペアパーツ販売の増加がありましたが、一部プログラムの納期変更があり、前期に比べて減少しました。
経常損益については、生産効率の改善に努めたものの、新規プログラムの開発・製造工程における初期コストの増加などから経常損失となりました。
この結果、航空機シート等製造関連は、売上高 12,484百万円(前期比 71百万円減)、経常損失 3,641百万円(前期は、経常損失 3,547百万円)となりました。
[航空機器等製造関連]
当事業では、防衛関連を中心とした熱交換器などの受注拡大に取り組むと共に、炭素繊維構造部材及び航空機エンジン部品等の生産体制の効率化に努めてまいりました。
当期は、航空機エンジン部品の生産は増加しましたが、A380型機の生産減少の影響等により炭素繊維構造部材の出荷が減少しており、前期に比べ売上高は減少しました。
一方、経常利益はA350型機向け炭素繊維構造部材の採算性改善や、航空機エンジン部品の生産効率改善などにより、前期に比べ増加しました。
この結果、航空機器等製造関連は、売上高 6,312百万円(前期比 36百万円減)、経常利益 216百万円(前期比 119百万円増)となりました。




[航空機整備等関連]
当事業では、飛行安全の確保と品質保証体制のたゆまぬ強化、付加価値の高い新たなビジネスへの取組みの強化に努めてまいりました。
当期は、リージョナル機整備の協定締結などエアラインビジネスへの取組みを推進すると共に、装備品整備で新規品目の整備ビジネスを開始するなど、新たなビジネス展開へ向けた活動を進めました。
当期の売上高は、航空局飛行検査機の日常点検及び整備の契約終了や官公庁関連の一部機体整備の納期変更など完成工事が減少したことから機体整備では低調でしたが、装備品整備の生産は好調に推移したことから、前期に比べ増加しました。
経常利益については、既存の装備品整備の契約見直しの施策や新規品目の受注活動などを推進した結果、前期に比べ増加しました。
この結果、航空機整備等関連は、売上高 8,002百万円(前期比 385百万円増)、経常利益 139百万円(前期比 75百万円増)となりました。
[その他]
その他の区分には、連結子会社の㈱オレンジジャムコの事業を含んでおり、航空機内装品等製造関連の補助作業等セグ
メント間の内部取引が中心で、順調に進めることができました。
この結果、その他の区分では、売上高 0百万円(前期比 0百万円減)、経常損失 4百万円(前期は経常損失 4百万
円)となりました。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(千円)前年同期比(%)
航空機内装品等製造関連55,223,6711.1
航空機シート等製造関連13,085,342△2.9
航空機器等製造関連6,107,839△1.8
航空機整備等関連8,217,7226.3
その他17△76.4
合計82,634,5920.7

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 金額は、販売価格で記載しております。
3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
② 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称受注高(千円)前年同期比(%)受注残高(千円)前年同期比(%)
航空機内装品等製造関連62,500,85517.870,535,97519.5
航空機シート等製造関連8,629,100△77.629,856,691△11.4
航空機器等製造関連4,608,677△0.95,464,352△23.8
航空機整備等関連9,025,84041.12,999,68051.8
その他17△76.4--
合計84,764,490△17.4108,856,6996.8

(注) 1 金額は、販売価格で記載しております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(千円)前年同期比(%)
航空機内装品等製造関連50,992,198△7.8
航空機シート等製造関連12,484,309△0.6
航空機器等製造関連6,312,464△0.6
航空機整備等関連8,002,8515.1
その他17△76.4
合計77,791,842△4.9

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売高に対する割合
相手先前連結会計年度当連結会計年度
販売高(千円)割合(%)販売高(千円)割合(%)
MITSUBISHI
INTERNATIONAL CORP.
29,653,55836.228,553,72536.7
ITOCHU
Singapore Pte, Ltd.
12,948,33515.813,948,05217.9

(2) 財政状態
当連結会計年度末の資産合計は 94,456百万円となり、前連結会計年度末に比べ 1,897百万円増加しました。内、流動資産については、受取手形及び売掛金の減少(前期比 706百万円減)、原材料及び貯蔵品の減少(前期比 2,726百万円減少)等がありましたが、現金及び預金の増加(前期比 1,556百万円増)、仕掛品の増加(前期比 3,911百万円増)等により流動資産合計で前連結会計年度末に比べ 2,203百万円増加しました。又、固定資産については、当連結会計年度の投資案件が比較的少なかったことから固定資産合計で前連結会計年度末に比べて 306百万円減少しました。
負債合計は 64,903百万円となり、前連結会計年度末に比べ 346百万円増加しました。主な要因は、支払手形及び買掛金の減少(前期比 2,089百万円減)、借入金の減少(前期比 502百万円減)、工事損失引当金の減少(前期比 1,367百万円減)等がありましたが、電子記録債務の増加(前期比 1,090百万円増)、前受金の増加(前期比 2,346百万円増)等によるものです。
純資産合計は 29,553百万円となり、前連結会計年度末に比べ 1,550百万円増加しました。主な要因は、利益剰余金の増加(前期比 1,413百万円増)等によるものです。この結果、自己資本比率は30.4%となりました。
セグメントごとの資産は、次のとおりです。
[航空機内装品等製造関連]
当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末と比べて1,345百万円増加し、56,631百万円となりま
した。当事業では、A350型機向け後部ギャレー等の仕掛品増加などにより前期比増加しました。
[航空機シート等製造関連]
当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末と比べて316百万円減少し、18,577百万円となりました。当事業では、新規プログラム等で仕掛品は増加しましたが、売掛金が減少したことなどから前期比減少しました。
[航空機器等製造関連]
当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末と比べて320百万円増加し、10,418百万円となりまし
た。当事業では、年度末にかけて製品出荷が急増し売掛金が増加したことなどから前期比増加しました。
[航空機整備等関連]
当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末と比べて509百万円増加し、8,778百万円となりまし
た。当事業では、ITシステムの強化に伴い固定資産が増加したことなどから前期比増加しました。
(3) キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の増減は、以下に記載のキャッシュ・フローにより、前連結会計年度末に比べ 626百万円増加しました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、3,971百万円のキャッシュ・インフローとなり、前連結会計年度に比べ 1,842百万円収入が増加しました。これは、税金等調整前当期純利益、売上債権の減少による収入の増加等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、2,810百万円のキャッシュ・アウトフローとなり、前連結会計年度に比べ 365百万円支出が減少しました。これは、費用節減のために不急な設備投資案件の実施を見合わせたことなどによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、460百万円のキャッシュ・アウトフローとなり、前連結会計年度に比べ 126百万円支出が減少しました。これは、金融機関からの借入金による収入に比べて、配当金の支払い及び金融機関への借入金の返済による支出等が上回ったことなどによるものです。
(4) 主な経営指標
当社グループは、「安定した収益を上げることができる『強い会社』の実現」をビジョンに掲げ、経営指標を売上高経常利益率 7%以上、総資産経常利益率 7%以上と設定し、毎期継続してこの目標を達成するために種々の施策に取組んでまいります。又、自己資本比率など安全性指標についても、中期的な視野に立ち、その改善に向けて取組んでまいります。
当連結会計年度は、売上高経常利益率 4.5%、総資産経常利益率 3.7%、自己資本比率 30.4%、自己資本利益率 6.0%となりました。これらの経営指標の最近の推移は次のとおりです。
平成28年3月期平成29年3月期平成30年3月期
売上高経常利益率9.0%1.6%4.5%
総資産経常利益率(ROA)9.2%1.4%3.7%
自己資本比率29.7%29.4%30.4%
自己資本利益率(ROE)20.2%3.7%6.0%

※売上高経常利益率:経常利益/売上高、総資産経常利益率(ROA):経常利益/総資産、自己資本比率:自己資本/総資本、自己資本利益率(ROE):親会社株主に帰属する当期純利益/自己資本
(注) 1.各指標はいずれも連結ベースの財務数値により計算しています。
2.総資産経常利益率の算定における総資産は(期首総資産+期末総資産)/2で計算しています。
3.自己資本利益率の算定における自己資本は(期首自己資本+期末自己資本)/2で計算しています。